2009年01月18日
その6~プロレスは遠くなりにけり②
旧UWF時代の前田はエースの座を与えられてはいたが、藤原や木戸、佐山等との試合においては、まだまだ力不足、若手レスラーの域を超えてはいなかった。何か物足りなさを感じさせた。ただ、佐山との最後の試合は、現在の総合の試合にもない、両者の軋轢から生じる緊張感、打たれてもいっさい退かぬ激しい闘いを見せてくれはしたが。 新日本にカムバックした頃の前田日明は、彼の格闘家人生において最も輝いていた。「UWFでの闘いが何であったのかを確認するために帰ってきました。」というインパクトあるあいさつから始まる前田の鮮烈な登場。あの頃は上半身は比較的スリムで、脚は長くたくましく、その柔軟性は若き日の猪木を彷彿とさせ、肉体的に充実していた。 対新日本という図式が明確で、強さを求めるプロレスの本質から離れつつある猪木新日本に対して、常に「否」を連呼しつづけ、プロレスの進むべき正当な姿を追求しようとしていた。その過激な言動は、反発も多かったが新鮮であり、その頃、プロレスの現状に対して不満を持ち始めた僕らの思いを僕らにかわって、新日本にぶつけ、実際に試合の場で示してくれた。 藤波との試合、越中や武藤とのタッグマッチなど説得力のある試合を僕らに提供してくれた。前田の言動には、常にプロレスに対する危機感があり、このままいけばプロレスはだめになり、そうしないために自分たちは、より激しい試合をして新日本プロレスを元に戻したいのだという気概を感じることができた。 しかし、ピークを越え、腰の引けた猪木は、前田との対戦をさけ、上田やマードック、アンドレ・ザ・ジャイアント、ドン・中矢・ニールセンなどの刺客を送り込み、前田との対戦を徹底的にさけ、「誰の挑戦でも受ける」という長年の姿勢を崩し、猪木ファンの心は次第に猪木から離れていった。 猪木は時間をかけて、真っ直ぐな前田の心を懐柔し、頃合いを見計らって前田と試合をするつもりだったかもしれない。しかし、長州への顔面キックによって、前田は追放され、遂に前田対猪木戦は行われることはなかった。馬場対猪木戦が実現しなかったことで、馬場は猪木に抜かれたと同じように、この時、猪木はその存在感を失っていった。 あの時、前田らUWFの目指したものを、猪木新日本が保身に走らず、その先のプロレス界を見据えて受容し、変革を図っていたのなら、ひょっとして今のプロレスの衰退はなかったのかもしれない。 前田、高田、藤原などがいなくなった新日本プロレスは、危険分子がいなくなることにより、安堵感を得はしたが、少しずつ「闘い」が失われていった。猪木の試合は言うに及ばず、藤波対長州の名勝負数え唄はもう古くさく、新日本の屋台骨を支え始めた武藤、蝶野、橋本の試合は僕を満足させなかった。 特に武藤は、人によって評価は分かれるところだが、彼の試合で脳裏に残っているものはほとんどないのだ。彼が初めてアメリカから帰ってきた頃、ヘルメットをかぶり、入場する姿に感じた違和感は僕からずっと消えはしなかった。柔道というバックボーンを持ち、体格的にも恵まれ、運動神経もよく、アメリカではムタとして活躍したとはいうものの、猪木から始まる新日本プロレスの持つ格闘技の匂い、危険な匂いがスマートな彼からは感じることができず、また、雑誌に時々載る彼のコメントに魅力を感じることができなかった。 蝶野は武藤よりもさらに印象は希薄で、若手の頃、新日本とUWF勢との試合をリング下で見る姿しか思い浮かばない。最も猪木や前田の匂いを持っていたのは、橋本であった。UWFの影響を最も受けていたように見えた橋本が、政治的にも新日本の中心にいて活躍していれば、新日本の行方もまた変わっていたかもしれない。 やがて新日本プロレスは1990年代、プロレスの本質が着実に失われつつあることをバブル全盛のうたかたの繁栄によって直視せず、屋台骨が傾きつつあるのに気づかず、長州を中心に対策をとることをしなかった。その繁栄が、ろうそくの最後の炎であるとも知らず、傲慢な態度を崩さず、気づいた時にはもはや手遅れであった。 僕の興味は完全に追放された前田、新生UWFに注がれた。今だに語り継がれるUWF。もうあれから20年。本当の闘いを見せてくれると期待したUWF。最先端はUWFという意識。多くのマスコミが注目し、もちあげた。あの頃の試合は、レンタルビデオでほとんど見たが、心に残っている試合がいくつかある。 前田と高田や藤原との試合は、その試合パターンが読め、退屈ささえ感じていた。妙に必死な顔で試合をする前田や高田の表情にリアルさを感じることができなかった。田村との試合、鈴木との試合、船木との試合がよかった。若手を圧倒的な力でねじふせる試合は説得力があった。特に船木との二つの試合。前田たち上の世代と船木ら下の世代の軋みが、その試合にも緊張感となって表れ、新鮮な展開を見せてくれた。 この船木との試合一番感じたことは、前田はややピークを過ぎ、船木の若さ、かっこよさが際だっていたことだ。前田の肉体は新日本時代よりかなり体重が増え、その動きにシャープさがなくなっていた。前田自身、自分の後継者は高田ではなく、船木だと考えていただろう。 そして、新生UWFを象徴する東京ドームでの試合で、最も面白かったのは、前田や高田の試合ではなく、鈴木とスミス、安生とチャンプアの試合であった。あの二つの試合は、予定調和を基調とするプロレスとは異質の、本当の闘い、そう簡単には勝たせてくれないリアルな格闘技の匂いを発していた。 そのUWFもやがて、内部分裂していく。