2006年09月26日

「スポーツ・ビジネス知的武装講座」第6回

質問者:福井盛太(『SMR』編集長)
【Q】村上ファンドが阪神電鉄の筆頭株主に躍り出た際、同電鉄の経営陣に対してタイガースの株式上場を提案し、話題になりました。
プロスポーツチームが株式上場するメリットとデメリットは何なのでしょうか?
そしてズバリ、皆様はプロスポーツチームの株式上場に賛成ですか? 反対ですか?

回答者:床波 浩
(データスタジアム株式会社)
【A】 先行指標たる海外を見てみると、プロスポーツチームの上場は珍しくありません。マンチェスターユナイテッドは1991 年に既にその株式を公開させていますし、又、逆に、アメリカのように一度上場したチームが非公開する流れもあります。

選手獲得資金の調達やスタジアム設備の拡充などクラブ経営安定化の為の資金需要を満たす手段として株式の公開は一般論として否定するものではありません。しかも、近代クラブ経営にとってこれまでの資金需要に加えて、IT情報化投資の重要性も益々その重みを増しているのではなおさらです。

しかしながら、上場できるクラブというのはそもそも、経営内容の透明性が確保できており、説明責任を果たせる体質であることや、利益を出し続けることを指向する経営でなければならないことは言うまでもありません。

上場する事を前提に外部資本を注入する。調達した資金で一定の選手獲得やファンの増加
による収益のアップを図りつつ、黒字体質を確保し上場準備をする。一方では調達できるであろう公開益を原資としての投資計画もきちんと策定する。そして上場後は、計画通りにさらなる発展に向けての投資を実行すると共にIRにも力を入れる。

こういった事を実行出来うる経営環境にあるプロスポーツチームが果たして存在するのかと言うと、現時点では首を傾げざるを得ないというのが実情であり、又、同時にそれはプロスポーツを取り巻く状況でもあるのかもしれません。

上場するメリットもデメリットも両方存在はするものの、そもそも企業体として上場を云々する段階にはないというのが実際のところではないでしょうか?

他方、海外では上場だけではなく、プロスポーツチームの資産の金融商品化による資金調達を実行している例もすでに実例として出てきております。

アーセナルは入場料収入を担保に社債を発行することで、2億6000万ポンド(約550億円)を投資家から集める。投資家から集めた資金は、総工費3億5700万ポンド(約718億円)をかけて建設された新本拠地のエミレーツスタジアムの銀行ローンを一括返済し、ローン金利分を浮かせることが出来る。投資家へは入場料収入の枠内でのみ返済する。

もちろんこの例は、アーセナルの動員力が安定しており、かつビッグクラブとしての評価があってこそではあるものの、極めて示唆に富むスキームではあります。

つまるところ、プロスポーツチームの上場に賛成かあるいは反対かと言えば、賛成であるということになります。少なくとも上場を目指すことで近代的、合理的、科学的で、又、透明性のある経営を目指すことになるからです。

【回答者プロフィール】
床波 浩(とこなみ・ひろし)
1980年から10年間に渡り、コンサルタントとして日本IT関連企業の欧米におけるマーケティング、商品企画、技術動向に関して従事。その後、新日鉄でPC関連の事業開発を手がける。97年、株式会社ビットウェイブを設立し、インターネットチケッティング事業に先鞭をつけた。2004年7月よりコミュニティネットワーク株式会社(CNプレイガイド)取締役に就任し、スポーツ事業体経営のためのCRMシステムを開発。06年8月よりデータスタジアム株式会社にてCRMを中心としたスポーツマネジメントエンジン構想を推進。
データスタジアム株式会社のHPはこちら。
http://datastadium.co.jp/	
次回の更新は10月2日を予定しております。
お楽しみに。

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2006年09月11日

「スポーツ・ビジネス知的武装講座」第5回

文:福井盛太(『SMR』編集長』)

みなさま、質問へのご回答、ありがとうございました。

多少乱暴に言えば、至極まっとうなコスト管理と、プロ野球球団の経営資源を現状の制度化で考え得る限りにおいて最も効果的に活用した結果の黒字だったのだろうと思います。創設1年目という“ご祝儀”があったにせよ、親会社にぶら下がるタニマチ型経営からの脱却を図り、球団経営の自立を目指す球団にとっては、良きモデルになったのではないでしょうか。
ただし、楽天が参入一年目からあのような“ビジネス優先主義”で突っ走れたのは、プロ野球界が独占利益に預かる団体(リーグ)であったことも大きかったのだと思います。つまり、Jリーグのように参入が容易であり、かつ、各チームが自由競争下にあるリーグとは異なり、プロ野球は下部リーグへの転落がない。もしも楽天イーグルスがサッカーチームなら、昨年の成績では下部リーグに転落していたことでしょう。そうすると放映権収入や入場料収入、広告スポンサー料収入など、あらゆる収入源に響いてくるわけですから、今年度のマネジメントは相当苦しくなっていただろうと思われます。

◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
では、今回の質問です。

【Q】村上ファンドが阪神電鉄の筆頭株主に躍り出た際、同電鉄の経営陣に対してタイガースの株式上場を提案し、話題になりました。
プロスポーツチームが株式上場するメリットとデメリットは何なのでしょうか?
そしてズバリ、皆様はプロスポーツチームの株式上場に賛成ですか? 反対ですか?
                                
『SMR』編集長・福井盛太

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2006年09月06日

「スポーツ・ビジネス知的武装講座」第4回

質問者:福井盛太(『SMR』編集長)
【Q】「昨年、東北楽天イーグルスは年間敗戦新記録を打ち立てましたが、
球団経営に目を転じると、1年目から経営黒字を達成しました。
なぜ、チームが弱くても黒字化できたのでしょうか?」

回答者:相原正道
(筑波大学大学院スポーツプロモーション研究会代表)

スポーツクラブのマネジメントには、「ビジネスマネジメント」と「チームマネジメント」が存在します。

東北楽天イーグルスは、初年度からビジネスマネジメントを実施したことにより、初年度から黒字化を達成したと思います。スポーツクラブのビジネスマネジメントは収入を増加させ、支出を抑制するという至極当然なことが必須となります。
 
特に、東北楽天イーグルスが収入面で際立って優れていたことは、集客とマーチャンダイジングです。集客においては、「砂かぶりシート」や「フィールドシート」という従来にない価値観をファンに提供しました。また、メールマーケティングを効果的に実施し、集客に寄与させました。
メールマーケティングは今年のメジャーリーグの観客動員数増加に大きく寄与した効果的なツールです。東北楽天イーグルスでは、50年ぶりの新球団誕生という話題生をフルに生かし、ファンクラブの会員を中心にメールアドレスを登録してもらい、メールアドレスへの配信を有効に活用し、メールマーケティングを実施しました。当日のエース対決の予告などにおいて、販売実績を残しています。
マーチャンダイジングにおいては、製造販売を直営することで、製造から在庫保管までを一括して管理し、効果的なコスト管理を実施しています。
直営のメガショップという最大の販路をスタジアム内に持つことで、販売力を強化させたことが成功の要因です。親会社である楽天の“小売りの強み”を効果的に、しかも徹底的に活かしています。

支出面においては、東北楽天イーグルスはスター選手が少ないので、プロ野球球団にとって最大の支出となる選手人件費が抑えられています。しかしその分、スター選手も少なく、スカウト等の編成スタッフは脆弱にならざるを得ません。

今後、東北楽天イーグルスが選手育成をどう捉え、チームマネジメントしていくかが急務だと考えます。チームマネジメントでは、選手の発掘がないと育成ができませんので、選手発掘ルートの獲得が最大の補強です。まず、高校野球部などの選手発掘ルートが大切です。
選手発掘ルートの獲得のためには、高校・大学・社会人との人脈を構築しなければなりません。そのためにも、まずは地元・東北で人脈構築することが大切です。
昨年、東北楽天イーグルスは東北出身の選手を数名獲得しました。今年以降のドラフトにおいても、東北楽天イーグルスが東北出身の選手をどんどん獲得すべきだと考えます。
そして、より地元に愛されるチーム作りを目指すべきです。

【回答者プロフィール】
相原正道(あいはら・まさみち)
1971年生まれ。筑波大学大学院スポーツプロモーション研究会代表。96年に大学卒業後、出版社編集部、電通パブリックリレーションズ勤務を経て、2006年3月に筑波大学大学院体育研究科修士課程スポーツ健康システム・マネジメント選考を終了し、日本初のスポーツブランドコンサルタントして独立。現在、プロ野球球団のプロジェクトメンバーとして活躍中。筑波ユナイテッドバレーボールプロ化推進委員会委員、筑波大学セカンドキャリア勉強会メンバーなどを歴任。著書に「ロハスマーケティングのスゝメ」(ソトコト新書刊)等がある。

次回の更新は9月19日を予定しております。
お楽しみに。


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posted by 『SMR』編集部 |20:13 | トラックバック(0)
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