2008年08月16日
Match No.067 2008.8.14
<野球>
第90回全国高等学校野球選手権大会3回戦
大阪桐蔭高校vs東邦高校
@阪神甲子園球場
力の入る第2試合を終え、
僕は甲子園カレーを食べながらのんびりした気持ちで
第3試合を観ていた。
鋭い日差しを浴びながらも、
白球を追いかける高校生をぼーっと眺めるのは幸せな気分だった。
随所に好プレーが出る試合だったが、
彼らに送られる甲子園の観客のまさに「惜しみない拍手」は
なかなかほかでは経験できないものである。
東邦の純白の帽子とユニフォームは、テレビで見るとちょっとダサいが、
球場で見ると、すっきりとしていて格好良かった。
中日で活躍した山田喜久夫(字が合っているかわからんけど)の東邦と
元木大介の上宮が選抜の決勝で当たったこととか、
大阪桐蔭が好投手・和田を擁して初優勝した年とか
(たしか沖水が相手だったからけっこう悪役だったんだよな)、
いろいろ思い出しながらの観戦。
もっと大阪桐蔭寄りの雰囲気になるかと思いきや、そうでもなかった。
理由のひとつには、東邦が同情を誘うような戦いを見せてしまったことがある。
東邦といえば、かつて阪口監督という鬼将が率いて、
とにかく守備と走塁には定評があった。
その東邦が、序盤から守備のミスで失点を重ね、
走塁の拙さというよりは大阪桐蔭の守備の固さが要因だが
チャンスをことごとく逃していったのだ。
今年のチームの売りが何なのかは事前知識がなかったが、
「らしくない」という表現は的を外れていないと思う。
記録に残らないミスも含めれば10個くらいあった。
1回、2回、3回と1点ずつとった大阪桐蔭の得点は
いずれも犠牲フライ。
すべてエラー絡みで三進を許したランナーだった。
対して、たとえば東邦の2回裏の攻撃。
二塁打で出たランナーを次打者のショートゴロの際に
三塁で刺した浅村のプレーは見事だったし、
その回には2塁ランナーの飛び出しを見逃さずに捕手・有山が刺した。
結果的には、この序盤戦がすべてだったと思う。
6回にも2番手・和田を捕らえて7-0。
大阪桐蔭の完勝ムードになった。
それにしても、どうしてこうも毎年毎年大阪桐蔭の選手は
デカいのだろう。
僕はたまたま、辻内が3年生のときのチームを球場外で間近に見たことがあるのだが、
ヤツらの尻のデカさは、決して電車に同乗したくないものだった。
前の試合の慶応の連中の1.5倍くらいはあるだろう。
7回裏にやっと東邦はビッグチャンスを迎えたが、
2死満塁で代打の生田がど真ん中の直球に手が出ずに無得点に終わった。
それでも、3番手の佐々木がリズムを作り、
8回裏に東邦は小宅のホームランなどで2点を取った。
そして9回、ようやく打線が繋がった東邦は2点を返し、
4番・野々川のレフトオーバーの二塁打で2点差に詰め寄った。
1発出れば同点というところまで行ったが、
結局最後の打者がレフトフライに倒れ、猛追は及ばなかった。
あとから考えれば、8回裏の満塁の場面で、
3塁ランナーのタッチアップを覚悟の上で大阪桐蔭のレフト・中谷が
ファウルフライをフェンス際で好捕したプレーは大きかった。
打者が当たっている橋本だっただけに、これでひとつの流れが切れたといえる。
大阪桐蔭のソツのなさと固い守備は、彼らを頂点まで
押し上げるかもしれない。
翌日の仕事に備えて第4試合はパスし(すごく観たかったけど)、
赤くなった肌をさすりながら(昔はきれいに黒くなったのになぁ…)、
僕は東京に戻った。
やはり高校野球はいい。世界一面白い。
大阪桐蔭 7-5 東邦
posted by sot-escape |16:56 |
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2008年08月16日
昨今のPC不調と連夜の五輪観戦のせいで
更新を怠っておりました。
もう明日から準決勝ですが、甲子園3回戦に行ってきました、
という報告をさせてください。
インターハイ観戦記は、追ってアップします。待ってろ高校生!
