2007年03月20日

この若者に注目!

 次の波が来る前に、先週末の4大会の試合について書きたいと思います。まずは日曜昼のパンクラス。メインの川村亮VS金原弘光の一戦は、名勝負と呼んでいいでしょう。自分としては、「名勝負」と「好勝負」には大きな隔たりがあって、「名」の方はやたらと使いたくはないとつねづね思っているんですが、これは間違いなく「名」でした。
 デビュー1年あまりのホープ・川村選手に対して、16年のキャリアを誇る実力者・金原選手。マッチメイクの意図、そして川村選手にかかる期待は明らかでした。しかし、金原選手もそのタフな闘いぶりから、簡単に勝てる相手ではありません。
 川村選手が注目されるようになったのは、昨年9月のダニエル・アカーシオ戦からでしょう。PRIDE武士道にも参戦したアカーシオ選手に劇的KO勝ちを収めたことで、「パンクラス次代のエース」として一躍、知られるようになりました。その後のニルソン・デ・カストロ戦は追い込む場面もありながらドローとなりましたが、パンクラスでは近藤有己選手に続いて「団体を託せる選手」が現れたという手応えは十分でした。
 この川村選手とは、実は彼のデビュー前からちょっとした関係がありました。といっても、取材などでパンクラス横浜道場を訪れた際、ちょっとずつ話をするようになったというだけではあるんですが、そもそも少々シャイな自分(笑)は、練習生と気軽に話をするようなことはめったになかったのです。ですが、川村選手だけはなぜか普通に、自然に話すようになっていました。このあたりも、すでに彼の代名詞となりつつある「人間力」なのかもしれません。
 彼がデビューしてからカストロ戦までの試合リポートは、「格闘技通信」では自分しか書いていないはずです。大森ゴールドジムや後楽園のネオブラッド・トーナメントでの試合でも彼の堂々とした闘いぶりについて書きましたが、この時点では彼がこんなに急に駆け上がるとは、誰も(自分も)思っていなかったことでしょう。
 アカーシオ戦、カストロ戦、そして今回の金原戦。共通して言えるのは、どれも展開が起伏に富んだ、劇的な試合だったということです。金原戦では1Rにパンチで追い込みつつも、金原選手が持ち前の粘りを発揮しました。2R終盤には、川村選手も優勢ではありながら、スタミナ・集中力が少し切れてきたか、という場面もありました。やはり金原選手、近年はあまり勝ち星を残せていなくてもメインに起用されるだけのことはあります。
 そして3Rには、金原選手のパンチのコンビネーションで川村選手がぐらつきます。場内は大歓声。勝機を察知し仕留めに来た金原選手と、踏みとどまった川村選手が足を止めて打ち合います。そして最終的に、リングに横たわったのは金原選手の方でした。
 勝敗が決し、金原選手が次の試合での引退を宣言したのはご存知だと思います。続けるかやめるかの瀬戸際にあったベテランに、すっきりと引退を決意させられたのは「川村亮」という若い選手の力が十分なものだったからでしょう。そしてこの劇的な展開を制して勝利を得た川村選手は、本当に後楽園のメインを張れるだけの存在であることを改めて印象づけました。彼の持つ、観客の心を掴む力は、選手としてのタイプは異なりますが、やはり後楽園のメインで心の名勝負を連発していた頃の美濃輪育久選手(現・ミノワマン)を思い出させるものがありました。
 試合後、川村選手は「このままどこまでいけるか、見てみたい」と語っていました。それは、自分も同じ気持ちです。リング上の実力だけじゃない、不思議な力と魅力を持った川村選手。注目して損はないと思います。

※「ソリタリオの格闘技PRESS!」(もう一つの格闘技ブログ)の方では、同じ試合について金原選手側の角度から書いてみたいと思います。そちらも合わせてどうぞ。
http://blog.olga.to/solitario/
こちらもどうぞ。
「monologues of solitario」(身の回りのことなど、私的な内容です)
http://solitario.exblog.jp/

posted by solitario |22:57 | 取材記(総合) | コメント(0) | トラックバック(0)
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2007年03月20日

修斗の件に関する追記

 先日の修斗・後楽園大会に関する記事について追記しておきたいと思います。
 まず、自分が問題にしているのはあくまで、ルミナ選手の試合直後のリング上で、その場で「タイトルマッチが決定!」とアナウンスされたことについてです。リオン武選手がベルトを持って登場し、「闘ってください」と言ったことについては何ら問題とは思っていません。この部分については、最初の記事でもっとしっかり説明すべきだったかもしれません。
 あれが他団体のリングならば、「今決定しました! 次の後楽園でタイトルマッチ!」「ワーッ!」でもそれほどは問題にしなかったと思います。厳密に言えばどうかなあとは思いますが、それを言い出すと長くなるので。ではなぜ、「競技システムの根幹に関わる」と書いたかというと、特に修斗は「そういったことにならないような」=「ノリでルールが変わってしまうことがないような」システム作りに精力を注いできたはずだと思うからです。
 ランキング委員会があり、コミッションと協会と審判部がそれぞれ独立しており(ここも、できればもっと整備すればいいのにと思う部分ではあります)、その上で各王座が管理されている、というシステム作りを最初に始めて、しかも一番、進んだ段階にまで押し上げているのは、間違いなく修斗です。そしてその部分こそが、修斗が自らを「競技である」と胸を張って言うことのできる根拠だと思うのです。
 だからこそ、あの「その場で決定アナウンス」を「修斗による自己否定」と書いたのです。
 世界タイトルマッチの挑戦者は、各試合の結果を踏まえてランキングが制定された上で、コミッションが決定・承認することになっているはずです。そもそも試合前の時点で3位のルミナ選手が欧州2位で世界ランカーではないアウグスト・フロタ選手を下したことで、前年に敗れている1位のアントニオ・カルバーリョ選手、4位だった不死身夜天慶選手を下したことで2位にランクされた田村彰敏選手より上にランクされる可能性があるということもよく理解できません。
 実際に場内のお客さんが、ルミナ選手の“悲願の”世界タイトル挑戦を大歓迎していたのも分かります。リオン戦が魅力的なカードであることも。自分も、とても見たいカードです。その盛り上がりを察して、リングアナ氏がさらなるサービスをした、という図式自体は感情的にすごく理解できるし、そう考えるとあまり批判したくはありません(先日、飲みの席でご一緒させていただいたばかりということを差し引いても)。ですが上記のような理由から、やはり「修斗には修斗らしくあってほしい」という思いから、取り上げた次第です。ましてや当日のリングアナ氏はただそれだけの仕事で呼ばれている人ではなく、フルタイムで修斗に関わっている立場なわけですから。
 いただいたコメントの中に、「もし主催者が方針を転換したと言うのなら、それでOKと過去に言っていたはずでは。それをなぜ聞かない」というご意見があります。しかしそれは、例えばプロ野球で「人気選手は“四振”までOK」といきなり試合中に聞かされて、主催チームのエライ人が「今日からウチはそれで行くことにしましたから」と言ったからといって納得するようなものです。タイトルマッチ決定のプロセスというのは、それに近いぐらい大事なものだと、自分は思います。野球という競技なら、変えちゃいけない部分がある。それと同様に、修斗という競技だから、変えちゃいけない部分があるわけです。そこはもう、事情を聞くとかそういう話じゃありません。
 以上が、今回の件に関するご説明です。試合自体のことを書かずにここまで問題を引っ張っていることに関しては、申し訳ない部分もあります。修斗も含めて週末の大会のことは、これから書いていきたいと思います。

posted by solitario |05:51 | 格闘技雑感 | コメント(3) | トラックバック(1)
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