2007年06月22日

盗塁が減って、ホームランが増えた(下)

「盗塁が減って、ホームランが増えた」というトレンドを検証する第3回目。
盗塁編を見て行きましょう。

■年代ごとの盗塁数変遷(セ)■
50’s	60’s	70’s	80’s	90’s	00’s
762個	505個	433個	533個	408個	394個	

50年代→60年代(34%減)	打線の大型化
60年代→70年代(15%減)	打線の大型化
70年代→80年代(23%増)	松本匡史・高橋慶彦・屋鋪要時代
80年代→90年代(23%減)	ID野球の影響(?)、捕手のレベルアップ(?)
90年代→00年代(3%減)	打線の大型化

セ・リーグの盗塁数はホームラン数の増加に合わせてやはり減る傾向にあるのですが
80年代に一時盛り返すのです。この時期、古葉竹識監督の広島、
スーパーカートリオの近藤貞雄監督の大洋のように「走る野球」を標榜した
チームがあったためなのでしょうか?

続く90年代は球場サイズの拡大でホームラン数が減ったのですから
盗塁数が増えても良さそうなものですが、減っています。なぜでしょうか?

想像するに、その要因のひとつは90年代を席巻した
野村・ヤクルトのID野球ではないかと思うのです。野村監督は後述するように、
70年代に福本豊の足を封じるためにクイックモーションを導入したのですね。
その野村監督が徹底した盗塁封じを行い、
またこの時期の古田敦也捕手の盗塁阻止率もすごく高く、
他チームにも谷繁元信、中村武志など優れた捕手がいたこともあって、
危険性が増した盗塁を試みる機会が減ったのでは? と思うのですが、いかがでしょうか?

■年代ごとの盗塁数変遷(パ)■
50’s	60’s	70’s	80’s	90’s	00’s
967個	570個	702個	572個	551個	450個

50年代→60年代(41%減)	打線の大型化
60年代→70年代(23%増)	福本豊の時代
70年代→80年代(19%減)	抑制の時代
80年代→90年代(4%減)	3・3・3信仰
90年代→00年代(18%減)	打線の大型化

パ・リーグの場合、50年代はものすごく走っていて、
特に54年から56年にかけての3年間は毎年1000盗塁を超えていたのです。
中でも南海と阪急の数が飛び抜けて多かったのですよ。

しかし、56年から西鉄が3連覇すると野球の形が変化します。
特に南海が西鉄に強力打線に対抗すべく、従来の緻密な野球から
「400フィート打線」と呼ばれる大型打線へとチームを改造したのが象徴的で、
全体にパワー野球の傾向が増し、盗塁も減少の一途を辿ります。

続く70年代には希代のスピードスター、福本豊の時代
(70~82年=13年連続盗塁王)となります。
野村克也・王貞治の出現によってホームラン時代が到来したように、
「優秀な個体が出現すると全体のレベルが上がる」という現象が
ここでも起きたわけですが、それは持続しませんでした。

福本は72年に年間106盗塁という前人未到の記録を打ちたてます。
そして、翌年、翌々年こそ95盗塁、94盗塁と90個代を保ちますが、
以後数字は伸びなくなるのです。

これは当時の南海の野村監督が、福本の足を封じるために
クイックモーションを導入し、それが功を奏した結果だと思うのです。
その模様を紹介したNHKのドキュメンタリーがあったのですが、すごく面白かったです。
http://www.nhk.or.jp/spotai/onair/82/index.html

こうして80年代には再び60年代のレベルに戻るのですが
80年代から90年代は微減に留まっていますし、セ・リーグよりは高い水準にあります。

■年代ごとの盗塁数変遷■
           50’s	60’s	70’s	80’s	90’s	00’s
(セ)	762個	505個	433個	533個	408個	394個	
(パ)	967個	570個	702個	572個	551個	450個

これは何なんでしょうか? 
セ・リーグほどの捕手の人材がいなかったということもあるかもしれませんが、
1つ仮説を提案させていただきたいのが、表中に記している「3・3・3信仰」です。

83年に阪急の簑田浩二が30年ぶりに「3割30本30盗塁」を達成し
この記録が注目を集めることになります。
ところで、その30年前に「3割30本30盗塁」を達成したのが中西太さんというのも
ビックリじゃないですか? これまた昔の打者はよく走ったの証左だと思います。

88年にはホセ・カンセコ、89年には秋山幸二、90年にはバリー・ボンズがこれを達成し、
「3・3・3」の万能型の選手こそが野球選手の理想型という考え方が流行ります。
そして、80年代から90年代に一世を風靡した西武ライオンズの野球が
まさにそういうタイプだったと思うのです。

とまあ、妄想も含めて、あれこれ考えてきましたが、
1950年代と2000年代の野球を比べると、大雑把に言って
ホームラン数は倍増して、盗塁は半減したと言っても過言ではないと思います。

	50’s	→	00’s
セ本塁打	493本	→	890本(81%増)
パ本塁打	464本	→	860本(85%増)
セ 盗塁	762個	→	394個(48%減)
パ 盗塁	967個	→	451個(53%減)

わたしも30年以上にわたってプロ野球を見てきたわけですが、
この間でもすごく変化があったわけです。
これからも、まだまだ野球の形は変容していくんでしょうね。
怖いような、楽しみなような…。
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posted by しゅりんぷ池田 |11:51 | 野球 | トラックバック(0)
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