2012年01月25日
【2011年飛躍した選手~ソフトボール日本リーグ1部】
☆☆☆栗田美穂(豊田自動織機)(2007→2008→2009→2010→2011) 試合数:1→0→0→8→14 投球回:0→0→0→18.7→62.0 対打者:0→0→0→71→253 投球数:0→0→0→299→945 奪三振:0→0→0→7→30 勝利数:0→0→0→1→9 昨年「飛躍した選手」として☆を2つ付けた栗田美穂だが、今年はさらにその才能が一気に開花し、文句なく☆3つ、一昨年から見ると☆5つ分の大飛躍の1年となった。 2011年シーズンの豊田自動織機における栗田の存在価値を今更改めて詳しく説明する必要もないだろう。 とにかくアメリカ代表エースのオスターマンが加入し優勝候補の筆頭と目された織機から、後半オスターマンが怪我で離脱することが決まった瞬間、優勝どころか連続して出場し続けてきた決勝トーナメントに進むことすら危ないのではないかと誰しもが思ったに違いない。 そんな大ピンチの織機を救い、そして織機の決勝トーナメント出場の歴史を繋いだ最大の功労者がこの栗田だったのだ。織機の決勝トーナメントの歴史はとりもなおさずソフトボールの神様であるミッシェル・スミスの歴史でもあった。それからバークハート、オスターマンと、いつもチームにはアメリカ代表クラスの投手が存在した。2011年後半はここ20年で初めて外国人エース不在のリーグ戦となったのだ。そのチームの大ピンチを、ベテラン宮本直美と力を合わせて救ってくれたのだ。 今後いずれまた織機は優勝し、そして多くの感動を与えてくれるであろうが、栗田が頑張り宮本が支え、野手がみんなでもり立てた2011年のシーズンは、織機ファンにとっては一生語り継げる忘れることができないシーズンになった。 ☆☆山下絢(ルネサスエレクトロニクス高崎)
(2007→2008→2009→2010→2011) 試合数:2→6→7→8→10 投球回:1.7→6.0→17.0→18.0→28.3 防御率:0.00→4.67→1.65→5.44→0.49 投球数:9→27→70→85→110 被打率:0.375→0.333→0.246→0.346→0.184 勝利数:0→0→1→1→3 栗田と同じ5年目の投手である山下。デビューは早く1年目からチャンスは与えられてきたがなにぶんにも上野由岐子擁するルネサスの投手ゆえ、登板機会も常に黒川とのセットか、勝利確実な試合でのリリーフなどに限られてきた。 そんな山下が存在感を大いに示したのが入団3年目、2009年の第9節下関大会。伊予銀行戦で先発した山下は相手投手の清水美聡と投げ合うも終盤に大量点をもらい好投。最終回に矢野輝美に一発を浴びて完封こそ成らなかったが、7回を一人で投げきり完投で初勝利を上げたのだ。 ただシーズン終盤で成長の兆しが見えた山下だったが翌年同じくらいチャンスをもらいながら防御率5点台、被打率も3割5分弱と低迷し壁にぶつかってしまう。しかし不調を1年で脱した2011年は過去最高の30回近い投球回を与えられ、防御率も0点台、被打率も1割台とようやく潜在能力を開花させることが出来た。何より上野健在のルネサスにあって3勝を稼いだというのが大きい。今までは上野を休ませるために山下を投げさせても、結局は打たれて上野がリリーフせざるをえなかったが、2011年はしっかり投げきって責任投手になる試合が増えたのだ。 もちろん勝利した相手が靜甲、シオノギ、シオノギと下位チーム相手だったが、徐々に信頼を勝ち得れば今後は上位陣にぶつけることもできるはずだ。 豊田自動織機から日立マクセルに進み、マクセルではエースとして大活躍した姉の山下愛投手もファンに愛される投手だったが、この妹の絢も上野とはまた違った感じでルネサスファンから愛されている投手ではないだろうか。 ☆☆馬渕朝子(トヨタ自動車)
