2007年06月28日

追悼 クリス・ベンワ

何から書き始めればいいのだろう。事実だけを挙げれば、妻子を殺害し、自ら命を絶った一プロレスラー。大方、そういう見方を世間はする。
検死結果がまだ出ていないようなので、何故クリス・ベンワがそうした行動を取ったのかはわからないし、誰にもわかりえないことだろう。

焦燥感とでも言おうかコノ大きな心の穴。

WWEは急遽追悼番組を制作した。同じスーパースターズ(WWEの人気プロレスラーのことをこう呼ぶ)達からのコメントからは、一様に、クリスは誰からも愛され、尊敬される人間であり、友達であり、プロレスラーだった、という言葉が聞かれた。

私と同世代のプロレスファンならば、クリス・ベンワという名前よりも、ワイルド・ペガサスというリングネームの方がより馴染み深いかもしれない。今でこそ最高峰と云われる新日本ジュニアだが、その流れを作った一人に、必ずワイルド・ペガサスというプロレスラーが挙げられるだろう。

私事ではありますが、今回をクリス・ベンワ追悼記事とさせていただきます。


ペガサス~ワイルド

まだペガサス・キッドという名前の覆面レスラーだった頃、新日ジュニアの中心選手は、獣神サンダーライガー、エル・サムライ、保永昇男らであった。その中に突如として現れた黒の覆面(だったと思う)を被った筋骨隆々のプロレスラー。当事はまだ世辞にもレスリングが上手とはいえなかったものの、その力を活かしたダイナミックな技の数々には驚かされた。今思えば、コーナーポスト最上段からのパワーボムを放ったのは、ワイルド・ペガサスが最初ではなかっただろうか。最近は選手の技量も上がり、目を疑うような高難度の技が多々見られるが、当時は雪崩式というだけでも大迫力であった。

1990年代は、思い出すだけでも素晴らしい外人レスラーが新日Jrには揃っていた。ワイルド・ペガサス、ディーン・マレンコ、故エディ・ゲレロ、チャボ・ゲレロ等、現在ではスーパースターズと呼ばれる連中の駆け出し時代は、新日本のJr戦線だった。その後の新日Jr黄金期を支えた金本浩二、大谷晋二郎、高岩竜一、ケンドー・カシンの活躍があったのも、これだけ豪華な面々が揃っていたからに他ならないだろう。

Jrじゃない身体

来日の度に大きくなっていったベンワの身体は、初代タイガーマスクの好敵手であったダイナマイト・キッドを彷彿とさせた、或いはそれ以上の体格であった。Jr規格を遥かに超えたパワーを生み出す肉体のケアは、まさしくプロフェッショナルの鑑であったと、ベンワを知る人達は皆そう語る。現新日Jrの要である邪道・外道両選手は、ベンワと吉野家に行った時、牛丼を注文したのに上の肉をよけて、ご飯と持参した豆腐を食べていたというエピソードを以前誌面で語っていた。
肉体の維持、筋力向上の為には高タンパク低脂肪の食事を心がける事は知られたことだが、ベンワは特にホッケがお気に入りだったらしく、同じく肉体派で知られるスコット・ノートンに、「居酒屋でhockeyと言ってればホッケが出てくるから大丈夫」とアドバイスしていた、という話も聞いたことがある。
トレーニングを十二分にこなし、レスリング技術を磨いた元新日道場生は、その後ECW,WCW、WWEへと移籍し、アメリカのトップの証であるWWEヘビー級のタイトルを獲得した。タッグタイトルでも、計4度王座を獲得した。
当事のWWE(旧WWF)に、日本でいういわゆるプロレスムーヴメントを持ち込んだのは、ベンワであり、ディーン・マレンコ、エディ・ゲレロではなかったかと私個人は考えている。そこに五輪金メダリストのカート・アングル、ランカシャーレスリング出身のスティーブン・リーガルが加わり、よりその流れが加速したのではないだろうか。お約束のパンチ・エルボー合戦が主流だったアメプロの世界に流れるようなムーヴを浸透させたのは、奇しくも同じ新日本の釜の飯を食った3人だった。

首の骨折という生命にも関わる怪我を克服し、ここ数年間はWWE日本興行でも、相変わらずキレのある動きと迫力ある力技で日本のファンを沸かせてきたスーパースターズが、また一人いなくなってしまった。先にも挙げたエディ・ゲレロもこの世を去り、ディーン・マレンコは今ではWWEの首脳陣の一人になっている。

「ただ言える事は、俺の親友二人が今同じ場所にいて、罵り合っている。それだけだよ。」

追悼番組で、涙ながらにそう語っていたディーン・マレンコ。皆が皆、ベンワの人間性に触れ、どれだけ周囲から尊敬され、愛されていたかがわかる内容だった。

家庭内暴力、ステロイド、仕事柄蓄積していた疲労からくる脳髄の後遺症等々、今後事件の原因究明の波紋はどんどん広がっていくだろう。
今回の事件がどれだけプロレスファンにショックを与え、ベンワファンの心をやり切れなさで埋め尽くしたかは想像に難くない。事件は事件として検証されるべきであるし、殺人は許される行為ではない。だが、またしても偉大なプロレスラーがいなくなってしまった。

ポッカリと開いた穴は大きくなるばかり。

亡くなられた3人のご冥福をお祈り致します。

posted by Takayuki Kanno |21:22 | プロレス | コメント(4) | トラックバック(3)
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Re:追悼 クリス・ベンワ

クリス・ベノイ。新日本の道場生だったころから応援してました。だから、ボクの中ではいつまでたっても「クリス・ベノイ」の名前なんです。
マスクを被った時には、「マスクを被らなくても売れるのに!」とガッカリしたものです。
エディと一緒にゆっくり休んで下さい。

posted by クリス・ベノイ | 2007-06-29 19:46

Re:追悼 クリス・ベンワ

ただただ・・・お疲れ様でした。
本当にレスラーとしてファンからもレスラーからも憧れ、尊敬、愛されたのは事実である。

事件は事件で解明をして頂きたいが自分個人では怖くて直視できない部分があるのが本当のところです。

posted by tom@関西 | 2007-06-29 23:10

Re:追悼 クリス・ベンワ

彼を二度だけ生で見た事がある。
それは、奇しくもライガーとカネック(メヒコ)のマスカラ戦だった。
負けてマスクを脱ぐ際に見せた涙は今でも忘れない。
あなたの筋肉美はプロレスファン全ての心に刻まれました。
どうか安らかに眠って下さい。愛妻と愛息と一緒に。。。

posted by コントラ | 2007-06-30 00:57

Re:追悼 クリス・ベンワ

ペガサスっていうのはギャンブル好きの坂口さんがパチンコのペガサスやっててつけたんだってね。
週プロのボディスラムサーキットの時はECWの選手として当時遠征中の西村さんと一緒にとってもらった写真は今でも大事にもってます。
本当に残念でなりません。心からご冥福をお祈りします。

posted by haro | 2007-06-30 08:24

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