2009年01月30日
【日本リーグの安打製造機は?】
今回は打者について、特に安打数に焦点を絞ってみたいと思う。まず歴代安打数の上位選手を見てみよう(2008年終了時点)。
1(←1):山路典子(太陽誘電) 221
2(←2):ミッシェルスミス(豊田自動織機) 209
3(←5):田中幹子(ミキハウス・豊田自動織機) 195
4(←*):馬渕智子(日立ソフトウエア) 188
5(←3):松本直美(ユニチカ垂井・日立高崎) 184
6(←*):山田恵里(日立ソフトウエア) 183
7(←4):北村武子(シオノギ製薬) 182
※カッコ内は前年度終了時点の順位。「*」は前年時で11位以下
松本は2002年に正式に引退。ミッシェルは昨年引退。監督兼任、コーチ兼任として選手登録している山路、北村は昨年度の打席数がゼロで実質的には専任監督・コーチである。
バリバリの現役選手としての最多安打は織機の田中だ。昨年も16安打を積み重ねて歴代順位を5位から3位にまで引き上げた。第2節、遅くとも3節には史上3人目の通算200安打に手が届くだろう。
ご存じの通り、ソフトボールは2002年のISFの国際ルール変更で女子の投捕間距離が約1m伸び、そこから記録が様変わりした。それ以前に選手としてのピークがあった選手は当然のことながらその恩恵を受けていないわけであり現在の打者と直接比較はできない。そんな中で200本以上の安打を放っている山路やスミスにはただただ凄いの一言であり、松本にしろ北村にしろ、歴史に名を残されるべき選手だろう。現役最多安打の田中も、97年にデビューしてから最初の5年間は短い投手間距離で試合をしており、そのハンデがありながら、安打数のみならず本塁打数、打点数でも歴代最多を競っているというのは驚異である。史上最強の打者ではないか。
しかしながらやはり、記録としての安打数となるとこれらの選手の記録よりもルール改正後に入社した選手が明らかに有利だ。特に現在、歴代トップを目指して猛追してきているソフトウエアの日本代表コンビ、馬渕と山田が、いずれ打者に関するほとんど全ての記録を塗り替えてしまうだろう。馬渕は2年目からのルール改正であり、山田はまさにルール改正の年に鮮烈のデビューを飾った。ソフトボール新時代の申し子である。
今回は主に、その新しい時代前後にデビューした選手数人の安打数に焦点を当ててその比較をしてみることにした。
またしても前置きが長くなったのは、早晩破られるであろう過去の選手の記録にも、打者不利の前時代に残した記録としていつまでも輝かしいものがあることを忘れたくないからである。
【過去3年の平均安打数】
安打数を比較するのに、まず2006~2008年の3年間における平均安打数上位20傑について計算してみた(下図)。20人並んだ名前はまさに今現在の日本リーグを代表する強打者ばかりだ。
この中で五輪でも活躍した馬淵や佐藤が約23本であるが、それを上回る上位4人が26本以上と他を引き離している。この4人が現時点での最高レベルの安打製造機と呼べるだろう。
【平均安打数25以上の4人について】
その4人とは、松崎絵梨子(太陽誘電、9年目、グラフは紫色)、山田恵里(日立ソフトウエア、8年目、赤色)、狩野亜由美(豊田自動織機、7年目、青色)、河野美里(レオパレス21、6年目、黄色)である。デビュー年がそれぞれ2001、2002、2003、2004年と、きれいに1年ずつズレているのも面白い。
この4人について、デビューからの打率の変遷(折れ線グラフ)と年間安打数(棒グラフ)の推移を示したのが下図である。
(松崎選手の記事が設定ミスで反映されていませんでした)
太陽誘電の松崎は長崎商業という並みいる強豪とは異なる地方の高校出身であるが即戦力として誘電に入った。
2001年のデビューであり、ここにあげた4人の中で唯一打者不利のルールを経験している打者である。
