2008年09月09日
「家族」の守り [大分vs名古屋]
Match No.075 2008.9.7
<サッカー>
2008Jリーグヤマザキナビスコカップ 準決勝第2戦
大分トリニータvs名古屋グランパス
@九州石油ドーム
100試合男の旅日記3
試合の後、大分駅前で見ず知らずの名古屋のサポーター二人と飲みました。
彼らは彼らで初対面同士とのこと。
地方遠征ならではの、一期一会ですね。
お二人、ありがとうございました。
スポーツファンなら誰でも、 忘れられない試合、というものがいくつかあるものです。 広島での野球観戦の翌日。 ビッグアーチでの紫広島の試合や鳥栖での昇格争い生き残り合戦などの 選択肢を排除し、大分にやってきたのは、 僕が忘れられない試合(トップテンくらい)の中に、 ナビスコカップ準決勝が2つ含まれているからです。 2004年の準決勝、3-0で勝っていた東京が 退場者を出したヴェルディに追いつかれたときに味わわされた、 ビッグゲームというものへのある種の恐怖感は忘れられませんし、 2006年の準決勝第2戦、川崎との死闘を、最後に阿部勇樹が PKを沈めて制した試合での、120分間片時も休まずに歌い続けた 千葉サポーターの姿も忘れません。 そんな経験から、準決勝にはドラマが転がっているのだと信じて、 特急ソニックで大分まで来ました。はるばる。 滅多なことでは行けないぞと思っていた九州石油ドームに、 東京の試合でもないのに来てしまいました。 それにしても、 とんでもないところにとんでもないものを作ったものですね。 ワールドカップは自治体の感覚を麻痺させるのでしょうか。 大分駅から九石ドームへ向かう直行バスは、 街を抜け、国道をしばらく走り、丘を上がりニュータウンを縫い、 この先にあるのかと思いきや丘を下り、丘より山に近い道を登り また下りて…と、いったいどこまで連れて行かれるんや!という距離を走りました。 そして視界に現れたのは、高台に落ちている銀色の湯たんぽ。 のような“ビッグアイ”。 地中で眠る銀色の巨大怪獣の甲羅だけが地面に出ているようにも見えます。 結論から言うと、わたくしかなりこのスタジアムが気に入りました。 陸上トラックはあるものの見やすいです。
第1戦は1-1の引き分け。 アウェイゴールを挙げたことで大分有利のような論調が見られましたが、 この1点がモノを言うのは、0-0のときだけ。 これは狙ってできるスコアではありませんから、意味はそんなに ないだろうと思いました。 大分としては、試合の入り方はチョー難しかったはずです。 点の取り合いや2点以上の勝負になると、 それこそアウェイゴールの差で敗退しかねません。 先行逃げ切りを図るにしても、スコアを早く動かしてしまうことは 自分達の足を止めてしまうリスクを高めます。 名古屋にしても、絶対に2点取らなくてはいけないわけではなかったので、 フルモードで試合に入る必要はありませんでした。 名古屋がどんな試合でも自分達のスタイルを崩さないのは有名な話です。 シャムスカ監督としては、対策は立てやすかったでしょう。 採った戦術は、シンプルすぎて笑ってしまったくらいです。 大分は両サイドにフタをしました。 ほとんど5バック。 上本、森重、深谷のDFに加え、右の高橋大輔、左の鈴木慎吾も 名古屋の攻撃スペースを消す役割を担いました。 サイドを消された名古屋は、スペースを作り出す動きにも乏しかったように思います。 5月の味スタで友人が言っていたこと、それは 真ん中があるからサイドがある、ということでした。 バーレーンに玉田を連れて行かれている名古屋は杉本を先発させましたが、 クサビを入れる気持ちそのものが少なくなってしまったようで、 玉田不在の大きさはいかんともしがたいものがありました。 裏を突く杉本のスタイルは、あまりに不向きでした。 そんな中でも前半最大のチャンスは25分。 左から入ったクロスにファーのヨンセンが右足で合わせましたが、 上本がゴール前でオーバーヘッドでクリア。 さらにもういちど左からセンタリングが入りヨンセンの頭に合ったものの これは右に逸れました。![]()
大分には「守備的すぎる」の声も聞こえてきそうですが、 この戦術を採用できるのは、前線のウェズレイと森島康仁が ターゲットとして機能し、少ない人数でも形を作れるからでしょう。 大分の攻撃は、一瞬で点火します。 29分、名古屋右SB竹内の裏にパスが1本。 金崎が追い付き、ニアへグラウンダのパス。 森島がアウトで合わせましたが、GK西村がセーブ。 32分、ウェズレイがポストプレーの瞬間にバヤリッツァと入れ替わり 攻めあがったシーンも、一気に3人がシュートシーンに関わりました。 守備のチームではありますが、今日の名古屋が単調でつまらなく見えるほど、 攻撃も形になっていました。