Match No.066 2008.8.14
<野球>
第90回全国高等学校野球選手権大会3回戦
青森山田高校vs慶應義塾高校
@阪神甲子園球場
私は、夏の高校野球は世界一面白い大会だと思う。
「夏の甲子園」ではない。
県予選から甲子園での決勝に至るまでのすべてをひっくるめてのことだ。
個人的には、地区大会の決勝こそがいちばんの見物だと思っている。
甲子園の魔物は、実はこの試合でこそ魔力を発揮するのではないか。
今年は90回記念大会なので
(東神奈川代表だった松坂が優勝したのはもう10年前なのか!)、
加古川北、本庄一、大府、慶応といった、近年「あと一歩」だった学校が
出場枠増の恩恵を受けたが、その一方で、
春夏通じて初出場に手をかけながら決勝で散った高校は16校にも上る。
洲本、立教新座といった久しぶりの出場を目指したチームも、
決勝で呑まれた。
東海大相模が3年連続で決勝で敗れたのを見ても、最後の1勝というものが
いかに難しいかがわかる。
私もかつて、母校と、友人がレギュラーを張っていた学校が
それぞれ決勝で涙を飲んだのを現場で目撃した。ともに逆転負けだった。
甲子園大会は3回戦。
県立校の出場が多く、特待生問題の反動かと思われたが、
ここまで残ったのは私学の強豪校ばかりだ。
北島康介がなんぼのもんじゃい、という関西の野球ファンは、
甲子園球場を満員にしてみせた。うれしいじゃないか。
3年ぶりの甲子園球場!
あの窮屈で仕方のない内野席が改装されたということで楽しみにしていたが、
お盆休み真っ只中で垂涎カード目白押しの今日は、
私を外野席に弾き飛ばしてくれた。まぁいいや、タダだしね。
慶応が1回に先制した(球場に入る寸前で「若き血」が聞こえた)。
両校のユニフォームはともにグレー基調で遠くからでは見分けがつかないよ。
1塁側の青森山田アルプスは、整然とブラスバンドや応援の学生が並ぶ。
3塁側は、野球部の控え選手、学ランの応援指導部、系列女子高のチアが揃うが、
一般の生徒は少ないようだ。この学校ではきっと「動員」はかからない。
慶応応援団は「神宮球場」を持ち込み、お馴染みの応援歌を繰り出す。
(まぁ大学の応援を踏襲するのが決まりなんだろうね)
これが意外と高校野球ではレアな雰囲気を出していた。
ワーセダをたっおーせ、ワーセダをたっおーせ。
さて、試合。
中盤になるにつれ、
青森山田の右腕・木下と、慶応の左腕・田村の投げ合いになっていった。
木下は、打たせて取るピッチングで内野ゴロをゴロゴロ。
調子を上げていた。
田村は死球などで走者を許したものの、青森山田が4回、5回と続けて
併殺打でチャンスをフイにしてしまい、1点のリードを保っていた。
田村はプロで通用する投手とは思えないが、
左右両打者への内角をグリグリとえぐる攻めの投球にとても好感が持てた。
6回裏、慶応は5回の守備で1、2塁間の当たりに飛びついた主将・山崎が
ヒットで出塁したが、4番・鈴木裕がバントを決められずに2追い込まれる。
ここでエンドランをかけたが、青森山田バッテリーに外され、
結局三振ゲッツーになってしまった。
さすがにここまで来るチームは、ハイレベルな攻防を見せてくれる。
田村-只野の継投で勝ってきた慶応。
今日も只野へのスイッチのタイミングに興味津々のわれら。
6回を投げ終えて、田村の投球数はわずかに68球。得点は1-0。
青森山田としては、只野を待っているに違いなかった。
こういうゲームでは、投手交代で突如打線に元気が出るケースが多々ある。
7回表、青森山田の4、5番を打ち取り6番・豊田を迎えたところで、
上田監督は只野への投手交代を決断した。
内角への直球はまだ威力があっただけに、観ているほうとしては
「勇気があるなぁ」と思ってしまったのだが、
高校野球は私がテレビに齧りついていた20年前とは様変わりしたよ、
ということなんだろうな。
どうも昔から、2番手の投手が打たれる、というのが
ただ単にかわいそうできらいだったのだが、
今では継投で勝つのは当たり前だし、先発とリリーフ、
どっちがどうとかいう話にはならないのだね。
その只野のストレート、やや引っかかる感じはあったものの
低目を突くいいボールだったと思う。(所詮外野からの感想ですが)。
打線も順応に苦しむかと思ったが豊田がレフトオーバーの二塁打。
瞬く間に同点のピンチになってしまった。
ほーら言わんこっちゃない。
続く矢野にも、捕らえられた!!
