2010年08月20日
2010.8.20
<野球>
第92回全国高等学校野球選手権大会
準決勝第1試合
興南高校vs報徳学園高校
中1日が空いている興南と、昨日の午後に戦ったばかりの報徳学園。
ただせさえ優勢な興南には大きなアドバンテージがあると見られていた。
しかし試合は序盤、まさかの展開を用意していた。
ひとつのヤマは早速1回表に訪れていた。
先攻の興南が1死1、3塁というビッグチャンスでクリーンアップを迎えた場面だ。
報徳の先発投手、3年生左腕の大西は、我如子、真栄平を続けて打ち取り、
球場に満ちたワンサイドゲームへの懸念を払拭した。
特に、我如子の一ゴロでは、ホームでのタッチプレーを送球・タッチともに
落ち着いて成功させたことが大きかった。
内野手のホームへの送球というのは、緊張を誘うものなのだ。
逆にその裏、報徳は先頭で出塁した八代を置いて、3番・中島が
島袋から一塁強襲のヒットで先制点を挙げた。
一塁手・真栄平としては取らなければいけない当たりだった。
こうして興南は2試合続けて先取点を奪われた。
準々決勝と異なるのは、さらに点差を広げられたこと。
2回裏、ヒットと連続四球で満塁のピンチ。
たまらずマウンドに集まる興南の選手たち。
今日の島袋はどこかおかしい。変化球の制球が悪い。
ならば直球勝負といわんばかりに、打席の3番・中島に140キロ台のストレートを連発して追い込んだが、
ついに5球目の145キロを捕らえられ、これが左中間を転々とする間に、
3人の走者が全員帰ってきた。
さらに4番・越井が今度はタテの変化球に合わせてライト前ヒット。
2回で5-0、報徳のリード。
誰もが予想しえなかった展開に、スタンドはざわめいた。
報徳の選手はとにかくよくハイタッチをする。
うまくベースカバーに入ってくれた味方にハイタッチ、エラーしたやつにもハイタッチして頭をゴシゴシ。
特に名高い選手もいない中で全国4強まで駆け上がってきた要因は、
この一体感ではなかったか。
仲間を信じて打たせて取るエース・大西は、奪三振ナシで4回無失点。
興南、春夏連覇の夢潰えるか、という空気が濃くなってきた。
しかし、興南は強かった。
反撃の口火を切ったのは島袋のバット。5回、先頭打者として中前ヒットで出る。
9番・大城にはバントのサイン。点差は5点もあるだが、強打で併殺で受けるショックと天秤にかければ、十分納得できる作戦だ。
それに、1点入るだけで気の持ちようが変わってくる。
だが2球続けて大城がミス。そしてやむなく打って出た打球が三塁ゴロ。
最悪中の最悪を行ったはずのプレーだった。
ところが今日大活躍の報徳のサード、中島が二塁への送球をミスってオールセーフとなってしまった。
結局、ミスにつけこみ慶田城と我如子がタイムリーで5-3と2点差。
点差はあっという間に「ちょうどいいハンデ」の範疇に入った。
6回表にはさらに、島袋が自らタイムリーを放ってついに1点差。
昨日先発し試合のほとんどを投げた1年生の田村へといつスイッチするのか。
僕は、捕まり出した大西は6イニングが限界と見ていた。
しかし7回も続投。すると逆に、田村には疲れが残っていて使える状態ではないでは、という懸念を持った。
先頭の国吉にヒットが出て、今こそ代え時だった。永田監督は動かない。
すると、犠打を挟んで絶好調の我如子に右中間に運ばれてこれが同点スリーベースに。5-5。
序盤の劣勢によってエネルギーが余分に蓄積された様子の3塁側アルプスが爆発する。
ここでようやく田村がマウンドに上がったが、興南の津波のような勢いは止められない。
4番・真栄平がセンターへ運んで我如子が帰る。ついに、逆転に成功した。
まったく大したチームである。
5点のビハインドを背負っても、興南からは焦りというものを感じなかった。
相手との実力差を冷静に分析して、逆転可能と踏んでいたのだろう。
5回表の3得点のシーンではことごとくスライダーを叩いてもいた。
そして島袋。
途中からはほとんどストレート1本といってもいい投球に見えた。
結局最終的には10本のヒットを浴びるのだが、
大事な局面では140キロ台半ばのボールを連発して空振りを奪った。
それでも球数は相当数に昇っていた。
9回裏。甲子園は真っ二つの声援がぶつかった。
報徳は1死から2番・谷が一二塁間を破って出塁し、自ら手を叩いて叫ぶ。
1塁側アルプスと地元のファンの歓声のボリュームが上がる。
そしてクリーンアップへ。
3番・中島には1ボールから4球続けてストレート。
5球目のボール球を振らせて三振を奪うが、1塁走者がスタートしていた。
捕手の送球がセンターへ抜ける。谷は3塁へ。2死3塁。
どんな形でも点が入りうるシチュエーションになった。最高の場面だ。
フルハウスの3塁側アルプスから、「洋奨(ようすけ)!洋奨」の大コール。
報徳のブラスバンドは勢いを増し、4番・越井を迎える。
越井はヘルメットを取り、天を仰ぎ、胸に手を当てる。
エース対4番。144キロ、145キロを連発し2ストライク1ボール。
