2008年10月13日
1回戦 ○錦織圭 2-6 6-4 6-2 グラノジェルス
2回戦 ○錦織圭 6-1 1-6 7-5 ハーバティ
準々決勝 ○錦織圭 棄権 アンチッチ
準決勝 ×錦織圭 1-6 0-6 ソダーリング
■準決勝 ×錦織圭 1-6 0-6 ソダーリング
0-6、1-6というとまるで1-12の大敗のように見えてしまうが、総ポイント数では25-53(ポイント比率=1:2)であり、結果詳細を見れば試合スコアから感じる程は大敗ではない。
錦織 ソダーリング
サービスエース 3 13
ダブルフォルト 4 2
1stサーブ確率 67% 64%
1stサーブ時ポイント獲得率 50% 88%
2stサーブ時ポイント獲得率 15% 50%
1stサーブリターン時ポイント獲得率 12% 50%
2stサーブリターン時ポイント獲得率 50% 85%
ブレークポイント獲得率 0% 71%
ブレーク数 0 5
総ポイント数 25 53
両者の力の差が実際どれぐらいあるかは判断し難い試合となった。ソダーリングのサーブが絶好調であったことと、錦織のストロークの調子が悪かったことがゲーム差を拡大させこのような結果になったとも言える。
しかし今回負けたとは言え、錦織は現在18歳10ヶ月。にも関わらず今大会の活躍で週明けにはランキング60位台突入が決定している。日本人選手としてはあり得ないほどすごいことだが世界的にも一握りの天才選手にしか実現できていないことなのだ。ソダーリングの24歳現在のランキングは35位だが18歳10ヶ月時点でのランキングは150位台、ガスケの22歳現在のランキングは12位(今年2月には7位)だが18歳10ヶ月時点では50位台。今回完敗とは言え、錦織が将来世界トップ10候補の稀有な世界的な逸材であることには違いはないだろう。
この試合を一言で言えば、「凡ミスで自滅」の試合という感想を持った。
詳細に関しては以下の通り分析を試みた。
まず、試合スコア1-6、0-6だが錦織のサービスゲームとソダーリングのサービスゲームでは内容が全く異なるため、錦織のサービスゲームとソダーリングのサービスゲームに分けて分析した方が内容がわかりやすいと思われる。
また第1セットと第2セットで結果的には同じ要因で同じ結果となるが、錦織の姿勢が第1セットと第2セットが大きく変わったため、第1セットと第2セットを分けて分析した方が内容がわかりやすいと思われる。
ということで以下のように書いてみた。
■錦織のサービスゲーム
(=ソダーリングのリターンゲーム)
第1セット 錦織 1-2 ソダーリング
第2セット 錦織 0-3 ソダーリング
■ソダーリングのサービスゲーム
(=錦織のリターンゲーム)
第1セット 錦織 0-4 ソダーリング
第2セット 錦織 0-3 ソダーリング
【ソダーリング サービスゲーム詳細】
・第1セット
まず、とにかくソダーリングのファーストサーブがすさまじい。常時時速200キロ超えで190~230キロでの超高速圏内で緩急をつけ、更にコースをセンターにオンラインぎりぎり、ワイドもオンラインぎりぎりに厳しく打ち分けてくる。第1セットに関してはそれでいて入る確率が高い。(第1セット77%・第2セット47%)コースを読んでいても取れないサーブだが、コースも読めないサーブだ。第1セットのファーストサーブはロディッククラスの水準であり世界屈指といえるだろう。どうにも手のつけられない状態であり第1セットはブレークが極めて難しい状況であった。第1セットのソダーリングはナダルやフェデラーが相手でもセットを取ったのではないだろうか。しかし立ち上がりの第2ゲームまでは錦織の動きがが非常に良く特に最初の第1ゲームはその絶好調のソダーリングのサービスゲームをブレークする可能性もあったが最終的にサーブで押し切られた。その後は全くのチャンスがなくソダーリングは完璧なサービスゲームを展開し第1セットは1度も錦織のブレークを許さなかった。
