シンガポールサッカーの探求

シンガポール・ライオンズXIIとマレーシアリーグ

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昨年7月「シンガポール、マレーシアリーグへの復帰決定」という話題が地元紙の一面を大きく飾りました。

シンガポールとマレーシアの両サッカー協会が、それぞれの23歳以下の若手代表選手を中心としたチームを互いの国のリーグ戦およびカップ戦に翌2012年のシーズンから参加させることで合意に達したのです。

シンガポールは1965年の独立以後もマレーシアの国内リーグにトップチームが参加し続けており、旧ナショナルスタジアムで行われたホームゲームには毎回数万人の観客が詰め掛けていました。マレーシアのチームが各州ごとにチームを作っていたのに対して、1チームのみの参加だったシンガポールはリーグ屈指の強豪チームで、多くのタイトルを獲得しており、そのことがシンガポールサッカーの誇りとなっていました。

1994年にはシンガポールがリーグ戦とマレーシアカップの2冠を達成。サッカーファンの興奮は頂点に達しました。しかし、八百長疑惑や収入の分配を巡る論争が発生したことで、シンガポールサッカー協会はマレーシアリーグからの脱退を決定。2年後の1996年には独自の「Sリーグ」を発足させましたが、狭い国内だけで争われるリーグではサッカーファンの興味をつなぎとめることができず、スタジアムは歓声よりも閑古鳥が鳴く状態になっていきました。

そんなシンガポールサッカーにとって、今回のマレーシアリーグへの復帰は、サッカー人気回復の起爆剤として大きな期待がかかっています。


ライオンズXII

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シンガポール・サッカー協会は、マレーシアリーグに参加するために「ライオンズXII(トゥエルブ)」という新チームを結成しました。チーム名にある「XII」は、「12番目の選手」であるサポーターとともに戦うという意味で付けられています。

マレーシア・サッカー協会との合意に基づいて、当初は23歳以下のシンガポール人選手を中心に、最高5人の24歳以上のシンガポール人選手と2人までの外国籍選手で構成される予定でした。しかし、Sリーグにはすでに23歳以下の選手で構成されるヤングライオンズが存在することに加え、シンガポールでは20歳前後の男性に兵役(ナショナル・サービス※)の義務があるため、上記のような23歳以下の選手を中心としたチーム構成は難しいとして、所属選手の年齢の上限を28歳以下とすることに変更されました。

※シンガポールの「ナショナルサービス」では、軍隊だけでなく、警察、消防隊などでの任務に当たるケースもあります。現在登録されている29人の選手のうち11人がナショナルサービス中で、ライオンズXIIの試合や練習に参加する場合は、事前に関係各局の許可を取る必要があり、国外への遠征は場合によっては不許可になるケースもあるそうです。

所属選手の規定を巡ってマレーシア・サッカー協会と折衝を続けていたことも影響して、シンガポール・サッカー協会は各選手との交渉を早めに行わなかったため、ライオンズXIIよりもSリーグのクラブとの契約を優先した代表選手もいました。そのため、最終的に発表されたメンバーは、シンガポールの若手・中堅選手のすべてを集結させたというレベルには達しませんでしたが、フル代表主将のMFシャイルル・イシャクをはじめ、MFハリス・ハルン、FWカイルル・アムリ、DFバイハキ・カイゼンら、多くの有力選手を各ポジションに集めたバランスの良い構成のチームになりました。

初代監督には、シンガポールが生んだ最高のサッカー選手といわれるファンディ・アーマドの名前も挙がりましたが、最終的には80年代から90年代にシンガポール代表として活躍したV・スンドラムーシーが選ばれました。

ライオンズXIIの年間予算は200万Sドル(約1億2000万円)程度と報道されており、これはSAFのようなSリーグで資金力があるチームと同程度であり、マレーシアのチームと比較してもあまり潤沢とはいえません。メインスポンサーは、シンガポール国内で携帯電話やケーブルテレビなどを運営する「スターハブ」で、同社はシンガポール・ライオンズの国内放映権も同時に獲得しました。また「シルクプロ」などのヘアケア商品を販売する「トートンク」とも総額100万ドルのスポンサー契約(1年間)を結んでいます。


