2008年04月30日
■Man Utd 1-0 Barcelona (agg 1-0)
時代が流れても変わらないものがある。
変わらないものこそが時代の波を切り裂ける。
先週のバルサ、週末のチェルシー、そして今日のバルサ戦。このタフな3連戦の最終戦で勝利を飾り、ユナイテッドはモスクワへの切符を手にした。実に9シーズンぶりのCLファイナル進出となる。しかし決勝進出への扉を叩いたのは、C・ロナウドでもテヴェスでもなく、9シーズン前を知るポール・スコールズだった。
■Man Utd
Van der Sar, Hargreaves, Ferdinand, Brown, Evra (Silvestre 90), Park, Scholes (Fletcher 76), Carrick, Nani (Giggs 76), Ronaldo, Tevez.
チェルシー戦で負傷したヴィディッチ、ルーニーはメンバー入りせず。代わりにチェルシー戦と同じく、ブラウンがセンターへ入り、ハーグリーブスが右サイドバックを勤める。またC・ロナウド、パクチソンらがスタメンに復帰。攻撃面はまだしも守備面にやや不安が残るメンバーにみえる。先制点を奪われた際には非常に厳しい状況に追い込まれるだけに、最大限の注意を払いたい。
■Barcelona
Valdes, Zambrotta, Puyol, Milito, Abidal, Toure Yaya (Gudjohnsen 88), Messi, Xavi, Deco, Iniesta (Henry 60), Eto'o (Bojan 72).
マルケスがサスペンデッドでこの試合には出場できず。だが代わりにキャプテン、プジョールが復帰した。バルサにとってはポジティブな要素である。前線はエトー、メッシ、イニエスタが務める。万全ではないユナイテッド守備陣だけに、バルサにも付け込む余地はあるが…果たして。
■自滅するバルサと老獪なポール・スコールズ
オールドトラフォードより醸し出される緊張感に包まれた22人の選手たちの宴は慎重な立ち上がりを見せた。どっちつかずの落ち着かない立ち上がりから、徐々に堅守速攻のユナイテッド、ポゼッションのバルセロナという色分けが出てきたかと思えばこの日のバルサはパスの精度が低くミスパスの多さでリズムを掴むことに失敗した。
むしろユナイテッドの方がプレミアシップの舞台で披露するようなスピードに乗った攻撃でバルサを脅かしていたくらいだ。特にテヴェスとパクチソンは持ち前の運動量を存分に発揮し、前線からのプレスと攻撃に大きく貢献していた。そしてエブラのオーバーラップもいつになく積極的で効果的だったといえる。
そんな流れの中で先制点が生まれた。14分、中央に侵入しようとしたC・ロナウドのドリブル突破は阻止したものの、ザンブロッタのクリアしたボールはフリーのスコールズのものへ。バイタルエリアにぽっかり空いた穴へとスコールズは侵入し、そのまま右足を一閃。アウトサイドにかかった綺麗なシュート回転のボールはビクトール・バルデスを寄せ付けず、鮮やかにネットを揺らした。
大一番ではひとつのミスが勝負を決する。バルセロナはミスを犯し、老獪なベテランはこれを見逃さなかった。貴重な先制点を、この単純明快な構図によりユナイテッドは得たわけだ。
その後もしばらくユナイテッドペースが続いた後、徐々にバルサも本来のパスワークを取り戻すが、全体的に恐いのはメッシのドリブル突破ぐらいといった印象でチャンスを作っている割に点の入りそうな気配はあまり漂っていなかった。イニエスタやエトーがほとんど消えていたのだから無理もない。第1戦ではユナイテッドがカンプノウの雰囲気にのまれていたわけだが、この日はバルサの選手たちが少なからずオールドトラフォードの雰囲気に押しつぶされていた。そのことも手伝ってか、バルサのスコアボードに得点が刻まれることはなく、勝負は後半に移行する。
■完封
