2007年06月15日

高卒ルーキーでファン投票1位:70年、太田幸司の場合

いつも、しゅりんぷブログをご愛読いただきまして、ありがとうございます。
わたしが書く、オールドプロ野球ネタを楽しみにして下さっているみなさんは、
昨日の田中将大のネタは太田幸司さんの話に展開して行くと期待された方も
多かったと思うのですが、本日再度展開させていただきます。

1969(昭和44)年の夏の甲子園の決勝で延長18回で引き分け、
再試合で松山商に屈した青森・三沢高のエース、太田幸司は
現在の斎藤佑樹にまで連なる、甲子園のアイドルスターの嚆矢だったわけです。

そして、プロ入りした翌70年のオールスターのファン投票が波紋を呼ぶことになります。
圧倒的な人気を誇った太田投手ですが、さすがに即戦力とはいかず、
前半戦に1勝を挙げたのみだったのに
パ・リーグの居並ぶエースたちを押しのけて得票1位となったのです。

1位	太田幸司(近鉄)	40,243票	25試合1勝4敗
2位	小山正明(ロッテ)	31,663票	38試合16勝11敗
3位	木樽正明(ロッテ)	24,911票	42試合21勝10敗

この当時のプロ野球といえば、大人の男性の娯楽。
そこに女性ファンの投票が大量に舞い込んだわけで、
「ミーちゃん、ハーちゃん(←こういう、言い方がもう時代がかってますね)
が野球も知らないで投票しおって…」と当時のファンを嘆かせたそうなのですね。

最近も、ゴルフのマナーを知らない、にわかファンが石川遼選手見たさに
ゴルフ場に詰めかけ顰蹙を買ったわけですが、
それと似たような光景が37年前にもあったわけです。

で、この年のオールスターに出場した太田は第1戦の三番手で登板するのですが
一死しか取れずに2安打2四球で2失点で退きます。
そして第2戦で1イニング、第3戦で1/3回と全3試合に登板したんですね。
当時の全パの西本幸雄監督も困ったと思います。

しかし、太田騒動はこれで収まらず、
翌71年、翌々年72年もファン投票で1位になっちゃうんですよ!
71年は0勝1敗、72年は2勝1敗なのに…。

さらに太田が甲子園で活躍した翌年にやはり甲子園で人気者となった
「第2のコーちゃん」島本講平(箕島高)が南海入りすると
71年一塁手部門で得票1位になってしまったのです!

1位	島本講平(南海)	10,273票	2安打2本塁打
2位	大杉勝男(東映)	10,203票	154安打(リーグ最多)41本(本塁打王)

わずか70票差に泣いた大杉はなんと、監督推薦からも漏れてしまう…。

こういう人気選手が入って来た場合は監督も大変だと思いますが、
太田が入団した近鉄の当時の監督は名将・三原脩。
興行面も鑑みて太田を25試合に登板させ、7回も先発に起用
(そしてこの難物を抱えながらチームは3位)したのに対して、
南海の野村克也監督は新人の島本を7試合にしか使わず
(その僅かなチャンスで2本塁打したのもすごいのですが…)
翌72、73年は一度も一軍に出場させなかったというのも対照的です。

そして太田の4年目、73年はついにファン投票1位の座を明け渡しますが
(それでも1位山内新一46,343票に次ぐ2位27,708票)
この年は太田もいよいよ実力を発揮し始め、
監督推薦で4年連続4回目の球宴出場を果たします。

73年、近鉄は最下位だったこともあって6勝14敗
(11勝の鈴木啓示、7勝の神部年男に次ぐチーム3位)ながら
28試合に先発して防御率3.23(リーグ13位)となかなかの健闘を見せたのです。

そして、西本監督が就任した74年からは10勝、12勝、9勝、10勝と
ローテーション投手として安定した働きを見せ、ようやく人気と実力が噛みあってきます。

74年	10勝14敗	ファン投票1位	54,759票はONに次ぐ全体3位
75年	12勝12敗	ファン投票1位	116,794票は全体1位
76年	9勝7敗	ファン投票2位	初のオールスター落選
77年	10勝14敗	ファン投票3位	オールスター最後の出場(7回目)

ちなみに、「コーちゃん2号」島本は75年に太田と同じ近鉄に転じ、
西本監督の熱血指導もあって開花。76年63安打4本塁打28打点、
77年83安打12本塁打37打点の成績を残し、
2年連続でパリーグの外野手部門の3位となり、
ファン投票でオールスターに選ばれました。

その後、太田さんは巨人、阪神に転じて84年まで現役を続けられ
通算58勝85敗という成績を残します。

ほとんど実績を残さないうちから3年連続でファン投票1位という
過剰な期待を寄せられながら、それに押し潰されることなく
2ケタ勝利を3度挙げ、実力でオールスターに選ばれるようになったのですから
立派だと思います。太田さんの出現によって、プロ野球がより大衆化、
「国民的娯楽」へと浮揚したわけですから、彼もまたプロ野球の恩人だと思うのですね。
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posted by しゅりんぷ池田 |12:10 | 野球 | トラックバック(0)
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