4球目、越井の肩が動いたが、バットは動かない。ボール。
5球目、143キロの高めストレート、バットは空を切った。
整列した両軍に、甲子園らしい温かい拍手が送られた。
興南を追い詰めた全員野球、そして最後のしびれるシーンに皆感謝である。
涙に暮れる越井。敵の校歌を聞きながら、アルプスに頭を下げながら。
あの143キロは島袋の159球目だったらしい。
そんな大物を食らう一歩手前だったのだから、悔しいだろう。
興南はついに、今大会最高の投手と、自信みなぎる打線を擁して、
松坂以来の「春夏」に挑む。
興南 6-5 報徳学園
posted by sot-escape |20:03 |
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2010年08月19日
2010.8.19
<野球>
第92回全国高等学校野球選手権大会
準々決勝第3試合
東海大相模高校vs九州学院高校
@阪神甲子園球場
2年ぶりに夏の甲子園に来ました。
昨年は休みを取って来た2日間が両方雨で中止という憂き目に。
今日から決勝までの5試合をレポートします。
東海大相模(以下相模)のエースはみんな知ってる一二三。
この試合の注目は何といっても、当たっている九州学院(以下九学)を
一二三がどう抑えるか、だった。
初回、両校早速明暗が分かれる。
サイレンヒット(初球打ち、の意)で出た先頭の渡辺をきっちり送り、
大城卓の先制タイムリーに結びつけた相模。
一方九学も先頭打者を出すもバントに失敗し、得点ならなかった。
一二三は2回にも、守備のミス絡みで2死1、3塁のピンチを招くが、
巧打者の井を三振に仕留めた。
144キkmのストレートをファウルさせた後、外角低めに落とされたらかなわない。
3回に追加点をもらった一二三は次第に調子を上げていく。
走者こそ出すものの、いわゆる「要所を締める投球」というやつだ。
序盤3イニングで得点を挙げられなかったのは九学としては今大会初。
1、2年生が多く名を連ね、序盤の攻勢で試合の主導権をもぎ取ってきたきただけに、
好投手を相手に追う展開はしんどかった。
さらに5回には立て続けにエラーが出てしまい、4-0と、
勝負の行方は相模に大きく傾いた。
そこへ、さらなる悪夢が襲う。
6回表、エース渡辺の左手に打球が直撃してしまったのだ。
患部を押さえて苦悶の表情を見せる渡辺。
その裏、チャンスを作って渡辺の打順で、やはり代打が送られた。
チームを引っ張ってきたエースの代わりに打席に入ったのは、キャプテンの前川。
今大会初打席は、いろいろな思いの詰まったものだったはずだ。
三遊間へのヒット性の当たりはしかし、
相模の染谷のファインプレーによって封じられてしまった。
その染谷は8回表にタイムリー二塁打を放って6-0。
事実上試合は決した。
ところが、甲子園は九学に最後のドラマを演じさせる時間を与えた。
8回裏、1年生で4番を張る萩原のヒットを足がかりに、
途中出場の3年生・中村がつなぐ。
ここで坂井が二塁打を放ち、代走の上野(3年)と中村を帰還させた。
さらに9番の2年生・下田に代わって、打席には3年生・岩田。
センター前に見事に弾き返して3点目を入れた。
3回戦まで大量リードでもほとんどメンバーをいじらなかった坂井監督だけに、
よくある「最後の花道」的な意味合いの代打・代走攻勢だったはずだ。
そこへ、3年生が意地を見せた。思い出作りで終わってなるものか、と。
結局9回表に相模が4点を加え、一時は逆転の可能性を見せた九学も終わってみれば大差で敗れたことになる。
しかし、終盤で見せた粘りと、
1、2年生中心のチームにあってベンチを温めていた3年生の活躍は、
心に響くものがあった。
9回表2死無走者で、坂井監督は投手を2年生・小山田に代えた。
彼の登場で実にベンチ入り18人全員が登場したことになる。
小山田が打ち取ったセカンドゴロが、九学の新チームのスタートになるのだ。
敗れたが名采配だったと思う。
左手に包帯を巻き、ベンチから声をからした九学・渡辺に、
整列時に一二三が声をかけていた。
一二三も、東海大相模というチームも、敗北の悔しさを糧にしてきた代表格だ。
クールであまりはしゃがないように見えた相模ナインだったが、
その光景は美しかった。
東海大相模 10-3 九州学院
posted by sot-escape |18:35 |
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2010年07月26日
2010.7.24
<野球>
第92回全国高等学校野球選手権大会愛知大会4回戦
中京大学附属中京高校vs愛知県立長久手高校
@名古屋市瑞穂公園野球場
高校野球の記事はすぐアップしないとだめですね。2日遅れですみません。
東邦危機一髪の試合の後は、
昨年の全国優勝校、中京大中京の試合です。
暑い、暑い、暑い、暑い、暑い!
