2006年07月16日

ミルコ・クロコップVS吉田秀彦戦を考える。

 PRIDE話が続きますが、よければお付き合いを。
 7・1無差別GP2nd Roundで一番、すごかった試合といえば、やっぱり格通増刊号でリポートも担当したヴァンダレイ・シウバVS藤田和之戦ですが、個人的に一番、考えさせられた試合というなら、ミルコ・クロコップVS吉田秀彦戦になります。
 ご存じの通り、あの試合はミルコ選手が右ローを集中させ、事実上ローでKO勝ちしました。PRIDEにはダウンの規定がないため、ローで倒されて立ち上がれない吉田選手に対し、島田レフェリーは「ギブアップ?」と何度も聞いています。自力で立ち上がることができないわけですから、この時点でKO負けでもよかったのではないかと思うんですが、じきにセコンドからタオルが投入され、TKO負けになりました。
 この時、プレスルームで自分は知り合いの記者と、「総合でローでのKOを見たことがあるか」という話をしていました。自分は(おそらく)ないのですが、相手の記者は一度だけ、見たことがあると言っていました。小さな大会での話です。
 それだけ、総合でローでのKOというのは珍しいことなのですが、そもそもミルコ選手はバリバリのK-1ファイターだったわけですから、何の不思議もありません。ですが、観客や多くのファンにとっては、どうもそうは思えなかったようです。勝敗が決まった後の、何とも言えない空気がそれを象徴していました。期待して応援していた吉田選手が負けてしまったこと、藤田選手に続いて日本人が全滅してしまったこともあるのでしょうが、やはり一番は、「ローで終わった」からではないかと思うのです。
 それは、吉田選手にとっても同じだったようです。左足のヒザにアイシングし、車椅子でインタビュースペースに現れた彼は、報道陣に「足のダメージは」と聞かれ、腫れているくらいで、大したことはない」と答えています。そして、「あんなもの(ロー)で倒れた自分が情けない」とも語っていました。
 あんなもの? おそらく吉田選手は、悔しさのあまり強がりを言っていたのではないかと思います。あるいは、「(ハイキックなどと違って)警戒していなかったもの」という意味合いだったかもしれませんが、普段、キックボクシングでローでのKOを山ほど見ている筆者からしたら、強い違和感が残りました。
 その違和感は、後にネットなどで人々の感想を見て、「終わり方が微妙だった」などと書かれているのを見るにつけ、増していきました。
 まあ、ハッキリ言いましょう。あれは微妙なんかじゃない! 完全KOなんです!
 別に、吉田選手をおとしめたいわけではありません。ローキックというのは、充分、相手をKOできる技なのです。その証拠に、キックボクシングの大会では、必ずと言っていいほどローでのKO、あるいはローで動きを止められてしまった選手を見ます。試合でローが出ることが分かっていて、その対処も常に練習しているであろうキックボクサーでも、倒されるのです。試合によっては、早いラウンドでもKOは起こります。
 吉田選手は柔道衣を着ていたから足の様子は見えませんでしたが、おそらく彼のモモ、膝上あたりは赤黒く変色してしまっていたのではないでしょうか? もしそれが観客に見えていたら、反応もまた違ったかもしれません。
 また、「ローの対処ぐらい練習しとけよ」などという意見も見ますが、これは暴論。しておくに越したことはないと思いますが、ハイとストレートを警戒してその対処に集中していたとすれば、そもそも打撃のない柔道出身の吉田選手ですから、ローの対処は一番後回しになっても責められないと思います。そもそもローのカットなんてそんなにすぐに身に付くものではないはずですし、そこへミルコのあのローです。そりゃ食らうって。
 付け足しついでにもう一つ。「根性があればローでは倒れない」という言葉をたまに聞いたりしますが、これもとんでもない話だと思います。結局、立てないというのは足にスイッチが入らないこと。「足の失神」と考えると分かりやすいかもしれません。そう考えれば、「KOが妥当」というのも分かっていただけるかと思います。おそらく、「根性があれば…」というのは、「ローなんかで倒れるのは根性がない証拠」という、一部の指導者の根性論が根深くあるせいだと思うのですが…。
 ともあれ、それだけあの結末は衝撃的でした。ミルコ選手は、つぎはどんな試合を見せてくれるのでしょうか? 吉田選手は? とにかく、大変な試合でした。

posted by solitario |15:54 | 格闘技雑感 | コメント(0) | トラックバック(0)
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