2008年10月13日
錦織圭(にしこりけい) 試合分析 ストックホルムオープン準決勝 (対 ソダーリング戦)
1回戦 ○錦織圭 2-6 6-4 6-2 グラノジェルス 2回戦 ○錦織圭 6-1 1-6 7-5 ハーバティ 準々決勝 ○錦織圭 棄権 アンチッチ 準決勝 ×錦織圭 1-6 0-6 ソダーリング ■準決勝 ×錦織圭 1-6 0-6 ソダーリング 0-6、1-6というとまるで1-12の大敗のように見えてしまうが、総ポイント数では25-53(ポイント比率=1:2)であり、結果詳細を見れば試合スコアから感じる程は大敗ではない。 錦織 ソダーリング サービスエース 3 13 ダブルフォルト 4 2 1stサーブ確率 67% 64% 1stサーブ時ポイント獲得率 50% 88% 2stサーブ時ポイント獲得率 15% 50% 1stサーブリターン時ポイント獲得率 12% 50% 2stサーブリターン時ポイント獲得率 50% 85% ブレークポイント獲得率 0% 71% ブレーク数 0 5 総ポイント数 25 53 両者の力の差が実際どれぐらいあるかは判断し難い試合となった。ソダーリングのサーブが絶好調であったことと、錦織のストロークの調子が悪かったことがゲーム差を拡大させこのような結果になったとも言える。 しかし今回負けたとは言え、錦織は現在18歳10ヶ月。にも関わらず今大会の活躍で週明けにはランキング60位台突入が決定している。日本人選手としてはあり得ないほどすごいことだが世界的にも一握りの天才選手にしか実現できていないことなのだ。ソダーリングの24歳現在のランキングは35位だが18歳10ヶ月時点でのランキングは150位台、ガスケの22歳現在のランキングは12位(今年2月には7位)だが18歳10ヶ月時点では50位台。今回完敗とは言え、錦織が将来世界トップ10候補の稀有な世界的な逸材であることには違いはないだろう。 この試合を一言で言えば、「凡ミスで自滅」の試合という感想を持った。 詳細に関しては以下の通り分析を試みた。 まず、試合スコア1-6、0-6だが錦織のサービスゲームとソダーリングのサービスゲームでは内容が全く異なるため、錦織のサービスゲームとソダーリングのサービスゲームに分けて分析した方が内容がわかりやすいと思われる。 また第1セットと第2セットで結果的には同じ要因で同じ結果となるが、錦織の姿勢が第1セットと第2セットが大きく変わったため、第1セットと第2セットを分けて分析した方が内容がわかりやすいと思われる。 ということで以下のように書いてみた。 ■錦織のサービスゲーム (=ソダーリングのリターンゲーム) 第1セット 錦織 1-2 ソダーリング 第2セット 錦織 0-3 ソダーリング ■ソダーリングのサービスゲーム (=錦織のリターンゲーム) 第1セット 錦織 0-4 ソダーリング 第2セット 錦織 0-3 ソダーリング 【ソダーリング サービスゲーム詳細】 ・第1セット まず、とにかくソダーリングのファーストサーブがすさまじい。常時時速200キロ超えで190~230キロでの超高速圏内で緩急をつけ、更にコースをセンターにオンラインぎりぎり、ワイドもオンラインぎりぎりに厳しく打ち分けてくる。第1セットに関してはそれでいて入る確率が高い。(第1セット77%・第2セット47%)コースを読んでいても取れないサーブだが、コースも読めないサーブだ。第1セットのファーストサーブはロディッククラスの水準であり世界屈指といえるだろう。どうにも手のつけられない状態であり第1セットはブレークが極めて難しい状況であった。第1セットのソダーリングはナダルやフェデラーが相手でもセットを取ったのではないだろうか。しかし立ち上がりの第2ゲームまでは錦織の動きがが非常に良く特に最初の第1ゲームはその絶好調のソダーリングのサービスゲームをブレークする可能性もあったが最終的にサーブで押し切られた。その後は全くのチャンスがなくソダーリングは完璧なサービスゲームを展開し第1セットは1度も錦織のブレークを許さなかった。 ・第2セット しかし、第2セットに入るとファーストサーブの入る確率は47%(第1セット77%)まで急落。実はこの第2セットは錦織のチャンスであったのだ。ソダーリングはファーストサーブのすさまじさに目がいくがセカンドサーブでのポイント獲得率となると54%程度(直近10試合平均)であり、錦織のセカンドサーブでのポイント獲得率51%程度(直近10試合平均)と大して変わらない。