・第2セット
しかし、第2セットに入るとファーストサーブの入る確率は47%(第1セット77%)まで急落。実はこの第2セットは錦織のチャンスであったのだ。ソダーリングはファーストサーブのすさまじさに目がいくがセカンドサーブでのポイント獲得率となると54%程度(直近10試合平均)であり、錦織のセカンドサーブでのポイント獲得率51%程度(直近10試合平均)と大して変わらない。ファーストサーブの入る確率が47%まで落ちた第2セットはポイントの半分以上はストローク勝負となった。錦織が普段の状態であれば第2セットは1回か2回はブレークできる可能性はあったはずだ。ところがこの日の錦織はストロークで主導権争いをする前の時点での凡ミスが多く出たため相手のセカンドサーブ時のチャンスを生かせなかった。錦織がストロークで圧倒される場面は全くなく凡ミス自滅でポイントを失う姿が目立った。第2セットも1度も錦織のブレークを許さなかった。
第1セット、第2セット通じて、トータル13本のサービスエースは錦織の3本を大きく上回るが、サービスエース以外のサーブも錦織がやっと触ることができたという程の威力であり、錦織は相手コートに何とかボールを返すのに精一杯。もちろんソダーリングはそのチャンスボールを叩くだけでポイントになるという展開がほとんどであった。ソダーリングのサービスゲームは第1セットは付け入る隙のない程の完璧な出来、第2セットはファーストの確率が悪いものの錦織の凡ミスに助けられて結果的に磐石であり、結果、ソダーリングのサービスゲームでは1度も錦織のブレークを許さず(錦織0-4、0-3ソダーリング)となった。
【錦織 サービスゲーム詳細】
・第1セット
ファーストサーブの入る確率が82%とこれまでになく非常に高い(悪い時は50%台)。しかし球速がファーストサーブとセカンドサーブの中間ぐらいの1.5サーブのようであり、時速170キロ台(通常は190キロ前後)であり、球速より確率を重視したファーストサーブであった。そのせいかこれまでのようにファーストサーブで崩して一気にストロークで主導権という形にはならず、ほとんどきれいにリターンされていた。しかし戦術的には問題なかったと思われる。セカンドサーブの時のように返ってくるリターンで一気に崩されるなら問題であるが、ことごとくリターンされるものの崩されるまでは至らずファーストサーブの後に五分五分のストローク勝負をはじめることができた。ここまでは良かった。ところがこの戦術は錦織がストロークで圧倒できることが前提になっている。普段の錦織ならストロークで圧倒できたからこの戦術で問題なかった。しかしこの日の錦織はあまりにも状態が悪すぎた。主導権争いをする前の全く追い込まれていない段階での凡ミスが多発しストローク戦でポイントが取れない。ソダーリングはそれに気づくとリスクを背負った無理な攻めはせず、錦織のミスをただ待つだけの守備的な戦術を取ってきた。6本連続で凡ミスが続いたかと思えば、突然目の覚めるようなスーパーショットを炸裂させ、観客をどよめかせるが、また凡ミスが延々と続くという展開だ。(調子のいい日はこの組み合わせが全く逆になる。スーパーショットが連発し続けたと思えば、突然凡ミスし、またスーパーショットが連発していく)スコア0-5となった後第1セット最後のサービスゲームでは2本のサービスエースとスーパーショット2本が連発しようやく1ゲームキープに成功した。また最初のサービスゲームもタイミング的には完璧に決めたはずの惜しいドロップショットミスとその直後のミスで結果的に落としたが内容的には非常に良かったように思う。キープできてもおかしくなかったが第1セット結果(キープ成功1-2キープ失敗)。時折放つスーパーショットが魅せ場となった。
・第2セット