高卒1年目から58打席に立ち0.182の打率を残した。ルール改正後の2年目3年目には0.250を超えレギュラーとして十分な働きをした。初めて3割を超えたのは4年目の2004年で、その年に行われたアテネ五輪に若手として連れて行ってもいいのではないか、と思われるほどの活躍だった。
飛躍の年は2006年、0.388の高打率でベストナインを獲得した。翌年はやや落ちた打率も2008年に再び0.377と高打率。足も速く守備も巧く、新生日本代表に名を連ねてもおかしくはない実績をすでに積み重ねてきている。
同じ年齢であり東邦銀行から移籍してきた後に長年左中間を守ってきたレフトの前田智子が野球に挑戦するために昨年限りでユニフォームを脱いだ。戦友前田のためにももう一花咲かせて欲しい。
2002年に鮮烈なデビューを飾った山田であるが、打率のタイトルを初めて獲得したのが2006年というのが意外だ。それほど日本リーグで首位打者を穫るのは難しいのだろう。ただそれ以降は2007年3位、2008年再び首位打者と貫禄を見せつけている。金メダルを獲得した北京五輪は、彼女にとってまさに人生最高の力を発揮できる時期にバッチリと当たったのだろう。これはこと山田にとってだけではなく、日本にとって非常な幸運であった。
山田に次ぐ安打製造器として狩野の名を上げても誰にも異存はないだろう。日本代表の1番打者として決勝のアメリカ戦での先制タイムリーは永遠にファンの記憶に残るものであろうが、この狩野も山田と同じようにソフトボール人生最高潮が北京五輪に合致した。
1年目から大活躍し、2年目にははや打率が4割を超え山田以上の打者になるかと思われたが、3年目に大きな壁にぶち当たり打率が1割台に落ちた。しかしどうやらそれは狩野が越えるべく用意された壁であったようで、翌年再び打率を3割に乗せると翌々年にはとうとう首位打者を獲得し、そのまま北京五輪に向かうことになった。2008年は少し波が見られたがそれでも打率は0.350である。今年再び首位打者を奪い返したい。
山田、狩野が人生の絶頂期を北京五輪に合わせられたのに対し、生まれるのが1年遅く幸運を手に入れられなかったのがこの河野である。3年目に初の3割を3割台後半の高打率で残した彼女は翌年さらに打率を伸ばし、あと1打席、最終打席に立たなければそのまま首位打者であったという非常に惜しい接戦でタイトルを逃した。その4割台の打率を翌年さらに伸ばし、0.433という高打率をマークしたがさらに上を行った山田に敗れた。2007年、2008年と、狩野、山田という代表コンビにともに1打席、1安打の差で敗れたのは不運としか言いようがない。
この希代の天才打者も今年からは恐らく代表のレギュラーに名を連ねることになるだろう。今までの不運を奪い返すように、また8年後の五輪に向かって日本のソフトボール界を担っていって欲しい選手だ。
【4人の打者の通算安打数の変遷】
4人の打者におけるデビュー年からの積算安打数を示したのがこの図である。
狩野も現在のペースとしては山田に匹敵するものがある。3年目にスランプに陥りつけられた差がそのまま残っている感じで、常に15本程度の差を追い続けている。山田が怪我でもしない限り、なかなかこの差を埋めるのはしんどい。
逆に徐々に差を埋めてしまいそうなのが河野だ。2年目までの安打数が少ないので、同じ年数では山田に20本以上の差をつけられてはいるが、1試合に3本、4本と固め打ちができる河野ならもしかするとトップに躍り出る日がくるのかもしれない。
松崎は5年目までは安打数の伸びが他の選手と比べて鈍く、そこでかなり差をつけられた。しかし6年目の2006年にブレイクしてからは、その後の安打数の伸びのペースは他の3人と比較しても遜色がない。積算の安打数として追いつくのはしんどいが、遅咲きで晩成型と思われそうな松崎のこと、今年か来年、首位打者を奪うような輝きの年が訪れるような気がする。
