2007年12月24日

ジダのミス

スコアだけを見れば、今日のミラノダービーの勝者はインテルだが、善戦したミランにとって致命傷となったのは、ミランのGK、ジダのミスだ。

前半18分、先取点を奪ったのはミランだった。ピルロが蹴ったFK。インテルのGK、ジュリオ・セーザルは一歩も動けなかった。その鮮やかさに、私も思わずソファーに座りながらピルロに拍手を贈ってしまった。インテルはDFサムエルがプレー中の怪我で戦線離脱、マテラッツィがウォーミングアップを急ぐ間、10人になりながらも、ミランに圧力をかけ、前半36分、またしてもこの男、クルスが、ミランのペナルティーエリア内でカンビアッソからボール受けると、ミランのGK、ジダが守るゴールのニア・ポスト側に左足で同点弾を叩き込んだ。

そして試合は後半に入り、問題の場面がやってくる。後半18分、クルスが左サイドからあげたクロスボールをマルディーニがヘディングでクリア、そのボールをカンビアッソがペナルティーエリアの外で拾って放った、左足からのミドルシュート。ゴールマウス中央に飛んだ低い弾道のミドルシュートは、ジダの目には、どう映っていたのだろうか。ボールは地面に倒れこんだジダをあざ笑うかのように、ミランのゴールに吸い込まれていった。

試合球は、イタリア・サッカー協会によって、今シーズンから、セリエA、セリエB、コッパ・イタリア、イタリアスーパーカップ、国内ユースリーグの公式試合球に定められた、ナイキ社製のボールだ。イタリアでは、昨シーズンまで、各クラブがそれぞれ試合球を独自に決めることができたが、イタリア・サッカー協会は、多くのクラブの反対を押し切って、ナイキ社と5年契約を結び、今シーズンからナイキ社製のボールを公式試合球に統一する事を決定した。ミラノダービー終了後、このジダのミスの映像をスロー再生で見たユヴェントス&アッズーリのGK、ブッフォンは、今の試合球は弾道が不規則に変化し易い事を指摘し、セーブする際には、GKはギリギリまで飛び込まずに、シュートの弾道を見極める必要があると述べたその一方で、このジダのミスに対し「理解に苦しむ」というニュアンスのコメントをイタリアのマスコミの前で残している。

レベル的には全く比較の対象にはならないが、私も高校時代に、今日のカンビアッソのシュートと良く似たシュートを放って、似たような体験をした事がある。ペナルティーエリアの少し外から、左足を振り下ろしてインステップでボールの芯を叩いたところ、低くて速い弾道のシュートがゴールマウスの中央で構えていた相手GKのほぼ正面に飛んだが、ボールにスピンがかかっていた訳でもないのに、弾道がGKの手前で伸びながらシュート気味に変化した。すでにコースを読んで身体を横に倒しながら捕球体勢に入っていたGKは、無情にもその突然の弾道の変化に逆を突かれ、目の前を通過するボールに触れることさえ出来ずに地面に倒れ込んだ。GKが動かずに、立ったまま守っていれば、屈むだけで両腕にすっぽりボールが収まってしまうようなシュートだった。GKの、捕球動作を開始する、動き出すタイミングが早過ぎて、突然の弾道の変化に対応出来なかったのだろう。だが、ジダのレベルでは、あの距離からのあのミドルシュートに対応出来ない、というのは許されない。今日のジダがサンタクロースに見えたインテリスタ達は、私だけではないだろう。

私が選んだ、このミラノ・ダービーのMVPは、カンビアッソだ。ジダのミスも手伝った決勝ゴールもさることながら、ヴィエラ、ダクール、スタンコビッチが怪我で使えないインテルの中盤で、またしても、見事なリーダーシップを発揮してくれた。とにかく、中盤での整理整頓が上手いのに加え、90分間、ピッチ上のどこにでも顔を出し続けたあのスタミナには頭が下がる。中盤でプレーをする為に生まれてきたような選手だと思う。