球速を抑えたファーストサーブでのストローク勝負があまり有効でないと判断したのか第2セットに入ってからは190キロ前後(第1セット170キロ台)の速度に上げて早めの展開を望んでいるように見えた。しかし球速を上げたためか入る確率が47%にまで急落(第1セット82%)しかしファーストが入ってもチャンスボールで凡ミスが出るなど第1セットと結果的には状況が変わらない。更にファーストサーブの確率が47%であるためセカンドサーブで勝負する回数が増え、リターンから叩かれたり、ダブルフォルトが増えたりと更に不利な状態へ陥っていった。第2セット結果(キープ成功0-3キープ失敗)
サーブの問題ではなく、サーブの後の普段なら全くミスするはずのないタイミングで凡ミスが多発していることが問題であった。結果錦織のサービスゲームで6ゲームのうち、1ゲームだけキープに成功。ソダーリングに5度のブレークを許し(キープ成功 - キープ失敗 = 1-2、0-3)となった。
【試合を通じて】
凡ミスのうち大半が自身のサービスゲームの中で起きている。(相手のサービスゲームではサービスでエース級を入れられて終わるパターンなので凡ミスにならない)つまり錦織のサービスゲームは大半が自分の凡ミスで占められている。(自分のミスは全て相手のポイントになる)まさに一人相撲であり、ソダーリングは何もせずに楽々ブレークしていた。何もせずただ待っているだけで勝手にブレークが降ってくる棚ぼた状態とも言える。ソダーリングは今日の試合ではあのビッグサーブさえも必要がなかったかもしれない。仮にセカンドサーブだけ打ってストローク戦となっても錦織の凡ミスを待てばいいからだ。だから尚更ノンプレッシャーで気持ち良くファーストサーブを打ち込んでいたように見えた。
凡ミスが多かったのはやはり膝の状態が悪化したのが原因であろうか。確かに少し足がもつれたり、膝を深く曲げるのを避けている気もしないではないが相手の球にしっかり追いついて余裕を持った上でのミスも多かったため、パッと見では膝の影響はあまり感じられなかった。(テニスでは足の裏→ひざ→腰→肩→ひじ→手首→ラケットと下から上に力を伝えていくので「ひざ」、「腰」に痛みがある場合はやはり影響がないはずがないが…)「ひざ」をかばうために他の場所に力を入れて打っているのでどことなく全体的に硬く見えるような感じにも見えないこともないが、実際のところは映像を見るだけではよくわからない。(録画映像をコマ送りにして良い時と悪い時を比較してみたが…全身に脱力感がある時が良い状態で、全身に脱力感がなく硬い感じの時が悪い状態というような感じもするが、もっとよく分析してみないとわからない。これ以上は私にはハードルが高すぎるのでここらでやめておこう)本人、スタッフが一番わかっているはずなのでとりあえず錦織と周囲のスタッフを信じて次回の試合を楽しみにしよう。
【ご参考まで】
景気付に錦織の素晴らしいポテンシャルを示すランキングチャートを作成してみました。※対数表示の方が実力の伸び方がわかりやすいと考え、対数表示で作成しました。(例えば、同じ50位上昇するのでも1000位→950位と100位→50位では価値が異なるため上昇率で見た方がわかりやすい) 縦軸が世界ランク(位)、横軸が時間(年)
錦織の可能性の高さがビジュアルでわかると思います。
同時掲載した外国人選手はサンプラス、フェデラー、ナダル等歴代世界1位を取ったような世界でもずば抜けた選手であり、これらの選手との比較チャートのため日本人選手がかなり差があるように見えますが、チャート上の日本人選手4人は世界上位5~6%に入ることができた世界的な日本人選手です。他の山ほどいる海外の世界ランカーを全て掲載すればこの日本人選手4人が世界的にも高いレベルにある選手であるかがわかりますが、チャートが見づらくなるため他海外選手の掲載を控えました。
しかし、錦織圭(黄色)のランキングがサンプラス、フェデラー、ナダル、ジョコビッチと言った世界一クラスの選手と同じような角度で爆上げ中であることは本当に驚異的と言えるでしょう。この爆上げの行き先はどこなのか?やはり目が離せません。
