2008年04月09日

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

■Liverpool 4-2 Arsenal (agg 5-3)

時にフットボールは実に残酷なものである。ベストチームが常に勝つわけではなく、自力に劣るチームが勝利することもざらだ。

しかしそれはフットボールがフットボールである由縁でもある。大番狂わせが頻発し、アマチュアがプロを破ることが可能であるがゆえに、我々はピッチ上に夢を見ることができる。下部クラブでもマンチェスター・Uに勝てるし、逆に上位クラブは下部クラブに敗れた失望を胸に自らを向上させる。持ちつ、持たれつの関係がフットボールの魅力であり、切なさなのだ。

そしてこの日、2008年4月8日。リバプールの要塞、アンフィールドではその魅力と切なさが交差し、大きな渦となった。


■ジェラードの言葉

試合展開については正直なところ詳しいことは知らない。初めに自白しておくが展望にも書いたとおり、私はこの試合を見ていないのだから。正直な話、結果を聞いた時はアンフィールドへ行かなかったことを激しく後悔したが(そう、それほど昨晩のアプトンパークは退屈極まりなかった。)後の祭り。まぁ自分のクラブに忠誠を誓ったという自己満足でしかない誇りを慰めに生きていこうか。

しかしながら、にもかかわらずキーボードを叩いているのは、ハイライトを見ただけで興奮したのはもちろんのこと、この試合の選評を読んでいるうちに何ともやりきれない切なさが込み上げてきたからである。いくつか読んだ選評のほとんどは、アーセナルがベストのチームだった、というものだった。アーセナルファンの遠吠えだけではない、何か彼らに同情するようなものが少なくなかった。

元々アーセナルは魅力的なフットボールを展開するチームであり、人々を惹きつけるのは分かる。しかし今回は何より、リバプールのキャプテンであるスティーブン・ジェラードですら「ベストチームが勝ちあがったとはいい難い」とガナーズを賞賛するコメントを残したのだから、驚きである。稀にこういった発言をする選手はいるが、劇的な逆転勝利を収めた後に、わざわざベストチームはどちらだったかに言及することは珍しいのではないか。少なくとも明言は避けるか、「どちらにもチャンスがあった」というに留まるのが普通である。ミランを破った夜にしても、私の知る限りではそのような発言をしたプレイヤーはいない。

ジェラードの発言は何を意味していたのか。もちろん、率直な感想なのだろうが、その中には自分たちも同じような境遇にあった経験から来る空しさが混じっていた気がしてならない。あるいは、例えその試合で勝利できたとしても、それ以外に多くのものが残らない自分たちのフットボールに対する憤りか。自分たちにはないものを持ったチームへの素直な憧れですらあったかもしれない。…と憶測してもきりがないのでこの辺りで打ち止めするが、少なくともフットボールの魅力と切なさを最大限に知っている男の発言を考える余地はある。


■理想を追求する者たちへ

この日、リバプールファンは歓喜し、アーセナルファンは途方もなく辛い現実を突きつけられた。このフットボールの魅力と切なさの詰まった試合の勝負に勝ったチームは、試合には敗れた。だがアーセナルは敵をも認めさせるフットボールを展開したのだから、彼らは堂々と胸を張ればいい。

フットボールは結果が全てだ。だが時として、フットボールは人間味溢れるものであって、人生のようなものであって、勝利か敗北かで分けられるような単純なものではない。内容の素晴らしさに打ちのめされることがあるし、それがなければフットボールなど見ていられない。まさに勝利至上主義なんてクソ食らえ、である。

週末のプレミアシップ、リバプール戦に引き分け終焉を迎えたかと思われたヤング・ガナーズだが、翌日ユナイテッドが引き分けたことにより、まだタイトル獲得の可能性がわずかに残っている。気持ちの切り替えは難しいかもしれないが、だからこそ週末のユナイテッド戦に全てを注ぎ込んでほしい。

彼らの健闘を称え、未来に期待し、成長を見守りたいと強く思う今日この頃である。

そして勝ちあがったリバプールとファンの皆さん、本当におめでとう。

posted by so-ma |16:58 | ■07-08 欧州カップ戦 | コメント(20) | トラックバック(4)
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魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

