2008年05月03日
絶頂と絶望 ~フラム×バーミンガム~ 【プレミアF】
■Fulham 2-0 Birmingham危惧していることが2つあった。 1つは、前回観に行った試合がCLチェルシー×リバプールという世界最高峰の雰囲気の中行われる試合だったため、いくら残留争い直接対決とはいえ、雰囲気に劣り、物足りなさを感じてしまうのではないか、というもの。 もうひとつはこの日、フットボールをはじめてみる友人を連れての観戦だったということ。この試合が退屈なものに終われば、彼らのフットボールに対する評価は決まってしまう。いい試合に、白熱したゲームになってくれるだろうか、との不安があった。 だが、そんな無駄な心配は杞憂に終わった。 この日のクレイブンコテージには、感動的だったスタンフォードブリッジに勝るとも劣らない最高の雰囲気と選手たちの意地とプライドがぶつかり合った最高に熱い戦いがピッチにはあった。私はただただ脱帽し、友人は目を輝かせて緑の芝生を眺めながら、試合後もしばらくは心地よい余韻とフットボールの美しさが心を巡った。
■残留争い直接対決 この試合を迎える時点で、フラムは勝点30の19位、バーミンガムは32の18位で、共に降格圏に位置していた。ただ、残留を争うレディングやボルトンの勝点は33で、この試合に勝利すれば降格圏を脱出することが可能に。フラムはもちろんのこと、バーミンガムにとっても勝たなければならない試合だったわけである。 Fulham Keller, Stalteri, Hughes, Hangeland, Konchesky, Davies, Bullard (Andreasen 88), Murphy, Dempsey (Healy 90), Kamara (Nevland 67), McBride. Birmingham Maik Taylor, Kelly, Jaidi, Ridgewell (Queudrue 46), Murphy, Larsson, Muamba, Johnson, Kapo (Zarate 58), Forssell (Jerome 74), McFadden. ■“今季最高”のクレイブンコテージ クレイブンコテージは独自の応援スタイルを持っている。その最たる特徴が“ハリセン”だ。フラム側の席、全てに配られているこのハリセンを叩くことにより、スタジアムの雰囲気は作り出される。試合前から鳴り響くハリセンの音とそれに共鳴するチャント。もはや引き分けですら許されない状況に、サポーターたちはハリセンを力いっぱい叩き、声を張り上げないわけには行かなかったのだろう。いつもの雰囲気とは一味違うものがあった。 話は逸れるが非常に良いアイデアであると前々から思っていた。フラムサポーターは気質的に元々おとなしく、スタジアムの規模的にもそれほど大きくはないため、相手チームに圧力を与えるほどの雰囲気を作ることに苦労していた。だがハリセンを導入して以降、クレイブンコテージの雰囲気は確実に変わった。観客のボルテージによるが、ハリセンの場合、手を叩くよりも確実にノイズを出せるし、団結して応援しやすい。当然雰囲気は向上する。このようにどうにかしてフットボールを盛り上げようとピッチ外でもクラブは努力しているのだ。 そしてその成果がこの日のクレイブンコテージにはあったし、我々は最高の雰囲気を堪能できたのである。 ■拮抗の前半地鳴りがスタジアムに響く中、開始のホイッスルが吹かれると拮抗した勝負が展開された。 ジミー・ブラード、ダニー・マーフィーら、クリエイティブな選手をを要するフラムはショートパスを繋ぎ、バーミンガム守備陣を崩しにかかるが“各駅停車”で効果的な攻撃にはならない。何より、いつものことだが特にマーフィーはイージーなパスミスが多すぎて少なからずチームのリズムを崩していた。対するバーミンガムは慎重な立ち上がりを見せ、守備はカタツムリ。攻撃に関してはロングボールとマクファーデンらFW陣の頑張りに期待するぐらいしか得点への匂いを感じさせなかった。 それでもフラムはセットプレーから決定的なチャンスを作る。だがGKマイク・テイラーのグッドセーブにより、得点機を逸した。結局、前半にスコアは動かず、0-0のまま怒涛の後半に突入する。 ■勝負の後半 この日、英国では競馬のG1である2000ギニーというレースが行われていた。