2008年08月27日

錦織圭(にしこりけい) 試合分析 全米テニス 世界ランク32位シード選手撃破! 

錦織は体の状態が良いとは言えない状態でありながら格上に対して余裕の圧勝であった。

相手のモナコは世界ランク32位。肺炎で調子を落としたがつい最近まで今年2月には14位までいった選手だ。ストロークを得意とする選手だったがその得意のストロークで18歳の未完の錦織に全く歯が立たない。錦織のストロークは常に余裕があり、錦織は猛攻の機会を伺いながらモナコの球を余裕でさばいているのに対し、モナコは錦織の強烈な一球一球を無難に返球することに気を使うのが精一杯で自分から攻めの形を作れず防戦一方であった。

錦織はストローク戦では90%以上主導権を握っていたのではないだろうか。しかしストローク戦でポイントをほとんど失わなかったわけではない。ストローク戦でポイントを失ったのはほとんどが主導権を握っていながらの自分の凡ミスだ。相手に振り回されたり等相手の力量で奪われたポイントがほとんどなかった。

6月には世界2位のナダル(先週ついに世界1位になった)に対してもストローク戦では上回っていただけに今回の試合でもストロークで圧倒するのはある程度予想できたが、ストロークでは今の時点で世界にほとんど敵無し状態なのではないかと思わせるほどであった。

ただし、上記はあくまでストローク戦に持ち込めればの話である。問題は得意のストローク戦に持ち込む前にポイントを無駄に取られていることが多いことだ。特に1試合でダブルフォルト9本は異常に多く、サービスエースの数が3本(これは並レベル)で差し引き-6本サーブだけで差し引き6本も相手にポイントを無駄にプレゼントしているのだ。

ちなみに上位選手の1回戦を見ると
第1シードのナダルはダブルフォルト2本、サービスエース7本。差し引き+5
第2シードのフェデラーはダブルフォルト2本、サービスエース15本。差し引き+13
第4シードのフェレール(錦織が3回戦進出すれば対戦可能性大)はダブルフォルト2本、サービスエース2本。差し引き±0

この差し引き数はサービスゲームでストロークが始まる前の段階でのアドバンテージになる。この差し引き数が大きければサービスゲームはブレイクされにくく、低ければブレークされやすい。(もちろんエースが取れなくてもコースが良く、ストロークを優位で進められるポイントが多いかどうかも重要だが)(例えばナダルはセカンドサーブでもコースが良く、錦織のようにセカンドサーブでいきなり打ち込まれることは少ない)

錦織はダブルフォルトでこれだけの大損失を出し、またファーストサーブの入る確率が52%と低く、さらにセカンドサーブでのポイント獲得率が46%と半分以下だ。錦織はファーストサーブが入らなかった場合、自分でサーブを打たずに相手にサーブをファーストから打たせたのと同じ結果になるほどだ。それほどセカンドサーブでのポイント獲得率は低い。錦織のセカンドサーブは相手にチャンスボールのように打ち込まれて、錦織が得意のストローク戦に持ち込む前に一発で勝負が付いてしまうことが多い。セカンドサーブは上から打たずに得意のフォアハンドで打ちこんだ方がポイント獲得率が上がるのではと思えるほどだ。しかし、驚くのはそれにも関わらず錦織はほとんどサービスゲームをブレークされなかったのだ。(サービスゲームをブレークされた数…錦織2回、モナコ7回)

他の選手の場合、この日の錦織のようなサーブの出来具合であれば、ほとんどのサービスゲームをブレークされて大敗しているだろう。ところが錦織はサービスゲームをしっかりキープして圧勝している。サーブでのハンデをストロークで強引にカバーしていたわけだ。それだけ錦織のストロークはすさまじいのだ。

また、相手のモナコはファーストサーブの入るの確率は73%と高いが、入った後のポイント獲得率は56%と低い。錦織にファーストサーブが全く効いていない。よっぽどいいファーストでない限り錦織にストローク戦に持ち込まれてモナコはサービスゲームをキープするだけでも苦しんでいたことがわかる。錦織はファーストサーブの入る確率は52%だが、入った後のポイント獲得率は77%と高い。エースは3本と多くはないが、普通のリターンが返ってくるだけでそこから始まるストローク戦でほぼ勝っていた。