この3年間、他の選手を引き離して安打を積み重ねているこの4選手。今年はここにレオパレスの永吉理恵なども加わってくるかもしれないし、その1年前の永吉のように全くノーマークの選手の大ブレイクもあるかも知れない。ここ数年熾烈を極める首位打者争いや最多安打争いが、今年も楽しみだ。
posted by silvercats |08:43 |
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2009年01月20日
【その2~投球スタイルを解析する】
今回は各投手の投球スタイル、投手としてのタイプを解析してみたいと思う。使用したデータは一つ前と同じ以下の5つ。
「防御率、被打率、奪三振率、与四死球率、投球数率」
これをチームでの解析と同じように「主成分分析」して、つまり5つのデータを総合的に扱って、「それぞれの投手がどのような特徴を持つか」、「どの投手とどの投手が近い投球スタイルをしているのか」を絞り出すことにした。
一応今回は、ちょっとややこしいですが解析結果を書いておきます(読む必要ないです)。
【1部リーグ27投手について、それぞれの投手がどのような特徴を有しているのかを主成分分析で解析した。用いたデータは投手の能力を表す数値として一般に使用される上記5つのデータである。相関行列を用いた主成分分析の結果、第2主成分までの累積寄与率が88%と高く、つまり5つのデータを用いた主成分分析による2次元配置で比較的よく投手全体の特徴を説明できると言える。
「防御率、被打率、与四死球率、奪三振率、投球数」の5つの統計値のうち、第1主成分の固有値の絶対値が大きい二つの項目を挙げると「被打率(0.505)」と「防御率(0.503)」であった。つまり第一主成分(横の軸)は、プラスになるほど「ヒットを打たれ、失点(自責点)も多い」という、投手としての基本的能力を表していると言える。
同じように第2主成分の固有値の絶対値の大きいもの3つを見ると「与四死球率(-0.665)」、「奪三振率(-0.494)」、「投球数(-0.450)」と、残りの3つのデータであった。つまり縦軸について、マイナス方向に行くにつれ「四死球および三振および球数」が多くなることを表している。このことは、グラフの縦軸は「三振も取るが荒れ球の投手(グラフの下方向)」や「三振は少ないが四死球も少ない打たせて取るタイプ(グラフの上方向)」というような、言わば個々の投手の投球スタイルの違いを表していると言える。以下に示す図は第1主成分得点、第2主成分得点について2次元展開したグラフである】
さてややこしい説明も済んだところで、とにかく結果を見てみよう。
「投球スタイルの異なる典型的な3つのグループ:主成分分析の結果(累積寄与率88%)」
【最初にグラフの読み方をまとめておきます】
グラフの右方向→:「ヒットを打たれ、失点(自責点)も多い」→やや成績の劣る投手
グラフの左方向←:「ヒットを打たれず、失点(自責点)も少ない」→好投手
グラフの上方向↑:「三振は少ないが、四死球や球数も少ない」→→→打たせて取るタイプ
グラフの下方向↓:「三振も取るが同時に四死球や球数も多い」→→→荒れ球タイプ
それぞれの投手を投球記録について解析して分布図にしたのがこの図である。近いところに位置する投手は似たような投球スタイルをしていると言って間違いない。
この図では、横軸に関しては真ん中くらいから左に位置する投手を好投手と呼ぶことが出来るだろう。その中の投手のタイプについて、野球でも見られるようにソフトボールでも典型的な三つの大きなグループを認めることが出来た。
以下に、それぞれの投手のデータも再掲載し説明しよう。
(グループA)打たせて取るタイプの投手
このグラフでは上に位置する投手ほど奪三振も四死球も投球数も少ない。つまりどんどんストライクを取り早いカウントから打たせて取るタイプの投手と言える。