松岡修造以降の日本人選手のベストランキング(100位程度/約1800人)
1位 松岡修造 46位 1992年 24歳
2位 錦織圭 66位 2008年 18歳
3位 鈴木貴男 102位 1998年 22歳
4位 添田豪 115位 2008年 24歳

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2008年10月06日
錦織圭は海外ツアーの一環として日本開催のAIGジャパンオープンに出場し、1週間弱の日本滞在を終え、また海外へ戻っていった。月曜にはスウェーデン(ストックホルム)の大会で新たな戦いが始まる。
錦織は怪我さえなければこれから10年以上世界各地の大会を1年中飛び回るプロツアー生活をずっと続けいていくのだ。ツアーという名の通り、年中世界を飛び回り続けるテニスの旅人生活だ。去年のジャパンオープンでプロデビューしたため、ジャパンオープンは錦織にとってプロ1年目、2年目、3年目…を迎える誕生日のような節目の大会となる。今回はこの1年で誰も想像できなかったようなとてつもない成長を遂げて凱旋帰国したが、来年ジャパンオープンに19歳になって戻ってくる頃にはどんな姿になっているのだろうか。但しあと数年は発展途上にあるので良い試合もあれば、悪い試合もあるだろう。まずは怪我なく成長できるよう見守っていきたいところだ。
今回のジャパンオープンは錦織にとって極端に良い試合と極端に悪い試合がセットになった大会となった。
【AIGジャパンオープン結果】
・1回戦 ○錦織圭 7-6 6-7 6-2 ロバート・ケンドリック (世界100位)
・2回戦 ○錦織圭 6-4 6-4 ギエルモ・ガルシアロペス (世界60位)
・3回戦 ×錦織圭 1-6 2-6 リシャール・ガスケ (世界13位)
今大会で感じた点としてはそれぞれ相手が試合前から錦織攻略プランを持って入ってきていたのではないかということだ。これまでは相手は錦織の様子を見ながら対処していたが、今回では相手は錦織をよく研究してきている様子が伺えた。
■1回戦 ○錦織圭 7-6 6-7 6-2 ロバート・ケンドリック
1回戦の相手、ロバート・ケンドリックは自身の武器であるストロークでのハードヒットを自粛し、サーブを打ってひたすらネットへ詰めて、ストロークでの打ち合いをできる限り避けるプレイを選択していた。自分の持ち味はストロークであるのにだ。第1セットのはじめからこの調子だ。自信のある武器であっても通用しないと考え、あっさり武器を捨て、錦織に対しては有利な展開が見込めるサーブ&ボレーをひたすら繰り返してきた。つまりストロークでは錦織に勝てないと試合前から認めた上で自分の武器を捨て現実的に勝ちにくるプランを持って試合に入ってきたと言えるだろう。このプランは球足の速い有明では特に有効であった。
一方錦織はファーストサーブの入る確率が66%と高く(悪い時は50%台)、ファーストサーブが入った後のストロークではケンドリックを終始圧倒し(ポイント獲得率82%)、セカンドサーブでのポイント獲得率も59%と高く(悪いときは40%台)、サービスゲームを1ゲームも奪われないほどサーブが絶好調であった。対するケンドリックもストロークを省略したサーブ&ボレーの戦術がきれいにはまり、錦織にサービスゲームを奪わせない。2セット終わって両方ともタイブレークで錦織7-6、6-7ケンドリック。お互いサービスゲームを1ゲームも奪わせなかった。お互いメンタル状態もよく、集中力が高く、ミスがなく、絶好調であるため、そのハイテンションの状態から先に降りた方がそのまま一気に崩れるのではないかというほどぴりぴりと緊張感の漂う状態であった。しかし錦織は押しつぶされることなく自分のプレイを自信を持って続けていた。
