2006年11月13日

競技とプロ格闘技・補足…というか続編

 早く昨日の全日本キック後楽園大会について書きたいところなのですが、昨日のエントリー「競技としてのプロ格闘技とは…」への皆さんのコメントを読んで、こちらの言葉が足りなかった部分があったようなので補足します。
 DEEP佐伯繁代表の「うちは競技じゃない」という発言は、もちろん、「DEEPが真剣勝負じゃない」という意味ではありません。DEEPは旗揚げから一貫して真剣勝負を追求しており、そこに疑問の余地は一切ありません。
 では「競技ではない」発言はどういうことかというと、ルールとかランキングといった部分で、観客に見せるエンターテインメント性を最重視する、という意味だと、自分は認識しています。
 例えば、多くのプロモーションで採用されている「ストップ・ドント・ムーブ(以下SDM)」の制度は、DEEPでは採用されていません。ロープ際やコーナー近くでの攻防になったときにはブレイクがかかり、リング中央、スタンド状態で再開となります。
 SDMを日本で初めて採用したのは94年、ヒクソン・グレイシー選手が初来日した「バーリトゥード・ジャパン」でした。このイベントは日本で初めて、ブラジル直輸入のバーリトゥード・ルールが採用されたもので、SDMもその一環でした。
 SDMがなぜ多数派になっているかというと、ロープやコーナー際で続行が難しくなった際、中央でポジションを再現することにより、「ルールによって攻防の有利不利が変わる」のを最小限に止めた(ように感じられる)からです。せっかく有利なポジションを取っていた選手が、ルールによってそれを奪われる不満を、できるだけ解消する措置と言えます。
 そのSDMを、DEEPはなぜ採用しないのか。ここで佐伯氏は、「うちは競技じゃなく、お客さんに見せるもの。だから攻防はお客さんに見えやすいところでやってくれ」と言います。「こっちが攻めてたのにとか抗議されても、最初からうちはこのルールですから」と、ルールミーティングで選手に直接、言っていたのも聞いたことがあります。
 また、多くの選手が言うように、DEEPはグラウンドでのブレイクが早く設定されています。これも主催者から選手には強調して伝えられています。だから関節技の攻防からのブレイクに関して選手やチームから抗議があっても、代表は一切、耳を貸しません。
 もう一つ、前述したようにランキングが制定されていないことも、「競技か否か」という部分に関わっています。代表がつねづね口にするのは、「負けても内容がよかった選手は次も使う。ただし、連敗が続くと起用しづらくなる」ということ。この考え方は、昨日書いた「つまらない試合だったけど、勝ち続けているからタイトルマッチ」という考え方とは正反対と言っていいでしょう。少なくともDEEPのリングでは、例えば試合内容は地味だけどコツコツと判定勝ちを積み重ねてきた、という選手より、数戦でも派手に勝った選手の方が後の展開は開ける、ということです。逆に修斗では、派手でなくても地道に勝ち続けていればランキングは(徐々にかもしれませんが)上がっていくので、タイトルマッチには確実に近付くことになります。
 どちらが正しくてどちらが悪い、と言っているのではありません。要は、「そのプロモーションがどういう価値基準を置いているか」です。そして、そのプロモーションに参加する選手は、その価値基準を最初から頭に入れておく必要があります。
 昨日問題にしたのは、「プロ興行」という大会のあり方が、これらの様々な価値基準と折り合いがつくかどうか、ということです。ここまで書いて自分でもようやく整理できてきましたが(笑)、非常に大ざっぱなのを恐れずにまとめてしまうと、「競技=選手のためのもの」「競技でない真剣勝負=観客やプロモーターのためのもの」と括ることができます。
 あまりに長くなったので、今回はこのへんで。しかしこの話は、結論がないだけにどこまでも終わりがありそうにないですね(笑)。

posted by solitario |15:08 | 格闘技雑感 | コメント(4) | トラックバック(0)
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