このミラノダービーの勝利で、インテルは2位のASローマとの勝点差「7」をキープ、18節、19節の結果を待たずに、今シーズンのセリエA前半戦を首位で折り返す事が確定した。クラブ世界チャンピオンにも止められなかった、勝点3量産マシン、インテル。セリエAはこれからしばらく冬休みに入るが、今、チームの勢いがピークに達しているインテルにとって、この休みは、今後の戦いにどう影響するのだろうか。今シーズンはまだ先が長い。サムエルの今日の怪我は痛いが、この冬休みが、怪我人達にとっては、怪我を癒す恵みの冬休みになってくれる事を願ってやまない。このチームに、補強の必要は無い。怪我人達の完全復帰こそが、来年2月に始まるCL・ノックアウトステージでリヴァプールとの死闘に競り勝つ為の前提条件となる。

一方のミランは・・・今日の試合内容は、カカ、ピルロを中心に、決して悪くはなかったと思うが、このチームは、このメンバーで、これからどこまで行くのか、どこまで行けるのかを、クラブ側は真剣に考えなければならない時期に来ていると思う。今シーズン最大のミッションであった「クラブ世界一」の座を獲得した今となっては、今後、過密スケジュールの中で、セリエAでの遅れを早急に取り戻さなければならない。CLでも、アーセナルという強敵が、ミランを待ち受けている。年が明ければ、パトがミランの戦列に加わるが、信頼できないジダ、計算できないロナウドをどうするのか、この冬の補強策がどんな形になるのかに注目したい。

今年のインテルは、実に多くの至福の瞬間を、我々インテリスタ達に与えてくれた。年初の頃には、慣れないインテルのセリエAでの快進撃に自分の目を疑った時もあったが、この1年で、「強さ」が本当に安定したチームになってくれたと思う。この次のミラノダービーでも、またその次のミラノダービーでも、私に同じ思いを抱かせてくれるような、そんなインテルにとっての2008年になることを祈りつつ、私のブログの方も、しばし冬休みを頂く事にする。


サッカーを愛する皆様へ。2008年が、健やかで素晴らしい年になりますように。

Have a Peaceful Christmas and Merry New Year 2008.

posted by sinfonia |08:37 | My thoughts | コメント(6) | トラックバック(1)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2007年12月21日

UEFA Champions League ノックアウト・ステージ抽選結果

CHAMPIONS LEAGUE LAST 16 DRAW

Celtic v Barcelona

Lyon v Manchester United

Schalke v Porto

Liverpool v Internazionale

Roma v Real Madrid

Arsenal v Milan

Olympiacos v Chelsea

Fenerbahce v Sevilla


以上、すでにご存知の方もいるかと思いますが、ご参考まで。イタリア勢の相手は・・・・強烈です。

posted by sinfonia |20:54 | For Your Information | コメント(4) | トラックバック(2)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2007年12月21日

クリスマス・ダービー

2007年という年は、ミラノの両雄にとって、輝かしい1年だった。

ミランにとってのこの1年は、「最高のリベンジ・イヤー」となった。CWC決勝でボカを倒してクラブ世界一になったばかりだが、アテネでリヴァプールを相手にイスタンブールのリベンジを見事果たしてビッグ・イヤーを持ち上げた年でもある。今シーズンを最後に現役を引退する事を表明したミランの主将、マルディーニの世界クラブNo.1決戦の通算戦績も、これで3勝3敗のタイになった。カカもバロンドールとFIFA年間世界最優秀選手賞を受賞。CL、欧州スーパーカップ、CWCの3つのカップ戦全てで、ミランは優勝トロフィーを持ち上げている。カルチョポリ・スキャンダルに巻き込まれながらも、驚異的な勝負強さを見せた1年だった。

インテルの方は「セリエA独走の1年」となった。昨シーズンに樹立した、セリエA17連勝、セリエAシーズン最多勝点数97の記録は、しばらくは破られる事はないだろう。セリエA全20チームが同じスタートラインからスタートした今シーズンも、蓋を開けてみれば、この勝点3量産マシンと化したチームの勢いは、止まる気配が無い。16節目を終えたセリエA・現時点で、2位のASローマに勝点で7ポイントもリードしている。さらに、今シーズンは、その勢いがCLの試合でも持続している。怪我人が続出しているにもかかわらず、危なげなく勝ち続けるこの強さは本物だ。どんな相手でも勝ちに行くチームにインテルが変身した1年だった。