実際、錦織はこれまでどの試合もストロークでは相手を圧倒している。錦織は見た目にはいつも相手より強くうまく見えるのだ。しかし試合結果となるとかなりぶれ幅があるのは、サーブの好不調の波が大きいためと言えるだろう。デルレイビーチで優勝したJ.ブレーク戦の時のようにファーストサーブがしっかり入っていればストロークでの優位性がそのまま結果になって表れる。しかしファーストサーブが入らないとセカンドサーブを打たなければならず、ストロークの優位性だけではまかないきれずに試合トータルでは負ける可能性も高まるのだ。

1回戦はサーブが悪かった。にも関わらず世界32位の格上シード選手を圧倒してしまったことに驚きを感じている。おそらく相手がビックサーバーでなかったことで相手のサービスゲームでストローク勝負ができたことでブレーク数が増えたことが勝因だろう。しかしファーストサーブの確率が低かったため実は相手にもかなりチャンスはあったのだ。だから簡単にサービスゲームをキープしたのは少ない。ファーストさえ入れてさえいれば本来楽にキープできるところをわざわざ苦しくキープしていた感じだ。だから6-2、6-2、5-7、6-2というスコア程きれいに勝ったわけではない。本来はもっと更に余裕なはずだったのだ。格上相手にだ。

しかし、この先、いいコースに高確率で球速200キロ以上のサーブを入れてくるようなビックサーバーに当たれば、いくら錦織のストロークが良くても簡単には相手のサービスゲームをブレイクできない。サーブ1本で決められてストローク戦に持ち込めなければ当然だ。

幸い、錦織のファーストサーブは世界上位の選手にも通用している。入ればの話だが。なのでファーストサーブを高確率で入れることで、セカンドサーブを打つ機会をできるだけ減らし、またセカンドサーブとなった場合でもチャンスボールと思われて一発で打ち込まれないようにコースを厳しく維持することができれば、上位進出も現実的になってくる。まだ体もできあがっていない18歳の段階でだ。今年はフィジカルトレーニングをしっかり積んでいるところだという。今回もし体力切れで負けたとしても怪我をしなければ成人の体力を付けた数年後は本当に楽しみだろう。

とにかく次2回戦を勝てば、3回戦で世界4位のフェレールと当たる。ここは見ものだがまず2回戦。サーブの調子が良いことを祈るのみだ。また体はまだ18歳。高校卒業程度の段階なので体ができあがってなくて当然だろう。それでも無理してプロのスケジュールで大会をこなしている。体を壊してもおかしくないのだが、体が壊れる前に体を作っていくように気をつけていくしかないだろう。

プロ選手はどのスポーツでも怪我をすると無意識に怪我した場所をかばって動くようになるため全体のバランスが崩れてパフォーマンスが考えられないほど大幅に下がって超一流選手から一気に並以下の選手になってしまうことはたくさんある。特に天才的な選手はこの全体のバランスを失ったら一気に終わってしまう可能性がある。怪我には細心の注意を期待したい。

錦織は頭であれこれ考えて計画的に相手を罠に嵌めるような策謀タイプではない。勝手にアイデアがひらめいて勝手に体が動くタイプだろう。野球で言えば、長嶋型の天才だろう。


プロデビュー前の10代の選手にはどの選手にもその選手なりの「華」がある。しかし、過酷なプロの世界へ出ると生きていくためにほとんどの選手が「華」を捨て現実的なプレイをせざるを得なくなっていく。そして「華」を失うことで上位への道が閉ざされるのだ。ところが稀にプロになっても「華」を捨てずに生きていける選手が存在するのだ。現実世界で「華」を見せてくれる選手は極めて少ない。錦織はそういった「華」を捨てずにプロとして成長できる極めて稀な天才選手といえるだろう。錦織の「華」はテニスを何度か見たことのある人なら誰でもわかるだろう。見てすぐわかるような衝撃的な「華」だからだ。

