2009年09月01日

格闘家は対戦相手の研究をするか。

 昨日から忙しウィークに突入。今週から来週前半にかけて、電話取材も含めて最低13人にインタビューしなければならないという…。ま、昨日すでに3人終えてきたわけですが。今日はもともと夕方に1人決まっていたところ、他からも依頼が来たのですが、泣く泣くお断りせざるを得ず。その選手にも久しぶりにいろいろ聞きたかったのですが、残念でした。

 で、そんな中なので現実逃避的に(笑)、時事的でない事柄でも。最近はそういうことをあんまり書いてなかったので、たまには。

 格闘家にインタビューする場合、大半は直近の試合に向けて、ということがテーマとなります。特にパンフレット掲載用だったりするとまさにそれのみに集中せざるを得ず、そうなると自ずから質問事項も決まってきます。
・練習の調子、様子。普段と違うことをしたりしているか、してないか。
・対戦相手についての印象。
・それに対し、どう闘うか。
・この試合に対して、特に掲げているテーマはあるか。
・勝った先に見ているもの。
 ……などなど。これに、試合や選手によって足したり引いたりしていきます。例えば、対戦相手が初来日の外国人で、明らかに「情報があんまりないだろうな」というような場合には「情報がない相手と闘う時の心構え」について聞いたりしますし、会見やメディア等で試合前の舌戦が展開されている場合には、もちろんそのことにも触れます。
 その話の流れで、自分がよくする質問に「そもそも、対戦相手のことをよく研究するほうですか?」というのがあります。というのも、いろいろな選手に話を聞いていくうちに、これがパックリ分かれることに気がついたからです。
 統計を取ったことはないので定かではありませんが、もしかしたら半々と言ってもいいぐらいに、「研究する」「しない」は見事に分かれます。
「研究する」派のことは、だいたい理解できると思います。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」と『孫子』にも書かれているとおり、相手がどういう攻撃を使い、どこに穴があり、どんなクセを持っているかを分析し、それにどう対処していくかを考える……これは戦略の基本だと言えるでしょう。
 ですが、「いや、自分は研究はしませんね」という選手も少なからず存在します。その理由は、だいたい以下のような感じです。
・対戦相手のビデオなどを見て、イメージが固まってしまうのが怖い。ビデオと同じことをしてくるわけじゃないから。
・相手の得意技を見てしまうとそっちにばかり意識がいってしまって、かえって他の攻撃をもらってしまうことがある。
・研究をすることで、相手に対する恐怖心が増大してしまう。
・相手がどうこうより、自分の動きを磨く方が大事。
・めんどくさい。
・興味ない。
・研究しようにも、資料がない。
 中には信じられないものもあるかもしれませんが、全て実際に選手の口から聞いたものです。中には、「相手のビデオを見ると目に焼き付いてしまって、眠れなくなってしまう」という選手もいました。
 逆に「研究する」派の選手の中には、「研究しないと不安で仕方ないから」という人もいました。その選手は、試合まで相手のビデオを繰り返し繰り返し、穴が空くほど見るそうです。不安感を抱く対象、そしてその不安の克服の仕方も、本当に人それぞれです。
 「する」派・「しない」派の中間と言えるのが、「自分ではしないけど、師匠・トレーナーに任せている」というもの。実はこれもけっこうな割合ですが、この辺はその選手の置かれている環境にもよってきます。「任せられる相手がいるなんて、うらやましい」という選手だっているでしょう。
 また、研究の成否がそのまま結果につながるとは限らない、という事実がことを厄介にしています。いくら映像で見てもその選手の本当の力や感触が分かるわけではありませんし、また、自分の研究の裏をかくために何かをしてくるかもしれません。一方で「よく研究して対策を練っていたんだな」と思わされる、「研究勝ち」みたいな試合も確かに存在します。「だからもっと細かく」となるのか、「だからしなくていい」となるのかは、最終的には個々の性格なのでしょうが。

 ところで最近、7月のDREAMで快勝して一躍有名になったDEEPライト級王者・菊野克紀選手と、その師匠の高阪剛氏を取材する機会がありました。DREAMでのアンドレ・ジダ戦でも炸裂した“必殺技”の三日月蹴りや、空手をベースにした闘い方について「今後は研究されてくるのでは?」と質問したのですが、彼らの答えは明確でした。
「僕の得意技は三日月蹴りだけじゃないですから。パンチでもローキックでも、何でも倒せる自信があるから大丈夫です」(菊野選手)
「むしろ、どんどん研究してほしい。新しい技術が出て来て、それが研究されて攻略法が編み出され、さらにそれを破る方法を考える。それが総合格闘技の技術を一歩上に押し上げることになって、この世界に貢献することになる」(高阪氏)
 高阪氏の答えには驚かされました。余裕ということではないでしょうが、いろんなことを大きな目で見ているんだな、と。研究について、こういう考え方もあるのかと思わされるものでした。
 その選手が相手を研究するのかどうか、それが試合に影響しているかどうか。事前情報も含めてそんなことも考えながら試合を見ていくと、より面白いかもしれません。あ、ちなみに昨日取材した3選手で言うと、「師匠と一緒にしっかり研究する」が1人、「研究して負けても悔しいし」が1人、「しない。関係ない」が1人でした。ホントに皆さん、いろいろです。

※もう一つのブログの方にも書きましたが、自分のやっている「有限会社ソリタリオ」は本日、設立7周年を迎えることができました。今後ともよろしくお願いいたします。

posted by solitario |04:18 | 格闘技雑感 | コメント(2) | トラックバック(0)
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格闘家は対戦相手の研究をするか。

コメント投稿者ID :

非常に興味深く、おもしろい記事でした。一ファンですが、常々選手によって本当に意見が分かれていると思っていました。海外の選手の場合はどうなんでしょうか。ちょっと気になります。

posted by 録画ボタン | 2009-09-01 19:27

格闘家は対戦相手の研究をするか。

コメント投稿者ID :

総合の大きな流れで言えば、
グレーシーが寝技ありきの世界を確立し、
それを覆す打撃技術が広まり、
更にそれすら通用しない寝技の選手が脚光を浴びる…
といった流れの揺り返しが、面白くてたまらないですけど。
常に動かないと。
「何だ、結局、単に体デカイヤツが強いんじゃん」で停滞してたら、そこで終わりですからね。

posted by アッキー | 2009-09-14 23:52

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