錦織はこれまでの試合を見ていてもファーストサーブの入る確率が高いとき(具体的に言えば、70%近くのとき)はどんな相手でもそのセットは取られる気配が全くない。それが60%切って50%台になってくるとセットを取られる気配が漂ってくるというケースが多い。錦織のファーストサーブは良い時は時速190キロ以上出ていてビッグサーブとまではいかないが決して遅くはない。トップ選手相手でもコースが悪過ぎなければ相手の1本のリターンで最初から崩されることはほとんどない。そのため、ファーストサーブが入れば、その後のストローク戦で少なくとも五分五分以上の段階からスタートでき、ストローク戦では圧倒できる。ところが問題はファーストサーブが入らなかった後のセカンドサーブの時にある。遅い上にコースが甘く、更に相手が打ち込みやすい高さに跳ねるサーブなのだ。錦織のセカンドサーブは相手がベースラインより内側に入って打ち込めるため、相手はここぞとばかりに一気に攻めてくる。
ストロークでは先に相手をベースラインより内側に入らせた方が一気に不利になる。世界トップ選手は皆、ベースラインからサービスラインの中間くらいの位置まで前に出れれば1本でウィナーを取れる力は持っている。(錦織はベースラインの外側の有り得ないような位置からでもウィナーを打ってくるから対戦相手はど肝を抜かれて、尚更前に出てこれない)そのため、お互い相手をベースラインより後ろに釘付けにさせて、いかに自分が先に前に出るかを工夫し合っているのだ。(ベースラインの後ろで粘って相手のミスを待つ守備的なタイプの選手もいるが上位には少ない)錦織がセカンドサービスの時は相手にとってはベースラインの内側に入って攻撃が仕掛けられる唯一とも言えるようなチャンスなのだ。
錦織は相手をベースラインより後ろに下がらせておくからこそ多彩なショット(前後左右の揺さぶりや球種、タイミングの変化)も有効になってくるのだ。錦織のストロークが世界でもずば抜けて高速なので相手が返球できるように後ろに下がっているからこそドロップショットやアングルショットもよく決まっていると言えるだろう。
ところが錦織の放つショットの中で、セカンドサーブだけは怖くないので、相手は錦織がセカンドサーブの時はリターンする前からベースラインの前に入って打ち込むために待ち構えているのだ。そしてリターン1本で決めるか、少なくとも錦織の体制を崩してストロークで一気に主導権を握って錦織が五分五分の体勢に戻してくる前に早めに勝負を仕掛けられる。このパターンになると錦織のポイント獲得率は一気に下がる。つまりセカンドサーブを打つ回数の多いサービスゲームはブレークされる可能性が極めて高くなるのだ。つまりセカンドサーブを打たないで済むようにファーストサーブをできるだけ確率よく入れられるかどうかがそのサービスゲームをキープできるかどうかの鍵になってくる。特に有明のような高速コートではサーブ力が何割り増しか強力になるためどの選手でもブレークすることがそもそも難しい。逆に言えば1度ブレークされただけでそのセットは失う可能性が一気に高くなるようなコートだ。
ケンドリックがサーブに自信があるのと対照的にサーブに不安のある錦織はこのような厳しい客観情勢でありながら、サーブ&ボレーで確実に勝ちにくるケンドリックとの勝負でプレッシャーに押しつぶされることなくメンタルの強さを見せ、しっかりファーストサーブを入れて、3セットの中で一度もブレークされずに完璧に勝った。7-6、6-7、6-2というスコア以上に圧倒的な強さを見せていたと言えるだろう。あまりの完璧さにむしろ大味な試合の多い錦織らしくないとさえ感じた程の完璧さであった。たまたま調子が良かっただけなのか、取りこぼしをなくしていくような次のステージに上がり始めたということなのか、定かではないが、とにかくこの試合の錦織は完璧な強さであった。
錦織 ケンドリック
サービスエース 11 18
ダブルフォルト 4 2
1stサーブ確率 66% 61%
