2008年04月14日
王者は幸運でもある ~マンチェスター・U×アーセナル~ 【プレミアF】
■Man Utd 2-1 Arsenal 決して、勝者が圧倒的な力の差を見せ付けたわけではなかった。むしろ多くのチャンスをつくり、ファンに希望を与えていたのは敗者のほうだった。試合後、アレックス・ファーガソン監督に同情を買うほどの戦いを若きガナーズは展開して見せた。 だが勝ったのはユナイテッドであり、負けたのはアーセナルだった。そしてこの勝敗により、今期のアーセナルは終わった。ユナイテッドは2冠に向けた大きなハードルに足を取られながらもしっかりと踏み越え、前に進んだ。
■サプライズ ユナイテッドが普段どおりのメンバーを起用してきたことに比べ、アーセナルのスターティングイレブンを見て目を疑った方は多かったのではないか。ヴェンゲルはGKレーマンと若いソングを起用。しかもSKY(日本で言うスカパー)のスタメン予想ではソングがCBに入っており、さらに目を疑った。 確かにリバプール戦でのセンデロスの出来は悪かったし、以前、ソングを起用すべきだといったが、彼は中盤の選手であり、ディフェンスラインでの起用など予想もしていなかったのだから。中盤の底であるジウベルトがひとつ下がって、ソングがそのポジションにつくのではないか、あるいはトゥレが中に入り、ソングは右SBを務めるのではないか、と予想したが、試合が始まってみるとソングはSKYの予想通りディフェンスラインのセンターに入り、ギャラスとコンビを組んだ。 ■プライドにかけて… 前半開始早々からペースを握ったのはアウェイのアーセナルだった。エドアルドの負傷から急激に成績を落とし、独走していた首位の座を明け渡し、リバプールとの3連戦で惜敗。怪我人が多く、主力は疲弊し、心身ともに満身創痍の状態になるアーセナルの最後の意地だったような気がしてならない。 ユナイテッドはある程度様子見をしているようにも見えたが、ここ最近の調子のよさを考えればアーセナルを圧倒することも十分にありうると予想していたため、慎重に来たな、というのが率直な感想だった。 ただアーセナルに何度か決定機が訪れたものの、ユナイテッド守備陣の踏ん張りとアデバイヨールのシュートミスなどもあり、ネットを揺らすまでにはいたらず。対するユナイテッドはカウンターや相手(ソング等)のミスからチャンスを掴んだが、ルーニーとの1対1をレーマンが制するなどして耐える。前半はこのままゴールが生まれることはなく、終了する。 ■セットプレー2発での決着 後半は早々に動いた。セットプレーの流れからファンペルシーの上げた絶妙のクロスボールをアデバイヨールが押し込み、ガナーズが待望の先制点を手にした。 にもかかわらず、ここがアーセナルの悪い癖というか、課題の部分というか、直後にギャラスのハンドによりPKを与えてしまった。故意ではなかったにせよ、百戦錬磨のキャプテン、ギャラスともあろう男がこのような失態を犯してしまうとは…。このPKをクリスティアーノ・ロナウドが落ち着いて決め、あっさりとユナイテッドが同点に追いついた。 なんとか勝ち越したいアーセナルだけに、その後、反撃に繰り出すものの決定的なチャンスを作ることは出来ず。逆に後半10分過ぎにテヴェスとアンデルソンを投入したユナイテッドは落ち着きを取り戻す。そして徐々にアーセナル陣内へと進入すると、ゴール正面でFKを獲得。アーセナルにしてみれば痛恨のファールだった。しかもこのファールを謙譲したのが、これまた百戦錬磨のブラジル代表キャプテン、ジウベルト。いくら今シーズンは控えに徹していたとはいえ、この大事な一戦でこのようなミスを犯してしまっては…。 結局、このチャンスに、ミッドウィークのローマ戦で素晴らしいクロスを提供し、テヴェスのゴールをアシストしたハーグリーブスが、これまた完璧なFKを蹴りネットを揺さぶる。レーマンは一歩も動けず、アーセナルにとっては痛い痛い2失点目がオールドトラフォードの小さなスコアボードに刻まれた。 反撃したいアーセナル…だったが手ごまがなく、ジャスティン・ホイトを投入するぐらいの策しか持ち合わせていなかった。結局、このまま試合は終了し、ユナイテッドがアーセナルを蹴落とし、優勝戦線を一歩リードした。 ■ユナイテッド、王座へ アーセナルにとっては悔やんでも悔やみきれない敗戦だろう。何せ失点はPKとFK。