2009年01月20日

錦織圭(にしこりけい) 【試合感想】 全豪オープン(対メルツァー戦)、ブリスベン大会(対ベルティヒ戦)を比較 

錦織圭の全豪オープンは1回戦で早くも幕を閉じた。

■1R  錦織圭 5-7、2-6、1-6 メルツァー


3回戦へ進出すれば昨年以降世界の頂点をも射程圏内に入れ始めたマレーとの対戦も
実現する可能性があったが、楽しみは次回に持ち越される形となった。

錦織にとっては世界ランキングを59位まで上昇させて望んだ
今年最初のグランドスラムであったが
今日は見せ場なく会場をあとにすることとなった。

結果だけを見れば世界32位のシード選手メルツァーに対して
5-7、2-6、1-6のストレートで負けたとしても、驚くことではないだろう。
しかし、内容を見れば、
驚くほど錦織の状態が悪かったことは試合を見た人なら誰でも思うところだろう。
第1セットで先にブレークし、5-3とリードした時でさえも、
よくこの状態で格上相手にリードできているなと思うほどでもあった。

確かにメルツァーは巧かった。
錦織は身長が170センチ台のため腕の長さも短く、
さらに両手バックハンドのためバックサイドは特にリーチが短く
その弱点をついたメルツァーの左利き特有の回転のスライスサーブは有効で
短いリーチの錦織のバックサイドから更に逃げていく弾道であり、
錦織が後ろ向きになり右手一本で当てるのが精一杯であった。
このスライスサーブを軸とし、さらにネットプレーも巧みで、
中途半端な位置での球際の処理もうまく、
ネット前でのこまごまとした処理を巧みにこなしてくる。
これらに支えられたメルツァーのサービスゲームは磐石であり、
そもそも簡単にはブレークできない相手ではあった。

しかし、メルツァーが巧かったという以上に
錦織の状態が悪かったことがやはり敗因となってしまうだろう。
これまでも大敗することはあったが、
それでも随所に錦織にしか打てないスーパーショットが散りばめられていたのだが
今回は大げさに言えば、まるで違う選手に変わってしまったほどの状態の悪さであり。
錦織らしさが全く感じられない試合であった。
まるで試合前から敗退する結果を先に知っているかのような
モチベーションの低さが漂っていて、
一瞬の状況判断から生まれる天才的なアイデアショットも
いつものように炸裂することもなく、
強打しても普段の迫力が全くない。
実際ウィナーの数が普段と比べると異常に少ない。
第1セットではまだストロークに気持ちが乗っているように見えたが
第1セット後半から第2セットでは
気持ちも体重も後ろにのけぞるような威力のないストロークに変わり始め、
何が原因なのかは不明だが時間経過以上に調子がどんどん下落しはじめて、
最後は暴落したまま試合終了となった。
今日の試合で初めて錦織を見た人は錦織のどこがすごいのか、
また恐ろしいほどのポテンシャルを持っていることを
感じることはまずできなかっただろう。



ここまで言うのには理由がある。
つい2週間前に全豪オープンの前哨戦の大会として出場したブリスベンの大会で
錦織が世界20位のベルティヒに圧勝した試合を見ているからだ。
ベルディヒは3ヶ月前の2008年10月に有明で行われたジャパンオープンに出場しているが
2回戦で、当時世界17位ロブレドを倒し、
3回戦で、当時世界11位のゴンザレスを倒し、
準決勝で、当時世界8位のロディックを倒し、
決勝で、当時世界12位のデルポトロを倒して優勝している程の強さだ。
錦織は2週間前にそのベルディヒを
昨年より更にすさまじい強さで7-6,6-3で圧勝しているのだ。
2週間前の錦織と今日の錦織はあまりにかけ離れていた。
このベルディヒ戦は有料放送のGaoraで放映されただけだが
この日の錦織のすさまじい強さについては一般メディアではほとんど報道されていない。

まず、フィジカルが数ヶ月の間で大幅にパワーアップしていたことに驚かされた。
確かにフィジカルが大幅に強化されている印象があるのが
その方向性が予想していたものとは異なっていた。

というのも、1大会通じて同じレベルのパフォーマンスを発揮できるような
持久力というか耐久力が向上しているのではないかと予想していたのだが
そういった耐久力系のフィジカルの変化はあまり感じられず、
もともと評価の高かった瞬発力系の体のキレやプレイの迫力が
更にすさまじく磨きがかかっていたのだ。

昨年の段階で既にスイングのスピードは世界No.1かもしれないという程であったが
更に高速になっているような感じだ。

一撃必殺のウィナーが更に増え、
しかもバックハンドがフォアと同じくらい強烈になっていた。
フォアが強烈なのは対戦相手もよくわかっていて、相手も恐れていたが
錦織のバックの時に多少気を休めているところに
フォアに劣らない強烈なバックのウィナーが打ち込まれるというシーンが多かった
またサーブ力が1st、2ndともに格段に迫力が増して、
サーブだけでも押していける程にパワーアップしていた。

守備面では左右へ振られてぎりぎり追い付いたようなタイミングで
どんな選手であれ、どうみても体勢が崩されているだろうタイミングで追い付いてはずなのに
次の瞬間、余裕で間に合っているよう体勢で既に強打し終わって
気づくとウィナーが決まっている。唖然とするようなショットが多くなっていた。
このベルティヒ戦の錦織は体がとてつもなくキレていて、
ベルティヒ本人もウィナーを決められて唖然としていた程だ。
結果は錦織の強烈なショットが大量に浴びせられて
世界20位は7-6,6-2であっさり陥落した。

しかしあのキレの良さでは自分の体へ負担は更に大きくなっているはずだ。
手に入れたフィジカルパワーを体の耐久力ではなく、
更なる攻撃に100%注ぎ込んでいるかのような迫力であった。

錦織自身が潜在的に持っている攻撃は実は更に高次元なもので、
フィジカルがついてくれば更に引き出されることになるのかもしれないが。
しかし、どこかで自分の攻撃力に耐えられる耐久力がなければ体が崩壊しかねないだろう。

これが、2週間前のベルティヒ戦の感想であり、
今日のメルツァー戦の感想とは180度違っている。


そしてこのブリスベン大会後に腕を痛めてしまい、
全豪オープン直前の大会では棄権となってしまったわけだが、
全豪オープンを2週間前の状態で戦うことができたらすさまじい快進撃が始まるはずでだった。
しかし、現実はそうはならなかったということだ。
上位選手は世界最高峰の大会であるグランドスラムに最高のコンディションで戦えるように
しっかり準備してくるが、それは現在世界59位で本戦ストレートインできる錦織も同じことで
錦織自身昨年世界へ衝撃を与えた全米オープンの活躍以降、
今回の全豪オープンをずっと意識してきたことだろう。
それだけに、いかにコンディション調整が難しいかが浮き彫りになったとも言える。
しかし、より前向きに受け取るなら、目の前の今年の全豪オープンを照準にはいれず、
より長期的な視野でトレーニングを積んできた中で、
今回の全豪オープンはその中でたまたま出た結果と解釈すべきなのかもしれない。

錦織自身、調整不足で今日はいつもの自分になれなかったので
今回は仕方ないと割り切っているだろうし、
リフレッシュして元気に動き出す姿を楽しみにしたいと思う。

posted by sirotona |18:10 | コメント(0) | トラックバック(0)
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