しかし、鋭いゴロはショートの正面を突いた。
その裏の慶応。
先頭の只野が四球を選び、鈴木亮が送りバント。
喉から札束が出るほど慶応としては追加点が欲しい。
どう攻めるか考える間もなく、なんと次の斉藤は初球セーフティーバント。
捕手の悪送球を誘い、1死1、3塁となった。
マウンドに集まる青森山田守備陣。
1塁ランナーが走った場合の対処、スクイズへの対応、内野の陣形など
話し合うことは山ほどある。
バッターは9番・溝口。三塁側アルプスは今日一番のヴォイス。
初球、スクイズの構えはカムフラージュ。
二球目、今度はウエストボール。溝口は反応しない。
三球目もボールで0-3。
次は1-3。溝口はスクイズの構えは続けるが走者は走らない。
バッテリーが四球を選択する可能性もあったから当然だ。
5球目、ランナースタート!やや強い当たりがサードの前へ。
三塁手は前には来ていなかった。
三塁ランナーが余裕で生還して、ノーヒットで追加点を挙げた。
全球ストレートだった。
見ごたえのある攻防に球場は沸き、慶応アルプスは肩を組んで
「若き血」を合唱した。
この歌、神宮球場よりも甲子園のほうが似合ってないかい?
追いつきたい青森山田。
8回表、1死1塁でランエンドヒットをかけた。
打者は三振だったが慶応二遊間のチョンボで1塁ランナーが三進。
むむむ、今日3塁を踏んだのは初じゃないか!?
しかし長谷川がセカンドゴロに倒れ、0がまたひとつ並んだ。
そして最終回。最後のバッター豊田を変化球で打ち取った只野は、
見事に2試合連続の完封リレーを完遂させた。
今年のベンチ入りメンバーの多くは、県外からの生徒らしい。
推薦入試もあるみたいだ。
明徳義塾の問題以来、賛否両論あるところだが、
この学校に関しては、勉強においても運動においても、
ハナから県内の生徒で賄おうなんて考えていないから、
誰も気にしちゃいないだろうな。
坊主頭はいないし、なんだかスカした感じが鼻につくぜ、
と言いたいところだが、
今年の8強メンバーを見ると、どうやら「判官」のうちに入りそうだ。
準々決勝でも応援してやろう。
なにしろ、慶応が準々決勝に進出したのは
「慶応普通部」時代の88年前。大正9年。
歴史的快進撃は、誰にとっても価値があるからね。
しっかし、さすがに暑いな甲子園。
インターハイで下地は作ったが、真っ黒になりそうだ。
三塁側の応援歌の歌詞みたい。遮る雲なきよ~。
青森山田 0-2 慶應義塾
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2008年07月07日
Match No.053 2008.7.6
<野球>
第90回全国高等学校野球選手権大会西東京大会
国際基督教大学高校vs都立八王子桑志高校
@多摩市一本杉球場
ついに、神の思し召しか。
組み合わせ抽選の結果を新聞で見たとき、僕はそう思った。
創部以来二十数年、1勝もできずにいた国際基督教大学高校(以下ICU)の
初戦の相手は、創立2年目の都立高、大会初出場の都立八王子桑志高校だった。
モノレールの多摩センター駅からバスで10分ほど。
一本杉球場には初めて来た。
緑に囲まれているが、日陰は少ない。当然、暑かった。
事前情報をほとんど持っていない高校野球の観戦では、
なにかと想像するのが楽しい。
以下、「想像」部分が多くなるが、関係者の読者がおられた場合、お気になさらぬよう。
八王子桑志は部員10人。試合前のノックもなんだか寂しかった。
帰国子女の多いICUはもっとチャラチャラしてるのかと思ったけど(完全に先入観)、
ちゃんと高校野球っぽい声出しもあるし、監督も選手を怒鳴り散らしている。
髪型なんかは自由みたいだけど。
三塁側の桑志側スタンドには、ブラスバンドが。こちらも当然創立2年目、いいじゃない。
一塁側は寂しかった。あんなに金髪茶髪がウヨウヨいるICUなのに、
スタンドに応援に来ているのは至って健全そうな髪の色の女子生徒とOBが中心で、