1stサーブ時ポイント獲得率 82% 75%
2stサーブ時ポイント獲得率 59% 56%
1stサーブリターン時ポイント獲得率 25% 18%
2stサーブリターン時ポイント獲得率 44% 41%
ブレークポイント獲得率 67% 0%
ブレーク数 2 0
■2回戦 ○錦織圭 6-4 6-4 ギエルモ・ガルシアロペス
録画ミスで試合を見れず分析不能。(痛すぎる凡ミス。。)
ただ、試合結果の詳細を見る限りでは相手を圧倒していたことが伺える。ファーストサーブの確率は59%と1回戦の66%よりかなり落ちたがセカンドサーブでのポイント獲得率が58%と高かったため(悪い時は40%台)フォローできている。ガルシアロペスは錦織のセカンドサーブをリターンで攻め込まなかったのだろうか?それとも攻め込めないほど錦織のセカンドサーブが良かったのか?見てないので何ともとも言えないが。。またガルシアロペスのセカンドサーブの時の錦織のポイント獲得率が55%はかなり高い。錦織がリターンから圧倒していたのだろうか。ガルシアロペスがやりたいことを逆に錦織が実践していたような結果に見える。またガルシアロペスは2セットでダブルフォルト8は異常に多い。メンタルが相当悪かったのではないだろうか。ともかく2セットでブレーク数が3対1は圧勝といえるだろう。1回戦がサービスゲームの良さが目立った試合だったが2回戦は逆にリターンゲームの良さが光った試合だったのではないだろうか。
錦織 ガルシアロペス
サービスエース 3 3
ダブルフォルト 3 8
1stサーブ確率 59% 60%
1stサーブ時ポイント獲得率 76% 61%
2stサーブ時ポイント獲得率 58% 45%
1stサーブリターン時ポイント獲得率 39% 24%
2stサーブリターン時ポイント獲得率 55% 42%
ブレークポイント獲得率 19% 33%
ブレーク数 3 1
■3回戦 ×錦織圭 1-6 2-6 リシャール・ガスケ
ほぼ強引に時間を作り有明で生観戦。
錦織、ガスケを知る人ならこのカードは心から楽しみにしていた人も多かったはずだ。お互いテニスセンス溢れ、幼少から神童と呼ばれた天才同士。極上の芸術作品のような試合が展開されるかもしれないはず、だった。ところがふたを開けてみれば結果は1-6、2-6で錦織の惨敗。拍子抜けで「???」「こんなもの???」「これが全米で世界4位を倒した錦織???」等とあまりにもあっさりと終わってしまった試合に思考停止になる人もいたかもしれない。
実際のところ錦織は「らしさ」を全く出せないまま不発に終わったといっていいだろう。
1セット目の入り方は今年前半の錦織に戻ったような印象で、これは2セット目に大爆発する例のパターンかなと見ていたが、2セット目に入るとガスケが事前に錦織の着火点に随時水をかけるような巧さで、錦織はどうにも火が付きようにない状態になってしまった。ガスケは錦織の様子を見るようなことはせず、やはり最初から錦織攻略プランを持って試合に入ってきているように見えた。錦織は先に仕掛けることでペースをつかむタイプだがガスケは錦織に先に仕掛けられないように常に先手を取ろうと仕掛けを急いでいた。そのためには錦織の爆裂フォアを恐れずベースラインから後ろに下がらないことが必須で、錦織の強烈な打ち込みをライジングに近いタイミングで天性のラケットさばきで逆に攻撃を仕掛けていた。普通の選手は錦織の甘い球を待っているうちに錦織に攻め立てられることが多いがガスケは錦織の球が厳しいにも関わらず甘い球を待たずに先手を取ろうとしていた。あのような攻撃はガスケのようなラケットさばきのセンスがあるからこそできるような攻撃で他の選手が簡単にまねできるような攻撃ではなかった。そういう意味ではやはりガスケがすさまじかったのは間違いないが、錦織は気持ちが消極的になったのかどうも攻める気持ちを失ってしまったように見えた。