このタイプの投手として、秋元(レオパレス)、帰山(佐川)、伊藤美(誘電)などがいるが、中でも最も典型的なのが「山根(レオパレス)」だ。この中で最も左に位置することから「昨シーズン最も成功した“打たせて取るタイプ”の投手」ということもできる。
実は山根について、「新人で躍動感があり投球フォームにも勢いがあり、力でグイグイ押して抑えるタイプだ」と勝手に印象づけられていた。恐らく多くの人がそうではないだろうか?しかし主成分分析の結果からは「典型的な打たせて取るタイプの投手」という結果になった。実際に個々のデータを見ても「与四死球率」「投球数率」が最も低くトップであるが、逆に「奪三振率」も27人中25位とかなり低かった。いかにも打たせて取る典型ではないか。それでいて被打率も12位と健闘している。これだけ見ると一体どこの10年選手かと思わせるような老練な投球を物語るデータだが、これが1年目の投手の記録だから恐れ入る。怪我持ちの山根にしては実に理にかなっている。
ただ2年目の今季、成長し力強さを増し三振も増やしてイメージチェンジするのか、今のままのスタイルで少ない球数でどんどん打たせてアウトにする技を磨くのか、どう成長するのかが本当に楽しみだ。
(グループC)荒れ球タイプの投手
三振も多く取るが四死球も多く、かつ球数も多い。絵に描いたような荒れ球タイプの投手だろう。去年のリーグではその典型がミッシェル・スミス。もともとは四死球もほとんど出さない素晴らしい投手だったが、昨年は序盤からコントロールに苦しむ場面が数多く見られた。今回の結果はその苦労の道筋をちゃんと表している。
この「荒れ球タイプ」のグループには他にリッター、ローチ、染谷といった外国人(外国生まれ)投手が含まれているのがまた面白い。呂やオークスもこれと近い場所に位置しており、つまりは日本リーグの外国人投手は「細かいコントロールは気にせず球数を投げ四死球を出しながらも三振を奪って抑えていく」ような荒れ球タイプの投手がほとんどなのだろう。ここまでみんなが理想通り(?)の外国人投手だとは、ちょっと分かり易すぎて笑ってしまう(笑)
ちなみにここに瀬川が入っているのもまた面白い。瀬川も外国人的な投手なのだ。
(グループB)どちらでもないバランスタイプの投手
上記2タイプのちょうど中間的場所に位置するグループで、グラフの上下中間に位置している投手は特に三振が「多い/少ない」とか、「四死球が多い」という偏った特徴はなく、どちらも同じくらいに安定しバランスの取れた力を発揮できるような投手のグループと言える(ただグラフの右側に行くと「三振は少ないが四死球は多い」というような両方とも悪い方でバランスが取れている選手も含まれるが)。
そのバランスの取れたタイプの典型が上野であろう。上野は三振も極端に多いが四死球も少なく、そのバランスが取れているので上下方向では真ん中に位置している。同時に、「防御率」と「被打率」が極端に低いので、一人だけ極端に左側に離れている。宮本も同じように優れた投手だが、やや三振が少なく且つ与四死球がかなり少ないので、少し図の上の方に偏って位置している。ただどちらにせよ、昨年のデータから言えばこれら両投手がバランスタイプの投手では最も成功した投手だろう(上野だけは成功しすぎてもはや比較の対象外だがw)。
その他にバランスタイプとしてこのグループに入る投手は、非常にクレバーで投球術に長けたベテラン投手が多い。坂井、露久保、藤原、ハーディングと聞いてすぐに思い浮かぶのは、それぞれがリーグを代表する投手である以上に、どこかいかにも「投手らしい投手」というイメージだ。恐らくソフトウエアの遠藤有子投手などの全盛期もこのタイプだったのではと想像できる。投手として完成された理想的な投手という感じか。
【まとめます】
上記の結果を簡単にまとめてみた。「○」はその中でも典型的好投手。
<打たせて取るタイプ>
○山根-秋元、帰山、伊藤(、森川)
<荒れ球タイプ>