やはり、昨年テレビで見た印象と変わらず、
背が高く、肩幅が広く、ケツがでかい選手が勢ぞろいでした。
スタンドから見ていても圧倒される迫力です。
こういうガタイの良い選手をそろえたチームを指して「あいつらでかすぎて反則だ」とか「ずるい」とか
本気で言ってる人がたまにいますが、
大きな選手を集めるのはその高校の自由です、勝手です。
本人たちには何の罪もありません。
中京の選手はイニング間やアウトを取った後のボール回しからして
第1試合とはレベルが違い、送球の安定度、グラブの音など
ここが甲子園球場でも何ら遜色ないと感じさせました。
ただ一方で、長久手のほうも、
非常によく鍛えられたチームという印象で、
守備からの崩壊はないだろうと想像されました。
予想通り、長久手はゴロの処理や送球、中継プレーなどを
ほとんど危なげなくこなし、見ていて気持ちの良いチームでした。
惜しむらくは、中京投手陣の球を、ことごとく打ち上げてしまったこと、
そして何より、中京が「アウトにするための守備プレー」の機会を
なかなか提供してくれなかったことです。
バッターボックスに入った中京の各選手の素振りを見たら、
普通の投手ならビビってしまうと思います。
長久手のエース・中鶴はそれでも逃げることなく勝負に挑みましたが、
いかんせん打線の威力がすごすぎました。
大振りではなく、しかし鋭いスイング。豊富な練習量が想像されます。
長久手は初回こそポテンヒットと犠飛の2点に抑えましたが、
2回に打者10人、6点の猛攻を受け、試合を持っていかれました。
さっきの南山に長久手の守備力があれば、東邦は敗退していたな、
と不毛な想像をしながら見てしまいました。
中京と当たってしまったのが運のつき。
それでも選手たちは、このチームと当たれたことを自慢できるのではないでしょうか。
今年の愛知のほかの高校の事情が全くわかりませんが、
中京に勝てるチームは全国でもそんなに多くないだろうと思いました。
(投手陣の真の実力を推し量れなかったのは残念です。
四球が多く、そこは不安要素かもしれないとは思いました)
15-0と一方的なスコアで5回コールド。
試合はこうなってしまいましたが、長久手には、良いチームを作り上げてきたことに
拍手を送りたいと思います。
========
さて、この試合、私は千葉マリンにいるのではと錯覚を覚えた。
なぜなら、両校の応援団から、次々と
千葉ロッテの応援ソングが繰り出されたからだ。
今江、数年前まで在籍したマット・フランコ、西岡(これは東邦)などの歌、
さらに去年までのチャンステーマが中京スタンドから流れ(使い方がうまい!)、
栄光の架け橋が歌われ(サブローのテーマには繋がらず)、
えーとほかにもひとつあったんだけど忘れた。ベニーだったかな。
よく考えてみてなるほどと思った。ブラスバンドがいないのね、と。
確かに、ブラバンのいないチーム(たまたま今日いなかっただけかもしれないが)にとって
ロッテの応援は大いに参考になることだろう。
今年多くの応援歌が新しくなって(ちなみに、僕は大のロッテファンですよ)、
ラッパの出番が増えて歌詞が難しくなってちょっと残念なのだが、
それでも、太鼓役が一人いれば成り立つ歌が多く、
ルパンもタッチも紅も演奏できない応援団にはロッテ化は得策だ。
たまたま今日出てきた高校が多用していただけなのか、
それともこれは高校野球界の新しいムーブメントなのか??
(去年までの東西東京大会ではほとんど聞いたことがない)
アルプススタンドで、女子高生がビヨーンビヨーンと飛び跳ねて応援するという映像が
今年あたりNHKの電波に乗ってもおかしくなかろう。
実況のアナウンサーが「稲葉ジャンプ」と区別できるかどうかが肝だ(どうでもいいか)。
中京大中京 15-0 長久手
posted by sot-escape |20:49 |
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2010年07月26日
2010.7.24
<野球>
第92回全国高等学校野球選手権大会愛知大会4回戦
東邦高校vs南山高校
@名古屋市瑞穂公園野球場
せっかく名古屋に来たので(前記事参照)、
Jリーグも見ていくべ(明日のアップ参照)となったが、
ナイターまでの時間を有意義に使わぬ手はない。
我は行く。そこにスタジアムがある限り。(c)おれ
======
熱い夏がやってきましたよ!
世界で一番素敵な大会、夏の高校野球。
以前にも書いたことがありますが、
プロが年間150試合近くゲームをするのに、
高校野球部の真剣勝負は下手したら年に2回。
一刻も早くリーグ戦の導入を希望するわたくしですが、
一発勝負のトーナメントには、特有の魅力があるのも紛れもない事実です。
ドラマは、地方予選に転がっているのです。甲子園なんて、オマケみたいなものです。
瑞穂球場に行くことだけを決めて昨晩の眠りについたため、
対戦カードを知ったのは今朝の新聞を見てから。
不真面目さを恥じつつも、同じ日に同じ場所で東邦と中京大中京を引いた運にほくそえみました。
それでも、コールド試合×2の危惧もまたあったわけです。
まさかブロック第1シードの東邦の試合が、
これほどの熱戦になるとは思いませんでした。ドラマは、予選にある。
3回表、南山は、8番・後藤の安打のあと、9番・吉野の送りバント。
これが投手と一塁手の間に転がり、打者走者もセーフになります。
しかーし、一塁走者の後藤が三進の判断に迷って飛び出し、タッチアウト。
もったいないお化けが出そうでしたが、このあと2死1、2塁とチャンスを広げます。
3番・西村のショートゴロが悪送球となって走者が残った南山。
4番・越智のライトへの打球は、ヒット性とはいえ守備範囲。
しかし東邦のライトは目測を誤ったかこれを取れずに、南山に先制の2点が入りました。
3塁側スタンドが強豪からの思わぬ得点に沸きす。
守備の乱れが続いた東邦。どうしたことか。
その裏すぐに1点を返された南山ですが、
先発の吉野は、サイドスローから緩急をつけた投球で、
東邦打線に的を絞らせず、走者を出しながらも粘ります。
捕手・西村は、内外・高低を高度に要求しているように見えましたが、
吉野もそれに十分応えていました。
打者の頭付近に速球を投げた後に、平気な顔で超スローボールを
ど真ん中に投じてニヤリ。
マウンド上でも歯を見せているし、なかなかの器です。
2-1、南山のリードで試合は進み、
まさかの番狂わせにも現実味(といってもやっと50%くらい)が。
こんなところで負けるわけにはいかない春の県王者が、
攻守においてやれるはずのことができないことへの焦り。
これを南山の選手が推し測り、失うもののない立場として気持ちに余裕が持てるかどうか…。
しかし7回裏、東邦が試合をひっくり返します。
2死3塁から上戸の打球は三遊間へのゴロ。畠山はよく捕って投げるも、1塁で微妙なタイミングに。
