2006年10月28日
サプライズスクイズ
何かを期待してしまう自分が常にいる。緊張感が増すゲーム展開なら尚更に、それを求めてしまう。
プロスポーツ選手とは過酷な仕事である。周囲の期待、重圧に耐え、応えていかねばならない。それが自分の価値を高め、人の記憶にインプットされていく唯一の方法なのだから。そしてそれを継続していかねばならないのだから。
この期待感は、ある種の”裏切り”とも形容できるだろう。知っているのは実行する者、チームだけ。ファンや相手チームには匂わせるだけ。勘付かれてはいけないのだ。サプライズパーティを企画して、だます人間を自分たちが意図したレールに乗せることの快感と緊張感に似ているのかもしれない。
日本シリーズ第5戦。少なくとも筆者はハムに騙された。場面は5回裏、1死3塁の状態だった。
ビックリスクイズ
ドラゴンズ川上、札幌ダルビッシュ共に素晴らしいピッチングを繰り広げていた投手戦。1点勝負、或いは1安打、更に言えば1球で流れが変わるようなピリピリとした緊張感だけが伝わってくる。札幌の応援はハム一色ではあったものの、マウンド上では静かな闘志がボールに伝わり、キャッチャーミットに収まる手前でバッターとの駆け引きが行われている。
ドラゴンズ1点リード。もう負けられない試合に投げるエース川上憲伸。自分の役割は十分わかっている。取られてはいけない。犠牲フライもダメ。インコースのシュートで詰まらせる。こういう意図が、1球目、2球目のメッセージボールから伝わってきた。
対して日ハム。ベテラン金子が打席に立つ。最低でも追いつかなければならない状況に何を思ったか。方法はいくつもある。セオリーなら犠牲フライ。もしくは球を思いっきりグラウンドに叩きつけてランナーを生還させる方法。勝負に出るには早いイニングではあったし、川上の調子を考えれば無理にヒッティングさせる必用は全くなかった。
1ストライク1ボールのカウントになっての第3球目。ヒッティングの構えからスクイズ。3塁ランナーは思い切りの良すぎるスタートを切っていた。慌てて捕球し、ミットから直接キャッチャーに谷繁にトス。スタートダッシュが効いていたため、わずかに早くハム生還。同点となった。
この瞬間、筆者は身震いしてしまった。久しく野球の試合でここまで緊張感を伴った試合を見たことがなかったので、尚更鳥肌が走った。完全にやられてしまった。心持は、玄関開けたらクラッカーパーン!!Happy Birthday!!!である。
ファイターズを応援していたわけではなかったが、一瞬の間に驚きと、スリリングな緊張感と、自分の感情が高まった状態に現われる笑顔+高揚感を味わった為に起こった”異変”であった。
高校野球ならいざ知らずの作戦を、この日本シリーズ、しかも日本一が決まるかしれない試合でやってのけたファイターズに脱帽であった。本来ならば、追い詰められているドラゴンズが実行するべきような戦術だった気がする。
短期決戦ならではの作戦だったことは百も承知だが、こうまで上手く決まることの方が稀である。ファイターズは2勝のアドヴァンテージを持ちながら、試合を決めにいった。同点ではあったが、スクイズで雌雄は決したと、個人的には思っている。彼らは是が非でも札幌で勝ちたかったのだ。ワンプレーで流れが変わる。成功よりも失敗を恐れてしまいがちな精神状態の中、それだけでシリーズ全体の流れが変わるかというような賭けに勝ったのだ。
勝手に騙されたの何だのと語っているが、私の体温が上がったことは言うまでもない。期待していなかったことを見せられ、見事に日本一の座に就いたファイターズの1プレーが、筆者にとっては忘れられない思い出を呼び起こすものともなった。与えられたものは感動ではなく、興奮だったが、忘れることのない一場面にはなったと思う。
月並みな表現だが、良い意味で裏切ってくれた。プロの真髄を見せられた気がする。
posted by Takayuki Kanno |12:27 |
プロ野球 |
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2006-10-28 14:16 | 続きを読む


