2007年12月09日
長谷部のシエナ移籍に思うこと
またセリエAに挑戦する日本人が登場しそうですね。
長谷部選手の移籍が決定したわけではないですが、ほぼ確定といっていい状況のようで。
昨シーズンは小笠原、大黒、森本の3人でしたね。森本以外の2人はJリーグでの実績も十分。代表にも定着していた存在で、懐疑的な論調の中にも「もしかしたらやれるんじゃないか」という意見もあったと思います。
僕も小笠原には期待していました。開幕前のキャンプの様子も、積極的に周囲とコミュニケーションをとって、うまくチームに溶け込んでいるように見受けらた。元々技術のある選手なので、言葉の問題をクリアすれば自然と中心選手になるだろうと。
しかし、思いのほか試合に登場しない。ようやくセリエA初ゴールを挙げても、次の試合に出られない。技術的にはチームでも最も高いレベルのはずでした。
おそらく問題はチームの方にあったのでしょう。メッシーナは以前中村の所属していたレッジーナのように、イタリア南部のチーム。裕福な北部とは違い、貧困と戦いながら勝ち点1の獲得に汲々とする状況。まずは守備ありきとするスタンスから、攻撃面で小笠原の持ち味を発揮する機会もなく、チームで居場所を失っていく泥沼に嵌っていったことは想像に難くありません。
大黒は元来セリエAが大好きで、ディフェンスラインの裏を狙うようなスタイルもインザーギを彷彿とさせます。
ただし、なにか金の匂いがずっとしました。グルノーブルに移籍する際もスポンサーの思惑が、トリノ移籍の際も新たな事務所や代理人の手腕で強引に移籍したような気がします。トリノは大黒に何を求めていたか、といえばそれはゴールではなかったのでしょう。
少ない出場機会を得ても、ポジションは中盤サイド。監督も無理やりに使っているのは明らかでしたね。
そして、今シーズンのトリノはFWの大型補強を敢行。ディミケーレやヴェントーラなど実績十分の選手を獲得。そして移籍最終日にはレコバが加入。大黒の代理人であるブランキーニの「レコバが来るとは思わなかった。1月に移籍する。」というのがクラブとの信頼関係や立ち位置を表しています。もはやセリエAでの戦いは袋小路。
森本に関しては嬉しいサプライズとなっていますよね。カターニアも南部シチリア島の典型的なプロビンチャですが、森本をいわゆるジャパンマネー目当てではなく、育成選手と明確に位置づけて獲得しました。
期待の若手がしのぎを削るプリマベーラで彼も埋もれていってしまうかと思いきや、爆発的に得点を重ねトップチームにも度々参加。下部組織を主戦場としながらトップチームにも帯同する生活。そんな時の森本のインタビューで、「チームのエースのスピネージは本当にすごいんですよ!僕はカターニアのファンなんです。」と言っていたのを覚えています。おいおい君はカターニアの選手だろう、と思いましたけど。森本のこういう性格は周囲にも弟のように可愛がられ、森本を育てるんだというクラブの方針も、余計なプレッシャーが与えられず理想的な状況に。
時を経ずして、森本が終了間際に投入されたデビュー戦でゴールを決めました。今シーズンも継続的にメンバー入りを果たし、度々試合に出場しています。再びゴールを決めたときには、イタリアでも誰も驚かなくなったそうです。
現在のカターニアが攻撃的なスタイルを採っているというのも森本に追い風です。3トップで試合に挑むので必然的にFWの枚数が必要になる。練習試合でもゴールを量産しているので現在はまさに順風満帆。これからも期待がもてそうです。
さて、長谷部のシエナ移籍。どうなるでしょう?
最近はイタリアのプロビンチャが、戦術的に大きく変わっているとよく言われています。
守って守ってカウンターというカテナチオ戦法がセリエAの代名詞で、今もそういうイメージを持ってる人は多くいるでしょう。しかし現在のセリエAは下位チームでも試合の主導権を握ろうとする戦いをしています。
セリエAのご意見番・片野道郎さんによると、「アリーゴ・サッキのミラン」がサッカー界に革命を起こした時代に現役の選手だった人が今セリエAの監督となっていることが直接の原因。バルディーニ(カターニア)、ガスペッリーニ(ジェノア)、ディ・カルロ(パルマ)、マンドルリーニ(前シエナ)、フィッカデンティ(前レッジーナ)、そしてアンチェロッティ、スパレッティ、プランデッリ、マンチーニらがアンチ・カテナチオを掲げ、攻撃的姿勢を疑う余地のない大前提として戦うスタイルがもはや主流となっているそうです。
ここで気になるのは”マンドルリーニ(前シエナ)”の部分です。そう、攻撃的なスタイルで戦っていた監督は既に解任されました。後任はマリオ・ベレッタ。マンドルリーニの以前にシエナを指揮していた人物です。堅実に勝ち点を稼ぐことに定評のある残留請負人です。昨シーズンもシエナを残留に導きました。
シエナは現在最下位。攻撃的なスタイルを標榜していても現実には勝てません。とにかくセリエAに残ることがこれからの唯一のテーマです。
引き分け狙いで守備的に戦うこと、昨シーズン指揮していた監督が復帰していることから、長谷部がうまくチームになじむのは至難の業であると言えるでしょう。
長谷部はJリーグでも中盤で守備をこなしながら、前線にうまく絡むことの出来る選手でイタリア向きだと思います。しかし加入は1月から。戦術的な戦いが予想される中で、イタリア語が満足に出来ない長谷部が出場機会を得るのは簡単ではありません。監督もシエナを昨シーズン指揮していたので、チームの構想も固まっているでしょう。我慢が必要になると思います。
もちろんすんなりチームに溶け込んで、主力となる可能性もあります。ただし、どちらにせよ降格は絶対に阻止しなければなりません。シエナの経営陣・フロントは今シーズン開幕前に全て入れ替わっています。選手と監督以外は全く新しいチームなわけです。降格となってしまえば、恐らくチームの大刷新があるでしょう。
長谷部の契約内容に浦和レッズへの復帰条項が組み込まれるそうですが、それがいいでしょうね。この移籍が成功する可能性は、失敗する可能性より低い気がしています。
僕はイタリアサッカーのファンなので、日本人がセリエAの舞台で活躍してくれるのは本当に嬉しい。しかし、よりによってシエナか…という思いもあります。長谷部選手がこれから挑戦するのは最も険しい頂です。登れなくても恥じることはありません。でも願わくば是非この戦いに勝利してほしい!小さなアルテミオ・フランキで躍動する姿を見せてくれることをひそかに期待しています。
posted by 三四郎 |02:50 |
一般 |
コメント(6) |
トラックバック(0)