(2008→2009→2010→2011) 打席数:15→5→13→43 安打数:2→1→3→12 打撃率:0.143→0.200→0.250→0.308 打 点:1→0→1→2 試合数:15→5→12→19 二塁打:0→0→0→2 ソフトボールファンなら誰しもが知っていることだが、馬渕朝子は、北京五輪での金メダリストであり長年日本代表と日立ソフトウェアの4番を打ち続けてきた馬渕智子の実妹である。決して馬渕夜子の妹ではない。 その姉と否が応でも比較される境遇ではあるのだが、朝子を見ているとどうもそういうのをプレッシャーと感じることがこれっぽっちもないみたいで、自分は自分のソフトボール人生だ、という綺麗さっぱりと割り切ったどこか清々しさのようなモノも感じられる。もちろん本心ではどう感じているかは分からないが、少なくとも顔だけは何も考えてないような顔をしている(どんな顔だw)。 ただそうは言っても見ている方はつい比較してしまうわけで、どうしても評価は自然と厳しくなる。ゆえに失礼を承知で言わせてもらうと、正直1、2年目は「トヨタでやっていくのはしんどいかなあ」と思っていた。それはもちろん実力もあるがチーム内で競い合うライバルの層が厚過ぎるからというのが大きな理由だ。 そんな朝子も即戦力の大卒選手である以上1年目はチャンスを与えられ15打席に立ったが結果はパッとせず、2年目、3年目もパットせずこのまま終わってしまうのかと危惧した4年目の2011年、持っている何かを発揮させてついにチームに足跡を残せるくらいに開花したのだ。 その裏では、ワトリーがやらかして、藤崎がやらかして、渥美がほぼ何もやらかさなくて、みたいな流れがあったが、そんな中で回ってきたチャンスにしっかりと結果を出し、朝子もなかなか使える、というものを見せてくれた。 朝子の良さはそういう「何か」を持っているところではないだろうか。こういう選手というのは他のチームのファンから見てもついつい応援したくなる。 若手が増えるトヨタにあってはそろそろベテランの域に到達するし現役でやれる期間も迫ってきているだろう。だからこそこういう選手のいぶし銀的な活躍の重みが増してくる。3連覇を狙う今年のチームにとって果たしてどんな活躍が出来るか。意外と大きな鍵を握るんではないかと密かに期待している。 ☆☆倉成真子(デンソー)
(2008→2009→2010→2011) 試合数:2→3→12→19 打席数:1→2→11→31 守備機:0→1→2→45 安打数:0→0→3→3 個人的には、もっとも「飛躍」という名にふさわしいと思うのがこの選手だ。その理由は、この前ニトリに行ったら買い物用のカートに乗って押してもらって移動するという小学生みたいな行動をしているのを見たから、では勿論ない。まあある意味それも「飛躍」だが(笑) それほど期待されている雰囲気が当初はなく、チャンスもあまり与えられていなかったが、わずかなチャンスに結果を残して、実力でポジションを奪い取ったからなのである。 1年目2年目はほとんど試合に出られなかった。タミー・Wの加入で衣笠久美が外野に回った2010年は主に代打出場の12試合で11打席。タミーが抜け衣笠がそのまま外野に残った2011年は、今泉早智がセカンドに加入したことから、期待の野木ちゃんと空いたサードを争うことになった。 最初は野木がそのまま1シーズンサードで行くのかと思っていたが、倉成の持ち前の堅実な守備としぶとい打撃がじわじわとチームへの貢献度を増していき、気づいてみれば終盤は野木ちゃんを再びセカンドに追いやってサードのレギュラーをしっかり手に入れていたのだ。 ある意味今年のリーグでもっとも飛躍した選手であった倉成ゆえ、本当は☆を3つあげたかったのだが、どうしても今回は2つしか付けられなかった。理由はもちろんもう少し打つ方での活躍をしてほしかったから。 そんな倉成の本当の飛躍になるかも知れない2012年。新人で有望な内野手も入り、松木瑛里も成長し、野木ちゃんも巻き返してくるので競争は昨年以上に激しくなるだろうが、開幕からしっかりとレギュラーを確保して打つ方でも大活躍して欲しいと願っている。もちろん野木ちゃんも頑張って、ともに成長して欲しい。 ☆金尾和美(Honda)
