2009年07月31日

今頃ですが、「青木VSシャオリン戦」について。

 7月も終わろうとしているので、慌てて更新です(笑)。
 試合から10日以上が経過した今になっても、7・20「DREAM.10」での青木真也VSビトー・シャオリン・ヒベイロ戦の話題が渦巻いていますね。今日は8・14「Krushライト級グランプリ」に出場する石川直生選手の記者会見が行われたんですが、その席でも(石川選手と青木選手が親しいことから)その一戦に関する質問が出たほどでした。
 ま、ネットでは語り尽くされた感もあるのかもしれませんが、今さらながらあの試合について思うことなど。
 試合は当日、会場で取材しましたが、自分自身は正直、それほど違和感は感じませんでした。一つには、「真っ向からの寝技対決」を見たいと思っていたわけではないこと。もう一つは、総合におけるミドルキックの重要性、立ち技テクニックの総合への融合具合には以前から秘かに注目していたことが、その根底にあったのだと思います。
 ここ数回の「格闘秘宝館」にご来場いただいたお客様だったら、青木選手がいかにムエタイやキックが好きかは、よく分かると思います。また、UFCの選手もタイに打撃修行に行ったりしていて、そのへんも熱く語っていました。青木選手本人も、タイに練習に行っていますしね。そういうことも考え合わせると、全く考えられなかった展開ではなかったというか。
 ただ思うのは、あの戦法を実行するのは、かなり度胸のいることだっただろうということです。それは対ジャッジという部分について。正直、ムエタイ的な闘い方はキックボクシングのリングでさえ、ジャッジの評価が分かれたりします。ましてや総合のリング、それも前例のない状況で、例えば100発ミドルを蹴っても、1〜2回のテイクダウンの方が評価されるという可能性だって(極端に考えれば)あるわけです。
 あの戦法が寝技を避けるための消極策と決めつける論法もあるようですが、あれはあれでかなりの賭けだったと思います。
 もう一つ、ミドルといえば思い出すのが、「北岡悟に負けていない男」こと井上克也選手のことです。ある試合で、井上選手がミドルを多用して勝利を得たことがありました。「ん? 今まではこんなにミドルを蹴ってはいなかったよな?」と思って試合後に確認してみたところ、こういう答えが返ってきました。
「ミドルはずっと練習はしていたんですけど、蹴り足を掴まれるかもしれないんで、試合ではなかなか出せなかったんです」
 その時点に至ってようやく、試合で出すだけの自信と勇気が出たのだということでした。その試合ではミドルを有効に使って距離を制していたので、今後も得意技になっていくんだろうなと思ったのですが、その後の試合では、その時ほどミドルを蹴ってはいませんでした。そこでまた聞いてみると、「やっぱり、掴まれるのが怖くて」という返事。総合では蹴り足を掴まれるとそのままテイクダウンにつながってしまうので、やはりリスクは大きいわけです。
 そんなことも思い出したりして、余計に、ミドルに徹した青木選手はすごいなと思ったものでした。大会後は、関係者と「もしかしたら、もっと後から振り返った時に『ああ、あのシャオリン戦がターニングポイントだったな』と思うような試合なのかもしれませんね」などと話しながら帰ったものです。
 ただし、多くの観客からブーイングが浴びせられたこと、あの試合が酷評されることも、よく理解できます。あの顔合わせに望まれた展開でなかったことはもちろん、ミドルキックという技が「倒す」という概念からは遠い印象であることも大きな要因でしょう。同じ蹴りでも、あの日にトーナメントを制してウェルター級王座を獲得したマリウス・ザロムスキー選手のようなハイキックが主体だったら、まだ印象は違っていたかもしれません(それだと戦法自体が異なってくるわけですが)。あの大会場では、青木選手が3種類のミドルを蹴り分けていたといっても、そもそもが伝わりにくかったことと思います。
 あの日、自分が他のお客さんと同様にチケットを買って客席にいたらどうだっただろうと思ったりもします。以前から(ただの観客だった頃から)選手の闘い方の幅には寛容だったとは思うんですが、ちょっと視点を変えて考えてみると、思い当たる節もあったりして。
 例えば、自分はホラー小説が好きで、最近は福澤徹三という作家が気に入ってるんですが、期待して購入した新作がいきなり「泣けるラブストーリー」になっていたりしたら、「何だよ! ホラー書けよ!」と思うんじゃないかと。「これはこれで面白い」と素直に思えるかどうかは、ちょっと分からなかったりします。それと同じかなと。
 選手が勝利のためにどういう戦法を選択しようが、それは自由。ファイターは「勝利」を第一に考えて目指すべき、というのも真実。その一方で、「観客が望むものに応えてこそプロ」という言い方も、間違いとは思えません。ただ、常に新しい技術や戦法を取り入れ、実践していくことも選手には必要なわけで……。
 ある程度、新しい技術も試しつつ、観客の期待にも応えて、キッチリ勝利する。それができれば理想的なのかもしれませんが、誰でもそんなことができれば苦労はしません。まして、相手は世界的な強豪なわけですし。まあ後は、あのマイクアピールに批判が集中してるのもよく分かるんですが、マイクと試合は分けて考えようよ、と正直思ったりもしてます。この賛否両論を通過して、今後の青木選手はどんな闘い方を見せてくれるんですかね。そっちの方がよっぽど興味深かったりします。

posted by solitario |22:58 | 取材記(総合) | コメント(15) | トラックバック(0)
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