一塁手・太田はよく脚を伸ばし、アウトに見えましたが、
「足が離れた」という審判のジェスチャー。3塁走者が還って同点です。
そこはノリでアウトだろ~と塁審に詰め寄りたい気分です。
さぁ正念場。
バッターは4番・都築の打球は…。
南山には5回、6回にも、得点圏に走者を背負うピンチがありました。
しかしそのいずれも、レフトフライに抑えて窮地を脱していたのです。
特に5回は、フェンスまでわずかという大飛球。
両軍に守備がバタついた試合にあって、南山にとってレフトは「ツイてる」場所でした。
しかし4番を迎えて下がり気味、且つ、5回の残像が残っていたためか、
都築の浅めのフライは、最初バックステップを踏んだレフト・後藤の前にポトリと落ちてしまったのです。
一塁走者が長駆ホームインで、ついに逆転です。
鋭いスイングと、芯を外されバックスピンのかかった打球。
このギャップが、東邦に運をもたらしたといえるでしょう。
一旦全国の常連に逆転されたらもう終わりや、よく頑張った。
私は正直そう思っていました。
8回表、代わったばかりの東邦・池田から南山の先頭打者・中山が
いきなりセーフティバントを試みてまんまと成功させるまでは。
池田の投球練習で直球を見て、投げ下ろしてくる感じだとわかっていたはず。
よくぞ怖がらずにバントを成功せしめたものです。
この後1死2塁となって、好リードの3番・西村が同点タイムリーを放ちます。
あっぱれ。嬉々としてホームインした中山君に、立ち上がって拍手してしまう私。
日なたは40度近かったと思われ、冷たい麦茶が一瞬で粗茶になってしまう瑞穂球場でしたが、
この熱戦に巡り合えたので、オールオッケーです。
暑いより、熱いが大事。
=======
結局8回裏に東邦が勝ち越し点を挙げ、
さすがに勇敢な挑戦者も力尽きた。
南山には上述のほかにも、守備の脆さのために、
アウトになるべき打球でアウトを取れないシーンがいくつもあったが、
それでもエース・吉野は「そんなこと織り込み済み」と言わんばかりによく粘投した。
彼が2年生だと気付いたのは試合が終わった後である。
ほかにも、果敢なセーフティバント、振り遅れを怖れないスイング、
応援席の男子と女子の微妙な距離感(笑)など
魅力あふれるチームだった。
実力差こそあれ、所詮は高校生同士の対決。
ふわりと試合に入ってしまった東邦は危うく、
「伝統の守備に乱れ、攻撃でも残塁の山」
といった記事を書かれてしまうところだった。
大アップセットの目撃とはならなかったが、
地方予選らしい熱戦を見せてくれたことに感謝したいと思う。
試合が終わって我に返ると、、、やっぱり暑すぎるわこれ。
東邦 4-3 南山
posted by sot-escape |00:20 |
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2008年08月16日
Match No.067 2008.8.14
<野球>
第90回全国高等学校野球選手権大会3回戦
大阪桐蔭高校vs東邦高校
@阪神甲子園球場
力の入る第2試合を終え、
僕は甲子園カレーを食べながらのんびりした気持ちで
第3試合を観ていた。
鋭い日差しを浴びながらも、
白球を追いかける高校生をぼーっと眺めるのは幸せな気分だった。
随所に好プレーが出る試合だったが、
彼らに送られる甲子園の観客のまさに「惜しみない拍手」は
なかなかほかでは経験できないものである。
東邦の純白の帽子とユニフォームは、テレビで見るとちょっとダサいが、
球場で見ると、すっきりとしていて格好良かった。
中日で活躍した山田喜久夫(字が合っているかわからんけど)の東邦と
元木大介の上宮が選抜の決勝で当たったこととか、
大阪桐蔭が好投手・和田を擁して初優勝した年とか
(たしか沖水が相手だったからけっこう悪役だったんだよな)、
いろいろ思い出しながらの観戦。
もっと大阪桐蔭寄りの雰囲気になるかと思いきや、そうでもなかった。
理由のひとつには、東邦が同情を誘うような戦いを見せてしまったことがある。
東邦といえば、かつて阪口監督という鬼将が率いて、
とにかく守備と走塁には定評があった。
その東邦が、序盤から守備のミスで失点を重ね、
走塁の拙さというよりは大阪桐蔭の守備の固さが要因だが
チャンスをことごとく逃していったのだ。
今年のチームの売りが何なのかは事前知識がなかったが、
「らしくない」という表現は的を外れていないと思う。
記録に残らないミスも含めれば10個くらいあった。
1回、2回、3回と1点ずつとった大阪桐蔭の得点は
いずれも犠牲フライ。
すべてエラー絡みで三進を許したランナーだった。
対して、たとえば東邦の2回裏の攻撃。
二塁打で出たランナーを次打者のショートゴロの際に
三塁で刺した浅村のプレーは見事だったし、
その回には2塁ランナーの飛び出しを見逃さずに捕手・有山が刺した。
結果的には、この序盤戦がすべてだったと思う。
6回にも2番手・和田を捕らえて7-0。
大阪桐蔭の完勝ムードになった。
それにしても、どうしてこうも毎年毎年大阪桐蔭の選手は
デカいのだろう。
僕はたまたま、辻内が3年生のときのチームを球場外で間近に見たことがあるのだが、
ヤツらの尻のデカさは、決して電車に同乗したくないものだった。
前の試合の慶応の連中の1.5倍くらいはあるだろう。
7回裏にやっと東邦はビッグチャンスを迎えたが、
2死満塁で代打の生田がど真ん中の直球に手が出ずに無得点に終わった。
それでも、3番手の佐々木がリズムを作り、
8回裏に東邦は小宅のホームランなどで2点を取った。
そして9回、ようやく打線が繋がった東邦は2点を返し、
4番・野々川のレフトオーバーの二塁打で2点差に詰め寄った。
1発出れば同点というところまで行ったが、
結局最後の打者がレフトフライに倒れ、猛追は及ばなかった。
あとから考えれば、8回裏の満塁の場面で、
3塁ランナーのタッチアップを覚悟の上で大阪桐蔭のレフト・中谷が
ファウルフライをフェンス際で好捕したプレーは大きかった。
打者が当たっている橋本だっただけに、これでひとつの流れが切れたといえる。
大阪桐蔭のソツのなさと固い守備は、彼らを頂点まで
押し上げるかもしれない。
翌日の仕事に備えて第4試合はパスし(すごく観たかったけど)、
赤くなった肌をさすりながら(昔はきれいに黒くなったのになぁ…)、
僕は東京に戻った。
やはり高校野球はいい。世界一面白い。
大阪桐蔭 7-5 東邦
posted by sot-escape |16:56 |
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2008年08月16日
昨今のPC不調と連夜の五輪観戦のせいで
更新を怠っておりました。
もう明日から準決勝ですが、甲子園3回戦に行ってきました、
という報告をさせてください。
インターハイ観戦記は、追ってアップします。待ってろ高校生!
