2008年08月24日

インターハイ観戦記③ [ホッケーその1] ホームチームは諦めなかった

Match No.059 2008.8.2
<ホッケー>
平成20年度全国高等学校総合体育大会 
ホッケー競技男子 1回戦
埼玉県立飯能南高校vs福井県立丹生高校
@飯能市阿須ホッケー場


「年間100試合観戦計画」は、ホッケーを応援します。

と、標語を掲げてもいいくらいだよね。
協会から表彰されてもいいくらいだよね。

飯能に来ました。インターハイ観戦シリーズ第3弾は、
愛すべきマイナー球技、ホッケーです。

さくらJAPANの北京での奮闘の、ちょっと前の話です。


阿須運動公園。私事ではあるが、僕はこの地に並々ならぬ思い出がある。
それも、とびっきり苦いやつ。

高2の秋、全国大会まであと1勝という試合の最終盤、
僕は決定的なミスを犯し、チームは勝利を逃した。
それが阿須のグラウンドなのだ。しばらくは夢にも出てきた。

当時はクレーのグラウンドだったが、
今では立派な人工芝のホッケー場になっている。
なかなか感慨深いものがあった。隔世の感というやつか。

今日は男女の1回戦が阿須を中心に3つのグラウンドで集中的に行われる。
ホッケー祭りみたいだ。
到着したときには、岩手の不来方高校が山梨学院をやっつけているところだった。

次の第3試合は、地元も地元、埼玉の飯能南高校と福井の古豪、丹生高校の対戦だ。
熱い試合になった、本日の「メインイベント」のレポートをどうぞ。



各県持ち回りのインターハイ。年によっては、ホッケーなんか
誰もやっていないような県に当たってしまう年もある。
そういう意味では、このきれいな人工芝のフィールドと、
ホッケータウン飯能という場所を与えられた今年の選手たちは幸運だと思う。

埼玉では長らく、皆野高校が強くて怖くて強かった。
しかし近年では環境の利を生かし(かどうか知らないが)飯能南が強くなっているようだ。
僕の高校時代は、県予選で皆野に一捻りされちゃってたんだけど。

観客席には選手の家族、高校からの応援団、ブラスバンド(!)。
黄緑色のユニを着たサッカー部の軍団(そんなに人数がいるならホッケーをやりなさい)もいる。

地元開催だけに飯能南への期待は大きかったはずだ。
しかし組み合わせ抽選は至って公平に行われたようだ。
初戦の相手が丹生だなんて、運が悪すぎる、と僕は思った。

丹生は富山の石動と並ぶ、北陸の名門である。
こういう地方の強豪校の選手たちは、小さい頃からホッケーをやっていて、
大空某君ではないが、ボールは友達なのである。

だから、地元の応援団や、「動員」されたサッカー部員たちが
しらけてしまうような試合にならないといいな、と思っていた。

しかしそれは全くの杞憂だった。僕は文字通り「地元の意地」を見た。

開始早々、飯能南は積極的に仕掛けた。
丹生としては完全に、出鼻をくじかれたかたちだ。
左から敵陣に侵入した飯能南は、サークルの外側でフリーヒットを得ると、
しっかりセットしてゴール前へ打ち込んだ。
そしてこぼれたボールを、11番関谷がスイープで叩き込み、先制点を挙げた。

立ち上がりからガンガン行くぞ、という共通理解はできていたに違いない。
ところが、僅か2分で先制したことで、丹生を目覚めさせてしまった。

4分にペナルティコーナーを得ると(これは飯能南GKがセーブ)、
丹生は敵陣での分厚い攻撃を続けた。
やはり、FWと中盤の攻撃を担う選手の技術は高く、
ボールを受けてからの落ち着きもさすがだった。
ゲームは完全に丹生のものになった。

14分、丹生はサークル左のFHを、ゴール前で葛城がきれいに合わせて同点。
さらに3分後、PCからキャプテン藤井がスイープで決め、あっさりと逆転した。


丹生のキーマン、9番のセンターフォワード三谷に対し、
飯能南は3番の2年生、櫻井がマンマークで付いていた。
それはもう、徹底的に。

マークという守備戦術において、ホッケーはやや原始的である。
マーカーとFWは試合中、ずっと2人だ。
攻撃に転じているときも、DFはマーク相手を視界に入れている。
やがて2人の間には、人質と犯人のような、奇妙な連帯感が生まれる。
いや、これは僕だけの経験だろうか。

