2008年04月07日

真の主役たちの宴 ~FAカップセミファイナル、バーンズリー×カーディフ~ 【プレミアF】

■Barnsley 0-1 Cardiff

ジャイアント・キリングが代名詞となっているFAカップだが近年は順当にビッグクラブが優勝を収めてきた。最近では03-04シーズンに当時チャンピオンシップに所属していたミルウォールが決勝進出を果たしたのが最大のサプライズだったが、それにしてもマンチェスター・Uを前に0-3で敗れ去った。ビッグ4以外のチームが最後にカップ・ウィナーになったのは1994-05シーズンのエバートンだが、10シーズン以上も遡らなければならないのだから、もはや驚きですらある。

だが今シーズンは違う。ベスト4にビッグ4の名前はない。しかもチャンピオンシップ所属クラブが3つ。いかに多くの大番狂わせがあったかが分かる。中でも注目はポーツマス、WBA………ではなく大番狂わせを演じた張本人バーンズリーとウェールズのクラブであるカーディフだ。ご存知、バーンズリーはビッグ4の2つを食ったクラブ。アンフィールドでリバプールを下し、ホームではチェルシーを葬り去った。一方のカーディフも準々決勝でボロをアウェイで破り、イングランドのチーム以外がFAカップを制するのではないか、と現地ではかなり注目されている。

そして今回は、今シーズンのFAカップの主役といっても過言ではないバーンズリーとカーディフの試合を観にウェンブリーへ足を運んできた。


■スターティング・イレブン

Barnsley: Steele, Van Homoet, Foster, Souza, Kozluk (Butterfield 86), Campbell-Ryce, Hassell, Howard, Devaney (Leon 68), Odejayi, Ferenczi (Coulson 65). 

勉強不足のため、どのようなチームか解説することは難しいが、注目はOdejayi(発音が日本語に直せないため現地表記のままにて失礼)。チェルシー戦で決勝点を挙げた、このチームのエースである。おそらく彼にロングボールを当てる…というチャンピオンシップらしい戦いを繰り広げると思われる。

Cardiff: Enckelman, McNaughton (Ramsey 47), Johnson, Loovens, Capaldi, Ledley, Rae, McPhail, Sinclair (Thompson 61), Whittingham, Hasselbaink (Scimeca 88).

一方のカーディフは懐かしい名前がいくつか。ジミー・フロイド・ハッセルバインクやトレバー・シンクレアはお馴染みだろうし、この試合での注目はウィッティンガム。ヴィラでは準レギュラーの地位を抜け出せず、いつの間にか移籍してしまったが、彼の左足に疑いの余地はない。


■沸くウェンブリー

おそらくサポーターたちにとっては一世一代の晴れ舞台なのだろう。もう試合開始前からお祭り騒ぎ。皆が皆、声を出し歌う光景は私の大好きなものだったし、ウェンブリーへと向かう一本道を歩く小さな少年が横にいる父と同じようにして手を広げて胸を突き出し、声を張り上げる姿には何ともいえない哀愁が漂っている。やはりイングランドのサポーターは、文化は、こうでなくては。

そんなわけで公式記録8万2752人以上の迫力がウェンブリーにはあった。この空気を味わえただけで、ここへ来たかいがあるというものだ。この日は4月だというのにロンドンではなんと雪が降っていて、凍えるような寒さだったのだが、それを吹き飛ばしてくれる温かい光景だった。


■“チャンピオンシップレベル”の清清しさ

試合はすぐに動いた。9分、ゴール前の混戦からこぼれてきたボールをカーディフのレドリーがボレーでゴールネットを揺らし、ウェールズのサポーターたちを大喜びさせた。

内容的にはチャンピオンシップらしい戦いだった、と書くに相応しい試合だったように思う。特にバーンズリーは予想通り前線のOdejayiにボールを当てる戦術が目立った。これはカーディフにも当てはまる。ただ比較的カーディフはボールを繋ぎ、サイドを崩そうと試みるチームで、ウィッティンガムやシンクレアはこの作業に一役買っていた。特に前者の左足には、やはり魅力がある。正確なボールをゴール前に供給し、我々を楽しませてくれた。といっても華麗に相手を崩すほどの技術は両チームの選手共に持っていなかったのだが。この辺りは“チャンピオンシップレベル”と書かれても致し方ない部分だろうか。

しかしながら気持ちでカバーしようと必死になる姿がまた魅力的なのだ。その分、際どいタックルも少なくなかったが、お互いリスペクトの精神を持ち、誰かのようにオーバーリアクションで痛がったり、ファールをもらいに行く選手もいなかったことはただただ清清しいというか、観ていて気持ちのいい試合だった。この辺りはむしろ勝つためには何でもやっていいという勝利至上主義に取り付かれつつあるプレミアシップのプレイヤーたちに見習ってほしい部分である。


■決勝へとコマを進めたのは…

試合を通じてバーンズリーはセットプレーやハイボールからチャンスを作り出すも決めきれない場面が多かった。最大の決定機は後半の中ごろにOdejayiがディフェンスラインの裏を完全に抜け出すも余裕がありすぎたのか狙いすぎて枠を捉えることができず、チャンスを活かせなかった。

カーディフは早い時間に先制したため、あまりリスクを犯した戦い方はせず、ウィッティンガムの左サイドを中心に、ゲームを進めた。ジミーは所々で老獪さを見せたが衰えは隠せず。シンクレアも後半中ごろに退いた。80分を過ぎると、時間を使い始め、虎の子の1点を守ろうと必死に。

結局、このままカーディフが決勝への切符を手にし、再びウェンブリーへ戻るチャンスを得た。

Goals: Ledley 9. 
Att: 82,752.


■決勝への展望

火曜日にポーツマス(対ウエストハム)を観に行くので、ポーツマスの調子に関してはそこで計りたいと思うがFAカップは一発勝負。カーディフにも十分チャンスがあるとみていいだろう。もちろん全体的なレベルはポーツマスに劣るが、そんなことで試合が決してしまうのであれば彼らはウェンブリーに来ていない。ハッセルバインクが「最後のチャンスにかけたい」と話すように、この試合に並々ならぬ想いを寄せているのは何もファンだけではないのだろう。

ジャイアント・キリング、大番狂わせ、大穴の躍進。

カップ戦の醍醐味が味わえるかも…と期待の持てる、近年にないFAカップ決勝が楽しめそうだ。

posted by so-ma |03:25 | ■07-08 英国フットボール | コメント(2) | トラックバック(0)
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