Match No.066 2008.8.14
<野球>
第90回全国高等学校野球選手権大会3回戦
青森山田高校vs慶應義塾高校
@阪神甲子園球場
私は、夏の高校野球は世界一面白い大会だと思う。
「夏の甲子園」ではない。
県予選から甲子園での決勝に至るまでのすべてをひっくるめてのことだ。
個人的には、地区大会の決勝こそがいちばんの見物だと思っている。
甲子園の魔物は、実はこの試合でこそ魔力を発揮するのではないか。
今年は90回記念大会なので
(東神奈川代表だった松坂が優勝したのはもう10年前なのか!)、
加古川北、本庄一、大府、慶応といった、近年「あと一歩」だった学校が
出場枠増の恩恵を受けたが、その一方で、
春夏通じて初出場に手をかけながら決勝で散った高校は16校にも上る。
洲本、立教新座といった久しぶりの出場を目指したチームも、
決勝で呑まれた。
東海大相模が3年連続で決勝で敗れたのを見ても、最後の1勝というものが
いかに難しいかがわかる。
私もかつて、母校と、友人がレギュラーを張っていた学校が
それぞれ決勝で涙を飲んだのを現場で目撃した。ともに逆転負けだった。
甲子園大会は3回戦。
県立校の出場が多く、特待生問題の反動かと思われたが、
ここまで残ったのは私学の強豪校ばかりだ。
北島康介がなんぼのもんじゃい、という関西の野球ファンは、
甲子園球場を満員にしてみせた。うれしいじゃないか。
3年ぶりの甲子園球場!
あの窮屈で仕方のない内野席が改装されたということで楽しみにしていたが、
お盆休み真っ只中で垂涎カード目白押しの今日は、
私を外野席に弾き飛ばしてくれた。まぁいいや、タダだしね。
慶応が1回に先制した(球場に入る寸前で「若き血」が聞こえた)。
両校のユニフォームはともにグレー基調で遠くからでは見分けがつかないよ。
1塁側の青森山田アルプスは、整然とブラスバンドや応援の学生が並ぶ。
3塁側は、野球部の控え選手、学ランの応援指導部、系列女子高のチアが揃うが、
一般の生徒は少ないようだ。この学校ではきっと「動員」はかからない。
慶応応援団は「神宮球場」を持ち込み、お馴染みの応援歌を繰り出す。
(まぁ大学の応援を踏襲するのが決まりなんだろうね)
これが意外と高校野球ではレアな雰囲気を出していた。
ワーセダをたっおーせ、ワーセダをたっおーせ。
さて、試合。
中盤になるにつれ、
青森山田の右腕・木下と、慶応の左腕・田村の投げ合いになっていった。
木下は、打たせて取るピッチングで内野ゴロをゴロゴロ。
調子を上げていた。
田村は死球などで走者を許したものの、青森山田が4回、5回と続けて
併殺打でチャンスをフイにしてしまい、1点のリードを保っていた。
田村はプロで通用する投手とは思えないが、
左右両打者への内角をグリグリとえぐる攻めの投球にとても好感が持てた。
6回裏、慶応は5回の守備で1、2塁間の当たりに飛びついた主将・山崎が
ヒットで出塁したが、4番・鈴木裕がバントを決められずに2追い込まれる。
ここでエンドランをかけたが、青森山田バッテリーに外され、
結局三振ゲッツーになってしまった。
さすがにここまで来るチームは、ハイレベルな攻防を見せてくれる。
田村-只野の継投で勝ってきた慶応。
今日も只野へのスイッチのタイミングに興味津々のわれら。
6回を投げ終えて、田村の投球数はわずかに68球。得点は1-0。
青森山田としては、只野を待っているに違いなかった。
こういうゲームでは、投手交代で突如打線に元気が出るケースが多々ある。
7回表、青森山田の4、5番を打ち取り6番・豊田を迎えたところで、
上田監督は只野への投手交代を決断した。
内角への直球はまだ威力があっただけに、観ているほうとしては
「勇気があるなぁ」と思ってしまったのだが、
高校野球は私がテレビに齧りついていた20年前とは様変わりしたよ、
ということなんだろうな。
どうも昔から、2番手の投手が打たれる、というのが
ただ単にかわいそうできらいだったのだが、
今では継投で勝つのは当たり前だし、先発とリリーフ、
どっちがどうとかいう話にはならないのだね。
その只野のストレート、やや引っかかる感じはあったものの
低目を突くいいボールだったと思う。(所詮外野からの感想ですが)。
打線も順応に苦しむかと思ったが豊田がレフトオーバーの二塁打。
瞬く間に同点のピンチになってしまった。
ほーら言わんこっちゃない。
続く矢野にも、捕らえられた!!