インテルにとっても、ミランにとっても、23日、日曜日のミラノダービーは、今年最後の試合になる。どちらも、勝ってこの素晴らしい2007年を締めくくりたい。どちらも、ミラノの盟主の座は譲れない。どちらも、相手より強い事を何としても証明したい。ミラノダービー当日のミラノ市内には、かなり電圧ボルテージの高い静電気が蓄積されている事だろう。インテルとミランという2つの絶縁体の摩擦によってミラノ市民に蓄えられた電荷が、サンシーロで一気に放電されて、火花を散らす事になる。

でも、この、キックオフを待っているだけでも疲れる試合の結果がどうなるにせよ、その翌日は、クリスマス・イブ。La vigiglia di Natale。

クリスマス・イブのミラノの夜。マフラーや帽子に守られていない鼻先や頬の周りをピリッとかすめて行く寒気。オレンジ色の街灯が暗闇の中でぼんやりと照らし出す街路樹。住宅の庭先にひっそりと立つ、豆電球を散りばめた小さなクリスマス・ツリー。窓からこぼれる、暖かい家庭の灯り。コツ、コツと耳の中に一歩ずつ飛び込んでくる、自分の足音。ミラノらしからぬ、静まりかえった街中の夜道を歩きながら、ふと、「そう言えば、クリスマスって、クライスト(キリスト)とマス(礼拝)という二つの言葉から出来ているんだよな・・・」などと、普段は気付きもしないような事が、ボロッと口からもれる自分に、驚く自分がいたりする。

ミラノのクリスマスに、忘れてはならないのがパネットーネだ。ミラノの伝統的なクリスマスのお菓子で、レーズンとドライフルーツが散りばめられた、ドーム型の柔らかい菓子パンを、スイカのように切って、家族や仲間達と一緒に食べる。何でも、古い言い伝えによると、昔、トーニというパン屋が、毎朝、街に卵を売りに出てくる、ルチアという田舎娘に恋をして、その彼女にお菓子をプレゼントしようと、卵、バター、砂糖漬けのドライフルーツを使った特別なケーキを作っていた最中に、興奮のあまり、手先の震えが止まらず、少量のイースト菌を加えるつもりが、袋ごと全部、イースト菌を使ってしまっていた事に気付かずにパンを焼き上げたところ、ドーム型に膨らんだパネットーネが出来上がったそうだ。トーニのパン、パネットーネ。その後、トーニはめでたくルチアと結婚し、二人はこの美味しいお菓子のお陰で金持ちになって幸せに暮らしたのだそうだ。

ミラノダービー。そして、その翌日が、クリスマス・イブ。なかなか珍しい、でも素敵なコンビネーション。クリスマス・ダービーが、待ち遠しい。

posted by sinfonia |00:47 | My thoughts | コメント(3) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2007年12月15日

ミラン側から見た、CWC準決勝、浦和レッズ対ACミラン

「今日の試合は、大変難しい試合だった。浦和レッズは、戦術的に優れていた。得点のチャンスもたくさんあったが。さて、次はボカとの決勝だ。リベンジ・マッチになる。決勝でミランのプレーが出来れば、我々はボカに勝てる。」

カラッチ、DF、ACミラン


「しんどい試合だったが、こうなる事は解っていた。皆は、もっと大差で勝てる相手だと思っていたかも知れないが、浦和レッズは、難しい対戦相手だった。我々は、試合中ずっと高い集中力を維持できていたのが良かったと思う。」

アンブロジーニ、MF、副キャプテン、ACミラン


「浦和レッズが引いて守っていたので、我々の攻撃路が閉ざされてしまっていた。そうする事で、彼らは、我々のプレーを巧みに封じようとしていた。」

「浦和レッズにとって、この試合は極めて重要な試合だった。だが、それは我々にとっても同じ事だ。試合をリードする機会をじっくり待ちながら、我々は試合にうまく対応できていた。良い試合だった。次は決勝を待つばかりだ。」

「後半から浦和レッズが少しペースダウンした為、使えるスペースが増えた。特に、カカにとっては。」

「ボカは浦和レッズとは別のタイプのチーム。念入りに準備する必要がある。」

アンチェロッティ、監督、ACミラン


「セードルフのあの得点は、重要な得点となった。良い形をつくって得点する事が出来た。それも、試合を動かさなければならない時の得点だった。あの得点で、試合運びが楽になった。後半の我々の試合内容は、2点目を追加する事は出来なかったが、とても良かったと思う。」

