2008年04月27日

奮起 ~チェルシー×マンチェスター・U~ 【プレミアF】

■Chelsea 2-1 Man Utd

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以前、スタンフォード・ブリッジの雰囲気に言及し、「こんなチームには優勝してほしくない」と書いた。あの時は本気でそう思ったし、そんなチームが勝者になったことに腹を立て、頭に来ていた。 だが、この日のスタンフォード・ブリッジの雰囲気は素晴らしかった。ゴール裏はもちろん、スタジアムの雰囲気を共有し作り出している者たち全てが試合に関与し、フットボールの一部になっていることを実感出来た。これぞ首位決戦、これぞ世界最高峰のフットボール。心地よいチャントに包まれたスタジアムにて、極上の試合を制したのは赤い悪魔ではなく、天国へと旅立った大黒柱の母を想うロンドンの青だった。


■奮起するスタンフォード・ブリッジ

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試合前から、スタンフォード・ブリッジの雰囲気はいつもと違った。ゴール裏は総立ちで皆が手を叩き、チャントを歌う。それはもはやゴール裏に留まらず、バックスタンド、メインスタンドの観客も彼らに続く。こうして、今季最高の雰囲気は出来上がった。今季最高の雰囲気の中で、チェルシーのイレブンはキックオフを迎えることが出来た。これはチームの中心であるランパードのいないチェルシーにとって大きな後押しとなったなったことだろう。 さて、母のパットさんの死によりランパードはメンバーから外れたがそれ以外はベストといえる布陣をチェルシーは組んできた。対するユナイテッドはC・ロナウド、パク・チソン、テヴェスといったバルサ戦の先発に入った面々が外れ、ギグスやアンデルソン、ナニなどがスタメンに復帰。おそらく当初から予定していたローテーションを組んできたのだろう。この辺りは勝たなければならない者と、引き分けでよい者の考え方の違いが反映された部分だ。 そして、その違いが試合への入り方にも表れていた。勝たなければならないチェルシーは序盤からユナイテッドゴールを襲い、引き分けでもよいユナイテッドは機会をうかがい、息を潜めていた。……といったら聞こえはいいが、実際はチェルシーの圧力にユナイテッドは上手く対処することができていなかったといえる。ミケルがパスを回し、エッシェンが持ち前の運動量でピッチを駆け回り、バラックは積極的にボールに関与すると共に、前線への飛び出しを常に狙っていた。ドログバはいつも以上に体を張り、J・コールとカルーの両ウィングは攻撃にアクセントをつける。選手一人ひとりがランパードの穴を埋める働きをし、試合はチェルシーペースで進んだ。事実、前半ユナイテッドは1度としてツェフを脅かすに至らなかった。 そしてスタジアムの盛り上がりが一段落し、後半の展望を予想し始めた43分、ゴールは生まれた。ドログバのクロスボールに、フリーのバラックが飛び込み、これを頭で叩いてゴール右墨へと突き刺したのである。 ゴールを挙げたことはもちろんだが、実に感動的なシーンだった。 ゴールを決めたバラックはベンチへと歩み寄り、おもむろにユニフォームを受け取った。清清しい青空の下、天に掲げられたその青いユニフォームには「8 PAT LAMPARD」の文字が刻まれていたのである。パットさんへの敬意の証とフランクへの愛情が感じられる素晴らしいシーンだった。間違いなく今シーズンのハイライトとなる場面のひとつである。 ■リッキー、痛恨のミス
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素晴らしい前半戦を戦ったチェルシーだったが、幕があけた後半戦にはどんよりした雰囲気が漂っていた。先制点により、それまで作り上げてきた必勝ムードが崩れかけていたのだ。ピッチにもスタンドにも、所々に安堵や楽観といったムードが生まれてしまったのである。スタンドからはチャントが響かず、選手たちのプレーも前半とは打って変わって緊張感に欠けるものだった。流れのあった前半とは様変わりし、パスミスが多く、こぼれ球も拾えない。そんな展開の時には総じて何かが起きるもの。嫌な予感は、残念ながら当たってしまった。 最終ラインでP・フェレイラのリスタートを受けたリッキー・カルバーリョがプレッシャーを受け、処理を慌ててしまった結果、信じられないプレゼントボールをルーニーの足元に送ってしまった。そこは強かなユナイテッド、そしてウェイン・ルーニー。このビッグチャンスを逃すことなく、ツェフの牙城をあっさりと崩し、ユナイテッドが1-1の同点に追いつくことに成功した。 長い間、リカルド・カルバーリョという選手を見てきているがあれほどの失態ははじめてみた。あんなミスを犯すとは考えもしなかった。それほど、リッキーの犯したミスに対する印象は強い。パスを出したフェレイラの判断も軽率といえるが、なんにしてもチェルシーは貴重なリードを不意にしてしまったのである。 ■荒れる試合とマイケル・バラック 勝利がほしいチェルシー、逃げ切りたいユナイテッド。前者はフェレイラに代えてアネルカを(少し後にカルーに代えてシェフチェンコを)、後者はルーニー、アンデルソンに代えてロナウド、オシェイを投入。お互いに動き始める。チェルシーはロングボールをドログバ、アネルカに当てるというアーセナル戦でも披露した古典的かつ効率のいいパワープレーで反撃を試み、ユナイテッドは途中出場のロナウドやナニが果敢にドリブルを仕掛けるなどカウンターの基点となっていた。 そして、双方の思惑が交差し、どちらかひとつの望みしか現実にならないと悟った時、想いの強さのあまり試合は荒れた。ひとつのプレーを巡り、ひとつのタックルを巡り、ひとつの判定を巡り、過剰なまでの反応がスタジアムでは繰り広げられる。ただこれが今シーズンのタイトルをかけた争いというものなのだろう。ヒートアップする試合は徐々にクライマックスへと近づく。 雌雄が決したのは83分。フェレイラの交代により右サイドバックに入っていたエッシェンのクロスがキャリックの手に当たり、チェルシーにPKが与えられた。ユナイテッドはキャプテン、リオを中心に執拗に抗議するがもちろん判定は覆らず。 キッカーは先制点を挙げたバラック。この試合のみならず、今シーズンの命運を分けるかもしれない、大事な大事な、多大なるプレッシャーのかかるPKをドイツの皇帝は力強く沈め、スタンフォード・ブリッジは爆発した。切望していた勝ち越し点はチェルシーのスコアボードに刻まれた。 ■ライン上の攻防。そして… 逃げ切りたいグラントは、この日も何度かチャンスを演出してきたJ・コールに代えてマケレレを投入する。だが一筋縄で行くはずもないのがユナイテッド。守備から一転して攻撃に出た彼らは何度も決定機を迎えた。リオのフィードを繋いで最後はロナウドがシュートを放つ。しかし枠を捉えたボールはA・コールが何とかクリア。ロスタイムにはギグスのFKを繋ぎ、最後はフレッチャーがヘディングシュートを放つ。だがこれもシェフチェンコがゴール寸前でクリアし、チェルシーは危機から脱することに成功した。 そして終了のホイッスル。長い長い、5分というロスタイムを何とか守りきり、チェルシーがリーグ優勝の望みを繋ぐ勝点3を手にした。これでユナイテッドと勝点で並び、優勝争いは分からなくなってきた。