後半は後のないバルサがある程度ゲームを握り、攻勢をかける時間帯が多かった。ただこれは先制したユナイテッドがカンプノウでの第1戦同様に、守備に重点を置いたフットボールに切り替えたことを意味していたように思う。多少は無意識に守備意識がついただろうが、それでも完全に崩されて決定的なピンチを招くといった場面はなかったわけだから、ユナイテッドの意図通り試合が進んでいたのだろう。
例えばナニが決定機を迎えるなど攻撃にも抜かりがなかったわけだから、ボールポゼッションはバルサに分があったところでユナイテッドの勝ちあがりに向けて時間は過ぎていったわけである。
バルサはアンリやボージャンを投入し、反撃を試みようとするが大きく流れを変えることはできず。アンリは2本ほど惜しいシュートを放ったものの、チーム全体に伝染するような影響力のあるものではなかった。
ただ時間がなくなればなくなるほど失点してはいけない意識が生まれるもの。75分にギグスやフレッチャーを投入した辺りからはほとんど自陣に張り付きはじめ、効果的だったテヴェスやパクチソンも後ろのスペースを埋めるために、前線でのプレスを放棄。亀の甲羅作戦で時が過ぎるのを待った。
結局、少々観客をどきどきさせる展開を演じたユナイテッドだったが、その後何とかバルサの猛攻を振り切り、完封勝利を収めた。9年ぶりのCLファイナルへ。遥か東の地モスクワへ、老獪なユナイテッドの導き手がレッドデビルズをいざなった。
■“順当な”ユナイテッドの勝ちぬけ
戦前、予想されていたよりは拮抗した内容での決着となったが順当な結果だといえる。リーガで不甲斐ない戦いを続けているバルセロナはCLに全てを注いできたはずだったが、プレミアシップで首位を走っているクラブは彼らを上回ったわけだ。最近はリーグで成績を残せていないクラブがCLを制す傾向にあるが、今回の結果はプレミアの1位対リーガの3位という側面から見ても順当なものだったように思う。
“順当”と書くと、ピッチ上でユナイテッドが圧倒的な力の差を示したわけではないので何かしらの批判をちょうだいするかもしれないが、冒頭に書いたとおり過酷な3連戦を強いられていたユナイテッドにとってある程度のローテーションを採用し、それに伴う犠牲を払わなければならなかった、というのが現実的な見方ではないかと思う。彼らはチェルシーに敗れてしまったが、それでもなお首位をキープしており、しかもバルセロナを下し、決勝進出を決めた。これだけで十分ではないか。そういったチームの総合力という現実的な観点から見た場合、ユナイテッドは賞賛に値すると私は考えている。ゆえに、前評判の割りにバルサを圧倒できなかった、というニュアンスのユナイテッドに対する批判は大目に見てあげてほしい。
試合に関してだが、ルーニーは欠場していたものの、テヴェスとパクは彼の穴を埋めて余りある頑張りを見せたように思うし、エブラの積極性は素晴らしかった。C・ロナウドばかりがピックアップされがちだが、ロナウドを支える周りの動きにも注意を払わなければならないと感じる試合であった。攻撃陣を支える守備陣もしかり。彼らが安定しているがゆえにバルサに得点を与えず、最少得点差での勝ちあがりが可能だったのだから。ヴィディッチ、G・ネヴィルの欠場をもろともしない強さには脱帽である。(ただ最近、ファンデルサールのキックミスの多さがどうも気になるが…)
そして何より、相手のミスを見逃さずに決勝ゴールを決めたスコールズには頭が下がるといったところか。前回優勝したときのユナイテッドを知っている数少ないプレイヤーが決勝進出に貢献した。時代は流れ、フットボールの性質が多少変化しようとも、良いものはいい、のである。
バルサに関してはチーム内でごたごたが続いており、様々な面でユナイテッドに劣っていたといわざるを得ない。攻撃力が売りのチームであるにもかかわらず、ユナイテッドのベストではない守備陣を崩すことが出来なかったのだから。しかもCLの敗退により指揮官であるライカールトの去就問題が改めて議論されることになるだろう。また1つごたごたが増えてしまった。早く問題を解決し、快適な環境でフットボールが出来れば実力のあるプレイヤーは力を発揮してくれるはずなのだが…。
