2007年05月27日

存在の耐えられない軽さ

2002年、世界大学野球選手権が行われた年、初めて全日本大学野球代表チームを率いた山中竹正監督がその感想として述べていたのが「世界の野球後進国の追い上げ」でした。山中監督といえばバルセロナ五輪から世界の野球を見続けている野球界のロゼッタストーンみたいな人で、WBCでは技術委員までつとめている力量を持った人、その人が言うのだから世界の野球後進国は確実にレベルを上げてきてはいるのでしょう。そこで山中監督があげた国の中、というよりも第一回から参加を続けている国の中にチェコという珍しい名前があります。



山中監督の言葉があってかは知りませんが、確かにこの世のボノボの数とどっこいどっこいであろう程の世界野球のファン達の中では、チェコという国は野球が急激に成長している、または成長の目があると考えられている国です。欧州の中では野球に力を入れている国であるといわれており、野球人口は3000人程度ですが、イタリアとオランダがとびぬけて強いヨーロッパの野球の中では主にその後ろの三番目の席を狙える位置をキープ。2005年にはプラハにてヨーロッパ選手権も開催し、その時もまぁ気持ち程度には報道が行われました。国内アイスホッケー人気もあいまってNHLがマーケットの展開を成功させているチェコならばMLBがはいりこむ余地が無いというわけでもなさそう。大昔と比べたら国際舞台でよく見る名前にもなってきていることも否定できません。



頑張っているんだね!わーい頑張れチェコ野球!とこのまま締めてしまってもいいのですが、では実際にチェコは強くなっているのかと言われると、多少疑問が残ります。まずチェコの試合が行われているのを目にしたことがさっぱり無い、チェコが比較的野球に力を入れているというのは何をもって判断されているのかが分からない、この日記のオチが広島のチェコじゃないよ!だと薄々よめてきている事実にあせりを隠せない。ようするにチェコは強くなってきているといわれる割には、強くなってきているという根拠に乏しい国なのです。しかし国の強さを測ることは意外と難しくありません。その国の野球のレベルをはかろうと思ったら、その国の国際戦成績を見ればいいのです。



もちろん勝敗は相対的な数値ですので他も強くなっていれば何の意味も無い比較です、しかし他に差をつけるほどの成長をしていなければチェコがチェコがともてはやされるのもおかしな話というのもまた事実でしょう。さて一体チェコは国際戦にて何勝をあげれているのでしょうか、そのスコアに成長はあらわれているのでしょうか。ここ10年のうちチェコが国際戦の舞台に立った時のゲームスコアを集めてみました。



1999 AAAジュニアチャンピオンシップ

グアムに1勝しグループB5位で予選敗退

参加チーム12試合のうち6チームで行われる予選にてグアムから1勝を挙げての敗退。詳しいスコアは分かりませんが、グループBは日本やオーストラリア、そしてアメリカと強豪が揃ったグループでしたのでこれは仕方が無い結果でしょう。



2002 第一回世界大学野球選手権

フランスに1勝しグループB4位で予選敗退総合8位

キューバ0 - 14 日本1 - 11 台湾0 - 5 フランス4 - 0

第一回となった大学野球選手権大会、チェコの大学にどれほど野球部があるのかは興味深いところです。結果は8位と惨敗ですが下にはA組最下位のカナダがいるので、何故か最終的にはカナダより上という結果で終われています。台湾打線を5点に抑えられた投手陣はそのままフランス戦でも効果を発揮していますが、強豪相手に打てなかった打線は優位に立っているはずのフランス相手にも機能したとはいいがたい結果でした。もしやチェコ野球、打線が苦しんでいるのか。



2004 第二回世界大学野球選手権

予選リーグ2勝、順位決定戦でカナダに勝利し総合5位

日本0-6 台湾1-12 韓国1-13 カナダ4-1 アメリカ0-7 メキシコ6-5

順位決定戦4-2

第二回となった大学野球選手権、ついにチェコ野球が頭角を現し始めました。第一回で懸命に頑張った投手陣は日本やアメリカ相手にもなんとかかんとかゲームを作ることに成功しています。前回は運で上回ったようなものだったカナダ相手にも好ゲームを披露し、メキシコ相手には接戦さえものにすることができているのだから驚きです。順位決定戦も投手陣がクオリティーなスタートを決め込み総合5位、もしかすると前回出場経験のある選手達の経験が生きているのかもしれません。



2005 ヨーロッパ選手権

予選リーグ2位、決勝リーグ1勝で総合五位

予選リーグ
スペイン1-10 フランス3-2 ギリシャ14-0 ウクライナ9-1 クロアチア7-4

決勝リーグ
オランダ0-3 イタリア1-6 スペイン1-10 ドイツ2-11 フランス3-2

意外と参加国の多いヨーロッパ選手権、予選リーグは堂々の二位で通過しているところを見ると、評判どおりヨーロッパ内では頭一つ抜けているのでしょう。しかしこの大会は優勝候補であるオランダ・イタリアが一つのリーグにまとまってしまっていたという大会でもありますので、運がいいところもあったでしょう。しかし決勝リーグでは欧州最強のオランダ相手に接戦を披露し、その成長をちゃんとうかがわせています。やはり言えることは投手陣が踏ん張っている感じがするということ、投手力があれば欧州三番目の椅子を狙う立場というのは手にはいるのでしょうが、そこから上を目指すとなると145キロを打ち返す打線が必要です。135キロ以下を打てないのが欧州後進、140キロを打てないのが欧州中進という感じでしょうか。