○スミス-染谷、リッター、ローチ、瀬川(、呂、庄子)
<バランスタイプ>
○上野、○宮本-露久保、坂井、藤原、ハーディング(、その他)
【プロの目はどう見る???】
さて以上は僕が「2008年のデータを機械的に」解析した結果である。
長年対戦してきた選手はどう見るか?実はここからが本番!(じゃあ今までは何やってん!?笑)
上記で取り上げた15人について、ある日本リーグの10年選手に「選手の目から見てこの15人を「(1)打たせて取るタイプ、(2)荒れ球タイプ、(3)バランスあるタイプ」、の3つに分けてみて」とお願いしてみた。
以下がその結果である(「○」は解析結果と同じ」)。
<(1)打たせて取るタイプ>
山根○
秋元○
藤原→(解析結果は「バランス」)
伊藤美○
帰山○
<(2)荒れ球タイプ>
瀬川○
ローチ○
<(3)バランスタイプ>
露久保○
染谷→(解析結果は「荒れ球」)
ハーディング○
ミッシェル→(解析結果は「荒れ球」)
坂井○
リッター→(解析結果は「荒れ球」)
宮本○
上野○
※結果
15人中11人の投手が「プロ」の感覚と解析結果が一致した。これはまあまあでは?
結果が違った残りの4人が「藤原、染谷、ミッシェル、リッター」である。ミッシェルなどは2008年が特別荒れ球だっただけで、今までずっとバランスの取れたタイプであったのは明白。つまりこの相違は、プロの目(長年見てきた印象)から、今年やや違った投球をしたということを表しているのではないだろうか。
プロの選手の目から見た感覚はその投手の今までの何年もの総合的な感覚で正しいだろう。染谷にしろリッターにしろ、やや今年は荒れ球タイプの投球をしてしまった、というのが真相のようだ。藤原は逆にもともとは打たせて取るタイプだったのがより三振も取れる好投手に進化したのかもしれない。
その他の投手に関しても、今回の解析はあくまで昨年(2008年)のデータだけを解析した「昨年の投球スタイルは?」という結果である。若い投手が一夏で急激に成長する場面も何度も見てきたし、一冬越えたらもっと変身するだろう。今年どの投手がどういう投球スタイルに変化しているか、これはまた1年後の楽しみにしたい。
posted by silvercats |19:19 |
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2009年01月16日
【解析に用いたデータ】
まずは各投手の基本的な成績を解析用にピックアップする。今回解析に用いるデータは投手の能力を表す基本的なもの5つに絞った。なお、比較のために全てのデータは比率に換算した。
(1)防御率~1試合(7回)当たりの自責点数(一般的なデータ)
(2)被打率~被安打数/打数(与球四死球や犠打を除く打者一人に対してヒットを打たれる確率=打率の逆)
(3)与四死球率~与四死球数/打席数(対戦打者一人当たりに四死球を与える確率)
(4)奪三振率~奪三振数/打席数(対戦打者一人に対して三振を奪う確率)
(5)投球数率~投球数/投球回数(1回を抑えるのに要した球数)
【その1:野手に負担をかけない投手は?】
バックで守っている野手に対して、投手が直接影響を与える要素として「ヒットを打たれること」「四死球を与えること」「三振を奪うこと」の3つがあると考えられる。
○被安打~ヒットになるかならないかについては、野手の守備の能力も大きいのでこの値を使うのは少し問題もあるのだが、ただやはり「ヒットを打たれない」というのは基本的には投手の能力を測る上で重要かつ分かり易い指標であるので採用した。
○奪三振~この値も言わば「捕手との共同作業」であるわけで単に投手の能力だけとは限らないのだが、被安打同様、やはり一般的に使われる分かり易い指標であるので問題はないだろう。
○与四死球~これはほとんど問題なく投手の責任と言っていいだろう。