しかし、鋭いゴロはショートの正面を突いた。
その裏の慶応。
先頭の只野が四球を選び、鈴木亮が送りバント。
喉から札束が出るほど慶応としては追加点が欲しい。
どう攻めるか考える間もなく、なんと次の斉藤は初球セーフティーバント。
捕手の悪送球を誘い、1死1、3塁となった。
マウンドに集まる青森山田守備陣。
1塁ランナーが走った場合の対処、スクイズへの対応、内野の陣形など
話し合うことは山ほどある。
バッターは9番・溝口。三塁側アルプスは今日一番のヴォイス。
初球、スクイズの構えはカムフラージュ。
二球目、今度はウエストボール。溝口は反応しない。
三球目もボールで0-3。
次は1-3。溝口はスクイズの構えは続けるが走者は走らない。
バッテリーが四球を選択する可能性もあったから当然だ。
5球目、ランナースタート!やや強い当たりがサードの前へ。
三塁手は前には来ていなかった。
三塁ランナーが余裕で生還して、ノーヒットで追加点を挙げた。
全球ストレートだった。
見ごたえのある攻防に球場は沸き、慶応アルプスは肩を組んで
「若き血」を合唱した。
この歌、神宮球場よりも甲子園のほうが似合ってないかい?
追いつきたい青森山田。
8回表、1死1塁でランエンドヒットをかけた。
打者は三振だったが慶応二遊間のチョンボで1塁ランナーが三進。
むむむ、今日3塁を踏んだのは初じゃないか!?
しかし長谷川がセカンドゴロに倒れ、0がまたひとつ並んだ。
そして最終回。最後のバッター豊田を変化球で打ち取った只野は、
見事に2試合連続の完封リレーを完遂させた。
今年のベンチ入りメンバーの多くは、県外からの生徒らしい。
推薦入試もあるみたいだ。
明徳義塾の問題以来、賛否両論あるところだが、
この学校に関しては、勉強においても運動においても、
ハナから県内の生徒で賄おうなんて考えていないから、
誰も気にしちゃいないだろうな。
坊主頭はいないし、なんだかスカした感じが鼻につくぜ、
と言いたいところだが、
今年の8強メンバーを見ると、どうやら「判官」のうちに入りそうだ。
準々決勝でも応援してやろう。
なにしろ、慶応が準々決勝に進出したのは
「慶応普通部」時代の88年前。大正9年。
歴史的快進撃は、誰にとっても価値があるからね。
しっかし、さすがに暑いな甲子園。
インターハイで下地は作ったが、真っ黒になりそうだ。
三塁側の応援歌の歌詞みたい。遮る雲なきよ~。
青森山田 0-2 慶應義塾
posted by sot-escape |16:08 |
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2008年07月07日
Match No.053 2008.7.6
<野球>
第90回全国高等学校野球選手権大会西東京大会
国際基督教大学高校vs都立八王子桑志高校
@多摩市一本杉球場
ついに、神の思し召しか。
組み合わせ抽選の結果を新聞で見たとき、僕はそう思った。
創部以来二十数年、1勝もできずにいた国際基督教大学高校(以下ICU)の
初戦の相手は、創立2年目の都立高、大会初出場の都立八王子桑志高校だった。
モノレールの多摩センター駅からバスで10分ほど。
一本杉球場には初めて来た。
緑に囲まれているが、日陰は少ない。当然、暑かった。
事前情報をほとんど持っていない高校野球の観戦では、
なにかと想像するのが楽しい。
以下、「想像」部分が多くなるが、関係者の読者がおられた場合、お気になさらぬよう。
八王子桑志は部員10人。試合前のノックもなんだか寂しかった。
帰国子女の多いICUはもっとチャラチャラしてるのかと思ったけど(完全に先入観)、
ちゃんと高校野球っぽい声出しもあるし、監督も選手を怒鳴り散らしている。
髪型なんかは自由みたいだけど。
三塁側の桑志側スタンドには、ブラスバンドが。こちらも当然創立2年目、いいじゃない。
一塁側は寂しかった。あんなに金髪茶髪がウヨウヨいるICUなのに、
スタンドに応援に来ているのは至って健全そうな髪の色の女子生徒とOBが中心で、
選手の親もあんまり来ていなかったように思われる。
やはり、パパは商社マンでドバイに赴任中、みたいな生徒が多いんだろうか(想像)。
実は筆者は、ICU高に入ろうと思っていた。
入った暁には、「向いてないや」と思って小学校で諦めた野球をやり直そうと思っていた。
10年以上も前の話なのだが、その理由というのが、
「史上初の「夏の1勝」に立ち会えるかも。ICUならおれでも試合に出られるんじゃねーか。」
という非常に浅薄かつ不純な動機であった。申し訳ない。
とにかく、10年以上前から、ICUは「勝ったことがない」で有名だったのである。
そのICUと、1、2年生しかいない八王子桑志。
想像を超越するゲームになった。
内容をレビューすべきかかなり迷ったが、あえてGO。
1回表、ICUのエース浜野は制球が定まらずに連続四球でいきなりピンチ。
しかし信じられないことがいきなり起きた。
桑志の3番野村の初球になんとエンドラン。野村の打球はしかし、ショートへの小フライ。
インフィールドフライには足りない。するとどうなるか。そうです、捕ったショートから二塁、一塁と渡ってトリプルプレー。これがこの試合の幕開けだった。
いや、、、今思えば、エンドランではなかったかも知れない。
