2008年02月18日

ワイルドナイツ=野武士の底力 [三洋vs東芝]

Match No.017 2008.2.17
<ラグビー>
トップリーグ マイクロソフトカップ準決勝
三洋電機ワイルドナイツvs東芝ブレイブルーパス
@秩父宮ラグビー場

三洋41-0東芝。
あの「栃木の衝撃」から2ヶ月。
宇都宮の現場に居合わせてた私は、プレーオフでの
両者の再戦を、ひそかに待ち望んでいた。
確かにあの日の東芝には廣瀬俊朗や吉田朋生がいなかった。
だがそれだけで41点差はつくまい。言い訳ってもんだ。

それでも、主力の戻っている東芝に雪辱の場を与えてやりたかったし、
逆に、メンバー云々でなく三洋が東芝を返り討ちにするのを見てみたい気もした。
マイクロソフトカップ準決勝。
その舞台は整った。



九州新人大会



ゲームは緊迫していた。
そう言うほかない。

さながらワールドカップの決勝Tのよう。
風上に立った東芝がタッチキックで陣地を稼ぎ
ハイパントを仕掛ける。
ブレイクダウンの攻防は鬼気に満ち、
ラックから簡単にはボールが出ない。

スコット・マクラウドがトニー・ブラウンにぶつかる。
豊田真人が突進し、榎本淳平が「刺さる」。
三洋はゴール前で東芝にモールを作らせない。

決して体が火照る試合ではない。寒さが増すタイプの緊張感。

3-0とリードした三洋は19分、中盤でノックオンを誘い、攻める。
攻め始めると、速く、早い今年の三洋。
オフサイドを誘発し、ブラウンは「Shot」を選択。カタい。
彼にしてみれば難しい角度ではなかったが、ノーグッド。

30分の手前。
東芝はやっと有効なモールを作り前進。三洋のペナルティ。
吉田大樹がPGを決めて3-3。
ここから東芝の時間帯が続く。

34分、東芝の攻撃。ナタニエラ・オトがDFラインの裏にキック。
そして自ら走る。オトがである。
なんともいいところに転がり、三洋WTB北川智規はたまらず蹴り出す。
ラインアウト、大野均がキャッチ。モールをうまくずらした東芝。
ニコラス・ホルテンが抜け出してトライ。3-8。

両チームとも、ボールを展開してもゲインを切れない。
攻め側も防御側も、フラットに近いラインで、ギリギリの攻防が続いた。
そして、この距離感が後半に事故を生む。

後半。
風上の三洋。ブラウン劇場になる予感。

ブラウンのPGで6-8とし、後半6分の防御。
東芝は自陣からでもモールで押してゆく。
さらに展開から吉田大樹、オトが右サイドでゲインしDFを集めて
左へ展開。数的有利だったが、内側へのパス。
これが三洋・川口大の手に収まる。
走り始めた川口は後ろから倒されるが、北川がフォロー。
北川はPR笠井建志をスピードで抜き去り、トライ。13-8。
一瞬にして形勢逆転。無情なるラグビーの醍醐味だ。

それでも東芝は繰り返す。モールでゲインしたのち、
瞬時に「つなぐラグビー」へ。東芝は新たな強さで4連覇を狙う。
三洋のオフサイド。PGで3点返す。13-11。
東京マラソン2008ダンス


東芝は優位に試合を進め、三洋の防御を攻略しつつあった。
徹底してモールで攻め続ければ三洋に穴が開く可能性は高かった。
ただし、とにかくリードを奪っておきたい時間帯に入っていたのも確かだ。
だから、24分のラインアウトからの一連の攻撃を
冨岡のドロップゴールで締めたことは、間違いではない。
この場面は、この試合のヤマ場だった。
ゴリゴリ行く東芝。止める三洋。
三洋があといくつのフェーズを耐えられるかで、試合の趨勢は決しそうだった。
だが、結末はDG。
この場面に関しては、醜くとも徹底して東芝の選手を地面へと引っ張った三洋の辛抱勝ちとも言えた。



明確に、ゲームは動いていた。
防御の強さはわかった。あとはどちらが多く点を取るかだ。

息をつく暇もない
且つ、
息が詰まるような戦い。

ノックオンが少ない。プレーが途切れない。
パントの処理を誰も誤らない。物凄い集中力。

選手にはかわいそうだが、
ひとつのミスが、ひとつの判断が、勝負の分け目になる試合だ。
後から振り返れば勝負の綾はいたるところに存在するものだ。
そう、後から振り返れば。タラ、レバ・・・。

例えば、30分の東芝の追加点のシーン、
三洋のパスがインターセプトされ廣瀬にトライを許した場面。
田中史朗が外側をよく確認しなかったことが
「勝負の分かれ目」として語られたかもしれない。

例えば、32分、ブラウンのDF裏へのチョン蹴りに
北川がほとんど追いついたが数センチの差でインゴールノックオンになった場面。
「やはり三洋には女神がついていない」象徴になっていたかもしれない。

あるいは、37分、途中出場の三洋・吉田尚史が俊足で大きくゲインしながら
被タックル後に起き上がってしまい反則を取られた場面。
「なんてもったいないことを…」と実際に誰もが思った。

しかしこのどのシーンも、忘れることができる。
タラレバを考えることは、勝ったチームには不要だからだ。



時計を少し戻す。
廣瀬のトライで、三洋13-21東芝。
北川の惜しいシーンを経て、35分。
三洋はSH田中から展開。5本のパス全てが絶妙のタイミング。
タックル寸前の球離れ、そしてオフロードパス。
最後はまたも北川のトライ。キックは外れ、18-21で残り5分。
これ以上の展開があるだろうか。

話は戻る。
勝負の綾は、負けたほうのプレーに見出されるものだ。

この時間帯に敵陣深くでラインアウトを奪われた東芝。
時間を潰しきれずに冨岡がキックでみすみすボールを渡した東芝。

最後まで足が動いたのは三洋。

北川が右を疾走。ビッグゲインだ。ボールは中央へ。
私の席からだと遠いエンドでの攻防。よく見えなかったが、
レフェリーはアドバンテージを取ったようだ。
3点差だ。DGもアリか。いや。三洋は、早く、速い。
左へ振り吉田が再び快走。ゴールまで1m。密集ができる。
アドバンは解けているのか?
ホーンが鳴る。ラストプレーだ。
鳴り終わった瞬間、ブラウンがボールを拾った。
ゲームを作り、真っ先にタックルし、味方を生かしてきたブラウンが、
ついに自ら行った。
ブラインドサイド。見えない。
しかし思ったより早く、平林主審の手が挙がり、長い笛が鳴った。
一斉に飛び上がったのは、三洋電機の選手。
私は、唸ってばかりの日本のラグビーファンに一瞬嫌気が差し、
「トライだ!うぉー!」と叫んでしまった。


東京マラソン2008御神輿




リーグの盟主・東芝の意地を見た。
しかし全勝チームの底力が勝った。

どちらが強かったのか、どちらが勝つべきだったのかは
正直よくわからない。
難しく考えてはいけないのかもしれない。
なにしろ、そもそもボールが円くないのだ。
東芝のメンバーも、半分くらい神様のせいにしておいていい。

2月中旬にして、100試合中1位候補のゲームだ。

ワイルドナイツは、チーム初の頂点、リーグ初のパーフェクトシーズンまで、
あと1勝。



三洋電機ワイルドナイツ 25-21 東芝ブレイブルーパス



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posted by sot-escape |23:59 | トップリーグ | コメント(0) | トラックバック(0)
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