さて以上の3つのデータのうち、被安打は「被打率」として簡単に計算できるが、与四死球と奪三振については「奪三振/与四死球」の比率として使用した。これはメジャーなどで「三振/四球」比が投手の能力評価する指標として使われているという理由もあるが、それ以上に2次元グラフに表しやすいために次元を減らした、というのがもっとも大きな理由。ただし結果的にはそれぞれを単独で扱うよりは優れた指標であることがわかった(説明略)。
☆では「被打率」と「奪三振/与四死球・比」の関係を見てみよう☆
「他の投手と比較し極端に優れた結果を示した3投手」
全27選手について計算したが、まずは見やすいように被打率の低い上位20投手について図示した。 最初にこの図からわかったのは、上野、宮本、瀬川の分布が他の選手からは大きく異なることと、3投手以外の投手についてはどうやら「被打率」と「奪三振/与四死球・比」にはどうやら相関関係がありそうなことである
「上野由岐子(ルネサス高崎)」
一目瞭然、上野の値が他の投手からは飛び抜けているのがわかる。改めて上野の能力の高さを示しているだろう。
このグラフでは、左に行くほど「被打率」が低く、且つ、上に行くほど「奪三振/与四死球・比」が高いと言う単純なグラフである。つまり上野は、ほとんどヒットを打たれず、四球1個を与える間に三振を取りまくるという、言わばほとんど一人で試合を作ってしまえる投手だ。今さらながらに、やはり、凄い。
「宮本直美(豊田自動織機)」
恐らく多くのファンが意外に思うだろう投手がこの織機の宮本。投球回数が20回と、規定回数の半分以下、上野の6分の1にも満たないわけで参考記録の意味合いが強いが、ただしその投球内容の質というのが今年如何に優れていたかをこのデータは表している。同じように投球回数の少ない投手がほぼ他の投手と同じような結果なのを見ても、やはり宮本の潜在能力の高さを表しているだろう。
「奪三振/与四死球・比」が2番目に高く、被打率に関しては上野を上回って1番低かった。今年織機のエースとして飛躍しても、何ら不思議ではない。
「瀬川絵美(日立ソフトウエア)」
極端すぎて評価が2分しそうなのがこの投手。被打率に関しては上野、宮本と並んで他を大きく引き離している。が、そんなにヒットを打たれない投手であるのに「奪三振/与四死球・比」がかなり低い。ひとえに四球を与えすぎなのだ。
ヒットを打たれないのだからどんどんストライクを取っていけばいいのに、これはもう完全に自滅状態。逆に言えば、この能力のまま与四死球さえ減らしていけば、上野に匹敵する投手に成長する可能性を持っているのだが・・・
「3投手を除いた全24投手について」
上記3投手は、野手への負担度、という項目については2008年度の成績は極端に優れた(瀬川に関しては微妙だが)成績を残したと考えられるので、全体的な傾向を見るためには除外した(外れ値の除外は統計的には常套手段であるので)。
水色の矢印は散布図の回帰直線で、統計的に有意な相関があった。つまり「被打率」と「奪三振/与四死球・比」には明らかな関連があると言うこと。したがって、一般的な投手について、被打率が低い投手というのは同時に「三振/四球」の値も高くなると言うことだろう。
端的に言うと、総合的にはこの図でみる左上に行くにつれて「野手に負担を強いらない好投手」ということになろうか。また同じ被打率なら上に行くほど、同じ「三振/四球・比」なら左に行くほど優れているとも言える。
実際に左上に位置する「スミス、坂井、リッター、染谷」の4投手は紛れもない世界レベルでの好投手であるし、その次の「藤原、ローチ、ターニャ、山根」もエース格であるので、この解析はほぼ実力を表していそうだ。日本の準エース格であった坂井であるが、全体的に見ても「三振/四球・比」が3番目に高いのは立派で、スミスと並ぶ好投手であると言える。その他では山根と藤原の頑張りが目立つ。被打率のやや高い帰山も「三振/四球・比」が坂井に続くほど高いのは立派。逆に露久保は三振比が低いが被打率も低く、投球術の高さが伺える。
