2006年08月14日
「スポーツ・ビジネス知的武装講座」第1回
質問者:福井盛太(『SMR』編集長) 【Q】「昨年、東北楽天イーグルスは年間敗戦数新記録を打ち立てましたが、 球団経営に目を転じると、一年目から経常黒字を達成しました。 なぜ、チームが弱くても黒字化できたのでしょうか?」 回答者:広瀬一郎 (スポーツ総合研究所所長/江戸川大学社会学部教授) 【A】黒字となった要因は複数ありますが、 分析するにあたり、いくつかのフレームを設定する必要があります。 第1に「コスト」、第2に「収入」を精査すること。 そして、第3に「構造的要因と非構造的な要因」に分けることです。 第1のコスト。 他の11球団と比べると、選手人件費が相当抑えられていると推察します。 「選手人件費」こそは「スポーツの興行ビジネス」の経営において最大のリスク要因です。下方硬直性が高い。(つまり一端あげると下げにくいのです)。 例えば、作年6冠を達成した千葉ロッテマリーンズを見るとよく分かります。チームもファンも盛り上がったので、大ハッピーかと言えば、さにあらず。選手の成果報酬などが重なり、喜びが一段落して冷静になったら、実は大変なことになっていました。 小坂誠選手やイ・スンヨプ選手の放出は、成果給支払いと年俸アップのしわ寄せ、という側面もあります。 一方、イーグルスはあれだけ負けていれば、選手の成果報酬はほとんど発生せず、おそらく支出は予算の策定時より下がっているはずなのです。 また親会社の「楽天」は物流、小売に強みがあるので、他のチームに比べマーチャンダイジングには滅法強いところを見せています。 即ち、物の発注原価の管理、在庫コストの管理など、従来のプロチームとは全く違う尺度でコスト管理を徹底しています(逆に従来のやり方が甘かったとか、業者との長年の癒着がある、とかダメ要因が一杯ありますが)。 収入は第1に集客です。 初年度のもの珍しさ、仙台に来た経緯の話題性なども手伝い、動員は予想を上回っているはずです。また話題性の点から、スポンサーもつきやすかったはずです。 上述からも分かるように、コスト構造は構造的要因であり、収入は非構造的だということが分かるはずです。ということは、イーグルスの今後の経営上のポイントは、勝利数が増えても、あまり連動して選手年俸があがらないようにすることです(無論、バランスが必要で、ただケチなだけではダメですが・・・)。 また、初期の熱が冷めても、スポンサーが去らないようにすることは今後の重要な課題です。そのためには、スポンサーのROI(Return On Investment)を明確にしておく施策が必要不可欠となるでしょう。 【回答者プロフィール】 広瀬一郎(ひろせ・いちろう)/1955年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、電通に入社。トヨタ杯、キリンカップ、ワールドカップ(メキシコ)等、サッカーイベントのプロデュースを多数担当。02年の日韓合同開催によるW杯では、ワールドカップ招致委員会事務局広報・企画副部長を務めた。現在は、スポーツ総合研究所所長/江戸川大学社会学部教授。著書に『Jリーグのマネジメント』(東洋経済新聞社)、『新スポーツマーケティング~制度改革に向けて~』(創文企画)などがある。スポーツ総合研究所のHPはこちら。 http://www.sports-soken.com/ 次回の更新は8月21日を予定しております。 お楽しみに。
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posted by 『SMR』編集部 |17:28 |
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