いずれにしてもDFは受動的な動きで、マーク相手と同じ走路を70分間走り続ける。
これは意外とキツイ。
僕は櫻井をずっと見ていた。
三谷はどちらかというと、才能でプレーするタイプに見えた。
櫻井はそれに対し、愚直にへばりつき、抜かれては戻り、走り続けた。
2人だけの奇妙な世界。
FWは言う。「ひとりにしてくれないか」。
DFは返す。「イヤよ一緒にいて」。
櫻井は試合を通じて概ね、三谷を「消す」ことに成功していた。
もちろん自分も消えていたわけだが。
付く人と付かれる人。二人旅。



26分にも一瞬の隙を突き追加点を挙げた丹生。これで3-1。
観客も選手も古豪の地力を目の当たりにしていた。
後半への興味が削がれるギリギリ手前という感じだった。

しかし興味は繋がった。いや、むしろ増した。
31分、飯能南は左サイドを山田がドリブルで持ち上がっていく。
そのままサークルに入り、GKに当たったか何かでこぼれた球を、
押し込んでしまった。キョトンとして立ち尽くす丹生のDFたち。

そして2分後、サークル右からの強烈なFHがファーに流れたところを、
石垣が叩き込み、あれよあれよという間に同点に追いついてしまったのだ。

元気を失くしかけていた地元の観客は再点火した。


後半。
3分、櫻井を置き去りにした三谷が自陣から一気にドリブルで持ち込み、
サークル内でシュートを放つ。しかしこれはGKが飛び出して防ぐ。

13分頃、飯能はPCを得て、大野が豪快なフリックシュートを放つもGK正面。
15分頃、丹生のPCからのシュートはゴールライン上で飯能南に弾かれる。

一進一退の攻防はやがて、集中力の比べっこになっていった。

ターフに水を撒くホッケーグラウンドには、独特の蒸し暑さがある。
とはいえ、開始当初からの残酷な太陽光線は、雲によってやや弱められてきた。
観客からすれば涼しいとすら感じられた。
ジリジリギラギラとした前半と比べ、どこかふわふわとした空気。
前半盛んにコールを発していたサッカー部も、静かになった。

危険な時間帯だ。エアポケットはそこかしこで生じうる。

丹生が攻め、飯能南が凌ぐ、という展開は続いたが、
両軍とも疲れから技術があやしくなってきていた。
飯能南の右サイドの選手がドリブラーに簡単に飛び込んでかわされたり、
丹生のDFがスクープ処理を誤ったり。

32分、丹生は右からサークル内に攻め込み、PCを得る。
もはやこれは運だな、と思った。
シュートを止めてくれというよりは、シュートを外してほしい。
スタンドはそういう雰囲気だった。

しかし丹生の3番藤井のフリックシュートは見事に右隅に刺さった。
応援ママたちの悲鳴が聞こえた。

残りは2分少々。飯能南の選手たちはボールを拾って素早く戻ってきた。
まだ諦めていないようだ。
右サイドを攻める。右、右、徹底して右。
終盤に点差を追いかけるには、これしかない。

審判も気迫に押されていた。5m進むたびに絡む両軍のスティック。
笛は毎回丹生のファウルを取った。いつの間にかサークルが近づいている。

時間はない。
ここで突如、FHからの球が中央に戻された。
キャプテン大野一平はノーマーク。サークル内に打ち込んだ。
GKは驚いてクリアしようとした。ボールはこぼれた。
そこに関谷がいた。
関谷は飛び込みながらスティックにボールを当てた。
うまい具合に浮いたシュートはゴールネットを揺らし、4-4の同点になった。
「すごい…」と呟く僕。
飯能南の応援席の様子は言うまでもない。
ママたちの歓声が聞こえた。
終了間際の同点劇


試合はペナルティストローク(PS)合戦に突入した。

それにしても、と思う。
この大会、いやこの試合に懸けた選手、監督、地元の思いは、
想像するだけでちょっと胸を揺さぶられる。
インターハイに合わせて開催元の高校が強化を図るのは自然なことだ。
しかし飯能南には1、2年生のメンバーが多く入っていた。
いまの3年生を徹底的に鍛え上げるだけで完成したチームではないのだろう。
苦労がうかがえる。

そのせいなのか、監督の「強化」の方針は明確だった。
徹底したセットプレーの準備だ。
自陣からのFHはほとんどすべてがスクープ。
丹生のDFは落下するボールの処理に追われ、中盤の選手は
プレスからのカウンターを仕掛けようがなかった。

サークル周辺からのFHも、強烈なヒットを打ち込み
ゴール前でニアと中央とファーに人を配置し「誰かが触れ」という
至ってシンプルでいて守備側がいちばん嫌がる戦法を徹底していた。
技術では丹生が完全に優っていた。戦術では逆だった。