■史上初、プレミア勢での決勝戦
明日のチェルシー対リバプールの結果に関係なく、プレミアシップに所属するクラブ同士の決勝が実現することとなった。イングランドのクラブがCLを制するのはリバプール以来3シーズンぶり。イングランド勢が4年連続で決勝に進出し、2シーズン連続でベスト4に3チームが残っていることを考えるとプレミアシップの繁栄程度が反映された結果といえるだろう。
個人的な要望としてはリーグ2位のチェルシーに勝ちあがってもらい、プレミアシップとCLの2冠を両クラブが争うようになってほしい。最近はリーグで4位、5位のクラブが優勝することも少なくなかったわけで、同リーグの1位2位で決勝を戦うのであれば文句なしに“CHAMPION"を決めることが出来るのだから。
といったところで、勝負は下駄を履くまで分からない。明日になるのを楽しみに、眠りにつくことにしよう。
とりあえず、チェルシーに敗れて暗くなっていたであろうユナイテッドファンの方、CL決勝進出おめでとうございます。
posted by so-ma |06:21 |
■07-08 欧州カップ戦 |
コメント(18) |
トラックバック(2)
2008年04月29日
帰国日が迫っている友人が多く、それでなくとも現在通っている学校のコースは後1ヶ月で終了する。約8ヶ月、同じ学校で、同じロンドンで様々なことを学び、助け合い、時を重ねてきた仲間たちとの別れの時は刻一刻と迫っているのだ。最近は“別れを惜しむ会”にはまだ早いものの、それに近いような別れを憂いパブなどで語り合う会が多くなっている。
何が言いたいかといえば、そういった会が大好きな私は積極的に参加しているため、フットボールを見る機会が少なからず制限されてきているわけだ。もちろん週末のスタジアムには這ってでも行くが平日の夜ともなると…観たい試合があっても見られないときがある。
昨日もそうだった。ダービー対アーセナルを近所のパブにて観戦しようと思っていたのだが突然友人が「今日、お前んち行くわ」といいだし、結局5人で宅飲み。友人の恋愛相談を長々と聞いたりして実に有意義な時間だったように思っている。結局、寝たのは朝の7時前…。飲み会がお開きになってから、今日のプレゼンをパワーポインターで作ったわけだが、案の定学校には行けず(汗)先ほどコメントを書くためになんとか起きたのだが、まだお腹には酒が残っている。
とまぁ前置きが長くなったが、要するに時間がなくてこの重要なUEFAカップ出場権争いに関しての記事を書けなかったのはそういうわけだ、というちょっとした弁解をしたかったのである。
■Everton 2-2 Aston Villa
追いつき、追いつかれの展開だったこのゲーム。白熱した両チームの争いは終盤エバートンが勝ち越しに成功したものの、そのわずか1分後にヴィラがカルーのヘディングにより追いつくという両者譲らぬ内容だった。
ちなみに、言い訳だが、この時も友人とパブにて観戦していた。しかも友人は学校の先生と話しており、私も少なからず耳を傾けなければならなかったので観戦に集中することが出来ず、断片的にしか試合について思い出せていない。なのであまりこの試合自体についての言及は避けるが、欧州行きをかけた戦いが素晴らしかったことは言うもでもない。
■両者譲らず…
引き分けでも悪い結果ではなかったエバートンにとって、ヴィラは厄介な相手だった。彼らは是が非でも勝たなければならない。そのモチベーションに加えてアシュリー・ヤングとアグボンラホールという油の乗ったタレントが攻撃陣にはいるのだから、この刃にも似た攻撃をかわすことはトフィーズにとって容易なことではなかったはずだ。いくらエバートンが堅守速攻形のチームだったとしても、である。
