2009年11月18日

懐手して日本見物

関係ないハズのものを読んでいて思わずハッとする。ニヤリとする。
わたしにはそんなことがたびたびあります。今回もヘンなものを見つけました。
コレがはたしてサッカーと関係あるのかしら? それはみなさんでご判断ください。
それでは物理学者にして漱石の弟子(友人?)、寺田寅彦の「時事雑感」からどうぞ。


日本人には独創力がないという。また耐久力がないという。これはいかなる程度までの統計的事実であるかがわかりかねる。しかし少なくとも学術研究の方面で従来この二つのものがあまり尊重されなかったことだけは疑いもない事実である。


むかしから日本人論てのはあまり変わり映えしませんね。耐久力は少々意外かな?
なお寺田がこの文を中央公論に発表したのは昭和六年で、西暦でいえば1931年のこと。
今から八十年弱前ということになります。ではではそのつづき。


従来だれもあまり問題にしなかったような題目をつかまえ、あるいは従来行われなかった毛色の変わった研究方法を遂行しようとするものは、たいていだれからも相手にされないか、陰であるいはまともにばかにされるか、あるいは正面の壇上からしかられるにきまっている。


それにもめげず我を通す人間はいずれ抹殺される、と寺田寅彦は述べます。
あ、もちろん寺田はアカデミズムについて言ってるんですよ?
ただ学会固有のこととは思えません。すくなくともわたしには。
どの分野でもさもありなんと感じまして。勤め人、芸術家、あるいはスポーツ…。

つぎにこの現象の要因を、藪柑子は変わり者の側に見ます。


もっとも多くの場合にこのような独創力と耐久力を併有しているような種類の人間は、同時にその性状が奇矯で頑強である場合が多いから、学者と言っても同じく人間であるところの同学や先輩の感情を害することが多いという事実も争われないのである。そういう風変わりな学者の逆境に沈むのは誠にやむを得ないことかもしれない。


そろそろわが立場をはっきりさせておきましょう。
わたしはこの寺田の主張、日本の“9番不在論”を象徴しているように思うんですよ。
むろん唯我独尊男がそのままストライカーになると、そう単純にはいいませんが。
とまれ異形を排除する土壌は感じます。雑草は丹念にぬかれてるんじゃありませんか?

そして火の粉はわれわれに降ってきます。


…またそういう独創的な仕事の常として「きずだらけの玉」といったようなものが多いから、アカデミックな立場から批評してそのきずだけを指摘すればこれを葬り去るのは赤子の手をねじ上げるよりも容易である。そうしてみがけば輝くべき天下の美玉が塵塚に埋められるのである。これも人間的自然現象の一つでどうにもならないかもしれない。


これはまあ、その道でメシ食ってる人だけじゃありませんやね。
口うるさい戦術屋はどこにでもいます。スタジアムにも、居酒屋にも、ネット上にも。
ま、そこを越えてこそ雑草という気もしますが…ムズカシイんでしょうね。
現実問題としていないんでしょ? 釜本邦茂にならぶストライカーは。

ついでなのでもうひとつ。これまたおなじ文のなかに出てきます。


日本人の仕事は…容易には海外の学界に認められにくい。そうして一度海外で認められて逆輸入されるまではなかなか日本の学界では認められないことになっている。海外の学界でもやはり国際的封建的の感情があり、またいろいろな学閥があるので、ことに東洋人の研究などはなかなか目をつけないのである…。


八十年前から降る皮肉は、むしろ現行サッカー界に通ずる気がします。

posted by 由比彰紀 |16:12 | 何番? | コメント(5) | トラックバック(0)
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懐手して日本見物

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どこどこのW杯出場の成否がどうのとか、わが祖国の代表がどうのとかいう時にこういうことを語る由比さんて面白いっすね!W杯期間中にもこういう毛色の違ったことを書いて下さいよ。広い世間、そういうお方がいなくては。

ついでに、私はこういうの好きですよ。続編希望であります!

フムフム、ああ、言われてみればそうだよなあとか、思いつつ、サッカー界における選手って、もちろん個性があるに越したことはないんですが、負傷欠場・負傷交代や出場停止の多い性質上、“代替可能性”というものが大きく問題となる競技ですから、本当の超個性派9番が台頭したとして、その人ありきでチームを編成してしまうと、また難しいことになりますわな。

チェコにも少し前まで特殊サイズの超個性派9番がいましたが、あれはあれで依存体質の弊害が大きいですから、日本も一度そんなストライカーの味を覚えると、その後が苦しくなるのやもしれません。

そういやうちの「怪我だらけの玉」も、期待されたのは兄貴のほうだったという話ですし、もし兄弟セットでなかったら発見されなかった可能性が大きいようです。彼は今も昔も守備が上手いですからなあ。下手だったら運が悪ければ塵塚か・・・。

posted by czechfan | 2009-11-20 06:32

懐手して日本見物

コメント投稿者ID :

そこに気付いて評論するヒトの多いこと
 ・・・ 残るのは評論ばかり ・・・
せめてフットボールくらい
代表なんか相手にしない ってくらいの気概で上昇指向を見せてくれるような兄ちゃんが出現してくれると ・・・
代表もちったあつおくなるような

posted by candy | 2009-11-21 16:25

懐手して日本見物

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コメントありがとうございます

>czechfanさん
当所の筆者はどうもピントがずれてますから。
たぶんほっといてもワケのわからんものを書くのではないかと(笑)
でも今回のはダメかな。怒りにまかせてものするなんて。

なるほど。スーパーがいるならいるで、後の始末がたいへんなんですか。
おっしゃられてましたよね。コレルを見慣れて、チェコでは2トップが絶対化されたって。
czechfanさんのように異国のサッカーに傾倒し、チェコのダメな部分もよおくご存じのかたにはどう映るのでしょうか。
まわりにいません? したり顔で「だから日本はだめなのよ」とブる人間。
ちゃんちゃらおかしいんですよ。この人はどこの国の人だろう? って。

そうか、ロシツキーは…。

>candyさん
ハイ、評論家候補生はあまたおられるようです。
ただねえ。理論どおりに世界が切りとられた試しはないワケで。
マルクスへの逆恨みでしょうか? 反射的にイライラするんです。
おかげさまで一生戦術分析はできそうにありません。

反逆児は大歓迎です! ナマなガキはいつ見てもたのしい。
…こういうのはパンク・フットボール症候群とでも呼びましょうか(笑)

posted by 由比彰紀 | 2009-11-25 01:10

Re:懐手して日本見物

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ダメなままじゃ困るんですけど、
だから日本はダメなのよ派です。
だからこそ、教育や思考が必要な訳で。
なんていう、性悪説的な。
ただの性悪な小悪魔も好きです。
とりあえず、何がたらんかというと、何も足んない。
でもそのないものねだりの向こう側に何かが見えたらいいのかな、と。

とりあえず気の長い話ですわ。

posted by 迷鳥。 | 2009-11-26 22:15

懐手して日本見物

コメント投稿者ID :

>迷鳥。さん
性善か性悪かと問われれば、人類は性楽で性ズルだと思っている由比であります(笑)

われましたね、意見が。
まあわたしはヨーロッパと距離を置きたい人間。むべなるかな、でしょう。
そもそも他人と意思を共有する必要なんてさらさらありませんからね。
それは性ワルな小悪魔相手でも一緒じゃないですか(笑)

ヨーロッパ…ね。気の長いというか、もう百年以上相対してる存在ですから。

posted by 由比彰紀 | 2009-12-01 13:14

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