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矢島直弥「バクチ・ダンサー」

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 大みそかのRIZINに出場したい。  その想いから今年1年戦い続けてきた男、それがぼくらの矢島直弥選手である。盟友にして大切な仕事仲間でもある小川徹選手の復帰戦で必死に応援に回っていた前回。「応援されるっていいですね」としみじみ語った姿はどこか決意に満ちていた。 「次の試合と、その次の試合。ここが難関なんです」。誰にも文句のない試合内容でRIZINに出場する。彼の決意は言葉となって表れた。帰りのりんかい線、一人の選手として、そして同い年の友人として。話は尽きなかった。  火の出るような、あのファイトが帰ってくる。それはムエタイ選手ではなく、軽量級で何か旋風を巻き起こさんとする一つの炎の塊のようになっていた。  さて、そんな今日。試合前に「今回の記事は甘めでお願いしますね(笑)」と言われたのだが、そういうわけにはいかない。だって、矢島選手は負けてしまったのだから。

 ひいき目抜きで語ろう。少なくとも気持ちと激しいファイトは、今年の好調ぶりを十分に表していたように思う。決して悪い試合はしていなかった。それは、会場にいた人たち(主に矢島応援団の方々ではあるが)の反応を見てもそうであったし、ボーナスを対戦相手の山田航暉選手との両者に渡したところからも間違いはないはずだ。  しかし、ファイトで戦ってムエタイで負けてしまった。山田選手はムエタイ修行のために本場タイに留学しているムエタイでは一枚も二枚も上手の選手。2ラウンドにダウン寸前まで追い詰めたにも関わらず、最終的には山田選手の土俵で戦ってしまったことが矢島選手にとっては命取りだったのだ(もちろん、ムエタイのルールで出ている以上は致し方ないことであるが)。  今までタフさとスタミナを活かした激しいファイトスタイルで戦ってきた彼だが、それ相応の技術を持つ相手に苦しんだのは隼也ウィラサクレック戦と同じ。それを承知の上でテクニシャンを潰してきたのだが、今回は山田選手の首相撲がうまかったがゆえに本来の力は出せずじまいだったのかもしれない。  もちろん、ムエタイ選手なのだからムエタイで勝負できなかったことは重大な敗戦である。しかし、あれだけド派手な戦いを見せつけられて心が動かない人が果たしているだろうか。一人の友人として負けたことはとても悔しい。だが、一人のライターとして技術という土俵に引きずり込まれてしまったことは失点だったということを指摘したい。

 魔裟斗選手や山本“KID”徳郁選手はなぜあそこまで有名になったのだろう。それは勝ち負けを越えて戦うファイトスタイルがあったからだ。魔裟斗選手といえば天性のタイミングの良さを持った当て勘と、キックの質の高さ。KID選手は負けん気の強さと自分自身への絶対的な自信。お互いに好戦的な部分も含めてだが、多くのファンを未だ引きつけて止まないスター選手たちが、今の格闘技には必要なのだ。  確かに、所英男選手の技はとても美しいし、既に引退したがセーム・シュルト選手は確かに強い。しかし、選手の華という点ではどうだろう。スター性溢れるキャラというよりは、どこか地味な印象が拭えない。  スターに飢えているのだ。バダ・ハリ選手のような言動もファイトも惹きつけるような、エンリヤーエンコ・ヒョードル選手のような圧倒的強さ。左ハイキックが武器のミルコ・クロコップ選手。  誠に勝手な願いかもしれないが、その激しいファイトスタイルで、次の格闘技界を背負って欲しい。血だるまになりながらも、自らを鼓舞して応援団を鼓舞する。矢島直弥にはそういう姿が本当によく似合うのだ。カリスマになれとは言わない。だが、もっと彼のようなファイターは世間に認められるべきなのだ。私的な感情が入ってしまっているかもしれないが、そう思うのである。

「判定になったら、厳しいかなとは思ってました」。  サバサバした表情で矢島選手は言葉をこぼした。やれるだけのことはやった。そういう表情を浮かべているように見えた。本当は悔しいだろうな。でも、それはあえて言わないことにした。負けを受け入れて、前へと進まなければいけないからだ。RIZINはもうあと2ヶ月。悠長に構えている暇はない。課題は多いが、とにかく前進していかなければいけないのだ。だから。 「次は、勝ちましょう」と伝えた。握手した手が、強く握られた。それから、こう付け加えた。「記事は、気持ち甘めにしておきますね」。表情が崩れた。陽気で優しい、いつもの矢島直弥に戻っていた。  悔しいこと、反省すべきこと。彼はこの一ヶ月、いろいろなことをこなさねばならない。だがそれを乗り越えていった時、目指しているRIZINでレニー・ハートさんにコールをされているかもしれない。  止まってはいけない。彼が持つ爆発的なエネルギーは、人を惹きつける。私はそれ故に、彼のことを書いているのだろう。そして思う。次に向けて頑張って欲しい。

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