案の定、グディソンパークでの試合であったにもかかわらず、ゲームを支配したのはヴィラだった。かじ取り役は中盤の底のペトロフが担い、レオ=コーカーは持ち前の運動量を発揮。この日、トップ下に入ったヤングとカルーと共に2トップの一角を担ったアグボンラホールのスピードはエバートン守備陣にとって気の抜けない存在だった。
エバートンはヤクブ、AJの2トップを採用。ただ中盤にはミケル・アルテタもティム・ケーヒルもおらず、技術面とメンタル面でチームに大きな影響を及ぼす2人のプレイヤーがピッチになっていなかったことはエバートンが劣勢になった少なくない原因のひとつである。
ただ、それでも点を与えないのがエバートンというチーム。ヴィラが終始ペースを握る一方的な内容であったとはいえ、なんとか前半を乗り切ったトフィーズは後半、徐々に敵陣へと侵入すると、伏兵フィル・ネヴィルのミドルシュートで先制に成功する。しかしいつもなら堅守を固めるはずのエバートンだがこの日は脇が甘かった。
ここからはシーズーゲームに。80分にアグボンラホールが同点弾を叩き込んだかと思うが、その4分後、ヨボが豪快に叩き込み再び勝ち越し。ところがそのわずか1分後、バリーのクロスをカルーが頭で合わせて、再びネットは揺れ、結局2-2の同点で試合は終了。
UEFAカップ出場権を争った激しい戦いは痛み分けのドローに終わった。
■残り2試合、逆転は?
3ポイント差が縮まることはなく、全ては残り2試合の結果次第ということになった。そこで、両チームの対戦相手を見てみると…エバートンにとっては厳しい状況といえる。3位のアーセナルとアウェイで戦い、最終節はホームとはいえ、好調ニューカッスルを打ち倒さなければならないのだから。
対するヴィラはホーム最終戦にウィガンを迎え撃ち、最終節にはアプトンパークへと赴く。ただユナイテッドとは違い、ハマーズとの対戦成績が悪いわけではなく、ウィガンにしてもこの時点で残留がほぼ決まっている状況であるため、モチベーション的にはヴィラの方が上だろう。こうみると、3ポイント劣っているとはいえ、得失点差に差がなく、今後の対戦相手にも恵まれているヴィラにも十二分に可能性がある。
どちらが欧州への切符を手にするのか。こちらも優勝争い、残留争い同様、最終節まで目が離せない。
posted by so-ma |20:59 |
■07-08 英国フットボール |
コメント(2) |
トラックバック(0)
2008年04月27日
■Chelsea 2-1 Man Utd
以前、スタンフォード・ブリッジの雰囲気に言及し、「こんなチームには優勝してほしくない」と書いた。あの時は本気でそう思ったし、そんなチームが勝者になったことに腹を立て、頭に来ていた。
だが、この日のスタンフォード・ブリッジの雰囲気は素晴らしかった。ゴール裏はもちろん、スタジアムの雰囲気を共有し作り出している者たち全てが試合に関与し、フットボールの一部になっていることを実感出来た。これぞ首位決戦、これぞ世界最高峰のフットボール。心地よいチャントに包まれたスタジアムにて、極上の試合を制したのは赤い悪魔ではなく、天国へと旅立った大黒柱の母を想うロンドンの青だった。
■奮起するスタンフォード・ブリッジ
試合前から、スタンフォード・ブリッジの雰囲気はいつもと違った。ゴール裏は総立ちで皆が手を叩き、チャントを歌う。それはもはやゴール裏に留まらず、バックスタンド、メインスタンドの観客も彼らに続く。こうして、今季最高の雰囲気は出来上がった。今季最高の雰囲気の中で、チェルシーのイレブンはキックオフを迎えることが出来た。これはチームの中心であるランパードのいないチェルシーにとって大きな後押しとなったなったことだろう。
さて、母のパットさんの死によりランパードはメンバーから外れたがそれ以外はベストといえる布陣をチェルシーは組んできた。対するユナイテッドはC・ロナウド、パク・チソン、テヴェスといったバルサ戦の先発に入った面々が外れ、ギグスやアンデルソン、ナニなどがスタメンに復帰。おそらく当初から予定していたローテーションを組んできたのだろう。この辺りは勝たなければならない者と、引き分けでよい者の考え方の違いが反映された部分だ。
