2008年03月22日

特別な一年の終わりに  [サントリーvs三洋電機]

Match No.026 2008.3.16 
<ラグビー> 
第45回ラグビー日本選手権決勝 
サントリーサンゴリアスvs三洋電機ワイルドナイツ 
@秩父宮ラグビー場 

新聞記事によると、準決勝の勝利のあと、 
三洋の宮本監督はこう言ったという。 
「(MS杯決勝は)ボクシングで言えばクリンチばかり。
ちゃんとファイトして、それで負けたら認める」。 
MS杯の前に行われた「ぴあトークバトル」に行っていた僕にとっては 
かなり驚きのコメントだった。 
4強の監督が顔をそろえたそのイベントで、 
宮本監督はかなり謙虚に(あくまで表向きだが)振舞っていたからだ。 
自信満々のサントリー清宮監督とは対照的に、 
敵を挑発するようなことはリップサービスにも加えなかった。 

確かにボールも動かず、得点も動かない試合だったが、 
完全に術中にはまって負けたのは動かない事実だ。 
それを、拡大解釈すれば「つまらないラグビーに負けた」ともとれる発言を 
あえてしたのである。 
負け惜しみだと言われるのを覚悟の上で。 

真意は測りかねた。 
だから僕は以下のように都合よく解釈した。 
清宮サントリーが本格的に「観ていて面白いラグビー」を目指すのは来季以降だ。 
しかしトップリーグ優勝というひとつの成果を手にし余裕が生まれた今、 
監督・選手が派手なラグビーへの色気を出せば、 
強固な戦い方にもほころびが生じる可能性がある。 
それを誘発するための発言なのだ、きっと。 

しかし淡い予感は外れた。 
試合が始まってみれば、サントリーは今年のスタイルを貫いた。 
その代わり、三洋はサントリーの「気の迷い」などに頼ることなく、 
芝生の上で自らの手によって敵のほころびを生じさせていった。 

== 

秩父宮ではビッグゲームの日はいつも、 
ゲートからスタジアムの建物までのスペースに人だかりができる。 
グッズのテントや待ち合わせの人々のつくる混雑だ。 
その中で今日は、選手がアップするテニスコート周辺のプラ柵がなぜか一ヶ所開いており、 
一般客がフェンスに張り付いて両軍のアップを見ることができた。 
両軍の気合の入り方に差はないように見えた。 

ラグビーには暑いくらいの陽気。 
満員の秩父宮には試合開始直後から、 
群馬からの応援団を中心にした三洋のサポーターが大きな声が響いていた。 
数では勝っていたサントリー応援団は静か。 
それは両者(両社)のこの試合に賭ける思いの違いが出ているようだった。 
試合もまた、それを反映して進んでいった。 

前半5分、サントリーの反則で三洋はショットを選択する。 
蹴るのはなんとブラウンではない。田邉だった。 
リーグ戦終盤からプレイスキックの精度が落ちていたブラウンが自らに見切りをつけたのだろう。 
田邉はしっかり決めて先制。3-0。 
サントリーはあくまでモールを作りにかかり、ラインアウトではプレッシャーをかけた。 
「色気」はない。 
しかし三洋はMS杯決勝で徹底的にいじめられたラインアウトでサントリーを驚かす。 

8分、敵陣22m手前での三洋ラインアウト。相馬が投げ入れたボールは 
両チームのラインの頭上を大きく越えてタイオネの手に。サインプレーだ。 
そして左へ展開。ブラウンを経由して外へ。左から2番目の田邉に渡った時点で2対1。 
田邉はそのままインゴールに持ち込み、トライを挙げた。 
早い時間で先にトライを奪った三洋。 
苦しみ続けたマイボールラインアウトから自慢のバックスに繋げてのトライは、三洋にとっては最高の形だった。 
殊勲の田邉


モールに対しても三洋は奮闘した。 
サントリーが初めて敵陣深くに入った10分過ぎ、 
ラインアウトからモールで押されるがゴール前で結界を張る。 
そしてラックで田中がボールをジャッカルしトライを防いだ。 

14分に三洋が追加点。 
両者がゲインとノックオンを見せ合いフィールド上の選手の立ち位置が 
少しぐしゃぐしゃになった隙を突き、 
素早いラックからの球出しから得意のバックス展開。 
3on1の状況を作り、最後は三宅がトライ。ゴールも決まってなんと17-0。 
「ボールが動く」=三洋のゲーム、ということを見せ付けた。 

明らかに出足の違いが出ていた。 
やはりトップリーグを獲って3週間でのモチベーション維持は難しいのか。 

23分、清宮監督は早くもスクラムハーフを交代、田中澄憲を投入する。
25分、ニコラスのPGで3点を返したあたりから
サントリーは三洋陣内で試合を進め続けた。

ここから10分くらいがこの試合の鍵だったと思う。
ニコラスに突き刺さっていった三洋のコリニアシが体を傷めてピッチ外に出たが、3分ほどして戻った。
あのまま退場になっていたら、三洋はこの試合いちばんの騎馬を失っていたところだった。
一方サントリーは佐々木隆道とメイリングというFWのキーマンが欠場していた。
27分にはモールでかなりの距離をゲインするものの、インゴールまでは行けない。
サントリーとしては敵の人数を集めておいて展開、なのだが、
三洋のすばらしい集中力と間合いで外へ外へと追い込まれ、
トライどころか後退を余儀なくされた。
その直後もゴール前のブレイクダウンの繰り返しでプレッシャーを受け、ノットリリースでボールを失った。