そんな中一人目立つ(?)のが江本。代表投手でありながら今年の成績はむしろ日本リーグの投手ではかなり下の方で、堤や松村のような下位チームのエース(ゆえに強豪チームと常に対戦している。江本は織機とは対戦しない)にも成績で劣っているくらいだ。これはちょっと不甲斐ない。今年の復活を期待したい。
今回の解析では、「野手に負担をかけない」という点に絞ってみたが、実際には「打たせて取る好投手」というのも存在する(恐らくその典型的な投手が山根)。それぞれの投手がではどういう投球スタイルをしているのか、というのも興味がある。
次では各投手のタイプについての解析してみたいと思う。
posted by silvercats |08:31 |
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2009年01月08日
打撃に関するデータとしては、本塁打数や打点などがあるが、その他攻撃面全体の特徴も加えて12チームで比較するため、盗塁や四球のデータも含め、かつ全てを比率で出して比較してみた。それぞれのデータの説明は以下の通り。
☆打率=一般的な打率
☆本塁打率=安打数全体に占める本塁打の割合(本塁打数/安打数)
☆2,3塁打率=安打数全体に占める2,3塁打の割合(2,3塁打数/安打数)
※柵越えと低いライナー性の2,3塁打を一応わけて考えてみた(が、結果的には大きな違いはなかった)
※ちなみにこれは「数値が高い方がいい」という単純なものではなく、どういう打撃をしているかというタイプを表した数値である。
☆盗塁率=一塁への出塁数に対する盗塁数(盗塁数/(単打+四死球))
☆残塁率=出塁走者に対する残塁走者の割合(残塁数/(安打数+四死球数-本塁打数))
☆犠打率=打席数に対する犠打の割合(犠打数/打席数)
☆打点率=打席数に対する打点の割合(打点数/打席数)
※犠打、打点については打数に含まれない打席でもカウントされるので打席数で除した
☆四球率=四球数/打席数
☆三振率=三振数/打席数
以上の九つのデータについてまとめたのが次の表である。上がそれぞれの項目についての各チームの数値。下が項目別の各チームの順位である(分かり易いように、1位、2位、11位、12位に色づけしてある)
ではこれをもとに各チーム簡単に解説してみたい。
【ルネサス高崎】
三振が一番少ない。打率と打点は2位。その他の項目に特筆すべきものはないが、全体的にやはりバランスがいい。犠打も多い。もとより上野が絶対的なエースに君臨するチーム。これ以上打撃が良かったらリーグが面白くない(笑)
【日立ソフトウエア】
9項目中4項目で1位。打率も2位。さすがリーグ1の破壊力を誇る打撃のチーム。盗塁も比較的多いが、何より打点率が高くて残塁率が少ないのが特徴。非常に効率よく得点しているのがわかる。
【デンソー】
盗塁率が2位、四球率も4位だが、あとは軒並み中位かそれ以下。これはそのまんま増山のイメージに近い。ただ犠打率は10位。
染谷&増淵の新旧日本代表コンビで初の決勝トーナメントに進出したデンソーも、やはり課題は攻撃力か。
【豊田自動織機】
一番特徴的なのがこのチーム。本塁打率が1位でしかも犠打率が最下位。あまり犠打を使わずガンガン振っていきホームランを狙っているイメージか。それでいて三振率が2位ということは三振も少なく、確実性の高さもうかがえる。
【レオパレス】
ソフトウエアに次ぐ打撃のチームがこのレオパレスか。打率が1位だが犠打率も1位と小技も使う。残塁率も2番目に少ないし、四球率は高く三振率も少ない。破壊力のソフトウエア、バランスのレオパレス、といった感じ。
【太陽誘電】
四球率が1位なのは谷川や廣瀬が稼いでいるのか。それでいて犠打率も高く小技も使える。打率が8位、三振率が8位とやや荒削りな部分をチームとしても克服したい。
