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巨人、大鵬、卵焼き

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最近の若い人はタイトルの意味がわからないのではないかと想像している。 私自身にしたところで、リアルに体感したわけでは決してなく、親の世代から聞かされただけなので偉そうなことは言えない。 大鵬は既に引退していたし、お弁当に占める卵焼きの地位だってずいぶんと低下していた。 それでも、巨人だけは何とかプロ野球というジャンルの看板にしがみついていたように思う。 長島の現役時代、つまりはV9の時代から見れば遥かに色褪せてはいたにしても。

生まれ過ごした土地が北海道の田舎だったこともあって、私は半ば必然的に巨人ファンになった。 理由は簡単だ。テレビに毎日映るプロ野球といえば巨人以外にはなかったからだ。 Jリーグがスタートするずいぶんと前、少年ジャンプでキャプテン翼が人気を得始めた頃の話。 現在と比べて過去がよかったという趣味はないが、それでも時代はまだ穏やかで、知らなくてよいことはちゃんと知らないまま生きることが許された時代だった。 プロ野球選手のプライベートとか、プロレスが八百長であることとか。 王貞治の756号は何とかリアルタイムで経験することができた。

大鵬の孫がプロレスデビューを果たしたニュースに触れて、私が想い出したのはそんな穏やかな時代のことだ。 背景にある事情のことはよくわからないし知りたいとも思わない。 体が大きくて然るべき血統があれば確かに武器にはなる。 本人が夢や希望に満ちて飛び込んできたのであればよいのに、と思う気持ちもある。 だけど、大鵬という名前に共鳴するファンがどれだけいるのかという点については、正直なところ疑問を抱かざるを得ない。 今の若い世代の人たちが巨人や卵焼きにはあまり心ときめかないのと同じように。

それは「王道の後継者」とか「猪木のゲノム」といったフレーズを目にする際に抱く違和感とほとんど同じだ。 既視感と呼ぶには余りに陳腐化しているのに、遣っている人たちだけがそうした現実に気づいていない。 新日本プロレスの復興がどのようにして果たされたのか。 そのことをきちんと考えないからどこまでも一強時代が進んでいく。 それはこんな時期に北朝鮮に行った猪木を(マスコミを含めた業界関係者の)誰も公然とは非難しないことにも象徴されている。 いつまで昔の名前で出続けるのか、昔の名前にしがみつくのか。

高山選手のケガの報の後、チャリティを申し出る昔の名前をいくつか見つけた。 それを素直に応援する気持ちになれない自分がいる。 (マスコミを含めた業界関係者の)誰一人猪木を批判しない構造と高山が重症を負うに至った構造とは、目には見えない根底のところでしっかりと結びついている。 「今、ここ」に生きることの大切さは全面的に肯定するところだが、「ここ」にあるのが本当に「今」なのかどうかを私たちはしっかりと考えるべきであるように思えてならない。 プロレスを守るのは単なる復古主義や教条主義ではないはずだ。 そういえば、「紳士たれ」と叫び続ける巨人に明るい未来を感じないのもきっと同じ問題性に由来するのだろうな…



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