私の友人の中にもこの200回記念という記念レースを観に、ニューマッケットという町まで赴いた者もいたわけだが、後半の展開はまさに競馬のようだった。 シーズン終盤の重要な試合における、得点を奪わなければならない、勝たなければならない勝負の後半戦。最終コーナーを曲がって、最後の直線に入ったフラムは鳴り響くチャントに刺激され、鞭を入れられたサラブレッドの如く、ピッチを疾走した。 52分、FKからジミー・ブラードが絶妙なボールをゴール前へ提供し、バーミンガムDFを完全に振り切ったマクブライドが頭であわせ、貴重な先制点を挙げたのである。 今期、最高の雰囲気を醸し出していたスタジアムは、この試合一番の盛り上がりを見せ、まさに最高の瞬間となった。 これで後がなくなったのはこの日赤いユニフォームを着ていたバーミンガム。彼らも何とか、同点に追いつこうと遅れながら鞭を入れる。だが、前半から緊張感の中、激しいぶつかり合いを繰り返してきた体は予想以上に疲弊しているように見えた。何度か得点機を作り出すものの、継続的なものとはならず、鞭を入れても試合のペースも完全に握ることは出来なかったのである。 そして、試合が決する時が来た。87分、バーミンガムDFのクリアボールがネヴランドに当たり、そのボールはラインの裏へ。このボールをネヴランドが拾うと完全にゴールへと独走。マイク・テイラーとの1対1を制し、ゴールネットを揺らしたのである。 この瞬間、まだ試合終了まで時間はあったがフラムのファンたちは勝利を確信した。 この日2度目の爆発的な歓声がそれを示していた。 結局、4分のロスタイムを凌ぎ、フラムが貴重な貴重な勝点3を手にした。そして、ゴール手前で抜群の伸びを見せたフラムの快勝劇に我々は心を奪われたのである。Fulham 2-0 Birmingham 【F…McBride 52, Nevland 87】
■望み ~残留に向けて~
この勝利でフラムは降格圏を脱出した。17位レディングとの得失点差を考えると最終節、ポーツマスに勝利すれば自力での残留をほぼ確定できる。それほどまでにこの試合で積み上げた勝点3は大きな意味を持ってくるのだ。
試合に関してだが、正直な話、ゴール裏からの観戦であり、しかも後半からは前3列目から見ていたので細かな選手たちの動き等の批評は難しい。マーフィーのパスミスの多さが目立ち、ジミーもいつもよりミスが多かったことが印象に残っているくらいか。ただこれらのミスもチーム全体でカバーし致命傷には至らず。ジミーのキック制度の素晴らしさは先制ゴールのシーンで証明されており、またマクブライドは決めてほしいところで決めてくれるところあたり、やはりこのチームの絶対的エースといえるだろう。それから激しいアップダウンを繰り返したコンチェスキーの動きはチームを助けていたように思う。
逆にバーミンガムは厳しい状況になった。ブラックバーンとの最終戦を制しての結果待ち。ただここ数シーズン、劇的な残留劇が目立っており、昨季も37節まで残留圏にいたシェフィールド・Uが、最終的には降格の淡き目にあっている。望みを持って、ホームでの最終戦に全力を注ぐことだろう。それにしてもマクファーデン、技術はあるのだがこの日は持ちすぎや消極的な姿勢でチャンスを逸していたような。周囲のサポートが遅かったとも言い換えられるが…。
そして最後に、これだけは書いておきたい。この日のクレイブンコテージは、本当に素晴らしかった。プレミアシップの優勝争いチェルシー対マンチェスター・UやCL準決勝チェルシー対リバプールも素晴らしかったが、この試合は決してこの2試合に劣ってはいなかった。
つまりは、フットボールのレベルだとか、やっている内容だとか、そんなことは関係ないのである。どちらが熱いか、どちらが戦えるか。私はフットボールとはそんなスポーツだと信じている。だからこそファンの熱気が選手を後押しし、伝染し、化学反応とも言える変化を生むのだ。
時は2008年5月3日、柔らかな日差しピッチを照らす土曜日の午後、テムズ川のほとりの小さなフットボールパークにはそんな情熱と魂がぶつかり合う素晴らしい戦いがあった。勝者は絶頂を、敗者は絶望を感じながら、間違いなく行われていた最高の戦いへの余韻に浸った。
posted by so-ma |13:40 |
■07-08 英国フットボール |
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この記事に対するコメント一覧