そして、その違いが試合への入り方にも表れていた。勝たなければならないチェルシーは序盤からユナイテッドゴールを襲い、引き分けでもよいユナイテッドは機会をうかがい、息を潜めていた。……といったら聞こえはいいが、実際はチェルシーの圧力にユナイテッドは上手く対処することができていなかったといえる。ミケルがパスを回し、エッシェンが持ち前の運動量でピッチを駆け回り、バラックは積極的にボールに関与すると共に、前線への飛び出しを常に狙っていた。ドログバはいつも以上に体を張り、J・コールとカルーの両ウィングは攻撃にアクセントをつける。選手一人ひとりがランパードの穴を埋める働きをし、試合はチェルシーペースで進んだ。事実、前半ユナイテッドは1度としてツェフを脅かすに至らなかった。
そしてスタジアムの盛り上がりが一段落し、後半の展望を予想し始めた43分、ゴールは生まれた。ドログバのクロスボールに、フリーのバラックが飛び込み、これを頭で叩いてゴール右墨へと突き刺したのである。
ゴールを挙げたことはもちろんだが、実に感動的なシーンだった。
ゴールを決めたバラックはベンチへと歩み寄り、おもむろにユニフォームを受け取った。清清しい青空の下、天に掲げられたその青いユニフォームには「8 PAT LAMPARD」の文字が刻まれていたのである。パットさんへの敬意の証とフランクへの愛情が感じられる素晴らしいシーンだった。間違いなく今シーズンのハイライトとなる場面のひとつである。
■リッキー、痛恨のミス
素晴らしい前半戦を戦ったチェルシーだったが、幕があけた後半戦にはどんよりした雰囲気が漂っていた。先制点により、それまで作り上げてきた必勝ムードが崩れかけていたのだ。ピッチにもスタンドにも、所々に安堵や楽観といったムードが生まれてしまったのである。スタンドからはチャントが響かず、選手たちのプレーも前半とは打って変わって緊張感に欠けるものだった。流れのあった前半とは様変わりし、パスミスが多く、こぼれ球も拾えない。そんな展開の時には総じて何かが起きるもの。嫌な予感は、残念ながら当たってしまった。
最終ラインでP・フェレイラのリスタートを受けたリッキー・カルバーリョがプレッシャーを受け、処理を慌ててしまった結果、信じられないプレゼントボールをルーニーの足元に送ってしまった。そこは強かなユナイテッド、そしてウェイン・ルーニー。このビッグチャンスを逃すことなく、ツェフの牙城をあっさりと崩し、ユナイテッドが1-1の同点に追いつくことに成功した。
長い間、リカルド・カルバーリョという選手を見てきているがあれほどの失態ははじめてみた。あんなミスを犯すとは考えもしなかった。それほど、リッキーの犯したミスに対する印象は強い。パスを出したフェレイラの判断も軽率といえるが、なんにしてもチェルシーは貴重なリードを不意にしてしまったのである。
■荒れる試合とマイケル・バラック
勝利がほしいチェルシー、逃げ切りたいユナイテッド。前者はフェレイラに代えてアネルカを(少し後にカルーに代えてシェフチェンコを)、後者はルーニー、アンデルソンに代えてロナウド、オシェイを投入。お互いに動き始める。チェルシーはロングボールをドログバ、アネルカに当てるというアーセナル戦でも披露した古典的かつ効率のいいパワープレーで反撃を試み、ユナイテッドは途中出場のロナウドやナニが果敢にドリブルを仕掛けるなどカウンターの基点となっていた。
そして、双方の思惑が交差し、どちらかひとつの望みしか現実にならないと悟った時、想いの強さのあまり試合は荒れた。ひとつのプレーを巡り、ひとつのタックルを巡り、ひとつの判定を巡り、過剰なまでの反応がスタジアムでは繰り広げられる。ただこれが今シーズンのタイトルをかけた争いというものなのだろう。ヒートアップする試合は徐々にクライマックスへと近づく。