しかもどちらもギャラスとジウベルトというベテラン選手が絡んでしまった失点である。ユナイテッドのキーマンであるロナウドをほぼ押さえ込んでいただけに、セットプレーで沈むというシナリオはなんとも…。ソングも何度かミスを犯したが及第点が与えられるぐらいの動きはしていただけに、やはりベテラン2人が与えてしまったセットプレーは痛恨だった。 もちろん、フラミニやロシツキーなどの主力を欠いたことはアーセナルにとっては不運だったが、それにしてもユナイテッドの切ったカードがテヴェス、アンデルソン、ギグスということを考えると選手層の違いを痛感させられる。この試合ではアーセナルが勝利していてもおかしくなかったが、こういった側面をトータルして見るとユナイテッドに軍配が上がったこともある意味うなずけてしまうというのが率直な感想だ。 もはや消化試合となってしまったプレミアでの残り試合だが、主力の休養や若手の底上げなど有意義なものとしてもらいたい。(ああ、こんなことを書かなければならないなんて、悲しいったらありゃしない。) 逆にユナイテッドはこのような形であれ勝利を掴むことが出来るがゆえに強いのだろう。相手のベテラン選手のミスという幸運にしっかりとつけこみ、したたかに勝利。ここ最近の強さを見せ付けて、ガナーズに引導を渡すことはできなかったが、こういった勝負どころでしっかり勝利を収められること自体が彼らの強さである。チェルシー戦とリバプールとの3連戦、そしてこの試合にも敗れてしまったアーセナルとは対照的だ。 そして上記の通り、ユナイテッドのキーマンであるロナウドはいつものようなパフォーマンスを披露できなかったものの、それをカバーするチーム力がユナイテッドにはあったといっていいだろう。ロナウドにしてもPKとはいえ、最低限自分の仕事をしてみせた。 これで仮にチェルシーと勝点差3のまま、直接対決に挑み、敗れたとしても得失点差で首位を守ることの出来るポジションに居るのだから、彼らが王座に最も近いといっていいだろう。アウェイでのブラックバーン、最近苦手としているウエストハム、残留争いで必死のウィガンと、チェルシー以外にも厄介な相手との対戦が残っているが、よほどの事故が起こらない限り、彼らの2冠へ向けたロードは順調なものとなるのではないか。 そんなことすら思ってしまう、ユナイテッドの勝利とアーセナルの脱落だった。
posted by so-ma |22:36 |
■07-08 英国フットボール |
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この記事に対するコメント一覧
王者は幸運でもある ~マンチェスター・U×アーセナル~
悔やんでも悔やみきれない敗戦ではありました。しかしながら必然と言えなくもない敗戦でした。
主力をいかなる状態でも使わねばならず、選手層の薄さが付きまとうアーセナルと主力をしっかり休ませ切り札として切れるマンチェスター・・・蓄積された疲労はどうしてもアーセナルからギリギリの攻防での集中力や判断力を奪っています。終盤戦での明らかな失速は選手個人への責任ではなくチームとしての考え方に行き着くと思います。
アーセナルには将来有望な若手が数多くいます。チームの補強も若手の成長を第一に考えておりその点からも若手には理想的な環境と言えます。来季も若手の更なる成長がチーム力を上げてくれることでしょう。
それでも現状のままでは来季もプレミアのタイトル争いは演じることが出来てもライバルチームを上回ることは難しい状況であると考えざるを得ません。
アーセナルが時間をかけて行うチーム強化をライバルは資金という手段であっと言う間に行ってしまいます。
posted by yukihiro | 2008-04-15 08:54
王者は幸運でもある ~マンチェスター・U×アーセナル~
ソングはCLのスラヴィア・プラハ戦でもCBとして使われていましたから、あのポジションで出てきてもおかしくなかったと思います。まぁ前半幾つかミスはありましたが、後半はそこまで目立ったチョンボもありませんでしたし、あまり試合に出ていない中ではよくやっていたように見えました。
ただ仰るとおり、ユナイテッドとの選手層の差は大きかったですね。ユナイテッドも昨シーズンはその点で苦しみましたが、積極的な補強で今シーズンは見違えるようなチームになりましたし。まぁアーセナルにそこまで出来るお金があるとは思えないのですが、それでも来シーズンに向けては、バックアッパーの確保を進めてほしいところですね。