9球中1球しかストライクを放っていない投手相手に、初球エンドランなどあるだろうか。
しかしノーサインのわりには1、2塁走者は飛び出していた。う~ん…。
とにかく、1回表で僕は悟った。
この試合、野球のセオリーとか、そういうのはどうでもいいんだと。
その裏のICU、ヒットで出た先頭の主将・河村稀琳(以下キリンと呼ぶ)を
3番荻原がレフト前安打で返し、先制点を挙げた。
おそらくチーム史上、リードしたこともほとんどないだろう。
さらに4番加藤駿介の右中間への二塁打などで計3点をリードした。
初勝利へ快調なスタートだったが、2回表に
しっかりエラーがらみで2点を返されたICU。(もちろん桑志にとってチーム史上初得点だ)
それでも2回裏、二死2、3塁で2番斉藤がレフト前安打、続く荻原も三塁打で続き、
6-2とリードを広げた。
ICUの浜野に比べて、八王子桑志の先発・高橋(背番号5)は
コントロールは良かったし(ストライクがちゃんと入るという意味)、球速も浜野より出ていたが、
その分、打ちごろのボールだったようだ。
スタンドからは、守備プレーがぬかりなく成立するだけで歓声と拍手が起こる。
誰かが誰かにボールを投げるプレーひとつでいちいちドキドキしてしまう。
両校の選手たちの視線の先に甲子園があるのかどうかなんて、愚問だよね。
甲子園なんか、ク●食らえだぜまったく。
ICUの一塁手、加藤駿介クンは少々コロっとした体格なのだが、
2回の長打といい、3回表の2度にわたるファウルフライへのダイブといい(両方失敗)、
なかなか観ていて楽しいヤツだった。
ICUは3回裏にもキリン主将の2点タイムリーなどで加点し、9-2と大きくリードした。
この時点で僕は、5回コールドになるな、と思っていた。
昨年も一昨年も5回コールドで敗れているICU。
勝っても負けても9回までやれないんだなぁかわいそうに、なんて思っていたのだ。
自分の甘さを思い知った。
桑志は、先発の高橋祥弘と4番ショートで主将の小机隆太の2人だけで
野球をやっているようなものだった。
野球のキャリアを感じさせるのが、彼ら2人だけだった(ほかにもいたらゴメン)。
4回表、その小机がヒットで出塁する。
実のところ、それ以後のこの回の攻撃を見ても、
やはり小机だけなのだ、名前を登場させるべきなのは。
それでも、彼がこの回2度目の打席で同点2点タイムリーを放つまでに、
誰も安打せずに5点が入った。
話を戻そう。
先頭の小机のあと、連続死球で無死満塁になった。ICUの浜野はどうもこの辺りからおかしかった。
それでも桑志の下位打線で2アウトを取り、迎えるは9番の安部。
申し訳ないが、はっきり言って彼は10人の野球部で9番バッターになる選手だ。
しかし、浜野はストライクを3球放れず、押し出し。
さらに、1番高橋の打席で野生的投球すなわちワイルドピッチ、
高橋は四球、その四球になったボールがまた暴投。これで9-5。
2番、3番と続けて四球を選び、9-7。
そして小机のタイムリー二塁打である。ほらね、小机しか打ってないでしょ。
それでも同点なのだ。
5番宮下がやっと打ってくれた遊ゴロは暴投でついに逆転、9-10。
ここでICU高柳監督はついに腕を振れないエースを代えた。
浜野は一塁へ。一塁手の加藤駿介が捕手。そして捕手だった荻原がマウンドに上がった。
さっき述べたぽっちゃりの加藤駿に負けず劣らずズッシリ体型の荻原。
浜野の球をポロポロ後逸してたくせに、平気な顔でズンズン速球を投げ込んだ。
なんだよ、早く代えておけばよかったじゃないか。
荻原も暴投で1点を献上したが、なんとか攻撃は終わった。
ICUベンチでは監督が吠えまくっている。そりゃそうだ。
2安打で9点も取られたら、誰だって怒る。
さて、ICU5回コールド説はどこへやら。
不思議なもので、リードした途端に桑志の守備が締まり出した。
鋭い打球も野手の正面を突く。
それでも5回裏、ICUは当たっている浜野のヒットを足がかりに2点を挙げ、
なんとか同点に追いついた。
ICUは2年連続5回コールドで敗れており、今年の代の選手にとっては
未知なるイニングに試合は入っていった。
桑志が弱いのは理解できる。10人の部員では練習もままなるまい。
そしてこの高校はシステム情報やデザインといった科目に特化した都立高校。
野球部が創立2年目でいきなりちゃんとやれる理由はない。
対するICUを観ていて思ったこと。
少年野球経験者が少ないな、と思った。それに、
練習試合を全然していないだろうな、と(想像だよあくまで)。
ICU高における部活の位置づけはよく知らない。
アメリカやらインドやらで生活したことのある、「自由!」と背中に書いてある子たちと、
「高校野球」という存在がそもそもミスマッチだ(ひどい偏見だけど)。
ただとにかく、チームに「根っこ」がない気がした。
根っことは、
強力なリーダーシップと理論を持つ監督であったり、
練習量であったり、培われた伝統であったり、学校を挙げての応援団だったり
すると思うのだが、そのどれも見当たらない。
いっそのこと、アメリカナイズされたベースボールをやってくれればまだスッキリするんだけど、
彼らが実践しようとしているのはあくまで日本の高校野球のようだ。
そんな根っこがないならば、自分達で学ぶしかないのだ。
どこから学ぶか。
チームの誰かが、受け売りでもなんでも、チームに方法論や情報をもたらすか、
