2009年03月17日

引き込みの有効性

先日のDREAM7において、今成正和選手は山本篤選手を相手に、引き込みによって寝技に持ち込み、打撃を封じ込める形で勝利した。下からでも相手をコントロールできるからこその戦法であり、本来の今成選手の持ち味が出た試合ではなかったが、明確な実力による勝利ではあったと思う。
以前ゴンカクの「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」という連載で、かつての高専柔道について触れていたが、そこで引き込みについても書かれてあったのを思い出して、読み直してみました。


この高専柔道は、寝技に特化した競技として格闘技関係でたまに話題に出るが、現在の柔道とのルールの違いとして
ポイントなし、一本勝ちのみ
引き込みあり
寝技での待て(ブレイク)なし
が特徴となる。

このルールの中では、寝技の比重が立ち技と比べて圧倒的に高く、筆者の資料の記録では、立ち技で試合が決まるケースは、寝技の4%にも満たなかったようだ。そしてこの高専柔道の引き込みを使った寝技の前に、立ち技を中心とした講道館では、太刀打ちできなかったらしい。実際記事の中には、講道館の強豪チームが高専柔道に完敗した記録が載せられている。
講道館において引き込みを禁止したのは1924年のことで、嘉納館長の論によれば
「柔道における立技と寝技は車の両輪のようなもので、その片方に偏することは好ましくない」
ということだが、これは実際には高専柔道の寝技を封じ込めるためだったと、筆者は語っている。


総合においては打撃がある分、リスクは高くなるだろうが、相手の立ち技を封じ込めるという点において、引き込みは非常に有効な手段となる。総合初期においてグレイシーがそれを証明し、今現在それを体現しているのが青木選手だろう。DREAM2におけるカルバン戦では、引き込みを駆使してカルバンのスタンドを封じ込め、下からでも積極的な関節技を次々と仕掛けていき、見事勝利をおさめた。

今成選手の場合、見直してみると結構仕掛けてはいましたね。三角、オモプラッタ、フットチョークなど狙っていたのは分るのですが、ただ山本選手がそこを警戒して攻め込めなかったため、今成選手の仕掛けが十分に活きなかった、という印象でした。
そうなるとやはり上を取ることが必要でしたが、結局上をとれたのはスイープを成功した一回のみ。その点で今成選手には、テイクダウンやスイープをもう少し重視すべきであったかと思います。
引き込んで下からコントロールするほうが、勝つためには固いやり方だったでしょうが、そこはやはりリスクを冒してでも、狙いにいってほしかったですね。

先に挙げた高専柔道の例では、勝ちぬきの団体戦のため、勝つための「抜き役」と、引き分けるための「分け役」が存在したらしいが、今成選手の戦い方は「分け役」の戦い方になってしまっているように感じました。
現在の総合では珍しい寝技に特化した選手であればこそ、「抜き役」としての戦いを貫いてほしいと思う。引き込みは相手のいいところを潰すところがある分、自分がリスクを冒す覚悟がなければ、いい試合にはならない。プロとしてやる以上、その点にこだわりは必要でしょう。

その点では、UFC81のノゲイラVSシルビアなんかはよかったですね。シルビアの打撃に苦しんだが、引き込みに偏らず積極的に打撃に応じテイクダウンを狙い、最後は引き込みからスイープしてのギロチンチョーク。あれは引き込みを使った、一つの理想的な試合でした。

posted by 秦 |18:57 | 総合格闘技 | コメント(9) | トラックバック(0)
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引き込みの有効性

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高専柔道を封じるために引き込みを禁止したのではなく、ルールの穴を見つけ、柔道にならない試合をする馬鹿が居たので禁止したのが正しい。嘉納曰く、お前は戦場で初めから寝るのか!」と叱咤したという。何時の時代もルールの穴を見つけ、そのスポーツ性、武道性を無視したスタイルをとる人間が居る。そのためにルールを変えるのは、そのスポーツ、武道の本質を守るためである。また、ラバーガードが膠着になりやすいスタイルであって、動きが無いからといって必ずしも下からコントロールしている訳ではない。下からコントロールしたと言い張るならもっと技術的説明をしないと・・・。なにより、「分け役」として捕らえているならスタンドでダウンと取られても仕方が無い動作をしている時点で判定負けが然るべき所であろう。

posted by ステルス | 2009-03-17 22:29

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引き込み禁止の理由については、嘉納館長の論も載せるという形で訂正しておきました。

下からコントロールしていた事の技術的説明は、ちょっと私には難しいというか、無理なのですが。ただ私が見た限りでは、今成選手の方が優勢に見えました。

posted by 秦 | 2009-03-17 23:48

引き込みの有効性

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乱暴な言い方したのに、普通に返答してくれて恐縮です。よっぱらって記憶で書いたので、その辺は直さなくて結構です。いや、本当に申し訳ない。失礼しました。
その人がその視点で見て「今成選手が優勢に見えた」と言う率直な意見は一番大事かなと個人的には思います。
なんといってもショービジネスですからね。視聴者が見て分かる判定じゃないと意味無いですからね

posted by すてるす | 2009-03-17 23:59

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いえ、お気になさらず。一方の言い分だけを載せるのは不公平だと気付かされました。
総合の判定は、打撃系に比べてわかりにくいことは多いかもしれませんね。寝技と打撃を同時に評価しなければいけないわけですし。

posted by 秦 | 2009-03-18 00:20

引き込みの有効性

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まあ、この試合は判定が非常に難しい試合だったかもしれないですね。ただ私も見ていてどちらかといわれれば今成選手の勝ちだったと思いますね。打撃の手数ではなく総合格闘技として相手から一本を奪えそうな場面を作ってましたし勝機があったのは今成選手だったからです。これはボクシングとかでなく総合格闘技なので総合的に判断すると今成選手の勝利でしょう。

posted by 入江 | 2009-03-18 01:22

引き込みの有効性

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ものすごく高度な事を語っておられるblogですね!!!!
興奮しました!!!
いろいろ勉強したいので、これからも読みに来させてください!!!!!!

posted by 初音desu!! | 2009-03-20 03:42

管理人

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それはどうもです。期待にこたえられるかどうかは分かりませんが、頑張らせてもらいます。

posted by 秦 | 2009-03-20 08:58

引き込みの有効性

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はじめまして!

僕は試合を見て「抜き役」は今成で「分け役」が山本のように見えました。山本はこの任務を完遂することができたのですが、守りに徹するあまり印象が良くなく、判定で負けたということになるのではないでしょうか?

posted by tsune | 2009-03-27 14:28

管理人

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グラウンドに限って言えば、確かに今成選手と山本選手の間には、かなりの差があると思いました。ただそれだけに、なにがなんでも抜く(一本取る)という積極さがほしかったですね。
2Rにも上さえ取れれば、そういう攻めができたと思うのですが、引き込みに偏ってしまっているところが、分け(判定勝ち)狙いになっているように感じてしまいました。

判定は今成選手の勝ちで妥当でしょうね。というか見直してみたら、山本選手の勝ちはない、というのが私の判定でしたけど。

posted by 秦 | 2009-03-27 22:12

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