「前半は、浦和レッズが引いて守っていたし、選手達も良く動いていたので、我々にとってはとても難しい試合運びとなった。」

カカ、MF、ACミラン


「ミランは素晴らしい試合をしたと思う。最初に私に訪れた得点チャンスをモノに出来なかったのが残念だ。あそこで得点できていれば、もっと楽な試合運びになっていたかもしれない。私もミスを犯した自分にかなり腹を立てていた。二度目の得点チャンスの時は、そうでもなかったが。いずれにせよ、ゴールを決める事が出来た。」

セードルフ、MF、ACミラン


「我々はこのCWCに注力してきた。我々は、この試合の一週間前に、60名のスタッフを連れて来日した。ミラネッロが、実質的に、そのまま1万キロ東に移動してきたようなものだ。これからは、ファンの方達に満足してもらえるよう、CWC決勝戦に向けての準備をしっかり行いたい。」

「ホームチーム・浦和レッズとの対戦が、非常に難しい試合になる事は事前に解っていた。我々よりも楽に勝ち上がってきたボカとの決勝よりも、ある意味でしんどい、一世一代の大勝負だったが、良い結果がもたらされた。これでミランは、今年3つめの決勝を戦う事になる。CLの決勝でリヴァプールにリベンジしたように、ボカにもしっかりリベンジできるCWC決勝になることを期待したい。イタリアにいるベルルスコーニ会長とも電話で話したが、浦和レッズとの試合については、結果にも、ミランのパフォーマンスにも、大変満足している様子だった。カカは、足の爪が割れていたにもかかわらず、素晴らしいプレーをこの試合で魅せてくれた。彼は、またしても、彼が世界最高のプレーヤーである事を証明してみせた。」

「今日のミランは良かった。試合にも勝った。老いぼれのチームと揶揄されたミランが、これでCWC決勝に進んだ訳だ。だが、浦和レッズ戦の前半は、決して楽な試合展開ではなかった。彼らはアグレッシブで、とても集中していた。彼らにとって、この試合は、日本のサッカー史に残る大試合でもあった訳だ。」

「日本には、多数のミラン・ファンがいる。日本での海外サッカークラブのファン数は、ミランが一番多い。この国では、ミラン関連グッズの売れ行きは素晴らしく良い。日本のクラブチームが決勝に進まないので、決勝では、かなりの数の日本人達が我々を応援してくれるのではないかと思う。浦和レッズとの試合で我々がピッチに入った瞬間、スタンドからどよめきが起こったのが印象的だった。」

ガッリアーニ、クラブ副会長、ACミラン


以上、ご参考まで。筆者による意訳。

ミランは、浦和レッズを、決して舐めてはいなかった・・・少なくとも、試合の直後に彼らがイタリアのマスコミに残したコメントは、そう示唆している・・・。ガッリアーニ副会長が日本のミラン・ファンについて語った時、日本にいるミラン・ファン達を「ティフォージ・ジャッポネージ」(Tifosi Gipponesi)とは呼んでも、決して「ミラニスティ・ジャッポネージ」(Milanisti Giapponesi)とは呼ばなかったところが、興味深い。

※この投稿記事で読者の方々から頂いたコメント及び私の返信コメントを全て、スパムフィルター機能を借りて、このブログ上から姿を消させて頂いていますが、一つ残らず、大切に、私の「コメント管理」の中で保存しています。

ご理解の程、宜しくお願い致します。

2007年12月21日  筆者

posted by sinfonia |02:30 | For Your Information | コメント(0) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2007年12月13日

久し振りの、サンシーロ

クリスマスの贈り物を探しに、街を行き交う人、そして、人。走り去る路面電車の車輪が線路をカタンと弾く金属音が、建物に反響して街の喧騒を煽り立てる。灰色の空。乾燥した空気。白い息。ミラノの12月。

7年前の記憶をたどりながら、ドゥオーモ(ミラノ大聖堂)駅から地下鉄に乗り、デ・アンジェリ駅で下車し、地上に出て路面電車に乗り換えた。行き先は確認するまでも無かった。路面電車に乗っていた乗客達の姿が、間違いなく私を「目的地」に連れて行ってくれることを約束してくれていた。