前半は0-0で折り返しました。 屋根の形に切り取られた空が紫がかった色になり、 幻想的な劇場空間を作り出していました。 日没の遅い九州のゲームは、7時になってようやくナイターになります。 ユニフォームの胸にスポンサーのない大分(マルハン問題も辛いところ)。 アウェイサポーターが来にくいこの地で、 毎試合2万人近くを集めているのはすごいことだと思います。 この日も2万人を越え、95%以上が大分サポーターでした。 日曜夜の開催とはいえ、名古屋側ゴール裏は100人~200人ほど。 試合後、名古屋サポの二人は、 ウェズレイへのブーイングがすごくて殺気立っていた、と言っていました。 その時は言いませんでしたが、そのブーイングは 実はほとんど聞こえませんでした。 ウェズレイ本人には届いていたでしょうが、 完全ホームのスタジアムの空気を揺るがすものではありませんでした。 いまは大分の猟犬であるウェズレイは、 後半4分、左から鈴木慎吾のパスを受けると、 ミドルよりはロングと呼べる距離から、右足を振りぬきました。 誰もが、打った瞬間に入るとわかったのではないでしょうか。 ネットの左隅に突き刺してゴール。 青く染まったスタンドが揺れました。 瞬間的に思い出しました。 僕は学生時代に、期末試験の準備を放り出し、 ストイコビッチ監督の引退試合(味スタでのヴェルディ戦)を この目で観ました。2001年7月のことです。 ピクシーが生涯最後に得点に絡んだプレーは、 ウェズレイへのヒールパスでした。 打てたのに、打たなかった。美しいほうを選んだ。 そういうプレーでした。 因縁めいています。 そのウェズレイに突きつけられた重い重いビハインドの1点。 ピクシーはすぐさま、吉村に代えて巻を投入します。 全てのボールはサイドから。クロス、クロス、クロス。 感心するほど、あきれるほど、サイドからボールを入れます。 しかしサイドを崩しているわけではないので、 状況は一向に打開できません。 大分のCBは危なげなくヘディングでクリアし、 GK下川も臆することなく飛び出して対処します。 20分が過ぎ、30分が過ぎます。 不思議なほど、スタジアムは落ち着いていました。 初めてなのに、わずか1点のリードなのに。 大分サポーターはもう慣れているのでしょう。 イチゼロで勝つということに。自分達のパターンに、この試合が 完全にハマっていることをわかっていたのでしょう。 吉田を前線に入れて完全にパワープレーに出る名古屋。 大分の何回かの時間稼ぎを考慮してロスタイムは「5分」。 これを見てスタジアムはようやく引き締まります。 というよりは、カウントダウンのセレモニーが始まったような感じ。 チャントに合わせて、スタジアム全体に手拍子が広がります。 46分、ゴール前の混戦から杉本(?)が足を伸ばしてシュート。 しかしこれも大分DFがゴール前でクリア。 やがて長い笛が吹かれ、試合は終わりました。 美しいサッカーを求め、ファンを惹きつけるピクシー。 戦力に見合った戦いを徹底し、結果を以ってファンを喜ばせるシャムスカ。 この日に関しては、後者のサッカーが優りました。
ハイロウズの「日曜日よりの使者」に合わせ、 手拍子が響きます。 飲み屋で会話した大分サポーターによると、選手は トリニータのメンバーはみんな「家族」であると言っているそうです。 梅崎を奪われ、家永を故障で欠きながらも、 結束してリーグ最少失点の堅固な守備を築き、のしあがってきた大分トリニータ。 選手たちは、きっと家族の一員であるだろうサポーターの前で、 円になって飛び跳ねていました。![]()
浦和レッズが地位を上げてくれたナビスコカップ。 浦和がこのタイトルをきっかけにビッグクラブになり、 千葉はオシムサッカーのひとつの結実を世に印象付けました。 東京はナビスコで優勝してからサポーターの目が厳しくなりました。 今年もまた、若いチームのひとつの成長の証が国立で 発表される機会ができました。 これが、ナビスコカップの良さなのだと思います。 決勝戦の日は、まさに「家族」みんなで東京に来てほしいものです。 J1でいちばん国立から遠いクラブの来訪を、 東京人として歓迎したいと思います。 11月のコクリツは、最高です。一生の思い出に、ぜひ。![]()
大分 1-0 名古屋
posted by sot-escape |23:11 |
Jリーグ |
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「家族」の守り [大分vs名古屋]
とてもいい!
ゲームがよくわかります
posted by うーちぇ | 2008-09-10 01:16
「家族」の守り [大分vs名古屋]
記事おもしろかったです
posted by 準 | 2008-09-10 08:57
「家族」の守り [大分vs名古屋]
Sponavi+でトリニータ関連のブログを書いています鳥脳と申します。
とても秀逸な記事だと思います。大分のような僻地までわざわざ足を運んでいただいた事に感謝申し上げます。
九石ドームに関しては、アウェイの方々には大分市の中心部から、山をこえ谷をこえ随分と遠いイメージがあると思われます。基本大分のサポーターはスタジアムへはマイカー通勤の方が大半を占め思ったほど困った感がないのが実情です。
これからの記事も楽しみにしております。
posted by 鳥脳 | 2008-09-10 09:41
「家族」の守り [大分vs名古屋]
おもろいレポでした。
ピクシーのラストゲーム思い出しました。
過去のエントリも読んでみましたが、
何でコメントがついてないのか不思議なくらい秀逸な記事が多いですね。
これからも楽しみにしてます。
posted by うどん | 2008-09-10 17:32
「家族」の守り [大分vs名古屋]
ご自身が大分サポでも名古屋サポでもないせいか淡々とした文章ですが、スタジアムの雰囲気は的確に伝わってくる記事ですね。
千葉サポの私にとっては、つい最近のことなのに遠い昔のように思える話題も出てきて、ちょっとしんみりしてしまいました。
これからも、サッカーネタの時には寄らせていただきます。
posted by 通り雨 | 2008-09-10 23:56