セットプレーに関して、飯能南には迷いがなかった。

その延長線上でPSも鍛えているのか。そこが見ものだった。

PS戦。丹生が先攻。
PS戦は緊張の連続


両校とも、シューターはミスをせず、GKは読みが合わない。
丹生はキャプテン藤井が決め、三谷も続く。
飯能南も、大野主将、石垣がきっちり決める。
失敗をしてくれない丹生を追いかける飯能南が力尽きる展開に見えた。
4人ずつが全員決めた。

丹生の5人目。低い弾道は、右へ逸れた。
王手をかけた飯能南。スポットに立ったのは関谷。
今日のラッキーボーイはボールを押し出した瞬間、
「あっ!」と言った。ボールにうまく力が乗らなかったのだ。
変な回転がかかったボールは、軌道を見てから右へ飛んだGKに当たった。
しかし、脇の下からこぼれた。審判が、転がった球を指差し、
ゴールインをコールした。


GK大熊に仲間が飛びつき、校旗を持ち出した選手がベンチから飛び出す。
サッカー部の黄緑がスタンドに飛び跳ね、応援席ではペットボトルが叩かれた。
選手たちは、スティックや人差し指を空に突き出した。
大熊がスタンドに向かってヘルメットを掲げ、
校旗を持ってきた選手が紺地に映える「南高」の校章を振ってみせた。


もちろん丹生にも勝利に値する強さがあった。
でも、月並みではあるが、僕はこの試合は、
地元の執念が飯能南を勝たせたのだと思う。
この試合に注ぎ込まれた情熱が、関谷のシュートを押し込んだのだと思う。

スポーツとは、意外にそういうものではないだろうか。

歓喜の初戦突破


飯能南 4-4 丹生
    (5PS4)




posted by sot-escape |02:19 | ホッケー | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年07月05日

「王座」を見て思うこと [立命館vs山梨学院]

Match No.050 2008.6.30
<ホッケー>
第27回全日本大学ホッケー王座決定戦男子準決勝
立命館大学vs山梨学院大学
@長居球技場 
 
ハイペースで年間100試合に向けて突っ走っていましたが、
Jの中断があり、野球以外のスポーツが乏しいこの時節柄もあり、
節目の50試合目をちょっとじらしてみました。
とかいって、アメフトのパールボウルやラグビーの代表戦を、 
行けたのに逃したという情けない男です。
ともあれ節目の試合はちょうど1年の半分となる6月末。そして愛するホッケー。
いいんじゃないでしょうか。 



 
学生王座決定戦は、秋の全日本学生選手権と並んで(だよね?)、
学生日本一を決める大事な大会だ。
準々決勝で慶應を6-0で粉砕した立命館は2年連続の決勝を目指し、
山梨学院大は初優勝を果たした2年前の再現を目指す。
この大会19回の優勝を誇る天理大に決勝で挑むチームを決める戦い。
学生ホッケーを見るのは、4年ぶりかもしれない。
 だから山梨学院は僕にとっては新興勢力なんだけど、いまやすっかり関東の優だ。
春の関東リーグで優勝した山梨だが、
試合は完全に立命館のペース。
 
山梨は全員が自陣に引いてカウンターでチャンスを伺った。
とはいえ、スクープで陣地を稼ぐのが当たり前になってからは、
FWが前線からガツガツプレッシャーをかける戦法はあまり取られなくなったようだ。
 
立命館は(印象としては)7割近いボール保持率を続けながらも点が取れないでいたが、
前半26分、伝統の武器(らしい)ペナルティコーナーから太田のフリックシュート
(おれのときは「プッシュアップ」と呼んでたんだけどな)でついに先制点を挙げた。
ボールをスティックで強く押し出しながら引っ掛けるように浮かせるシュートだ。
 
4月の五輪予選(特にドイツの試合)を岐阜で見たときは、
ホッケーが僕の知っているスポーツからかなり変わっていたとびっくりしたが、
日本の大学ホッケーに関しては驚きはなかった。
確かに個人技レベルは上がったと思う。戦術も変化した。
だが全体的にはあまり変わっていなかった。
 
そういう意味では「世界」に近かったのは、最終予選に2人の代表を送り込んだ
立命館のほうだったかもしれない。
山梨の攻撃が右からの個人技頼みだったのに対し、
中央や左からも攻撃があった立命館は、ライン際に追い込まれる状態は
少なかったように思う。
 
その山梨の「右」。
熊本・小国高校出身の25番北里と、滋賀・伊吹高校出身の27番大橋。ともに1年生。ウマい。スティックさばき、密集に飛び込む勇気も素晴らしい。
2年後くらいにもう一度チェックしてみようかな。
 