アーセナルは判定に恵まれませんね。知っていると思いますけど、コロのPKといい、フレブへのチャージ(ファール)といい。中立で見てる立場ですがやりきれない思いになりました。それとCLでのリバプールの(ベニテスの?)勝負強さにはびっくりですね。でもこのジェラードのコメントきいて、ちょっと救われた気分です。

posted by Tome | 2008-04-09 19:02

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

同感です。自分もアーセナルはすごく好きなチームでして、今年も無冠で終わる(リーグ戦をあきらめたわけではないですがM.U.の強さをみると・・・)かと思うと、非常に
やりきれないです。

アーセナル負けちゃったかぁ~ 残念。

posted by サッカーファン | 2008-04-09 19:58

昨日の試合は

優勢という意味ではリバプールでしょうね、昨日は。後半は足の止まったガナーズに波状攻撃してましたから。ウォルコットの個人技は見事でしたが、トータル(シーズンを通してや第1戦のノーPK等)はともかく、昨日はリバプールの順当勝ちと思います。

posted by 今年はマンUが2冠では? | 2008-04-09 20:10

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

アーセナルには頑張って欲しかったのですけど、結果は残酷ですね。。。
もう少し怪我人が少なければ、判定が少しでも味方してくれれば、などなど、“たられば”の世界をいろいろ考えてしまいます。
でも若い選手の多いアーセナルですから、きっとこの戦いはこれからの糧になると思います!
(`・ω・)ゞ

posted by がちゃ | 2008-04-09 20:31

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

ウォルコットのドリブルに歓喜してトゥーレのファウルに叫んでバベルに最後まで喰らいついてったセスクに期待して・・・負けちゃったけどアーセナルサッカーはホントに楽しかった。

posted by F・トーレスのゴールはスゴかった。 | 2008-04-09 21:02

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

アーセナルは美しいパスサッカーで大好きです。ただ負けていても、時間がなくてもそれだけで、柔軟性にかけるかなと思います。ここ、何週間かの勝負所で結果が出せなかったのが残念ですね。多分プレミアも無理でしょう・・。若いチームだし、来年再来年に期待です。

posted by あせなる | 2008-04-09 22:32

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

こんばんは。
決勝に行った3年前はパスサッカーをある程度封印していて勝負強い試合をしていて、誰もが「いいチームだ」と認める時には(不運もあるにしろ)勝てない…

このあたりもだからサッカーは面白いということかもしれませんが、昨日アーセナルの勝利を信じていた人にはやり切れない結末になってしまいましたね。

posted by 川の果て | 2008-04-09 23:47

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

こんばんは。

アデバイヨールに決められた時は、全てが終わった気分になりましたけど、CLでのリバプールは、何かを持ってますね。

次がチェルシーと言うのは、ちょっと見飽きてしまった感じですけど、経験値の差でリバプールが上がってくれると信じてます。

posted by hids | 2008-04-10 00:30

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

おはよございます。

アーセナルファンとして、CLでガナーズのプレーが見れなくなったのは残念ですが、ジェラードの言葉と管理人さんの憶測とはいえ思いに少し救われました。

時にサッカーは勝負にこだわるものだけど(代表戦は特に)ベンゲルのたとえ試合に勝っていても最後まで観客を楽しませるサッカーが好きです。

posted by miu | 2008-04-10 10:15

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

こんにちは。初めてコメントさせて貰います。

僕は日本在住のアーセナルファンです。今季もアーセナルは『結果として』無冠に終わる事がほぼ決定しました。
審判の判定など不運な要素はあります。

しかしながら、根本的な原因はあくまでアーセナル自身にあると思います。なぜ一年間継続して勝つ事ができないでいるのか・・・今年だけではないはずです。原因もはっきりしているはずです。

