2008年09月08日

ありがとう市民球場 [広島vs阪神]

Match No.074 2008.9.6
<野球>
プロ野球 セ・リーグ
広島東洋カープvs阪神タイガース
@広島市民球場


延長12回表。2死2、3塁。
カープは縁もゆかりもない球団なのに、阪神に恨みがあるわけでもないのに、
僕はすがるような気持ちでタイガース・鳥谷の凡退を期待していた。
金本を敬遠して鳥谷を相手にしたカープバッテリー。
同じことを10回に実践し、このときは成功している(二塁ゴロ)。
一流の打者相手に、再び同じ手が通用する気はしなかった。
そして案の定、鳥谷の強い打球は三遊間を抜けていった。
試合時間はこの時点ですでに4時間20分を超えていた。
両チーム、耐えに耐えてきたゲームは、このヒットで事実上決した。

変な話だが、このとき僕が座っていた席には、
ゴミの臭いが漂っていた。4時間の間に観衆が作り出した
空き缶の山、弁当の空箱などが、通路のゴミ捨て場で臭いを放ち始め、
客席に流れてきていたのだ。
新幹線から見えた建設中の新球場で試合をする来年からは、
こんなことはきっと起きないだろう。
五感をフル回転させて市民球場の記憶を焼き付けていた僕には、
その臭いもまた忘れられないものになりそうだ。
外観


===
3歳ごろからプロ野球を(テレビでだが)見始めた僕だが、
(もちろん巨人戦ばかりを見ざるをえなかった)
広島市民球場には一度も来たことがなかった。
そもそも中国地方に足を下ろしたことがない。

今年中に絶対に来なくてはいけないと決心し、
ついに念願を果たした。
ナゴヤ球場を体験せずに終わってしまったことを激しく後悔している
僕にとっては、20数年間「お世話になった」球場に
触れておくことは、100試合計画のなかでも絶必の項目だった。

最後にカープが優勝した年の日本シリーズ、
学校帰りに(第7戦はたしか月曜だった)建設現場のおじさんの
車のラジオを聞かせてもらったのを覚えている。
クモ男がバックネットを登ったのは巨人戦だったか。
北別府、大野、川口、津田、といった投手達が王国を形成していたカープ。

そんなことを思い出しながら市電で到着。
「夢と感動をありがとう」の文字が貼られた外壁。
写真を撮ろうにも、街中にありすぎて引きの画が撮れない。
チケットは数日前に完売。僕の手元にもなかった。
もしものために、桃太郎スタジアム(JFL)や博多の森(ラグビー)
などへの緊急発進も視野に入れてはいたが、楽観的ではあった。
ダフ屋は見当たらなかったが、
だいたいチケット売り場周辺に行けば何かが起きるものだ。
予想通り、「連れが来られんけ」と、おじいさんが
余りの自由席券を定価で譲ってくれた。

入場すると、テレビで馴染んだ広島市民球場は、
僕の想像よりもさらに小さかった。
でもファンの一体感ではどこも敵わないだろうと思った。
通路に腰掛け、4時間。
試合のレビューは、到底詳しくはできない。書くことがありすぎる。

===
広島先発の若き左腕・齊藤は、
初回の先頭打者に四球を与え、金本のタイムリーで返される。
さらに2回にも先頭の関本に一発を浴びたが、
3回の満塁のピンチでその関本を併殺に仕留め、試合の形を保っていた。

一見阪神ペースだが差はたったの2点。
3回裏に赤松が上手くおっつけてライト前にタイムリー。
さらに5回、栗原が阪神・安藤から粘りに粘ったあと一、二塁間へ
タイムリーを放ち、逆転してしまった。
逆転のよろこび


ところが一気に広島のペースになったわけでもない。
毎回のようにランナーを出すものの、とにかく先頭打者が出ない
(結局試合全体を通じてそうだった)。
ヒットを打たれながらもゼロに抑えてしまった
先日の神宮球場の安藤を思い出した。

6回に阪神が同点に追い付くと、
試合は種類を変えた。結局12回まで得点は入らなかった。

巨人に尻尾を掴まれた阪神と、3位まであと僅かの広島が繰り広げた
死闘の立役者は、2番手以降の投手たち。

固結びにした2本の紐を、両方から引っ張っているようだった。
結び目は固くなっていった。
青木高、アッチソン、梅津、藤川、永川、上野。
走者は毎回のように出るが、紐はなかなかほどけない。

11回裏、2死1、2塁の場面。
この打席を見られただけでも来た甲斐があったというものだ。
東出敬遠のあと、ピッチャー上野の打順。
ファンにとっての選択肢はひとつ。代打・緒方孝市が告げられた。
ものすごい応援だった。鳥肌を通り越して、涙が出そうなくらい。
11イニングもスクワット応援を続けていたライトスタンドは、
皆立ち上がっていてスクワットする必要がなくなっていた。
2-2から変化球を捕らえた瞬間、1塁側スタンド全員の目が輝いたが、
打球はセンター正面を突いてしまった。

そして、耐え切れなくなったカープが鳥谷の安打を許すことになった。
シュルツ、横山が不在の中、梅津あるいは永川に
もう1イニング投げさせる選択肢はなかったか。
アッチソン、藤川、久保田が2回ずつ投げたのに対し、
カープは12回を大島に託さざるを得なかった。

やはり打った鳥谷を称えるべきなのだろう。
思えばこの試合では、好プレーを連発していたバルディリスが
外野からの返球を捕れずに逆転のホームインを許したり、
3回に走塁のボーンヘッドで好機を潰した栗原がそのタイムリーを打ったりと、
妙なめぐり合わせが続いていた。
10回の満塁の好機に打てなかった鳥谷が試合を決めたのも
そんなめぐり合わせのひとつだったのかもしれない。
===

広島市民球場。
古くて汚くて小さくて、最高だった。
毎試合のように来る地元の人にとっては、もしかしたら
もういいよというくらい古びれてしまっているのかもしれないが、
もう来年からは使われないかと思うと、
初めて訪れたくせに、とても寂しい気持ちになってしまう。

新球場はボルティモアのカムデンヤードを見本にするらしい。
でも、テーマパークになる必要はないと思う。
東京ドームや、遊び要素を取り入れざるをえないパ・リーグの球場とは違った、
ワンカップを飲みながら20年前の色あせたキャップをかぶったおっさんにも
居場所がある空間であってほしい。

5回裏のあと、今日配られた「ありがとう市民球場」のボードを
ファンが掲げ、NPBの公式ソング「Dream Park~野球場へゆこう~」が球場に流れた。
長い歴史への感謝の気持ちは、新時代の幕開けへのエネルギーとなっていく。
この曲の歌詞曰く、
「次の時代もきっと、野球場へゆこう♪」。
ぐっと来た



広島 3-5 阪神


posted by sot-escape |01:41 | プロ野球 | コメント(0) | トラックバック(0)
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