【トヨタ自動車】
四球率は2番目に高いのに、犠打率が2番目に低い。この辺の攻撃のまずさが前半戦接戦を落とし続けた所以か。盗塁と2、3塁打が3位のことを考えると、余計に犠打の少なさがもったいない。
【佐川急便】
盗塁率が低く、三振率が高い。その他の項目もほとんどが真ん中以下。どうにかして攻撃にメリハリをつけて特徴を出したいところ。ただ打率の5位は健闘だろう。そこをもっと生かしたい。
【Honda】
意外や、安打に対する2,3塁打の比率が2番目に高かった。ただ打率も9位であり、少ない安打に占める長打の割合が多いということ。もっと単打も増やして逆にこの比率を下げたいところ。犠打はやや多い。
【戸田中央病院】
本塁打や2,3塁打の占める割合が低く(12位と11位)、マクセルと並んでもっとも長打の出にくいチーム。盗塁以外全て8位以下というのも苦しい。全体的な打撃のレベルアップが急務である。
【シオノギ製薬】
打率11位、盗塁率12位、打点率11位、四球率12位と苦戦だが、犠打率は2位と頑張っている。この辺りは伝統チームの意地か。全体的に低い打撃成績の中でも、なんとか得点に結びつけるための努力をし、且つ結果も出している。立派なもの。
【日立マクセル】
やはり2部から上がって1年目は全体的に苦しかった。チームの主砲が抜けた影響も痛かった。9項目中5項目で12位、2項目で11位と完敗。犠打7位、盗塁8位となんとか頑張ったが、この成長の続きは今年2部で鍛え上げた後の来年、復帰した1部で発揮してくれるだろう。
【最後にこれらのデータを全部まとめて各チームの全体の特徴を図示】
データを全部ひっくるめてコンピューター君に計算してもらいました(いわゆる主成分分析(PCA)というもっとも一般的な多変量解析)。
計算結果は下のような図になります。「近いところに集まってるチームが同じような攻撃パターンを持っているチーム」、ということになります。
そして、右に行くほどどういうチームか?上に行くほどどういうチームか?左に行くほどどういうチームか?下に行くほど・・・ということも(だいたい)計算結果からわかります(軸との相関係数とかややこしいもんが出てきますので省きましょう)。
とりあえず難しいことは抜きにして、結果を見てみましょう。
右→:右に行くほど打撃力が弱い。三振も多く残塁も多い
左←:左に行くほど打撃力が強い(長打も多い)
上↑:上に行くほど犠打が多い、盗塁は少ない
下↓:下に行くほど盗塁が多い、犠打は少ない
※つまり、「打つチームは三振も残塁も少ない(当たり前?)」「盗塁が少ないチームほど犠打を使う」
【結論】
なんかデータいじくってたらなんとなく、ソフトボールのチームが攻撃力を高める3つの方向性が見えてきたような気がします。その3つの方向を矢印で示しています。どちらにせよ基本的には左側に進む、つまりは「打撃の基本的な力を付け且つ三振を減らす」方に向かうわけですが、それ以外で、
(A:白矢印)盗塁はある程度犠牲にしつつも犠打も駆使して攻撃力をアップする
(その進化型がレオパレス21)
(B:青矢印)盗塁や犠打はほどほどに、とにかく打撃の破壊力が持ち味
(その進化型が日立ソフトウエア)
(C:桃矢印)盗塁も用いるが何よりあまり犠打は使わない。イケイケどんどん型。
(その方向の攻撃をしているのが愛知の3チーム)
(D)基本的に右半分は打撃力の弱いチーム。その中でもシオノギは犠打を増やすことで特徴を出している。
※(A)方向に関東の3チーム(レオパレス、ルネサス、誘電)が、(C)方向に愛知の3チーム(織機、トヨタ、デンソー)が向かっているのが非常に示唆的で面白いですね。
以上です。おわり。
posted by silvercats |23:08 |
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