今回の大会の結果はどうあれ、錦織の「華」を大切に成長していって欲しいと願う。







放送予定はまだ発表されていないがおそらく以下の時間帯ではないだろうか。

【放送予定】
デジタルWOWOW 28日深夜0時~ or 29日午前8時15分~
アナログWOWOW 29日夜7時~

【錦織1回戦試合結果詳細】
以下より抜粋
http://www.usopen.org/en_US/scores/stats/day7/1120ms.html





posted by sirotona |22:23 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2008年08月24日

五輪野球A級戦犯

を並べあげたとしても、問題を表面的にしか捉えられないだろう。それはおそらく結果論でしかない。

A級戦犯が出るスポーツはそれだけ期待値が高いスポーツということだ。五輪で負けても誰も気付かないスポーツもたくさんあるのだ。

今回惨敗とは言え、2006年にはWBCで世界一になった野球王国であることには変わらない。野球は日本を代表する、日本が世界に誇れるスポーツであるから今回で失速すべきでない。

日本代表チームのムードと戦術について思うこと書いてみた。


■日本代表チームのムードについて

今回問題と感じた点には監督采配、出場選手選考、審判の問題等、個別では色々と問題があるが、一番問題と感じたのは五輪日本代表には「お祭りムード」が全く感じられなかったことだ。短期決戦では短期の勢いに乗ったチームが勝ち抜くことは誰もが知っているのにだ。

一生懸命にやっているのだがどこか「逃げ腰」というか仕方なく一生懸命にやっている。野球をやっているのではなく、野球をやらされているのではないだろうかと。金メダルを取りにいっているのではなく、金メダルを取りにいかされているのではないかと。

できれば参加したくない「ババ抜きゲーム」を戦っているような気さえした。しかも誰かがババを掴んだら立ち直れないチームなので精神的な逃げ道として坊主の罰ゲームまで用意していた。坊主は大会終わってからでいいのでは?と感じたが。あれでは初戦で五輪終了しましたと宣言しているかのようだった。プレッシャーを試合でのパフォーマンスに変えるような「仕組み」がなかった。最後にたまたまババを引いたのが今回A級戦犯と呼ばれている人なのではないかと。

あの坊主を見たとき、2年前の2006年に甲子園決勝で駒大苫小牧の田中将太と投げ合った早稲田実業のエース斉藤佑樹を思い出した。彼はハンカチ王子などといわれていたが見るべきものはメンタルの強さだ。色々なコメントを残しているが一番印象に残っているのは自分は悪かったときに謝らないといっていたことだ。謝って自分のミスを帳消しにしたくないと。謝らないことでミスをしっかり背負って次回に最高のプレーをして克服するしかないように自分を追い込むのだという。高校生の時点でこれだけのメンタルを持ちあせていることに驚いた。もし斉藤がメンバーにいて、打ち込まれたとしても坊主は拒否していただろう。

五輪日本代表は何がおかしかったのだろう?と、録画保存してあるWBCの準決勝、日本×韓国を再度見て比べてみることにした。WBCを見てまず感じたことは、日本代表のムードがまるで違う。ぴりぴりした激しい緊張感の中に「お祭りムード」が共存していた。

7回まで0-0のまま完璧なピッチングの上原の集中力もすごかったが目立っていたのはイチロー、松中、多村等意図的にチームに勢いを付けようと試合の中でパフォーマンスをしていたところだ。イチローは試合前からも韓国に日本には30年は追いつけないと言わせたい等、場外でもチームを士気を高めていたが、試合でもチーム初ヒットを打った後、初球から盗塁成功させた。次の打席でもヒット打ち、また盗塁を決める。1塁に出たら2塁までは絶対にいくぞと、韓国にプレッシャーをかけて、攻める姿勢を前面に打ち出してチームを勢いづけていた。松中はそれまで打てなかったが、上原と韓国投手の好投で7回までの0-0のこう着状態で目の覚めるようなヒット。足は遅いが全力疾走で2塁へヘッドスライディング。ツーベースを決めると、2塁ベースを左拳で叩きつけ、2塁取ったぞ、と気迫を見せてチームを沸かせていた。そして王監督はそれまで調子の悪かったが当日は調子が良かった福留を代打で使い、先制ツーランホームラン。そこから怒涛の攻撃で打者一巡で7回に一挙5点で5-0。多村は序盤レフトフェンスに激突しながら大ファールをダイビングキャッチの超ファインプレーで気迫を見せていたが8回にはソロホームランでダメ押しの6点目を入れた。そのまま6-0で勝利し決勝進出を決めた。誰かがミスをしてもチームはへこまず、皆で絶対に取り返すというチーム一丸となった前向きな気迫がチームに溢れていた。