雌雄が決したのは83分。フェレイラの交代により右サイドバックに入っていたエッシェンのクロスがキャリックの手に当たり、チェルシーにPKが与えられた。ユナイテッドはキャプテン、リオを中心に執拗に抗議するがもちろん判定は覆らず。
キッカーは先制点を挙げたバラック。この試合のみならず、今シーズンの命運を分けるかもしれない、大事な大事な、多大なるプレッシャーのかかるPKをドイツの皇帝は力強く沈め、スタンフォード・ブリッジは爆発した。切望していた勝ち越し点はチェルシーのスコアボードに刻まれた。
■ライン上の攻防。そして…
逃げ切りたいグラントは、この日も何度かチャンスを演出してきたJ・コールに代えてマケレレを投入する。だが一筋縄で行くはずもないのがユナイテッド。守備から一転して攻撃に出た彼らは何度も決定機を迎えた。リオのフィードを繋いで最後はロナウドがシュートを放つ。しかし枠を捉えたボールはA・コールが何とかクリア。ロスタイムにはギグスのFKを繋ぎ、最後はフレッチャーがヘディングシュートを放つ。だがこれもシェフチェンコがゴール寸前でクリアし、チェルシーは危機から脱することに成功した。
そして終了のホイッスル。長い長い、5分というロスタイムを何とか守りきり、チェルシーがリーグ優勝の望みを繋ぐ勝点3を手にした。これでユナイテッドと勝点で並び、優勝争いは分からなくなってきた。
■フランクと共に…
亡くなったパットさんはフランクのみならず、多くの選手から慕われていたようだ。これは新聞で目にした情報であったが、この試合を観てそれが事実であると確信した。1点目のパフォーマンスが全てを物語っている。ランプスが欠場しているにもかかわらず起こった「スーパー・フランク、スーパー」のチャントもしかり。
何が言いたいかといえば、フランク・ランパードの欠場というマイナス・ファクターと考えられていた要素は、必ずしもそうではなかったということである。パットさんやフランクへの想いが、もはや修復不可能となりつつあった(あるいは、なっていた)チェルシーのまとまりをもう一度繋ぎ合わせたことが勝利の最大の要因といえる。
ただ真価が問われるのは残りの2戦だ。好調のニューカッスル、そして残留争いで必至の曲者ボルトンが相手となる。今回はランパードのことがあったし、相手がユナイテッドということで多くのモチベーションがあったが次も継続して力を発揮できるか。
ユナイテッドの結果待ちであるにせよ、この勝利を無駄にすることは本当に勿体無い。フランクのために、パットさんのために、そしてファンのためにも2戦2勝6ポイントが必須事項である。それでなお優勝に手が届かないのであれば仕方がないではないか。最低限、天命を待つことの出来るポジションにて、ユナイテッドのポカを祈ろう。
■追い込まれつつあるユナイテッドだが…
負けても首位は変わらない。ゆえに絶望の淵に立たされたわけではない。サー・アレックスも選手たちもそれは分かっていること。だが、少なからずこれまでより大きなプレッシャーを受けなければならなくなったことは事実である。1ポイントたりとも落とすことが出来なくなったのだから。しかも何度も書いている通り、色々な要因が重なったとはいえ最近苦手にしているウエストハムと残留争い中のウィガンが相手となる。気が抜ける相手ではない。
ただ正直なところ、過酷な3連戦が決まった当初から比重はバルセロナとのセカンドレグにかけられていたように思うし、この試合に全てをかけていたというわけではないため、ユナイテッドの調子の落丁を指摘するのは早すぎる。そのためのローテーションであり、怪我人が気になるところだがバルサ戦は本来のパフォーマンスを披露するだろうと思っている。先を見越して言うならその後の2戦もしかり。
ゆえに過剰に心配する必要はないのではないだろうか、というのが私のユナイテッドに対する見解である。
■プレミアシップは終わらない
