2008年05月11日
ロングボールの行方 ~クリスタルパレス×ブリストルシティ~ 【プレミアF】
■Crystal Palace 1-2 Bristol Cityセルハーストパークへと足を運んだパレスのファンたちは何を思って帰路についたのだろうか。第2戦への期待か。それとも来期も今期と同じステージで戦わなければならないことに対しての失望か。 柔らかな陽射しがピッチを照らす土曜の正午過ぎ、プレミアシップへの最後の切符をかけた熱い戦いは、最後の最後にドラマが待っていた。■全てをぶつけて… 正直、あまり試合内容について語るべきことはない。純粋な気持ちのぶつかりあいだった。今シーズンの総決算となる試合だったが戦術的に優れているところなどまるで無かった。ロングボール、ロングボール、そしてロングボール。心配になるくらい、技術的には稚拙で、古典的で、フラストレーションの溜まる試合展開だった。 普段なら何事も無かったかのように再開される自陣でのFKさえ、この日は攻撃手段の一つ。ほとんどプレーが途切れるたびに空中戦の強いCBは敵陣へと上がり、送られてきた信じられないほど弱弱しいボールを相手に跳ね返されては自陣へと急いで戻っていく。この繰り返しだった。 クリスタルパレスを前回見た時、攻撃の形が無く、個人の能力に依存している部分が大半をしめていると書いたが、全くその通りだった。チェルシーからレンタルできているスコット・シンクレアは時折相手の脅威となるドリブルを披露していたものの、その他には可能性を感じるプレーは運任せのロングボールくらい。期待していたベン・ワトソンもこの日は精細を欠き、特にセットプレーではミスを連発していたことが悔やまれる。 ブリストルシティにしても同じことが言えた。ただパレスよりはパスを繋ごうという意識が見られ、現にゲームを支配していたのはシティだった。 試合は後半、ブリストルシティがセットプレーから見事に先制点を挙げて、貴重なアウェイゴールを獲得する。だがパレスも猛攻を開始。最初は空周り気味の攻撃だったが、本来CBの選手を前線へ配置する強攻策に出ると、このパワープレーが実り、PKを獲得する。これをこの日は不調だったが間違いなくこのチームの核であるワトソンが決めて同点に。 ちなみに触れていなかったスタジアムの雰囲気だが言わずもがな心地よいものがあった。この得点シーンしかり、ファンがチームを支えていることを感じられる時間だった。 だからこそ、胸が痛くなってしまう。「5分」と表示されたロスタイムに沸いていたパレスのファンは、その数分後、失意の表情でスタジアムを去ることになってしまったのだから。ロスタイム突入して間もなく、ブリストルシティのノーブルが放った強烈なミドルシュートがパレスのゴールに突き刺さったのだから。 ホームでの1-2。闇夜に浮かぶプレミアへと繋がる道に灯っていた街灯が消え、ゴールへ辿り着くことは極めて困難となった。残っているのは月明かりのみ。この光を頼りに、まずはウェンブリーへと駒を進めることが出来るのか。パレスの真価が問われている。 ■ロングボールという現実 ~ニール・ワーノックについて~ ニール・ワーノックという人物は非常に古典的な人物であると思う。それゆえ、彼のチームが展開するフットボールも古き良きイングランドのフットボールという印象。ただ、こういっては聞こえはいいが、逆にいえば攻撃の形が無いフィジカル重視の時代に取り残されたフットボール…とも言い換えられる。 この試合に関してはまさに後者が相応しかった。重要な試合であることは分かるが、自陣から相手ゴール前へロングボールの放り込みを前半の早い時間帯から繰り返しているようでは…。シティの弱点が空中戦なのであれば話は別だが、総じて空中戦に勝利していたのはシティ。相手云々ではなく、ロングボールに頼った彼のやり方が前面に出た試合だといえる。 彼がパレスに就任した際、このチームの状態は酷く、降格の危機すらささやかれていたことを考えると、プレーオフにチームを導いたことは賞賛に値するだろう。 だがそこまでが限界だということがこの試合で分かってしまった。ロングボールだけでは年々ハイレベルになっているプレミアシップでは勝てないし、リーグに参加することすら難しい。あるいは運により、もたらされる得点もあるかもしれないが、1-2で敗れたという現実はパレスに重くのしかかっている。よほどの何かが彼らに味方しない限り、ウェンブリーへ駒を進めることは至極困難だろう。 ニール・ワーノック。06-07シーズンに率いていたシェフィールド・Uの降格の際、ウエストハムにいちゃもんをつけ、ベニテスに噛み付き、ユナイテッドをも目の敵にした彼だが、ひとつの時代の終わりは刻一刻と迫ってきている。
posted by so-ma |01:15 |
■07-08 英国フットボール |
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