マレーシア・スーパーリーグ(MSL)

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マレーシアのトップリーグは「スーパーリーグ」と呼ばれており、今年は下記の14チームで構成されています。開催期間は1月~7月。
※左の数字は昨年の順位、( )内は本拠地

1.クランタンFA(コタバル/クランタン州)
2.トレンガヌFA(クアラトレンガヌ/トレンガヌ州)
3.スランゴールFA(シャーアラム/スランゴール州)
4.クダFA(アロースター/クダ州)
6.ペラFA(イポー/ペラ州)
7.ジョホールFC(ジョホールバル/ジョホール州)
8.ブグリ・スンビラン FA(スンビラン/ヌグリスンビラン州)
9.T-Team FC(クアラトレンガヌ/トレンガヌ州)
10、サバFA(コタキナバル/サバ州)
11.フェルダ・ユナイテッドFC(マラッカ/マラッカ州)※
12.クアラルンプールFA(マラッカ/マラッカ州)※
昇格 PKNS FC(プタリンジャヤ/スランゴール州)
昇格 サラワクFC(クチン/サラワク州)
新加入 シンガポール・ライオンズXII

※昨年5位のハリマウ・ムダはSリーグに参加
※フェルダとクアラルンプールは、共同で使用していた本来のホームスタジアムが改修中のため、マラッカでホームゲームを開催する

下部リーグとして12チームで構成される「プレミアリーグ」があります。通常スーパーリーグの下位2チームはプレミアリーグへ降格するのですが、ライオンズXIIは成績に関わらず2015年まで(4年間) は降格しない取り決めになっています。また、スーパーリーグは来季から12チームに削減することが決まっており、今年は4チームが降格することになっています。

近年マレーシアリーグは国内選手の育成のため、外国籍選手の登録を認めていませんでしたが、今年から外国籍選手を各チーム2人まで登録できるようになりました。(※AFCカップに出場するクラブは4人まで外国籍選手を獲得できますが、スパーリーグに登録できるのはあくまで2人まで)


「マレーシアカップ」とは?

シンガポールのマレーシアリーグ復帰が決まった際、多くの地元メディアは「マレーシアカップの興奮が戻ってくる!」と書き立てました。「マレーシアリーグ」ではなく、「マレーシアカップ」です。

現行のマレーシア・スパーリーグが始まったのは2004年、前身にあたる全国リーグが始まったのも1979年と比較的最近なのに対して、マレーシアカップの創設は、現在も続いているサッカーの大会としてはアジアで最も古い1921年。それだけにマレーシアにおける同大会の権威と人気は高く、当初はリーグ戦もマレーシアカップの予選として位置づけられていたほど。現在でもマレーシアカップは、リーグ戦の日程をすべて終えた後に開催されており、決勝戦には毎年10万人近い大観衆がスタジアムに詰め掛けています。

シンガポールでも名称や制度が何度も変わったリーグ戦(Mリーグと呼ばれていた時代もありました)よりも、マレーシアカップの方が認知度が高く、そのため「マレーシアカップ」という名前が頻繁にメディアなどでも使われているわけです。

今年のマレーシアカップは、スーパーリーグの上位12チームと、2部リーグにあたるプレミアリーグの上位4チームの計16チームが参加します。4チームずつのグループに分かれて総当たり戦を行い、各組の上位2チームが決勝トーナメントに進出します。決勝トーナメントは、一発勝負の決勝戦を除いて、ホーム&アウェー方式で行われます。2013年以降はスーパーリーグとプレミアリーグの24クラブすべてが参加する予定になっています。

ちなみに「マレーシアFAカップ」という大会もあり、名称がまぎらわしいのですが、こちらはシーズンを通して行われるノックアウト方式の大会で、日本の天皇杯やイギリスのFAカップに相当します。




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