(2007→2008→2009→2010→2011) 試合数:6→9→15→12→14 投球回:19→41→54.7→48.3→52.7 対打者:92→199→260→222→214 奪三振:6→15→19→9→17 防御率:5.07→4.44→2.82→3.04→2.13 勝利数:0→0→0→4→7 被打率:0.341→0.353→0.320→0.333→0.271 この金尾和美も栗田と同じく、昨年も飛躍した選手として☆を一つつけた。しかし今年の、ことに後半戦での安定感を見ると、やはり数字に表れる以上に、金尾の存在価値というのが2011年は飛躍的に向上した1年だったのではないだろうか。 とにかく忘れられないのが第10節豊岡大会での織機戦。リードのまま迎えた最終回、若手投手が打たれ逆転のピンチを迎えたあとにリリーフすると後続の打者3人をしっかりと抑え込んで強豪織機に勝利したのだ。あの試合、あの場面での金尾は、ほんとうに頼もしかった。 ☆萩藤寛子(靜甲)
(2004→2005→2006→2007→2008→2009→2010→2011) 試合数:6→*→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→22 打席数:8→*→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→70 安打数:0→*→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→12 打 点:0→*→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→6 本塁打:0→*→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→(2部)→3 最後は若干主旨とは異なるがやっぱりこの選手も人生において十分飛躍したんじゃないだろうかと思うのが靜甲の萩藤寛子である。 名門須磨ノ浦女子からデンソーに入り、1年目から6試合8打席のチャンスを与えられていたということはそれだけ期待も大きかった表れだろう。ただ残念ながらデンソーでの挑戦は1年で終わり、翌年は1年間のブランク。それでももう一度奮起し甲賀医専に進んで2年間結果を残し、2部の強豪靜甲へ。前年度1部から2部に降格した2008年に入ったことからその後はさらに3年間2部生活が続いたが、その3年目にキャプテンとしてチームを引っ張り2部での優勝を果たし、2011年再び1部の舞台に立ったのだ。 夢を諦めかけた2004年から足かけ7年。今度はキャプテンとしてチームを率いて堂々と1部に復帰し、ホームランも3本とチームの主軸として十分結果を残したのだ。 残念ながら2012年は再び2部に降格となるが、また鍛え直してチームを1部に引き上げて欲しい。
【2008年飛躍した選手】 ☆☆☆永吉理恵(レオパレス21) ☆☆溝江香澄(日立ソフトウェア) ☆☆濱本静代(日立ソフトウェア) ☆酒井かおり(豊田自動織機) ☆今泉早智(戸田中央総合病院) 【2009年飛躍した選手】 ☆☆☆林佑季(日立ソフトウェア) ☆☆☆鈴木美加(トヨタ自動車) ☆☆田中梢子(レオパレス21) ☆☆大橋美奈(Honda) ☆野木あや(デンソー) ☆東美紀(戸田中央総合病院) 【2010年飛躍した選手(野手編)】 【2010年飛躍した選手(投手編)】 ☆☆☆中山亜希子(大鵬薬品) ☆☆☆紺野智美(シオノギ製薬) ☆☆栗田美穂(豊田自動織機) ☆☆渡辺瞳(戸田中央総合病院) ☆佐藤みなみ(太陽誘電) ☆鮫島憂子(日立ソフトウェア) ☆菅野愛(豊田自動織機) ☆岡本由香(太陽誘電) ☆金尾和美(Honda) ※所属は当時
2012年飛躍した選手、また誰か大事な選手を忘れているような気がしないでもない…
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posted by silvercats |21:17 |