試合を通じて自らが学び取っていくしかない。
少年野球をかじってさえいれば誰でもわかるようなことを、
ICUの選手は実践できていない。
外野の守備位置が無闇に浅かったり、捕手がワンバウンドを手で捕りにいったり。
6回裏には1死1、2塁でPゴロを打った打者が、2塁ランナーがサードでフォースアウトに
なるかどうかを見ながら走っていたせいで、1塁でアウトになった。
信じられないことが次々に起こるのだ。
洞察力も足りない。7回裏、1死3塁でキリンのレフトフライでタッチアップした選手が、
ベースを離れるのが早すぎてアウトになった。ベンチに帰ったあとで。
これも、八王子桑志の外野からまともな返球が来る確率、というものを
冷静に分析できていれば全く焦る必要などなかったプレーだ。
荻原のストレートを誰もまともに捕らえていないのに、妙に緩急をつけたがって
球数を増やしていたバッテリーも、観察力が足りない。
小中で野球をやったことがなかったのなら、実戦で学ぶしかない。
だが、観ていてわかった。彼らは、「悔しさから学んだこと」という財産がなさすぎる。
それはきっと(やっぱり想像ですが)試合経験があまりに足りないせいなのだ。
そしてそれはおそらく、チームによっては真剣勝負が年に2試合しかない、
高校野球の狂ったシステムにも問題があるのだろう・・・。
7回裏、打席で浜野が足を攣らせて交代した。
控え投手はいるようだが、荻原の負担は大きくなった。
それでも8回は見事に三者凡退に斬って取った。
そして8回裏。
先頭の斉藤を歩かせたところで、桑志は先発の高橋がマウンドを降り、セカンドに退いた。
彼は、本当によく頑張っていた。小さな背中で、頼りない野手陣を引っ張っていた。
マウンドには背番号1の枦元がセカンドから回った。
最初の荻原を四球で出し、4番加藤駿介のサードゴロがエラーになり、
にわかに投手戦になっていた試合は、ついに12点目がICUに入った。
5番・加藤玄が三遊間を破り2点差。
送球に難のある捕手・馬場の隙を突いて出る走者は皆走りまくる。
1死のあと、ワイルドピッチのベースカバーに入った枦元が、
こちらも脚を攣らせ、座り込んだ。野手からマウンドに上がるのは、簡単なことではないのだ。
八王子桑志の小野監督はここで、唯一試合に出ていなかった橋本をマウンドに送った。
アンダースローの橋本から、ICUは四球と死球で15点目を入れる。
さらに暴投で16点。
ここで高校野球の予選のテキトーさが出た。選手たちは命がけなのに。
センター後方のスコアボードが、この16点目を入れ損ねた。
そこへ、キリン主将がセンター前へ2点タイムリーを放った。
まずは17-11と表示された。
ここで、桑志は再び高橋をマウンドに送り、投球練習。
しかしこのとき、スコアボードの人間が、訂正で18点目を表示した。
審判はここで初めて、何かがおかしいと気付き、
公式スコア係に問い合わせた。おそらく、自分の過ち(得点を数えていなかった)
に気付いたのだろうが、強行して試合を続行させた。
そう。18-11ならば、コールドが成立しているのだ。
だがここで「ゲ~ムセット!」なんて間抜けな声はかけられないと思ったのか・・・。
そして3番荻原による、(「幻の」であるべき)走者一掃のランニングホームランが、
試合を締めたことになった。
高橋君にとっては、最後にマウンドにいたことが、吹っ切れる材料になったと
いえるといいのだが。
なにはともあれ、試合を象徴するようなバタバタっぷりで、
ICUは、チーム史上初めて、夏の西東京に白星を刻んだ。
まっったくの部外者である僕にとっても、それはなんだか、重い出来事に感じられる。
ベンチで休む枦元を残し、桑志は9人の選手が整列し、挨拶をした。
彼らにとって、9回表を戦えなかったことが、バネとなり、来年への糧となりますように。
そして小机隆太がまた長い髪をなびかせて、強いチームを引き連れて戻ってきますように。
そしてICU。
大学生と思われるOBから「監督おめでとう!」と声がかかった。
キリン主将は歓喜よりも使命感を先に立たせ、選手を整列させて観客席にお辞儀をした。
細い腕、太い腹、メガネ、ボサボサ頭。よく見ると、本当に「高校野球」が不似合いな連中だ。
だが、彼らは自覚してほしい。
世間はいつでも(漫画家たちも)、冷酷非道な監督率いる坊主の野球バカ達を倒す、
スマートで論理的で、垢抜けたチームの誕生と活躍を、待っているということを。
気概を持ちなさい。君たちの多くは英語も喋れるし、偏差値も高い。
1勝で満足してはいけない。高校野球に、なんらかの風を起こしてくれ。
引き上げてきた選手たち。「勝ったー」と、歓喜より安堵の声が響く。
冗談交じりに「歴史作っちゃったよ」とおどけるヤツもいる。
大事なのは、経験すること、そしてそれを伝えること。
彼らは幸い、勝利の味と同時に、簡単には勝てない難しさもこの試合で学んだはずだ。
もちろん創部以来初勝利だ。ただそれだけではなく、
反省点を次の試合に生かせる、史上初のチームなんだということを、
彼らが気付いているといいな、と思う。
ICU高 18-11 都八王子桑志
posted by sot-escape |00:24 |
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