お祭りムードとは意図的に作り出すものなのだろう。何もせずひたすら待っていて、祭りは来ない。時間経過していく中、最悪の結果への不安に支配されていくだけだ。

短期決戦では短期の勢いに乗ったチームが勝つのだ。
WBCの時の日本代表は激しいプレッシャーの中、用意周到に一時の祭りの下準備をして、祭り開始のタイミングを探っていた。皆で祭り舞台を整え、皆で我慢し時を待ち、満を持して皆で祭りを始めた。そんなように感じた。

北京五輪の日本代表は金メダルへのプレッシャーの気配ばかり目立った。どうも祭りが始まる気配が最初からなかった。誰も祭りの準備をしてなかったのに皆が会場につれて来られて、やっぱりやるのか、と言いながらばたばた始めてしまっているようだった。

高校野球で言えば、優勝候補の強豪校だがどうも覇気がなく、活き活きとした勢いのあるチームにあっさり負けるという、よくあるケースに似ている。日本代表は地区予選を勝ち上がり、甲子園で優勝するようなチーム作りが必要なのではないだろうか。今回五輪とかぶったたため甲子園は影に隠れた感があったが、日本代表選手は誰もが高校時代に短期決戦を経験しているだろうし高校野球を見ることで忘れていたものを取り戻せるのではないだろうか。

世界大会は国の威信をかけた過酷な戦場とはいえ、晴れ舞台には変わらない。
野球はメンタル要因でプレーが大きく変わるのでマイナス思考に陥った場合、悪い結果しか出ない。チームにプラス思考の連鎖が起きるような環境作りが大事だろう。


■日本代表チームの戦術について

来年のWBCに向けて短期決戦の戦い方を練り直す必要もあるだろう。
WBCでも韓国、キューバ、アメリカとの対戦は激しい神経戦となるのはほぼ確実だ。
力の差が大きい場合はどう戦ってもたいてい力通りの結果になるが、力が拮抗している場合は相手のわずかな隙を付いて傷口を拡大させて勢いに乗った方が勝利する。

そもそも野球は自己完結するスポーツではない。試合は相手があって初めて成立する。
勝利の方程式は相手の力、状態、戦術によって様々な形に変わるはずだ。

重要なことは前提が崩された時の対応力だ。前提が崩されたらこれまでの戦術は一旦白紙だと瞬時に切り替える準備ではないだろうか。しっかり準備すればするほど「え!?」という感想は信頼性がある。「え!?」と感じたら前提が崩されているということだ。この場合これまで良しとしてきた戦術を根本から疑う必要がある。現実は刻々と動いている。昨日通用した戦術が今日通用する保証はない。常にニュートラルである必要がある。勝利の方程式が通じないと分かれば、それはもはや勝利の方程式でないということだ。現実を直視し、瞬時に状況分析し、適切な手を打つ必要がある。どの前提が維持されているのか、どの前提が崩されたのか、と常に監視していなければならない。戦いはいってみれば騙し合いだ。実力者同士、お互い力が発揮されている時は試合は動かない。相手が信頼している前提を崩すことで相手が崩れて試合が動き出す。WBCでは真剣勝負で相手を崩し、崩される中、最終的な勝利を掴み取りにいく姿を見たいと願う。

posted by sirotona |21:14 | コメント(12) | トラックバック(1)
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