2006年08月21日

「スポーツ・ビジネス知的武装講座」第2回

質問者:福井盛太(『SMR』編集長)
【Q】「昨年、東北楽天イーグルスは年間敗戦数新記録を打ち立てましたが、
球団経営に目を転じると、一年目から経営黒字を達成しました。
なぜ、チームが弱くても黒字化できたのでしょうか?」

回答者:床波 浩
(データスタジアム株式会社)
【A】プロ野球界にとって50年ぶりの新規参入球団であり、素人集団と揶揄された楽天球団が、初年度に営業黒字化を達成したインパクトはプロ野球界にとって極めて大きかった事と思います。
あるいは、初年度かどうかは別として、プロ野球球団の経営における“黒字化自体”が驚きだったのかもしれません。

連結での売上高は73.85億円、営業利益が1.56億円(楽天決算資料より)で、当初の収支計画にある9億円の営業赤字想定を10億円強好転させていることになります。この中でも、ボリュームとして大きいのは広告の22.4億円とチケットの23.5億円です。合わせて、46億円ほどになりますが、これは連結売上高の62%を占め、球団単体売上高(65.4億円)では70%にもなります。
これらの売上に共通する点は、いずれも直接コストが殆どかからない収入であることで、営業収益に与える影響は直接的、且つ、大きなものとなります。計画ではチケットと広告の売上合計で39億円ですから、実績との差7億円は、ほぼ全額が営業利益に貢献しているものと考えられます。

広告売上がさらに球団経営上ポイントとなるのは、フルキャストスタジアムのネーミングライツ(年間2億円)を含め、スタジアム広告の売上にあると思われます。これは、スタジアムの運営を楽天球団が行っているからこそで、上記のポイントは、球団経営と指定管理者制度の観点からも重要な点です。
但し、「楽天」「楽天KCカード」「楽天トラベル」など、楽天関連での広告がどの程度広告売上に含まれているのかによって、評価は異なることになるのかもしれません。
楽天の決算資料によれば、73.85億円の売上のうち、内部売上高、または振替高として5.18億円計上されています。この数字が何を表しているか知りたいところです。

冒頭で、連結売上高という言い方をしましたが、楽天球団は、球団グッズの企画、販売の「楽天スポーツプロパティーズ」という子会社を有しており、この2社で楽天のスポーツ事業を構成しています。つまり、楽天球団はグッズ販売を収益源と位置づけ、マージンの最大化を狙って外部へライセンス製造、または、販売させること無く、自社での直接販売を行っているのです。楽天という流通チャネルとのシナジー効果ともあいまって、この試みは特徴的なものと見ることができます。

さて、数字から離れて考察してみると、球団経営がゼロからのスタートであり、そこに参加した島田社長をはじめ、米田球団代表他、ベンチャースピリット溢れる人材が“球団というベンチャー企業”を立ち上げ、経営したことが“初年度黒字化”のすべてではないかと思います。
その上で、ごく普通に、球団という商材をいかにコストを抑えつつ、利益の最大化を図るかを追求した。この、一般的にはごく当たり前ともいえるアプローチを様々な場面で実行したのです。
一言で言ってしまえば、これが初年度黒字化の理由だとするのは乱暴でしょうか。あるいは逆に、他のスポーツ事業体で、このシンプルなアプローチをとれない理由があるのであれば、それこそが球団黒字化への障害として排除していかなければならない要因として、抽出していかなければいけないという考え方もできます。
企業である以上、その活動の目的は「継続すること」と「恒常的に利益を出すこと」を求められるのではないのでしょうか。


【回答者プロフィール】
床波 浩(とこなみ・ひろし)
1980年から10年間に渡り、コンサルタントとして日本IT関連企業の欧米におけるマーケティング、商品企画、技術動向に関して従事。その後、新日鉄でPC関連の事業開発を手がける。97年、株式会社ビットウェイブを設立し、インターネットチケッティング事業に先鞭をつけた。2004年7月よりコミュニティネットワーク株式会社(CNプレイガイド)取締役に就任し、スポーツ事業体経営のためのCRMシステムを開発。06年8月よりデータスタジアム株式会社にてCRMを中心としたスポーツマネジメントエンジン構想を推進。
データスタジアム株式会社のHPはこちら。
http://datastadium.co.jp/

次回の更新は8月28日を予定しております。
お楽しみに。

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posted by 『SMR』編集部 |16:19 | トラックバック(0)
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