ファーストサーブの入る確率が47%まで落ちた第2セットはポイントの半分以上はストローク勝負となった。錦織が普段の状態であれば第2セットは1回か2回はブレークできる可能性はあったはずだ。ところがこの日の錦織はストロークで主導権争いをする前の時点での凡ミスが多く出たため相手のセカンドサーブ時のチャンスを生かせなかった。錦織がストロークで圧倒される場面は全くなく凡ミス自滅でポイントを失う姿が目立った。第2セットも1度も錦織のブレークを許さなかった。 第1セット、第2セット通じて、トータル13本のサービスエースは錦織の3本を大きく上回るが、サービスエース以外のサーブも錦織がやっと触ることができたという程の威力であり、錦織は相手コートに何とかボールを返すのに精一杯。もちろんソダーリングはそのチャンスボールを叩くだけでポイントになるという展開がほとんどであった。ソダーリングのサービスゲームは第1セットは付け入る隙のない程の完璧な出来、第2セットはファーストの確率が悪いものの錦織の凡ミスに助けられて結果的に磐石であり、結果、ソダーリングのサービスゲームでは1度も錦織のブレークを許さず(錦織0-4、0-3ソダーリング)となった。 【錦織 サービスゲーム詳細】 ・第1セット ファーストサーブの入る確率が82%とこれまでになく非常に高い(悪い時は50%台)。しかし球速がファーストサーブとセカンドサーブの中間ぐらいの1.5サーブのようであり、時速170キロ台(通常は190キロ前後)であり、球速より確率を重視したファーストサーブであった。そのせいかこれまでのようにファーストサーブで崩して一気にストロークで主導権という形にはならず、ほとんどきれいにリターンされていた。しかし戦術的には問題なかったと思われる。セカンドサーブの時のように返ってくるリターンで一気に崩されるなら問題であるが、ことごとくリターンされるものの崩されるまでは至らずファーストサーブの後に五分五分のストローク勝負をはじめることができた。ここまでは良かった。ところがこの戦術は錦織がストロークで圧倒できることが前提になっている。普段の錦織ならストロークで圧倒できたからこの戦術で問題なかった。しかしこの日の錦織はあまりにも状態が悪すぎた。主導権争いをする前の全く追い込まれていない段階での凡ミスが多発しストローク戦でポイントが取れない。ソダーリングはそれに気づくとリスクを背負った無理な攻めはせず、錦織のミスをただ待つだけの守備的な戦術を取ってきた。6本連続で凡ミスが続いたかと思えば、突然目の覚めるようなスーパーショットを炸裂させ、観客をどよめかせるが、また凡ミスが延々と続くという展開だ。(調子のいい日はこの組み合わせが全く逆になる。スーパーショットが連発し続けたと思えば、突然凡ミスし、またスーパーショットが連発していく)スコア0-5となった後第1セット最後のサービスゲームでは2本のサービスエースとスーパーショット2本が連発しようやく1ゲームキープに成功した。また最初のサービスゲームもタイミング的には完璧に決めたはずの惜しいドロップショットミスとその直後のミスで結果的に落としたが内容的には非常に良かったように思う。キープできてもおかしくなかったが第1セット結果(キープ成功1-2キープ失敗)。時折放つスーパーショットが魅せ場となった。 ・第2セット 球速を抑えたファーストサーブでのストローク勝負があまり有効でないと判断したのか第2セットに入ってからは190キロ前後(第1セット170キロ台)の速度に上げて早めの展開を望んでいるように見えた。しかし球速を上げたためか入る確率が47%にまで急落(第1セット82%)しかしファーストが入ってもチャンスボールで凡ミスが出るなど第1セットと結果的には状況が変わらない。更にファーストサーブの確率が47%であるためセカンドサーブで勝負する回数が増え、リターンから叩かれたり、ダブルフォルトが増えたりと更に不利な状態へ陥っていった。第2セット結果(キープ成功0-3キープ失敗) サーブの問題ではなく、サーブの後の普段なら全くミスするはずのないタイミングで凡ミスが多発していることが問題であった。結果錦織のサービスゲームで6ゲームのうち、1ゲームだけキープに成功。ソダーリングに5度のブレークを許し(キープ成功 - キープ失敗 = 1-2、0-3)となった。 【試合を通じて】 凡ミスのうち大半が自身のサービスゲームの中で起きている。(相手のサービスゲームではサービスでエース級を入れられて終わるパターンなので凡ミスにならない)つまり錦織のサービスゲームは大半が自分の凡ミスで占められている。