サンシーロ。このスタジアムをメアッツァと呼ぶ人は、80年代以降にこのカルチョの神殿の存在を知った人達だろう。私は、このスタジアムをサンシーロという名で覚えた事を、そして、今でも私にとって、サンシーロはサンシーロ以外の何ものでもない事を、神様に感謝しなければならない。

路面電車の終着駅で下車すると、真っ先にチケット販売所に向かった。対戦カードが対戦カードなだけに、8万5千人以上収容出来るこの3階建ての巨大なスタジアムが満員になる訳が無かった。案の定、短い行列に並んで3分も経たないうちに、自分がチケットを買う順番が回ってきた。 「どのチケットにしますか?」 窓口のガラスの向こうから放たれた質問に即答出来ない自分に、少々慌てた。そこには、スタジアム・マップなるものはどこにも見当たらず、ただ、緑リング、青リング、赤リング、オレンジリングと、区画名を文章で簡単に案内しているだけの料金表が窓口のガラスに貼ってあるだけだった。図解無しでは、何色がスタジアムのどのあたりを指しているのか、さらに、その中のどこが良さそうなのかが、全く判断できない。事前にスタジアム・マップを確認してこなかった事を悔やんでも、もう遅い。窓口で、詳しい座席の種類や位置の解説を発券担当者に求めることもできたが、それも面倒だった。 「えーと。私の前にいた人がリクエストした場所と同じところでいいや。確か、2階席、赤リング、セクター240、5~10列目あたりを探していましたよね?そこ、私も、お願いします。大人1枚。」 とっさの閃き。私の前に並んでいたイタリア人の男性が、希望する席の位置を熱心に細かく窓口の発券担当者に説明していた事を、耳が覚えていた。その男性のこだわり方から、その位置を自分もリクエストすれば、ULTRASと合い席になるような事も無いだろうし、外れくじを引く事は無いだろう、という考えが、即、口を動かした。郷に入れば郷に従え。7年間のブランクが思いつかせてくれたアイデア。窓口の発券担当者が私のパスポートを見ながら私の名前をキーボードで叩くと、私の名前入りのチケットが発券された。赤リング2階、セクター240、8列目、54番。私をどこに連れて行ってくれるのやら。 入場ゲートの前で持ち物のチェックを受け、回転柵を通り抜けると、チケットをスタジアムの係員に見せて指示を仰ぎ、その指示通りに階段を上がった。腿の筋肉が痛み始めた頃にたどり着いたのは、2階席の、眼下にコーナーのフラッグがなびく、長方形の長辺と短辺の接点にあたるところだった。ULTRASが陣取るクルヴァ、2階席ゴール裏の区画とは、強化ガラスで仕切られており、何よりも、全く死角の無い状態でピッチの隅々まで、ゆったりと座って見渡せるところだった。チケット販売所で、私の前に並んでいた男性が、こだわっていた訳が理解できた。ちなみに、私はサンシーロの2階席からの観戦が個人的には一番好きだ。 靴の裏のコンクリートからジンジンと伝わってくる、冬のスタンドの冷たさ。着席して数分が経過しただけで、足首から下の感覚が無くなっていた。だが、それも、試合開始30分前にもなれば、苦痛では無くなる。選手達がウォーミングアップのためにピッチに出て来る頃には、身体は冷え切っていても、脳内温度はヒートアップしている。今も、昔も、それは、全く変わらない。 試合の方は・・・二の次になってしまったが、インテルの一方的な試合だった。相手のトリノは、前半こそイブラヒモビッチのPK1点だけに抑えたが、後半はDFラインがいとも簡単にインテルの攻撃に何度もこじ開けられた。キヴの左からのクロスボールを職人クルスが頭で合わせて2点目。後半から投入されたヒメネスがペナルティーエリアの外から鮮やかなロングシュートを決めて3点目。さらにコーナーキックからの折り返しをコルドバが頭で押し込んで4点目。トリノは後半終盤からレコバを投入してリズムを変えようとしたが、時すでに遅し。結局、試合は4-0でインテルがトリノに圧勝。このインテルは、ヴィエラ、フィーゴ、スタンコビッチ、ダクール、マクスウェル、クレスポ、サミュエル抜き。出場したイブラヒモビッチ、サネッティ、マイコン、コルドバも、プレーの合間に連戦の疲れを時折見せていたにもかかわらず、それでも、この結果だ。我々インテリスタ達でさえ、このインテルには脱帽してしまう。レギュラーとサブの違いが全く存在しないチームである事を、まざまざと見せつけられた試合だった。
そんな事よりも、私にとって大事なのは、2007年12月9日、日曜日に実現した、7年、正しくは7年半ぶりのサンシーロとの再会。7年半前、2000年5月、コッパ・イタリア決勝戦セカンド・レッグ、インテル対ラツィオ戦をサンシーロで観た。マンチーニがラツィオの背番号10番を付けていた頃。ネスタが若さ溢れる驚異的な身体能力を発揮してラツィオのペナルティーエリア内を支配していた頃。あの頃からインテルでずっとプレーしているのは、サネッティとコルドバだけだ。生インテルは、2003年9月にロンドンのハイブリーで行われたCLグループステージのナイトゲーム、アーセナル対インテル戦を観に行って以来の事になる。今でも、アンリ、ヴィエラ、ピレス、ベルカンプのアーセナルを、ハイブリーでインテルが3-0で沈めたあの試合は、特別な試合として、私の中で大切に保管されている。 1974年、まだ10歳にも満たない日本人の少年が、初めてサンシーロでカルチョの洗礼を受けて以来、30年以上の月日が流れ、その間に世の中は変わり、私も変わり、カルチョも変わり、インテルも変わった。でも、今も、昔も、変わらないもの。黒と青の縦縞姿がサンシーロのピッチ上でボールを追いかける姿を、固唾を飲みながら、心臓が締め付けられるような想いで追いかける、私。そんな私が、まだ私である事を、どうやらサンシーロは、覚えてくれていたようだ。


