2007年07月11日

橋本真也の痛いプロレス

7月11日にすることがある。破壊王 橋本真也を思い出し、そして彼が去ってしまった事の重たさを実感する。

今年は橋本真也3回忌でもある。
橋本真也といえば、リング内外に問わず豪快を地でいく人で、その手のエピソードには事欠かない近年では稀なほどプロレスラーらしい人だった。
豪快なプロレスラーはいつの世にも存在する。だが、橋本真也のプロレスは、豪快であり、”痛い”プロレスなのだと、個人的に思っている。象徴するような試合は何試合もあるが、私は特に、天龍源一郎との2試合について、この3回忌である7月11日に記してみたいと思う。

橋本と天龍の初遭遇は、1995年の2月5日、札幌中嶋体育センターで行われた新日本プロレスとWARの対抗試合、6人タッグマッチ。これまでは平成維新軍が中心となっていた対抗戦に、ついに闘魂三銃士の橋本、武藤が天龍と相対した記念すべき試合でもあった。
先発を買って出たのは橋本真也。天龍を指差し「天龍、来い!!」と挑発。それに応える格好でパートナーの阿修羅原、石川孝志を抑えて試合開始。その試合のファーストコンタクトは手四つで組み、ロープ際に橋本が天龍を押し込んでのロープブレークの時だった。
離れ際に強烈な左ミドルキックを天龍の胸板に叩き込んでいく。2発、3発と受ける天龍が声を上げ悶絶するほどの衝撃。15,6年前にフジテレビで放送された番組で、橋本の蹴りの威力は、軽自動車時速60キロくらいの衝撃を伴うもの、という番組を思い出し、今天龍の胸に向かって軽自動車が突っ込んでるんだな、と妄想した。
天龍もお返しとばかりに強烈な逆水平チョップを橋本に叩き返す。こちらも1発、2発、3発と繰り返す毎に当てる場所を胸板から喉元に狙いを変えていく。唯一鍛えられないとされる喉仏に、普段はバッチ-ン!!という衝撃音を立てる天龍チョップが突き刺さる。派手な音がしないだけより痛みが伝わり、橋本も後ろにのけぞることで流すのが精一杯という状態だった。この試合の後、橋本天龍の抗争が始まることとなった。今思えば、橋本が不動のIWGP王者として君臨できたのも、天龍との出会いがあったからこそだろう。手が合うというか、ただの意地っ張り同士というか、とにかくプロのレスラーとして観客に痛みが伝わるプロレスにこだわっていた二人ではなかったかと思う。

そしてもう一試合。1998年G1クライマックストーナメント準々決勝での橋本真也 対 天龍源一郎がそれである。この年のG1はABブロックに分けられるリーグ戦ではなく、負けたら終わりのトーナメント方式であった。これまで何度無く苦酸を舐めてきた橋本が初優勝を飾ったG1の中でも、異彩を放っていた試合。
繰り出す技はキック、チョップ、パンチが8割という、プロレスならではの打撃戦に終始していた。お互いに退かぬ。頑固者。馬鹿者。言い様はいくらでもあろうが、私はここでも彼らのプロフェッショナリズムを感じられずにはいられなかった。痛いのだ。橋本と天龍の顔、身体を見ても、痛いとしか思えなかった。胸は赤く腫れ、顔面にはパンチ、首筋には袈裟切りチョップを叩き、打ち続ける。テーピングによって守られてはいたが、解説のマサ斉藤も、「試合終わったら病院行った方が良いですね、この2人は」と言うくらいに頑なに、互いに顔をしかめながら打撃合戦を続けた。そして全てを受け止めた。
今でこそ、現三冠王者 鈴木みのるが張り手合戦をビッグマッチではやるものの、この橋本と天龍が行ったものは、○○合戦というよりかは、壊し合いという表現に尽きる。
ボクシング、キックボクシングは斬り合いである。斬られた側は倒れるし、斬った側は生きている。だがプロレスの打撃は叩き合いである。叩いた方も叩かれた方も立ち続ける。どちらかが音をあげるまで終わらないぶつかり合いなのだ。タフであるが故に出来たこと。プロレスラーの2人だから出来たこと。

橋本のプロレスはわかりやすくて、痛いプロレスだった。代償として右肩を壊し、復帰を目指していた矢先の訃報に、2年前の今日、私は一人涙した。
勝手ながら、今日この日だけは、橋本真也のことをプロレスファンには思い出してもらいたい。

番外

痛いプロレスについて書いていたので、最後に一つ、思い出に残る辻よしなりさんの実況で締めたいと思う。これも故橋本真也さんの試合だったが、1991年の9月、横浜アリーナで行われたトニー・ホームとの異種格闘技戦。同じ相手に連敗を喫した橋本の3度目の兆戦試合だった。劣勢だった橋本が攻勢に転じて重たいミドルキックをトニー・ホームに浴びせかけた時の実況。

痛ぇ!痛ぇぇ!!痛い~~!!!

posted by Takayuki Kanno |13:13 | プロレス | コメント(3) | トラックバック(0)
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Re:橋本真也の痛いプロレス

橋本真也は数十年来の新日ファンだった私がファンをやめるきっかけの一つになったレスラーでした。
その橋本と天龍の戦いは、私にとってはまさに馬鹿馬鹿しい愚の骨頂でした。こんなの新日ではないと涙が出る思いでした。相手の打撃をよけずに受けあう、そこにはストロングスタイルのかけらもなく、相手が急所を外して手加減していることが前提のなまくら刀での切りあい。
ぺったんぺったん餅でもついている様なやりとり。そこには戦いは感じられなかった。

posted by TT | 2007-07-11 20:49

Re:橋本真也の痛いプロレス

今のプロレスの元になった気がしますね
小橋と健介のチョップの打ちあいとか、好きな人は好きなんだろうけど
総合が確立された中で、あれをやられて「最強」と言われると
我慢比べプロレスが嫌いではない私も、うん?と疑問が浮かんでしまいます

posted by A | 2007-07-11 22:37

Re:橋本真也の痛いプロレス

「今のプロレスには戦いがない」その象徴ではないでしょうか。
還暦を越えた元レスラーが警鐘を鳴らしても現役レスラーたちは旧態依然としたままで…。
プロレスにしか出来ない戦いとはあんなものではないと思いたいのですが。

posted by TT | 2007-07-15 16:54

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