選手の親もあんまり来ていなかったように思われる。
やはり、パパは商社マンでドバイに赴任中、みたいな生徒が多いんだろうか(想像)。
実は筆者は、ICU高に入ろうと思っていた。
入った暁には、「向いてないや」と思って小学校で諦めた野球をやり直そうと思っていた。
10年以上も前の話なのだが、その理由というのが、
「史上初の「夏の1勝」に立ち会えるかも。ICUならおれでも試合に出られるんじゃねーか。」
という非常に浅薄かつ不純な動機であった。申し訳ない。
とにかく、10年以上前から、ICUは「勝ったことがない」で有名だったのである。
そのICUと、1、2年生しかいない八王子桑志。
想像を超越するゲームになった。
内容をレビューすべきかかなり迷ったが、あえてGO。
1回表、ICUのエース浜野は制球が定まらずに連続四球でいきなりピンチ。
しかし信じられないことがいきなり起きた。
桑志の3番野村の初球になんとエンドラン。野村の打球はしかし、ショートへの小フライ。
インフィールドフライには足りない。するとどうなるか。そうです、捕ったショートから二塁、一塁と渡ってトリプルプレー。これがこの試合の幕開けだった。
いや、、、今思えば、エンドランではなかったかも知れない。
9球中1球しかストライクを放っていない投手相手に、初球エンドランなどあるだろうか。
しかしノーサインのわりには1、2塁走者は飛び出していた。う~ん…。
とにかく、1回表で僕は悟った。
この試合、野球のセオリーとか、そういうのはどうでもいいんだと。
その裏のICU、ヒットで出た先頭の主将・河村稀琳(以下キリンと呼ぶ)を
3番荻原がレフト前安打で返し、先制点を挙げた。
おそらくチーム史上、リードしたこともほとんどないだろう。
さらに4番加藤駿介の右中間への二塁打などで計3点をリードした。
初勝利へ快調なスタートだったが、2回表に
しっかりエラーがらみで2点を返されたICU。(もちろん桑志にとってチーム史上初得点だ)
それでも2回裏、二死2、3塁で2番斉藤がレフト前安打、続く荻原も三塁打で続き、
6-2とリードを広げた。
ICUの浜野に比べて、八王子桑志の先発・高橋(背番号5)は
コントロールは良かったし(ストライクがちゃんと入るという意味)、球速も浜野より出ていたが、
その分、打ちごろのボールだったようだ。
スタンドからは、守備プレーがぬかりなく成立するだけで歓声と拍手が起こる。
誰かが誰かにボールを投げるプレーひとつでいちいちドキドキしてしまう。
両校の選手たちの視線の先に甲子園があるのかどうかなんて、愚問だよね。
甲子園なんか、ク●食らえだぜまったく。
ICUの一塁手、加藤駿介クンは少々コロっとした体格なのだが、
2回の長打といい、3回表の2度にわたるファウルフライへのダイブといい(両方失敗)、
なかなか観ていて楽しいヤツだった。
ICUは3回裏にもキリン主将の2点タイムリーなどで加点し、9-2と大きくリードした。
この時点で僕は、5回コールドになるな、と思っていた。
昨年も一昨年も5回コールドで敗れているICU。
勝っても負けても9回までやれないんだなぁかわいそうに、なんて思っていたのだ。
自分の甘さを思い知った。
桑志は、先発の高橋祥弘と4番ショートで主将の小机隆太の2人だけで
野球をやっているようなものだった。
野球のキャリアを感じさせるのが、彼ら2人だけだった(ほかにもいたらゴメン)。
4回表、その小机がヒットで出塁する。
実のところ、それ以後のこの回の攻撃を見ても、
やはり小机だけなのだ、名前を登場させるべきなのは。
それでも、彼がこの回2度目の打席で同点2点タイムリーを放つまでに、
誰も安打せずに5点が入った。
話を戻そう。
先頭の小机のあと、連続死球で無死満塁になった。ICUの浜野はどうもこの辺りからおかしかった。
それでも桑志の下位打線で2アウトを取り、迎えるは9番の安部。
申し訳ないが、はっきり言って彼は10人の野球部で9番バッターになる選手だ。