posted by sinfonia |09:36 | My thoughts | コメント(4) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2007年12月05日

ノーサイド

ノーサイド。ラグビーの試合終了と同時に、 その瞬間から、敵味方の区別がつかなくなる事。これをカルチョで実現するには、魔法が必要だった。セリエA前節のフィオレンティーナ対インテル戦。この試合は、後に、カルチョが本来の姿を取り戻すきっかけとなった一戦として、人々に記憶される試合になる・・・そう、私は、信じてみたい。

魔法。数日前、妻を癌で亡くしたプランデッリ監督。深い悲しみを背負いながら、首位インテルに挑もうとする、フィオレンティーナの指揮官、一人の勝負師の魂に、フィオレンティーナが、インテルが、アルテミオ・フランキに集まった4万3千人の観衆が、一人残らず寄り添った、キックオフ直前の、一分間の黙祷。ピッチサイドに投げ込まれた、無数の白いバラの花束。それを一束ずつ、静かに、一つも残さずに、屈みながら丁重に抱きかかえる、プランデッリ監督。フィレンツェの為に戦ってきた男が、最愛の人を病魔に奪われてしまった。この男の深い悲しみと引き換えに、魔法が呼び覚ました、フィレンツェの良心。

試合終了後、負けたフィオレンティーナの選手達が、ヴィエリが、ムトゥが、パッツィーニが、そして、プランデッリ監督が、ピッチから引き上げてくるインテルの選手達を迎える為に、ピッチ入場口の前に並んだ。その「紫色の花道」で、健闘を称え合う、両チームの選手達。一人一人が、一人一人に、交わす握手、抱擁。笑顔で会話をする、イブラヒモビッチ(インテル)とフレイ(フィオレンティーナ)。フィオレンティーナのゴールを幾度と無く脅かしたインテルのエースと、その男のシュートを、素晴らしい反応で、ことごとく弾きかえしたフィオレンティーナのGK。ノーサイドの光景。その光景がピッチから消えるまで続いた、アルテミオ・フランキのスタンディング・オヴェーション。殺伐としたカルチョに、病んだカルチョに、魔法がもたらした、素敵なプレゼント。

フィオレンティーナのデッラ・ヴァッレ会長は、カルチョのスポーツとしての姿を、価値を取り戻す為に、ラグビーの試合同様、サッカーの試合にも「ノーサイド」を適用する事をイタリア・サッカー協会に提案したが、却下された。だが、この日、魔法が呼び覚ました、フィレンツェの良心を、誰も咎める事は出来ないだろう。