■フランクと共に…

亡くなったパットさんはフランクのみならず、多くの選手から慕われていたようだ。これは新聞で目にした情報であったが、この試合を観てそれが事実であると確信した。1点目のパフォーマンスが全てを物語っている。ランプスが欠場しているにもかかわらず起こった「スーパー・フランク、スーパー」のチャントもしかり。

何が言いたいかといえば、フランク・ランパードの欠場というマイナス・ファクターと考えられていた要素は、必ずしもそうではなかったということである。パットさんやフランクへの想いが、もはや修復不可能となりつつあった(あるいは、なっていた)チェルシーのまとまりをもう一度繋ぎ合わせたことが勝利の最大の要因といえる。

ただ真価が問われるのは残りの2戦だ。好調のニューカッスル、そして残留争いで必至の曲者ボルトンが相手となる。今回はランパードのことがあったし、相手がユナイテッドということで多くのモチベーションがあったが次も継続して力を発揮できるか。

ユナイテッドの結果待ちであるにせよ、この勝利を無駄にすることは本当に勿体無い。フランクのために、パットさんのために、そしてファンのためにも2戦2勝6ポイントが必須事項である。それでなお優勝に手が届かないのであれば仕方がないではないか。最低限、天命を待つことの出来るポジションにて、ユナイテッドのポカを祈ろう。


■追い込まれつつあるユナイテッドだが…

負けても首位は変わらない。ゆえに絶望の淵に立たされたわけではない。サー・アレックスも選手たちもそれは分かっていること。だが、少なからずこれまでより大きなプレッシャーを受けなければならなくなったことは事実である。1ポイントたりとも落とすことが出来なくなったのだから。しかも何度も書いている通り、色々な要因が重なったとはいえ最近苦手にしているウエストハムと残留争い中のウィガンが相手となる。気が抜ける相手ではない。

ただ正直なところ、過酷な3連戦が決まった当初から比重はバルセロナとのセカンドレグにかけられていたように思うし、この試合に全てをかけていたというわけではないため、ユナイテッドの調子の落丁を指摘するのは早すぎる。そのためのローテーションであり、怪我人が気になるところだがバルサ戦は本来のパフォーマンスを披露するだろうと思っている。先を見越して言うならその後の2戦もしかり。

ゆえに過剰に心配する必要はないのではないだろうか、というのが私のユナイテッドに対する見解である。


■プレミアシップは終わらない

両チームの調子に関しては正直はっきりとしない部分があるため、何ともいえないわけだが、この試合の結果次第で消える恐れのあったプレミアシップの火は消えなかったことは非常に好ましい。このところ最終節を前にして優勝が決まることが多かったため、最終節までもつれるかと思うとワクワクしてくる。

熱い戦いを、魂のプレーを、最後の瞬間まで期待したい。


posted by so-ma |03:18 | ■07-08 英国フットボール | コメント(14) | トラックバック(6)
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