posted by Alan Hetarade | 2008-04-15 18:30
>yukihiroさん
毎度、コメントありがとうございます。
見方は非常に難しいですね。若手育成がアーセナルの方針ですし、お金を持ったクラブとの対抗手段ではあるのですが、反面、育つ保障はありませんし、層の厚さを確保することが難しい。シーズン開始から層が厚くては若手の育成ができませんからね。
ただ、シーズン前の評判は優勝争いにすら加われないのではないか、といったものが多く見受けられたにもかかわらず、一時は首位を独走し、現段階でもあれだけ大量に選手を補強したリバプールを抑えて3位に食い込んでいるのですから十分に合格点を与えられるシーズンなのではないかと私は思っています。
アンリが抜けた代わりに、セスクが王様になり、フラミニが育ち(契約更新してくれよ!)、アデバイヨールが覚醒した。ウォルコットやクリシーなんかも確実に伸びてきている。ゆえに今期は過渡期というか、来シーズンに向けた準備期間としてとらえてあげたほうが良いのかもしれません。
なにはともあれ、本当にお疲れ様でしたといいたいです。ユーロに、来期に支障が出ないようにセスク・ファブレガスに十分な休養を与えてくれることを切に願います。
posted by so-ma | 2008-04-15 21:25
>Alan Hetaradeさん
毎回のコメント、感謝しております。
ソングのCBに関しては、認識不足でした。ただユナイテッドとの攻防戦で彼を使うというのは…ヴェンゲルもギャンブルに出たなぁというのが率直な感想でした。来期は日本に帰りますしスカパー完備でシーズン通して多くの試合をカバーできるので、より広い見識を持てればと思います。あ、でも就活だ…。
バックアッパーかはわかりませんが、ヴェンゲルもベテランを一人獲得したいといった趣旨の発言をしていましたし、現メンバーの引止めに全力を尽くすといっていたのでその通りにことが進めばと願っています。
最低でも計算のできる中盤、FWを一人ずつはほしいところでしょうか。後、毎シーズン言われているGKも…。ファビアンスキーが伸びてくれるのが一番なんですが…。
posted by so-ma | 2008-04-15 21:33
王者は幸運でもある ~マンチェスター・U×アーセナル~ 【プレミアF】
ありがとうございます。
私も今季に関しては満足感があります。レギュラーの体調さえ万全であればどこが相手でも互角以上の勝負が出来る事は証明されました。チーム力が投資額に比例しない事もよく分かっているつもりです。
それでも近い将来問題が発生すると思います。控えの若手が一人前になる前に複数のレギュラーが契約満了を迎えるはずです。その選手達は契約更新をするでしょうか?タイトルを求めて他クラブに移籍志願をしないでしょうか?
アンリやヴィエラやピレスやリュングベリのように・・・
そうなればまた一からチームは作り直しです。
チームの新しい骨格が出来た今オフこそ肉付けをしっかりと行うべきでしょう。補強すべきポジション全てで資金を使った補強は無理でしょうがある程度の出費は覚悟して欲しいですね。
私は外部の人間が思うほど選手達が現状を楽観視はしているとは思えないんですが・・・
posted by yukihiro | 2008-04-16 16:35
>yukihiroさん
毎度、コメント感謝します。
確かに現戦力の引きとめはアーセナルの課題ではありますよね。30歳以上のプレイヤーには複数年契約を提示しないですし、このことも手伝って他へ出て行ってしまうのかもしれません。
それにアーセナルは5年前から「2年後が楽しみなチーム」だとか「黄金期の予感」などとシーズン終了時には言われているのに一向に実現しないところをみると…あまり策略が上手く行っていないことが分かってしまいます。
この辺りをプレイヤーたちはどうみているのか。とりあえずヴェンゲルを敬愛しているといっても過言ではないセスク辺りは当分出て行かないでしょうから安心ですが、彼のパスを受けたり、サポートする選手が残るかどうか…。今後の彼らの動向に注目ですね。
posted by so-ma | 2008-04-18 08:04