後半も立命館の攻勢は続いた。
開始まもなく、センタリングをブロックされたこぼれ球を白和が空中で叩いて強烈なシュート。
これは山梨学院GK国兼がファインセーブ。
直後の6分。セットプレーのクリアボールを25ヤードライン(いまは呼び方違うよな)あたりで高橋が受け、
スウィープでど真ん中を通すロングパス。これに先制点の太田がリバースハンドの
美しいタッチシュートで合わせて、追加点を決めた。
日本代表太田がFBながらもさすがの2得点。
立命館はサッカー五輪代表のようにカメハメ波のパフォーマンスを見せた。 

カメハメ波


後半15分頃から、山梨学院はPCを立て続けに5本獲得したが、
どうも「あ、これは入るな」という雰囲気を感じさせずすべて失敗した。
後半の中盤は膠着状態が続き、山梨のFB陣に凡ミスが出るなど、
いよいよ立命館の完勝に近づいていた。
しかし残り9分、立命館が歩んでいた「完勝」ペースの道は突如として薄い氷の道になった。
2-0の怖さがあるのはサッカーだけではない。      
 
ドリブル突破で得た左45度くらいのフリーヒット。
三澤がサークル内に打ち込み、これにFW竹田が飛び込んでタッチシュート。見事に決まった。
リバースサイドに来たボールに対し、体ごと前に飛び込むことによって
フォアハンドで合わせた、ファインゴールだった。
 
さぁ、わからなくなった。 
立命館は無理な攻めを止め、守り切るモードに。
しかし山梨には個人技がある。
ドリブルと、右でのテンポのよいパス交換。
日本ホッケーの教科書のような攻撃で、立命館を追い詰める。
 
残り5分。山梨学院はPCをゲット。お~、という声が会場から上がり、
同校女子部の応援の熱気も上がる。
立命館はしかし、このピンチを凌ぐ。
残り3分。山梨は再び右を攻めて得たFHのチャンス。
ファーへ流れたボールを角度のないところからシュートするが、GKがセーブ。
 
長い球技場の時計は0になった。
ホッケーにロスタイムはないが、GK交代の時などに審判が時計を止めた時間を、
電工掲示が反映していないという(人手不足的な)現象のため、
あと何秒残っているのかわからない。
 
本当のラストチャンスに思われた山梨のFHも、立命館が防ぎ、
試合終了のホーンが鳴った。
 
右を攻めても囲まれて…


地力では立命館が確実に上だったが、山梨学院も紙一重のところまで追い詰めた。
しかし後半再三訪れたPCのチャンスを逃したのが大きかったように思う。
でもあそこで1点差になっていたら、立命館はまた再覚醒して猛攻に転じていたと思うけど。
 
=====

ホッケーは良くも悪くも大学が中心であり(ほぼ)頂点。
しかし相変わらず、スタンドにいる顔ぶれは、
いわゆる「関係者」ばっかり。

とにかく、「おぉすげー!」とか「いまのは反則だろ!」とかが
各人の胸の内で消化されてゆく。
盛り上がらない。応援指導部も来ない。
 
いろんな涙ぐましい努力は見られた。
関西の女子選手とマネージャーがアイドルユニットみたいなものを結成して
競技アピールに励んだり、キッズスクールを開催したり。
ミクシィの活用もしている。
それに球技場の電光掲示板が阪和線から見えることも活用していた。
 
しかし。がんばっているのは学生ばかりじゃないか?

学連の学生たちの努力にも、やはり限界がある。

日本ホッケーは、誰が引っ張るんだ?
このまま低予算の学生たちが寝る間を削って走り回ることだけで
なんとか運営してゆくのだろうか。

これまでのホッケーの広まり方は、いかにも日本的だ。
乱暴に言うと、国体が広めてきたのだ。
国体開催地の高校が強化され、各地に強豪校ができ、
各地の強豪校から関東と関西の大学に進学してくる、という流れ。

圧倒的に、「地方」のスポーツといえるだろう。
業界には盟主がいない。

ホッケーが日本に伝わってから百余年。
しかし歴史の長さに対し、知名度は見事に低い。

たとえば、日本における競技発祥校を自任する某校は、
その事実に対し、まったく責任がないと言えるだろうか。
財力や発言力は、競技全体のために生かされているだろうか。
よもや自分達が強くなることが業界活性化に繋がるなどと読売巨人軍のようなことは
考えてはいないだろうが・・・。


ホッケーは国内でも人工芝で行われるのが当たり前になってきて、
それは逆に全国に裾野を広げるには難しい環境と言えなくもない。

好きな人だけが携わる、コアなスポーツでいいのなら、その道を選んでもいいと思う。
本当に、それでいいならね。
本当に、それでいいのかな。


立命館大 2-1 山梨学院大


posted by sot-escape |01:36 | ホッケー | コメント(0) | トラックバック(0)
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