しかし、浜野はストライクを3球放れず、押し出し。
さらに、1番高橋の打席で野生的投球すなわちワイルドピッチ、
高橋は四球、その四球になったボールがまた暴投。これで9-5。
2番、3番と続けて四球を選び、9-7。
そして小机のタイムリー二塁打である。ほらね、小机しか打ってないでしょ。
それでも同点なのだ。
5番宮下がやっと打ってくれた遊ゴロは暴投でついに逆転、9-10。
ここでICU高柳監督はついに腕を振れないエースを代えた。
浜野は一塁へ。一塁手の加藤駿介が捕手。そして捕手だった荻原がマウンドに上がった。
さっき述べたぽっちゃりの加藤駿に負けず劣らずズッシリ体型の荻原。
浜野の球をポロポロ後逸してたくせに、平気な顔でズンズン速球を投げ込んだ。
なんだよ、早く代えておけばよかったじゃないか。
荻原も暴投で1点を献上したが、なんとか攻撃は終わった。
ICUベンチでは監督が吠えまくっている。そりゃそうだ。
2安打で9点も取られたら、誰だって怒る。
さて、ICU5回コールド説はどこへやら。
不思議なもので、リードした途端に桑志の守備が締まり出した。
鋭い打球も野手の正面を突く。
それでも5回裏、ICUは当たっている浜野のヒットを足がかりに2点を挙げ、
なんとか同点に追いついた。
ICUは2年連続5回コールドで敗れており、今年の代の選手にとっては
未知なるイニングに試合は入っていった。
桑志が弱いのは理解できる。10人の部員では練習もままなるまい。
そしてこの高校はシステム情報やデザインといった科目に特化した都立高校。
野球部が創立2年目でいきなりちゃんとやれる理由はない。
対するICUを観ていて思ったこと。
少年野球経験者が少ないな、と思った。それに、
練習試合を全然していないだろうな、と(想像だよあくまで)。
ICU高における部活の位置づけはよく知らない。
アメリカやらインドやらで生活したことのある、「自由!」と背中に書いてある子たちと、
「高校野球」という存在がそもそもミスマッチだ(ひどい偏見だけど)。
ただとにかく、チームに「根っこ」がない気がした。
根っことは、
強力なリーダーシップと理論を持つ監督であったり、
練習量であったり、培われた伝統であったり、学校を挙げての応援団だったり
すると思うのだが、そのどれも見当たらない。
いっそのこと、アメリカナイズされたベースボールをやってくれればまだスッキリするんだけど、
彼らが実践しようとしているのはあくまで日本の高校野球のようだ。
そんな根っこがないならば、自分達で学ぶしかないのだ。
どこから学ぶか。
チームの誰かが、受け売りでもなんでも、チームに方法論や情報をもたらすか、
試合を通じて自らが学び取っていくしかない。
少年野球をかじってさえいれば誰でもわかるようなことを、
ICUの選手は実践できていない。
外野の守備位置が無闇に浅かったり、捕手がワンバウンドを手で捕りにいったり。
6回裏には1死1、2塁でPゴロを打った打者が、2塁ランナーがサードでフォースアウトに
なるかどうかを見ながら走っていたせいで、1塁でアウトになった。
信じられないことが次々に起こるのだ。
洞察力も足りない。7回裏、1死3塁でキリンのレフトフライでタッチアップした選手が、
ベースを離れるのが早すぎてアウトになった。ベンチに帰ったあとで。
これも、八王子桑志の外野からまともな返球が来る確率、というものを
冷静に分析できていれば全く焦る必要などなかったプレーだ。
荻原のストレートを誰もまともに捕らえていないのに、妙に緩急をつけたがって
球数を増やしていたバッテリーも、観察力が足りない。
小中で野球をやったことがなかったのなら、実戦で学ぶしかない。
だが、観ていてわかった。彼らは、「悔しさから学んだこと」という財産がなさすぎる。
それはきっと(やっぱり想像ですが)試合経験があまりに足りないせいなのだ。
そしてそれはおそらく、チームによっては真剣勝負が年に2試合しかない、