イタリア中を感動させた、フィオレンティーナ対インテル戦の「ノーサイド」。フィオレンティーナは、これからも、独自のイニシアティブで、ホームゲームでは必ず、この「ノーサイド」を採用すると明言した。そして、この「ノーサイド」の反響は、イタリア・サッカー協会に、「ノーサイド」のカルチョへの採用を再審議させる事になった。デッラ・ヴァッレ会長の提案を、一度は却下したイタリア・サッカー協会は、「ノーサイド」を、正式に、カルチョ全体を巻き込んだ、新たな取り組みとして制度化する為に、来年1月からの実施を目標に、今月中旬から本格的な審議に入る。

ノーサイド。イタリア語では、Terzo tempoと言う。試合の前半はPrimo tempo。そして、後半はSecondo tempo。サッカーの試合は、前半、後半が終わって、勝負に決着がついても、選手達がピッチを去る前に、両チームの健闘を称えあう、3つ目のステージ、Terzo tempoまでが、サッカーの試合である事を、サッカーが11人対11人で行われる球技であるのと同じぐらいの当たり前さで、イタリアの子供達に、覚えてもらえるようになるとしたら・・・。

posted by sinfonia |10:33 | My desires | コメント(5) | トラックバック(0)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

2007年12月02日

ユーロ2008本大会 グループ分け 抽選結果&試合日程

本日、スイス・ルッツェルンで行われたユーロ2008本大会の抽選結果です。ご参考まで。

抽選結果:

Group A : Switzerland, Turkey, Portugal, Czech Republic

Group B: Austria, Poland, Germany, Croatia

Group C: Netherlands, France, Romania, Italy

Group D: Greece, Russia, Spain, Sweden


ユーロ2008本大会は、2008年6月7日から29日までスイス・オーストリア両国の以下の都市で開催されます。

スイス:

Geneva, Berne, Basel, Zurich


オーストリア:

Innsbruck, Salzburg, Klagenfurt, Vienna



試合日程:

( )内で表示している試合開始予定時刻は英国時間。欧州大陸では、この英国時間に、+1時間。

Group A

June 7: Switzerland v Czech Republic (Basel 17:00)

June 7: Portugal v Turkey (Geneva 19:45)

June 11: Switzerland v Turkey (Basel 19:45)

June 11: Czech Republic v Portugal (Geneva 17:00)

June 15: Switzerland v Portugal (Basel 19:45)

June 15: Turkey v Czech Republic (Geneva 19:45)


Group B

June 8: Austria v Croatia (Vienna 17:00)

June 8: Germany v Poland (Klagenfurt 19:45)

June 12: Croatia v Germany (Klagenfurt 17:00)

June 12: Austria v Poland (Vienna 19:45)

June 16: Poland v Croatia (Klagenfurt 19:45)

June 16: Austria v Germany (Vienna 19:45)


Group C

June 9: Romania v France (Zurich 17:00)

June 9: Netherlands v Italy (Berne 19:45)

June 13: Italy v Romania (Zurich 17:00)

June 13: Netherlands v France (Berne 19:45)

June 17: France v Italy (Zurich 19:45)

June 17: Netherlands v Romania (Berne 19:45)


Group D

June 10: Greece v Sweden (Innsbruck 17:00)

June 10: Spain v Russia (Salzburg 19:45)

June 14: Greece v Russia (Innsbruck 17:00)

June 14: Sweden v Spain (Salzburg 19:45)

June 18: Greece v Spain (Salzburg 19:45)

June 18: Russia v Sweden (Innsbruck 19:45)


Quarter-finals

June 19: Winner Grp A v Runner-up Grp B (Basel 19:45)

June 20: Winner Grp B v Runner-up Grp A (Vienna 19:45)

June 21: Winner Grp C v Runner-up Grp D (Basel 19:45)

June 22: Winner Grp D v Runner-up Grp C (Vienna 19:45)


Semi-finals

June 25: Winner QF 1 v Winner QF 2 (Basel 19:45)

June 26: Winner QF 3 v Winner QF 4 (Vienna 19:45)


Final

June 29: Winner SF 1 v Winner SF 2 (Vienna 19:45)

posted by sinfonia |21:24 | For Your Information | コメント(3) | トラックバック(2)
みんトピに投稿 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加