両チームの調子に関しては正直はっきりとしない部分があるため、何ともいえないわけだが、この試合の結果次第で消える恐れのあったプレミアシップの火は消えなかったことは非常に好ましい。このところ最終節を前にして優勝が決まることが多かったため、最終節までもつれるかと思うとワクワクしてくる。
熱い戦いを、魂のプレーを、最後の瞬間まで期待したい。
posted by so-ma |03:18 |
■07-08 英国フットボール |
コメント(14) |
トラックバック(6)
2008年04月25日
■Chelsea support grieving Lampard
プレミアシップとCLの2冠を目指すチェルシーの大黒柱であるフランク・ランパードが、それぞれのタイトル獲得に向けた大一番である週末のユナイテッド戦、およびミッドウィークのリバプール戦への出場が極めて難しくなった。
フランクの母、パット・ランパードさん(58)が24日、亡くなられたためである。
パットさんは以前から体調を崩しており、フランクは看病のため最近2試合のリーグ戦を欠場していた。一時、状態が安定したため、フランクは22日のCL、リバプール戦で復帰を果たしたが、再びパットさんの病状は悪化。残念ながら、再び回復することはなく、24日息を引きとられた。
チェルシーはチームの要であり、同クラブの最重要人物の一人であるフランクと彼の家族をサポートするという声明を発表しており、フランクはチームから離れることを許可された。これにより事実上、今シーズンのタイトルの行方を決めるであろう大事な2試合に欠場することはほぼ確定的となった。
チェルシーにとって、フランクの欠場が大きな痛手であることは間違いない。彼の穴を埋めることは至極困難であり、はっきり書いてしまえば現在チェルシー内に彼の代わりを務められる選手はいない。優秀の選手が揃っているチェルシーなのだから、例えフランクがいなくともチームメイトが彼の分まで奮起してくれることを期待しているが、彼らが苦戦を強いられることはもはや必至だ。
ただ、今はパット・ランパードさんのご冥福をお祈りすると共に、フランクや家族が深い悲しみから1日でも早く立ち直ってくれることを願うばかりである。
おそらく土曜日の大一番がはじまる直前、黙祷が捧げられることだろう。スタジアムで、あるいはテレビの前でひとりでも多くの方が彼女らを想ってくれることも、重ねて祈っている。こういうときこそ、選手をサポートするのが我々ファンというものなのだから。
posted by so-ma |07:42 |
■情報 (移籍、怪我人等) |
コメント(2) |
トラックバック(0)
2008年04月24日
■Barcelona 0-0 Man Utd
キックオフ直後のアクシデントというのは、その試合の流れを決定付けたり、考えもしなかった方向へとゲーム展開を導いたりする。幸か不幸か、待ちに待ったこの世界屈指のクラブ同士の対戦において、アクシデントが発生した。開始2分で訪れたPK…。このプレーが全てを決めたとは思わないが、後の展開に少なくない影響を与えたのは事実だろう。
■糸口を見つけたバルサとナーバスになったロナウド
絶対に与えてはならないアウェイゴールをあっさり奪われそうになったバルサだったが、幸運にもC・ロナウドの放ったシュートは枠を外れた。バルサファンは手を叩き、ユナイテッドファンは頭を抱えたであろうこのシーンだが、両チームに少なくない心境の変化があったのではないだろうか。
最近、不調にあえいでいたバルサにとって、プレミアシップで首位を走るユナイテッド相手に攻撃モード全開で試合に臨むことは勇気のいる行為だったはずだ。いくらポゼッションと攻撃思考が彼らのフットボールであるとはいえ、CL準決勝という舞台にもなるとなかなか普段のスタイルを発揮することは難しい。加えてユナイテッドはオーソドックスなオフェンスはもちろん、鋭いカウンターフットボールも展開できる器用なチームである。ファーストレグだけに、失点は避けたいわけで、ある程度守りということも選手たちの頭にはあったのではないだろうか。