高校野球の狂ったシステムにも問題があるのだろう・・・。
7回裏、打席で浜野が足を攣らせて交代した。
控え投手はいるようだが、荻原の負担は大きくなった。
それでも8回は見事に三者凡退に斬って取った。
そして8回裏。
先頭の斉藤を歩かせたところで、桑志は先発の高橋がマウンドを降り、セカンドに退いた。
彼は、本当によく頑張っていた。小さな背中で、頼りない野手陣を引っ張っていた。
マウンドには背番号1の枦元がセカンドから回った。
最初の荻原を四球で出し、4番加藤駿介のサードゴロがエラーになり、
にわかに投手戦になっていた試合は、ついに12点目がICUに入った。
5番・加藤玄が三遊間を破り2点差。
送球に難のある捕手・馬場の隙を突いて出る走者は皆走りまくる。
1死のあと、ワイルドピッチのベースカバーに入った枦元が、
こちらも脚を攣らせ、座り込んだ。野手からマウンドに上がるのは、簡単なことではないのだ。
八王子桑志の小野監督はここで、唯一試合に出ていなかった橋本をマウンドに送った。
アンダースローの橋本から、ICUは四球と死球で15点目を入れる。
さらに暴投で16点。
ここで高校野球の予選のテキトーさが出た。選手たちは命がけなのに。
センター後方のスコアボードが、この16点目を入れ損ねた。
そこへ、キリン主将がセンター前へ2点タイムリーを放った。
まずは17-11と表示された。
ここで、桑志は再び高橋をマウンドに送り、投球練習。
しかしこのとき、スコアボードの人間が、訂正で18点目を表示した。
審判はここで初めて、何かがおかしいと気付き、
公式スコア係に問い合わせた。おそらく、自分の過ち(得点を数えていなかった)
に気付いたのだろうが、強行して試合を続行させた。
そう。18-11ならば、コールドが成立しているのだ。
だがここで「ゲ~ムセット!」なんて間抜けな声はかけられないと思ったのか・・・。
そして3番荻原による、(「幻の」であるべき)走者一掃のランニングホームランが、
試合を締めたことになった。
高橋君にとっては、最後にマウンドにいたことが、吹っ切れる材料になったと
いえるといいのだが。
なにはともあれ、試合を象徴するようなバタバタっぷりで、
ICUは、チーム史上初めて、夏の西東京に白星を刻んだ。
まっったくの部外者である僕にとっても、それはなんだか、重い出来事に感じられる。
ベンチで休む枦元を残し、桑志は9人の選手が整列し、挨拶をした。
彼らにとって、9回表を戦えなかったことが、バネとなり、来年への糧となりますように。
そして小机隆太がまた長い髪をなびかせて、強いチームを引き連れて戻ってきますように。
そしてICU。
大学生と思われるOBから「監督おめでとう!」と声がかかった。
キリン主将は歓喜よりも使命感を先に立たせ、選手を整列させて観客席にお辞儀をした。
細い腕、太い腹、メガネ、ボサボサ頭。よく見ると、本当に「高校野球」が不似合いな連中だ。
だが、彼らは自覚してほしい。
世間はいつでも(漫画家たちも)、冷酷非道な監督率いる坊主の野球バカ達を倒す、
スマートで論理的で、垢抜けたチームの誕生と活躍を、待っているということを。
気概を持ちなさい。君たちの多くは英語も喋れるし、偏差値も高い。
1勝で満足してはいけない。高校野球に、なんらかの風を起こしてくれ。
引き上げてきた選手たち。「勝ったー」と、歓喜より安堵の声が響く。
冗談交じりに「歴史作っちゃったよ」とおどけるヤツもいる。
大事なのは、経験すること、そしてそれを伝えること。
彼らは幸い、勝利の味と同時に、簡単には勝てない難しさもこの試合で学んだはずだ。
もちろん創部以来初勝利だ。ただそれだけではなく、
反省点を次の試合に生かせる、史上初のチームなんだということを、
彼らが気付いているといいな、と思う。
ICU高 18-11 都八王子桑志
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