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しかし相手は上野、このまま打つだけでは1点差で逃げ切られてしまう確率が高く、やはり扉をこじ開ける工夫が必要なのだが、福田監督が選択したそれが小野による送りバントだった。展開としてはどうにか1番のワトリーに回したいところである。しかし1死一塁で8番、9番ならどちらかに打たせないと次に繋がらない。前の打席で完璧に捉えたセンターライナーを放っている小野の方が、対上野に対しては期待が持てそうだったが、しかしここは迷わず小野にバントをさせ9番の渡邉に全てを託した。上野の剛球をキッチリとバントした小野も立派だったが、小野にバントをさせたベンチの采配も素晴らしかった。もちろん同点狙いなら二塁に走者を送るのがセオリーかも知れないが、しかし上野相手にツーアウト目を自ら献上するのはギャンブルでもある。しかしそこにかけたのだ。
そして2死になったとはいえ、渡邉の次に控えているのは上野にも強いワトリーである。上野としてはどうしてもネクストのワトリーが視野に入ってしまうわけで、ベンチがそこまで想定していたら空恐ろしいが果たしてどうだっただろう。トヨタとしては渡邉への初球がボールになったことも幸運だった。絶対に四球でも出したくない、次のワトリーには回したくないという思いが、あの上野にすら失投を投げさせたのかも知れない。もちろんそれを一発で仕留めた渡邉が立派だが、バントを決めた小野、腹を括って小野にバントをさせたベンチが生み出したホームランでもあったのだ。
そして試合後の整列が終わり、ベンチ前に並び応援席に最後の挨拶をした時、呆然とした選手とは対照的に、実に朗らかで透き通るような笑顔を浮かべている宇津木麗華監督の表情がとても印象的だった。
「上野で負けたんだから仕方ない、上野が打たれるのだから諦めがつく」、というような吹っ切れた思いから出た笑顔なのかな、と最初は思っていたが、でもそれだけではないような気がする。それ以上にもっと深い思いから自然と表れた笑顔だったんじゃないだろうか。
うまく説明できないが、確かに勝ったのはトヨタ自動車でヒロインはサヨナラホームランの渡邉華月であり、ルネサスは敗者である。
でもそんな勝ち負けなんか関係なく、ソフトボールというスポーツを舞台にして演じられる最高の奇跡を目の当たりにした、そして私たちのチームも、その奇跡の舞台を作り上げたもう片方の主役なんだ、という誇りを感じていたのではないか。
ソフトボール界では世界的に有名な元選手であり指導者の一人として、そして純粋に一人のソフトボーラーとして、「ソフトボールというスポーツはなんて素晴らしいんだろう!」という思いを、心の底からしみじみと感じていたからこそ、あんな素敵な表情になったんじゃないかと思う。
そんな風に感じ、見ている方も清々しくなってくるような、心の底から透き通るような宇津木麗華監督の最後の笑顔だった。
そして試合に負けたルネサスの宇津木麗華監督のあの笑顔が果たしたもう一つの大きな役割が、この試合から「敗者」を消し去ってくれたこと。この試合だけじゃなく、この決勝トーナメントの全てから敗者を消し去ってくれたのかも知れない。
渡邉華月の逆転サヨナラホームランという奇跡で幕を閉じた舞台。しかしそこに至るまでのストーリーを用意した蔭の主役は、この日の1戦目で上野とルネサスを苦しめた豊田自動織機であり投手の栗田美穂であり、そして前日にその織機と強い雨の中延長10回の死闘を演じた日立ソフトウェアも同じ舞台に立っていたもう一人の主役なのだ。
4チーム全てが、4チームの選手全員が主役となって作り上げた最高の奇跡の舞台。だからこそ試合に負けようが勝とうが関係なく、終わってからとても清々しい気分になれる。そのことを象徴するような宇津木麗華監督の晴れ渡る笑顔だった。
そして最後に、
この球場に居合わせた人みんな、それから会場に足を運べなかったけど情報に触れ一喜一憂していたみんな、おそらくみんながきっとこう思ったはずだ。
「ソフトボールというスポーツのファンで、本当に良かった」
って。