一人になった前田のリーダーとしての資質のなさを嘆きはしたが、前田の孤独感を思い、前田ファンを捨てることはできなかった。 一人の前田はリングスを立ち上げる。高田はUWFインターを藤原や船木は藤原組をそれぞれ立ち上げる。あの頃、新日本プロレスを中心とする旧プロレス団体は、それ見たことかとたかをくくって、分裂したUWFの状況を見ていたに違いない。自分たちこそ、プロレスの本道を進んでいるのだと。 前田リングスは、ドールマンらオランダ勢やハンらソ連(ロシア)勢、そして正道会館の協力を得ながら独自の色を出していく。膝の故障をかかえ、かつての動きが次第にできなくなっていく前田であったが、ハンをはじめとして、次々とやってくる新しい外国選手との試合は、スマートさとは全くかけ離れたものであったが、そのゴツゴツとした原始的な試合の展開は悪くなかった。 特に正道会館が参加して以降、佐竹とゴルドー、佐竹と長井の試合などは並々ならぬ緊張感に満ちた試合であった。また、田村と山本の試合なども印象に残っている。やがて、前田は前々から予告した通り、カレリンとの試合を最後にスッパリと引退をしていく。前田らしく、淡々と。前田引退後、リングスは、UFCやプライドの影響を受けながら、より格闘技色の強いKOKトーナメントを開催していく。(つづく)
posted by sogofunkyozo |00:12 |
総合格闘技 |
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その6~プロレスは遠くなりにけり②
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前田万歳!!!
これでいいですか?
posted by ttt | 2009-01-18 09:54
その6~プロレスは遠くなりにけり②
コメント投稿者ID :
全日は?
posted by 643 | 2009-01-18 10:25
その6~プロレスは遠くなりにけり②
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筆者がミーハーだということはよくわかりました。
posted by 佐多 | 2009-01-18 11:28
その6~プロレスは遠くなりにけり②
コメント投稿者ID :
管理人さんはプロレスを本当の戦いだと思ってたから、そういう雰囲気のあるレスラーが好きだったんですね
今はそういう雰囲気のあるレスラーがいないからプロレスは堕落したと言っていると
でもプロレスってもともと戦いじゃなくて演劇だし総合が出てきた今プロレスが戦いの面に焦点を当てられなくなって当然ではないですか?
posted by からす | 2009-01-18 12:08
その6~プロレスは遠くなりにけり②
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昔々の話もいいけど、
ttp://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/other/headlines/wrestling/20090118-00000005-spnavi_ot-fight.html
みたいなヤツがプロレスを駄目にしてるってのも書いたら?
posted by アンチ棚橋 | 2009-01-18 13:01
その6~プロレスは遠くなりにけり②
コメント投稿者ID :
でも前田、船木ら辺が退団してくれたおかげで
闘魂三銃士が育ったのだからまぁ良かったんじゃないのかな?
所詮UWFもプロレスから脱皮出来なかったのだから。。。
posted by バックランド | 2009-01-18 14:04
その6~プロレスは遠くなりにけり②
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猪木は前田との対戦を避ける必要はなかったはず。
なぜなら当時UWFも新日本もガチンコでも真剣勝負でもなく
しっかりとしたストーリーで試合を成立させていたのだから。
藤波と前田の両者ノックダウンのように。
posted by ちゃんぽん | 2009-01-18 16:20
その6~プロレスは遠くなりにけり②
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桜庭が大晦日の煽りVで田村にPRIDEに出るまで一度も真剣勝負をしたことがないと言っていたよね。
Uやリングス含めて真剣勝負はPRIDE以前は「一度も」ないということだよ。
posted by 39 | 2009-01-18 16:43
その6~プロレスは遠くなりにけり②
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真剣勝負ってw
猪木やってたろ、真剣勝負。観客との。
posted by hellharmony | 2009-01-19 13:05
その6~プロレスは遠くなりにけり②
コメント投稿者ID :
たしかにプロレスって客との勝負ですよね。
”強さ”より”凄さ”を見せれば、それで良し!
ただ勘違いしてる客が、”凄さ”を強さと思い込んでしまうんだろな〜〜それで未だに前田サイキョとか言ってるんでしょ。
posted by AWAバーンガニア | 2009-01-19 15:58
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