2009年08月24日

美しかった「Girls S-cup」

 昨日の日曜日は夕方から品川ステラボールでシュートボクシングの女子大会「Girls S-cup」を取材。SBとして女子大会はずっと以前にも開催したことがあるものの、今回はSB的価値観の中でも最上位にある「S-cup」という名前が冠された大会ということで事前の盛り上げもいろいろと力の入ったものでした。
 この日は各地でいろんな大会が重なっていましたが(それはそれで残念ですが…)、この品川ステラボールは格闘技初使用。品川プリンスホテルに併設された新しいイベントホールで、このあたりの目新しさも大会イメージに合ったものでした。
 記者会見などでもアピールされていたとおり、大会のキーワードは「ツヨカワ」。そう、「強くてかわいい」という、けっこう直接的なメッセージです。これはSBと提携し、この大会にも多数の選手を送り込んでいる女子総合イベント「JEWELS」とも通じるもの。これだけ直接に打ち出すと賛否両論もあったりしますが、そこも含めてよかったのではないかと。
 大会前に、パンフレットの仕事で石岡沙織選手、杉山しずか選手にインタビューさせてもらいました。そこで両選手に、この「ツヨカワ」について聞いたところ、返ってきた答えは対照的でした。
「自分は最初からそこ(“かわいい”の部分)で取り上げられることが多かったので、もっと中身の方を見てほしい」(石岡選手)
「“かわいい”と言ってもらえるのは、素直にうれしい。だけど、自分はどっちかというと“ゴツカワ”で…(笑)」(杉山選手)
 ま、女子選手を見た目重視で取り上げるのがどうなのかという問題はいつでもどこでも起こっていることですが、それを言うなら男子選手だって確実に見た目も判断されてますからね。「イケメン・ファイター」とか。要はバランスなわけですが、それを言うと元も子もないのか(笑)。
 さて、大会。「S-cup」というだけに、中心はSBルールによる8選手のワンデー・トーナメント。8人の内訳は、SB勢が3人、総合格闘家が3人、韓国人キックボクサーが1人、そして空手から総合に進出し、最近、打撃で復帰した選手が1人という内訳。投げと立ち関節があるSBルールは、8人中4人が初挑戦という図式です。ものすごく大ざっぱに見れば、「SB対総合」という感じで見ていた人が多かったかもしれません。
 大会前に注目されていた選手は、SBの“現役女子高生”RENA選手、石岡選手、韓国のイム・スジョン選手といったところ。RENA選手と石岡選手が当たるとすれば準決勝、3月にソウルで対戦しているRENA選手とスジョン選手が当たるなら決勝……というブロック分けですが、まずRENA選手、石岡選手はそれぞれダウンを奪って準決勝進出。ここは順当と言っていい流れでした。2人の準決勝は石岡選手の負傷により、RENA選手のTKO勝ち。この対戦は、また改めて見たいところです。
 荒れたのが、反対ブロック。まず岡田円選手が、場内を驚かせる強さで1回戦突破。この時点で、「優勝は岡田選手かな…」と思った人も多かったかもしれません。7月のキックでの復帰戦は見られなかったのですが、その試合を見た人は「あの時よりも動きはいい」と。準決勝は岡田選手とスジョン選手、これは厳しい潰し合いだなあ……と、自分自身思っていたものでした。
 が、そのスジョン選手をいきなり消し去ったのが、ノーマーク(失礼)のV一(ヴイはじめ)選手でした。総合の試合では細かい“キワ”を逃さない攻撃を見せていて、この大会でも投げと関節で体格的な不利さを補おうとしていることはコメントから分かりましたが、1・2Rまで見た時点でも、流麗な「キックボクシング」を見せるスジョン選手の勝利は動かないと思いました。
 ですが、V選手は序盤から狙っていた投げを、3Rについに成功させ、シュートポイントをもぎ取って勝利を収めたのです。総合の「タックルから投げ」をSBルールに持ち込もうとした総合格闘家はこれまでにも多く見ましたが、正直、成功例は多くはありません。それを狙いすぎるあまりに打撃をもらってしまう場面も、多々見てきました。V選手もそうなってしまうのでは…と思ったのですが、彼女の投げに対するこだわりは、そんな予想を超えるものでした。
 準決勝では岡田選手とV選手という対戦になりましたが、ここでもV選手の投げが面白いように決まり、終盤にはすっかりペースを崩した岡田選手にV選手のパンチも当たり、終わってみればポイントで大差をつけてV選手が決勝進出。いやあ、驚きました。
 決勝はRENA選手とV選手で、まさしく「SB対総合」そのものの図式になりましたが、猛威を振るっていたV選手の投げをしっかりと警戒してブロックしたRENA選手がパンチと蹴りで上回り、判定勝ちで優勝。「Girls S-cup」初代女王の座は、SB代表として最初から優勝を宣言していたRENA選手が勝ち取ったのでした。
 ルールの特性をフルに生かした作戦で予想外の選手が勝ち上がり、それをホームの代表が制して頂点に立つ。そう仕向けようとしてもなかなかそうはいかない、というような流れで終わった今回のトーナメント。その意味で、非常に「美しい」ものでした。大会全体としても成功に終わり、総合やキックの選手も巻き込んだ「SB女子」の今後の流れにも期待が持てる展開。次に女子大会が開催される時は、もっと注目してもよさそうですよ。

posted by solitario |23:13 | 取材記(キックボクシング) | コメント(0) | トラックバック(0)
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