ただこなしているだけというかガスケのショットに後手後手に対応するだけになってしまった。こういう時の錦織は凡ミスが多発する傾向がある。全体的にキレがなくなり全てのショットが悪くなってしまうのだ。ストロークでは凡ミス多発の上、ファーストサーブの確率は52%であり、1回戦66%、2回戦59%と比べても極めて悪い。ファーストサーブの確率が50%に近い時は相手がガスケでなくてもかなりの格下相手でも負けている可能性が高い。ファーストサーブ時のポイント獲得率も61%と低目でこれはガスケのリターン力によるものだが、問題はセカンドサーブでのポイント獲得率38%で、1回戦59%、2回戦58%とは比較にならないほど悪い。明らかにセカンドサーブは狙われていたのだろう。ファーストサーブの入る確率が52%と悪いため、セカンドサーブを打つ機会が多くなったためこの38%は致命的で自分のサービスゲームでポイントを取るのに非常に苦労していた。2セットでブレーク数で0対4となって試合結果1-6、2-6通りの完敗と言える。
錦織 ガスケ
サービスエース 0 7
ダブルフォルト 1 0
1stサーブ確率 52% 57%
1stサーブ時ポイント獲得率 61% 88%
2stサーブ時ポイント獲得率 38% 67%
1stサーブリターン時ポイント獲得率 13% 39%
2stサーブリターン時ポイント獲得率 33% 62%
ブレークポイント獲得率 0% 50%
ブレーク数 0 4
今の錦織は日によって調子が大きく変わる。発展途上なのでこれは当然だ。錦織の型ができあがってきた後はある程度安定してくるだろう。しかし今はまだプロ2年目に入ったばかりの18歳で技術は既に世界トップクラスとは言え、体も心もまさに発展途上の段階なのだ。武道でいう、勝つために必要な「心・技・体」のうち「心」「体」はまさにこれからだ。時間が経つにつれ、良い試合が多くなっていくことだろう。自分が試合を見に行った日にいい調子であってほしいこととは観客なら誰でも願うことだがこればかりはそう都合よくもいかない。だからこの試合で初めて錦織の試合を見た人は今後錦織の試合をたくさん見ていけば良い。必ずいい時の錦織を見れる日は来るでしょう。
今回のAIGジャパンオープンの有明を見ていて感じたことは錦織は日本において、テニスを「やる」スポーツから「見る」スポーツに変えつつあるという意味での「テニスの革命児」でもあるということだ。
これまでテニスを「やる」人でもプロの試合を「見る」ことに興味がない人がかなり多いように感じていたが、錦織の登場でテニスを「やらない」人さえもテニスを「見る」ように変えていっているのでは思わせるほどの今年のAIGジャパンオープンの大盛況ぶりであった。
有明というとこれまで閑散としたイメージであったが錦織×ガスケの試合は平日14時頃からのスタートであるにも関わらず、3階自由席まで完売の満員御礼で有明コロシアムが入場規制となるなどこれまででは考えられないような大盛況ぶりであった。他コートで錦織が練習中の時には錦織を目の前で一目見ようとコートの周囲が人で埋め尽くされていた。またセンターコート以外で錦織以外の試合が行われている他コートもぎっしりと観客で埋まり、コート間の通路は人でごったえがえしていた。本当に有り得ない光景であった。他の選手も今年はあまりに観客が多くて嬉しく驚いたことだろう。
3回戦錦織×ガスケの試合は平日昼という時間帯のためか主婦層が大半で、残りが時間に余裕のある大学生らしき層という感じであったが、(1回戦~3回戦全て平日昼に試合実施)学校をさぼることに成功して見事有明まで到達できた小、中、高生はほとんど見られなかった。来年錦織の試合がナイトセッションになるなど配慮されれば、小中高生、平日昼に仕事のある社会人も見る機会ができるので是非期待したいところだ。
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