若手の成長と即戦力の補強・・・ここ数年アーセナルは明らかに前者に舵を切りました。資金繰りに苦しむアーセナルには他の選択肢がなかったからです。今季その若手達は花を咲かせました。しかし現実は『それだけではタイトルは取れない!』と雄弁に語っています。
現状ではいつまでも『結果』には大差ないでしょう。アーセナルは今オフ重大な決断を迫られます。

posted by yukihiro | 2008-04-10 12:46

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

試合をご覧になってから書かれたほうがいいと思いますが・・・。
選手は、こうも言ってます。
http://jp.goal.com/jp/Articolo.aspx?ContenutoId=653141

posted by オラーラ | 2008-04-10 18:07

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

魅力的、理想の定義が一方的だな
天邪鬼かもしれないが、完璧に相手にコントロールされた試合をカウンター一本で勝ちきる試合もオレの中では魅力的だよ

posted by doverwood | 2008-04-10 18:56

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

アーセナルのフットボールは素晴らしいですが、一方でスカッドを見渡したときに、バックアッパーの不足は深刻ですし、パスを回す事に執着しすぎて勝利の追及を疎かにしていたシーンが散見されたことも事実です。ここら辺のバランスをどう取るかは難しいものですが、とりあえず選手層の問題だけは解決した方が良いでしょうね。

まぁかといって、リヴァプールのように選手がいても勝てないチームもあるわけなんですけれど(笑)

リヴァプールが良い時の、ジェラードやシャビ・アロンソが豪快に左右に振ったりするフットボールも私は好きですし、むしろガナーズのものよりも個人的に好むからこそ、リヴァプールを応援しているんですけれどね。トーレス加入後はこのスタイルもちょっと変わりつつありますけど。

posted by Alan Hetarade | 2008-04-10 23:06

>Tomeさん、サッカーファンさん、今年はマンUが2冠では?さん

皆さん、コメントありがとうございます。

>Tomeさん

ベニテスは策士ですからね。まぁ策士だけに策に溺れることが少なくないのは難点ですが、ここ一番というところでは力を発揮してきますね。

>サッカーファンさん

確かにユナイテッドの強さは…簡単にトップを明け渡すとは思えませんよね。アーセナルもシーズン序盤は良かっただけに、失速が悔やまれます。

>今年はマンUが2冠では?さん

ウォルコットのドリブル突破は凄かったですね。フランスでのマイケル・オーウェンのようで。そして2冠の可能性が高いとは思いますが、ガナーズにも諦めずに戦ってほしいですし、リーグを面白くしてほしいです。

posted by so-ma | 2008-04-10 23:44

>がちゃさん、F・トーレスのゴールはスゴかった。さん、あせなるさん

>がちゃさん

毎度、お世話になっています。たられば言いたくなるのはわかりますね。紙一重の試合だっただけに…。私はアーセナルやヴェンゲルが○○の組織に嫌われているから判定が味方をしないっていう憶測をしたくない人間なんですが、このような試合が続いたとしたらそういう議論が起こってもおかしくないかなぁと思ってしまいます。

>F・トーレスのゴールはスゴかった。さん

少しセンデロスの対応が甘かったですけど、あのゴールは圧巻でしたね。今期、プレミア初シーズンでCLにも参戦し、結果を出しているのですからトーレスはよくやっていると思います。

>あせなるさん

もともと今シーズンに関しては期待されていませんでしたしね。ここまでチームを作ってきたヴェンゲルや成長した選手たちを賞賛すべきなのかもしれませんが、ここまで来ただけに少し残念ですね、ここでの敗退は。個人的にはヴェンゲルの方針は好きですし、大物を獲得してばかりのビッグクラブ的方針は好きではないので、ガナーズにはそのようなクラブになってほしくないですが、であるならば若手選手が成長した際に、外へ出さないような策をとってほしいなぁと常々思っています。

posted by so-ma | 2008-04-10 23:52

>川の果てさん、hidsさん、miuさん

>川の果てさん

毎度コメント、感謝いたします。ガナーズファンではないにせよ、この結果は非常に受け止めがたいのではないかと推測します。層の薄さを露呈したといえばそれまでですが、若い選手たちは力を発揮し、成長していただけに、勝ち越し直後の失点などは何ともやりきれないですね。

>hidsさん

セミファイナル進出おめでとうございます。確かに見飽きた感はありますし、この2チームの対戦はレベルの高くガチガチ過ぎて眠くなる展開がほとんどなので…。ただ今回はスタジアムで見ることができそうなので、白熱した試合を期待したいです。