38分にサントリーは小野澤のパントキャッチから
有賀のスピードとニコラスの個人技でトライを挙げたが、
三洋としては嫌なイメージが残る失点ではなかった。

40分のニコラスのPGで17-11と6点差での折り返しとなり、
一見サントリーの流れにも見えたが、
後半のアタマも三洋が制圧した。

PGで3点を追加。
そして後半8分、三宅、田邉、霜村がゲインし、サントリーの防御が薄くなったところを左へ。
3on2。コリニアシのパスフェイクで穴が開き、そのまま飛び込み貴重な追加点を挙げた。

後半に入り復調したブラウンのキックにサントリーは翻弄されはじめ、
時間だけが経っていった。
FW近辺のアタックはことごとく止められ、
少しでもサポートが薄ければすぐに三洋の魔の手が伸びた。

そして榎本が、霜村が、観客を沸かせる。タックルでだ。



「観ていて面白いラグビー」を、「PからGO」や「シャンパンラグビー」
とったわかりやすい標語と攻撃性だけに求めるのは簡単だ。
だがトップリーグも世界のラグビーと同様にまずは防御から進化した。
そうなるとMS杯決勝で書いたように、モールやラインアウトといった
能動的で堅実なプレーでの強みがあるかないかが勝負を分ける。

とはいえ、素人としては、許される範囲の限界まで求めてほしいものだ。
ボールの動く、面白いラグビーを。
サントリーが目指すものが来季に完成度を増すのは想像に難くない。
今から楽しみだ。
だが裏を返せば、観客に我慢を強いる段階である今季に、
2つもカップを与える必要はない。

目の前の試合に投資しているわれわれにとって、
単純に「面白かった」のは、ワイルドナイツのラグビーだった。
点差は今日のほうがMS杯よりもずっと開いたにもかかわらずだ。

ただ単に速いとか巧いとか、派手なトライが多いとかではない。
鋭いタックルと密集での獰猛さ、
コリニアシやブラウンの個人技、
相馬や榎本の献身ぶり、
そしてボールを奪ってからのバックス展開の鮮やかさ。
そのバランスが、最高に魅力的だったのだ。
(かといってすべてが完璧なわけではないのもよかった。笑)
キャプテン榎本


なにしろ僕は栃木での「三洋41-0東芝」の試合を現場で見て
ちっとも退屈しなかったのだ。
ディフェンスを見ていて楽しいと思えるのがラグビーの良いところ。
そしてディフェンスの延長線上に必ず敵のインゴールを見据えている三洋は、
1年でかなりのファンを増やしたに違いない。

サントリーの選手が「管理」されているように見えるのに対し、
先述のぴあトークバトルで「やるのは選手」と笑い飛ばした宮本監督の信念もまた、
多くの共感を得ただろう。


とにかく攻めないといけないサントリーだったが、
ハンドリングエラーも重なり、ようやくトライ(by平)をとったのは
後半31分になってからだった。

しかし3分後、敵陣でターンオーバーした三洋は、
時間稼ぎになど興味はないと言わんばかりに、
田中史朗が素早く2回の球出し。
そしてコリニアシが5人を弾き倒してとどめのトライを挙げた。
とどめのトライを挙げるコリニアシ


外国人パワーを使うタイミングがこの試合も絶妙だった。

僕の左を宮本監督が階段を下りていった。
待ちきれなかったのだろう。

39分、田邉がPGを決め、40-18。
田邉はついに1本もキックを外さなかった。

ノーサイドの笛が鳴り、
三洋電機ワイルドナイツは何度となく敗れてきた「決勝」と名の付く場所で、
悲願を達成した。

三洋の応援団が発する「鋭!鋭!応!」が
なんだかすごく格好良いなと感じた。

優勝の瞬間 応援団とともに



最後に少し日本選手権に苦言を呈したいと思います。
サントリーがちょっとかわいそうだから。

日本選手権の位置づけは難しくなりました。

廃止はしないでほしいです。
早稲田が東芝にチャレンジする場はあっていいと思います。
一方で、いまや学生がトップリーガーに勝つことはほぼ皆無です。
今回のようにMS杯と決勝のカードが同じになることも出てくるでしょう。

そうなるとどうしても「どっちの勝者が真の王者?」
なんて余計な疑問が出てきてしまうのです。

だから、トップリーグと選手権をまったく別の大会に見せる努力が必要だと思います。
サッカーの天皇杯のような位置づけにならないでしょうか。

今のように学生の強豪とクラブチームを混ぜた上で、
トップリーグのチームは全チームもしくは上位8チームは出場権を得るべきです。
また、今回の近鉄のようなトップリーグ下部のチームは要りません。
NECやヤマハのシーズンがとっくに終わっているのに、
近鉄がまだラグビーをしているというのはおかしな話でしょう。

選手権はMS杯出場を逃したチームのリベンジの場としての機能を
果たしてほしいと思います。

必然的に、早稲田対クボタ、といったアップセットの匂いのするカードが
増えて面白くなるはずです。


07-08のラグビーシーズンはひとまず終わりました。
ボルドーでの日本vsカナダを現地で見て、
そしてフランス人のラグビー熱を体感して、
今まで以上にラグビーにハマったシーズンでした。
あのカナダ戦の劇的な幕切れに始まったこのシーズンは、
僕のラグビー観戦キャリアにとって特別な、忘れがたいものになりました。


清宮さん、来年は、もっとすごいものを待ってますからね。
ワイルドナイツの皆さん、おめでとう。


サントリー 18-40 三洋電機




posted by sot-escape |21:33 | トップリーグ | コメント(0) | トラックバック(0)
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