絶頂と絶望 ~フラム×バーミンガム~ 【プレミアF】
>つまりは、フットボールのレベルだとか、やっている内容だとか、そんなことは関係ないのである。
そうなんですよね。僕も最近そう感じています。例えばチェルシーが決勝へ進んで、僕自身は大変に喜んでいましたが、それと同じくらいBBCのラジオを聞くとノッティンガムフォレストのチャンピオンシップ昇格にフォレストファンは狂喜乱舞していた。特に今シーズンのフットボール界が劇的な展開が多いからかもしれませんが、やっぱりレベルではなくハート。確かにビッグ4の選手は世界でもトップクラスですが、チャンピオンシップやリーグONEの選手でも戦うということに関しては全くの五分だと思います。そもそも比べる事自体ナンセンスだと思いますが。クラブ一つ一つにそれぞれの違った戦いがある。特にこの時期、降格や昇格が確定するニュースを聞いていくと、そういったどのリーグに所属しているとかいうことはあまり関係ないと思えてきます。
posted by パッロン | 2008-05-05 04:46
絶頂と絶望 ~フラム×バーミンガム~ 【プレミアF】
同感ですね。観ている者に伝わってくる、熱気。これが観客にも伝染し、スタジアムには興奮が生まれんですよね。
全試合こういった試合を見せるのは、無理でしょうけど。しかし、スペクタクルな見せるプレイもいいですが、闘う姿勢を出すプレイは、見ている者に興奮を与えますよね。残留争いはそういう意味でもおもしろいですね。しかし、ダービーがぶっちぎりの最下位なので、もっと上位と下位の差が縮まると、さらにおもしろいと思います。
個人的にフルハムは、稲本やファンデルサールがいたので頑張ってほしいです。
posted by koike | 2008-05-05 04:51
絶頂と絶望 ~フラム×バーミンガム~ 【プレミアF】
Readingファンですが、FULHAMの勢いはすごいですね。これはブラード、マクブライド、またマーフィーといった一流の選手がチームの核にいることがあるのではないかと感じます。我がレディングはクラブの方針で、ビッグプレイヤーを獲得しません。チームとして結果が出せないとき、立て直すことも、個人のスキルで打破することもできません。プレミアで5試合連続無得点ですが、最終節アウェイのダービー戦も勝てる気がしません。今期フルハムには連敗しているので、フルハムのほうが残留の資格が充分にあると思います、。
posted by hiro | 2008-05-05 14:01
絶頂と絶望 ~フラム×バーミンガム~ 【プレミアF】
ここ最近のフルハムの快進撃はやっぱり長年プレミアで戦ってきた経験と意地。そしてブラードとマクブライドが怪我から復帰してきたことでしょう。この二人がシーズン通して長い間いなかったのが響いた。
この数週間はフルハムファンとしては最高にいい気分ですね。2連勝なんてかなり長い間できてなかったんで。ポーツマスはFAカップがあるんでできれば戦力落としてくれればいいんですけどね。
posted by フルハムファン | 2008-05-05 15:01
>パッロンさん、koikeさん
皆さん、コメントありがとうございます。
>パッロンさん
本当にハートが一番大切だと心から感じています。ありきたりな言葉であることは分かっていますが、この言葉しか思いつかないくらいのウェイトをハートがしめているのだと思っています。
>koikeさん
特に終盤は熱い試合が多いですね。選手にしてもファンにしても来期一年の生活が決まるわけですから(笑)フラムは個人的に愛着のあるクラブですので、出来れば残留してほしいと思っています。
posted by so-ma | 2008-05-06 02:30
>hiroさん、フルハムファンさん
>hiroさん
レディングは遂に降格圏まで落ちてきてしまいましたね。ただ最終節はダービーですし、大量点を奪ってフラムの結果を待ちたいところですね。
>フルハムファンさん
個人的にジミーは大好きなプレイヤーなので、プレミアにもフラムにも残ってほしいと思っています。ポンピーは、レドナップがどのような決定を下すは分かりませんがそうであるとフラムにとっては有利ですね。ただFAカップ決勝まで間があるので、逆にベストメンバーを組むということも考えられますが…。
posted by so-ma | 2008-05-06 02:33