>miuさん

miuさんの言われていることがアーセナルが敗れてなお人々をひきつける理由だと思います。これからもその姿勢を貫いてほしいですね。個人的には叫ばれている大型補強もそこそこにして、現戦力を維持することを最優先事項と考え、前へ進んでほしいです。

posted by so-ma | 2008-04-10 23:59

>yukihiroさん、オラーラさん、doverwoodさん

>yukihiroさん

はじめまして。
確かに毎年、その課題というか問題は叫ばれていますよね。その通りなのだと思います。ただ一方で私は、若い選手が次々と出てくることが、アーセナルの最大の魅力なのだろうと思いますし、大物選手をホイホイ獲得して強くなっていくガナーズってちょっと想像できないんですよね。ヴェンゲルも、ここまで同じことを毎年言われているのにスタイルを変えようとしないのは、彼の哲学がそうさせるのだろうし、お金があったからと言ってそれは変わらない気がします。(事実、最近はお金があっても使わないことが多いですし。)

だから私は、まずは是非現戦力引きとめに力を注いでほしいと思います。補強はそれからかと。

>オラーラさん

申し訳ありません。見られる環境になかったもので。ご理解ください。

>doverwoodさん

>魅力的、理想の定義が一方的だな
>天邪鬼かもしれないが、完璧に相手にコントロールされた試合をカウンター一本で勝ちきる試合もオレの中では魅力的だよ

ここではあくまでも「一般的に言う魅力的なフットボール」という意味で書かせていただいたので、一方的に何かを肯定したり否定しているのではありません。私もカウンターは大好きですし、カウンターこそ無駄のない最も美しい攻撃のひとつだと思っています。

なので、別に何が美しい、何がダメといっているわけではありません。ご理解くださいませ。

posted by so-ma | 2008-04-11 00:09

>Alan Hetaradeさん

>Alan Hetaradeさん

毎度、どうもです。
おっしゃるとおり。そして現戦力にもいい選手はいますから、彼らを生かすのと、それでも足りなければ補強という形で強化してほしいと思っています。ソングやジュルー辺りは、プレミアの舞台でも十分通用する力を持っていると思うので。この間、リザーブリーグを観にいったんですが、2人は(特にソングは)異彩を放っていました。ある程度メンバーを固定したいというヴェンゲルの気持ちは分かりますし、アーセナルのやり方としてはそれが適切かと思いますが…上手くやりくりしてほしいものですね。

そして良い時のリバプールが魅力的だというのも全くその通りだと思います。私の中ではベニテス来た始めてのシーズンが一番好きでした。多少守備に不安があるかもしれませんがジェラードのX・アロンソのセンターに入り、長短織り交ぜたパスを左右に回し攻撃を組み立て、L・ガルシアがアクセントを加えetc…。変に守備の心配ばかりしないで、そういった形のシステムを用いればあるいはもっと(良い成績を取れたかは分かりませんが)魅力的なチームに仕上がったのになぁと。

まぁはまったときのラファの戦術もまた好きですから、どっちが良いかと2択を迫られても難しいんですけどね。

posted by so-ma | 2008-04-11 00:18

魅力と切なさの渦 ~リバプール対アーセナル~ 【プレミアF】

>>so-maさんへ
ありがとうございます。僕もso-maさんのおっしゃる事に大部分で賛成です。決して即戦力をガンガン獲得して欲しいとは思いません。有望な若手の成長に期待している気持ちもあります。

ただ、現在はあまりにも若手の成長に期待しすぎているかなと思っています。ロシツキ一人の離脱でここまでチームの力が落ちてしまうのは・・・若手の成長と即戦力の獲得のバランスを考えて欲しいですね。

既存戦力が全員残留したとしても来季はロシツキと遜色ない控えは必要でしょう。私の思う『即戦力』とは大物という意味だけでなく重要な試合であっても自信を持って送り出せる優秀な選手を意味します。

posted by yukihiro | 2008-04-11 09:57

>yukihiroさん

コメントありがとうございます。

そうですね。もちろん私も補強をなしにして勝てるほど、プレミアは(ユナイテッドは)甘いものではないと思っています。ですので、現戦力を見極め、それでも足りなければある程度補強を行ってほしいと思っています。

posted by so-ma | 2008-04-12 11:16

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