(自分のミスは全て相手のポイントになる)まさに一人相撲であり、ソダーリングは何もせずに楽々ブレークしていた。何もせずただ待っているだけで勝手にブレークが降ってくる棚ぼた状態とも言える。ソダーリングは今日の試合ではあのビッグサーブさえも必要がなかったかもしれない。仮にセカンドサーブだけ打ってストローク戦となっても錦織の凡ミスを待てばいいからだ。だから尚更ノンプレッシャーで気持ち良くファーストサーブを打ち込んでいたように見えた。 凡ミスが多かったのはやはり膝の状態が悪化したのが原因であろうか。確かに少し足がもつれたり、膝を深く曲げるのを避けている気もしないではないが相手の球にしっかり追いついて余裕を持った上でのミスも多かったため、パッと見では膝の影響はあまり感じられなかった。(テニスでは足の裏→ひざ→腰→肩→ひじ→手首→ラケットと下から上に力を伝えていくので「ひざ」、「腰」に痛みがある場合はやはり影響がないはずがないが…)「ひざ」をかばうために他の場所に力を入れて打っているのでどことなく全体的に硬く見えるような感じにも見えないこともないが、実際のところは映像を見るだけではよくわからない。(録画映像をコマ送りにして良い時と悪い時を比較してみたが…全身に脱力感がある時が良い状態で、全身に脱力感がなく硬い感じの時が悪い状態というような感じもするが、もっとよく分析してみないとわからない。これ以上は私にはハードルが高すぎるのでここらでやめておこう)本人、スタッフが一番わかっているはずなのでとりあえず錦織と周囲のスタッフを信じて次回の試合を楽しみにしよう。 【ご参考まで】 景気付に錦織の素晴らしいポテンシャルを示すランキングチャートを作成してみました。※対数表示の方が実力の伸び方がわかりやすいと考え、対数表示で作成しました。(例えば、同じ50位上昇するのでも1000位→950位と100位→50位では価値が異なるため上昇率で見た方がわかりやすい) 縦軸が世界ランク(位)、横軸が時間(年) 錦織の可能性の高さがビジュアルでわかると思います。 同時掲載した外国人選手はサンプラス、フェデラー、ナダル等歴代世界1位を取ったような世界でもずば抜けた選手であり、これらの選手との比較チャートのため日本人選手がかなり差があるように見えますが、チャート上の日本人選手4人は世界上位5~6%に入ることができた世界的な日本人選手です。他の山ほどいる海外の世界ランカーを全て掲載すればこの日本人選手4人が世界的にも高いレベルにある選手であるかがわかりますが、チャートが見づらくなるため他海外選手の掲載を控えました。 しかし、錦織圭(黄色)のランキングがサンプラス、フェデラー、ナダル、ジョコビッチと言った世界一クラスの選手と同じような角度で爆上げ中であることは本当に驚異的と言えるでしょう。この爆上げの行き先はどこなのか?やはり目が離せません。 松岡修造以降の日本人選手のベストランキング(100位程度/約1800人) 1位 松岡修造 46位 1992年 24歳 2位 錦織圭 66位 2008年 18歳 3位 鈴木貴男 102位 1998年 22歳 4位 添田豪 115位 2008年 24歳
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posted by sirotona |01:47 |
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錦織圭(にしこりけい) 試合分析 ストックホルムオープン準決勝 (対 ソダーリング戦)
コメント投稿者ID :
すばらしい分析です。
自分はテニスをしてるので非常に参考になります。
また見させて頂きます!!
posted by mac | 2009-01-02 23:22
錦織圭(にしこりけい) 試合分析 ストックホルムオープン準決勝 (対 ソダーリング戦)
コメント投稿者ID :
mac さん、
コメントありがとうございます。
返信遅くなりまして失礼いたしました。
錦織選手は多くの人がそれぞれ様々な角度から様々な魅力を感じられる選手だと思うので、いろいろな分析や感想があると思います。こんな分析や感想を持つ人もいるのかという程度で読んでいただいて、macさんなりに楽しんでいただけたらうれしいです。ではまたよろしくお願いいたします。
posted by sirotona | 2009-01-20 18:00
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