だが、あのPKで事態は変わった。あのPKによってバルサの選手たちは開放されたように見えた。
「守っていたら負ける。攻めるしかない」
完全なる憶測だが、そう思った選手も少なからずいたのではないか。そうでなければいくらCLというリーグ戦とはまったく別の舞台とはいえ、あれだけ質の高いフットボールを、しかもユナイテッド相手に展開することは難しい。ユナイテッドが自陣にべったり引く戦術を取っていたとしても、である。
逆にユナイテッドは…特にPKを外してしまった張本人であるC・ロナウドは少なからずナーバスになっているようだった。もちろん、アウェイでポゼッション思考のバルセロナが相手なのだから、カウンターに意識を置き、攻撃を自重することは理解できる。ただ、いつものユナイテッドの切り裂くようなカウンターは影を潜め、バルデスを脅かすシーンはほとんどなかったのだから、バルサの「攻めなければ」という想いに押されていたというか後手を踏んだ形になっていたような気がしてならない。
ゆえに予想していたよりも拮抗した展開になったように思う。あのPKが仮に入ったとしてもユナイテッドが楽勝する保障はどこにもないわけだが、少なくとも貴重なアウェイゴールを持って帰ることができたし、精神的にバルサを追い詰めることもできたことだろう。もちろん、それでもきっちり守りきれるところがユナイテッドの強さであり、2度ほどPKに値するような場面を作ったのだから、ファーストレグの出来としては上々なのだが。
要するに、バルサの意地をユナイテッドががっちり受け止めて、お互い譲らない格好となっている。全てはセカンドレグへ持ち越された、ということである。
■“突き”を狙うバルサと“面”を狙うユナイテッド
0-0というスコアははっきり言って綱渡りだと私は思っている。ユナイテッドは1点で十分だが、逆に失点してしまうと引き分けでは許されない状況に追い込まれてしまう。ヴィディッチの代わりを務めたブラウン、それに伴い久々の右サイドバックでプレーしたハーグリーブスも含めて、今日の守備陣は良くやったし、今日のような守備をしていれば大怪我を負うことはないだろうが、しかしホームでは攻撃に転じなければならない。
しかも相手はバルサだ。キャプテン、そして守備の要であるプジョールがサスペンションから復帰するとはいえ、彼らはおそらくオールドトラフォードでも攻めてくるだろう。捨て身…とまでかは分からないが、それに近いくらい攻撃的な姿勢で臨んでくるに違いない。逆にいえば、そうしなければバルサは勝者にはなれない。一か八かの…剣道の“突き”に似た姿勢でファイナルを目指すを私は予想している。突きをかわせれば、これ以上なく無防備な相手を簡単に料理出来るだろうが、喉元に刃が突き刺されば致命傷となるだろう。
0-0という結果とクオリティーの高かった内容を見てなお私はユナイテッドのモスクワ行きを疑わないが、バルサを過剰に恐れ、自らのスタイルを忘れてしまうようなことがあればあるいは事故が起きてしまうかもしれない。
そのためにもユナイテッドは自らのフットボールを展開すべきである。サー・アレックスはスコアレスドローを狙いにいき、その通りになった。つまりアウェイゴールがなくともオールドトラフォードで勝利を収められるという確固たる自信を持っていたのだろう。そんな自信が持てるほどに、現在のユナイテッドは強い、とサー・アレックス自身が感じているのだ。
だからこそ自慢のサイド攻撃と果敢な2列目からの飛び出しをバルサに見せてやればいい。相手に付き合うことはない。敵と正々堂々正面から向き合い、バルサの脳天に“面”をお見舞いしてやればいいのだ。自らのスタイルを、素早く強靭で情熱的なイングリッシュフットボールを、ユナイテッドには期待する。
posted by so-ma |07:24 |
■07-08 欧州カップ戦 |
コメント(6) |
トラックバック(2)