2005 ワールドカップ

全敗でグループB最下位

日本0 - 19 ニカラグア0 - 1 プエルトリコ1 - 11 アメリカ3 - 7 オーストラリア0 - 14 台湾1 - 10 スペイン5 - 15 コロンビア3 - 14

勢いを持って望みたいワールドカップ、しかしながら願いもむなしくボッコボコにされてしまいました。ワールドカップに出られるだけでもそれはそれでかなりすごいのですが、負け試合があまり前向きな負け試合とはいえない結果だったのが惜しいところです。例えば点差だけ見れば圧倒されているスペイン戦ですが実際のヒット数は11本と12本でたった一安打の違いしかありません、エラーだって違いは二つです。台湾戦はそれまでエラー数を抑えてきていたとは思えない8エラーの大盤振る舞い、ようするに、流れを簡単にもっていかれてしまっているのです。ほぼ毎試合二桁失点を喫しているのはそうした部分に問題がある話では無いのでしょうか。



2006 第三回世界大学野球

1勝でグループB4位、順位決定戦で1勝し総合10位

予選リーグ
アメリカ0-16 メキシコ5-7 台湾0-5 バージン13-0

順位決定戦
バハマ9-6 バージン7-8

最新の国際試合、徐々に戦力が第三集団の国々に近づいてきましたといった感じです。下位の国々との試合を落とすことがなくなってきた事や、上位の国々との試合でコールドが少なくなってきたことなどがその理由になるでしょう。といって野球後進の国々の試合展開は基本的にものすごく粗いので、バージン諸島との2試合のように大幅なスコアで勝ったと思えば接戦を繰り広げたりといったようにその実力に定まりがありません、コンスタントに力を出していることこそ強豪と呼ばれる由縁なのでしょう。



こうやって見てみますと成長は確かに感じ取れるのですが、目立って力が伸びているかというとうんとは言えません。チェコが欧州では野球に力を入れているほうとは言われれども、実際には言語や移民で分のあるスペインや経済大国であるドイツに欧州三番目の椅子は奪われている状態にあるといったところ。ではいったいどこにチェコ野球が強くなるとされる由縁があるというのか、チェコの国際試合を見返して分かるそれらしい理由はチェコ野球連盟の国際試合参加の姿勢にあります。



あまり国際試合の舞台で名前を聞かなかったチェコ野球、しかしながら近年になって比較的耳にするようになった背景には「世界大学野球選手権」という大会に最初から参加しているという事があります。では何故他の大会で活躍しているわけで無いチェコが大学野球選手権になど選手を派遣してくるのか、もちろん他の大会に比べその大会が参加が容易であることがその理由の中には含まれているでしょう、実力から言ってなかなか参加の難しい他の国際試合、大学野球選手権はチェコのような国にとっては国際試合の経験をつませるにはもってこいの場所と言えます。



今現チェコの野球代表の中核にいるメンバーは20代中盤から後半、つまり1999年にAAA大会に出場していた世代。そしてその後彼らは大学野球選手権で経験をつみ、ついにはワールドカップにまで駒を進めるに至りました。突き詰めて言えば、ここに並べたチェコの野球の歴史は現在のチェコ野球代表の歩みでもあるのです。そして2006年、次代をになうチェコ野球大学代表は前世代より一回り大きい結果を残してその大会を終えました。国内を見ても決して多いとはいえない野球人口の中で世代別にリーグを作るなど、その育成システムは見た限り実働を果たしています、チェコの野球代表のDNAが受け継がれていく流れがそこにはできているのです。



調べてみて始めて分かることもある、王道も横道も道であることを体現しているチェコ野球は、野球の中じゃ特異な奇才と呼べるでしょう。

あ、奇才で思い出したけど広島にチェコっていたじゃん、あの一億よこせとか言ってクビにされたチェコ、あのチェコって台湾球界にもいってるらしいんだけど、そん時のあいつの登録名って「奇才」らしいよ。

posted by shoeless |09:57 | ヨーロッパ野球 | コメント(5) | トラックバック(1)
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2007-05-28 16:07 | 続きを読む
この記事に対するコメント一覧
Re:存在の耐えられない軽さ

懐かしい映画のタイトルですね。90年代前半だったような。チェコの話で、掛けてある訳ですね。この映画のタイトルを使われるとは、お歳は、お幾つですか?私は45才です。

posted by 懐かしいタイトルですね | 2007-05-30 01:52

Re:存在の耐えられない軽さ

コメント有難うございます、気づいていただけた方がいらっしゃったようで正直ほっとしています。

僕自身はまだ大学に通っている身なのですが、高校のときに文庫化されていたものを読んでから映画を見ました。

実はこの記事はスポーツナビの編集部さんにおすすめとして紹介されているのですが、その中でこの記事のタイトルだけスポーツらしからぬ重々しさで浮いてしまっていたので、内心ひやひやしていました。

posted by 管理人です | 2007-05-30 05:17

Re:存在の耐えられない軽さ

そうですか、それは大人びた高校生だったんですね。
思い出しました。ジュリエット・ビノシュ主演で、88年でした。他の彼女の主演作品では、
ダメージ Damage (1992年)
トリコロール/青の愛 Trois couleurs: Bleu (1993年)
イングリッシュ・ペイシェント(1996年)
を見ましたが、最近は多忙でとんとご無沙汰です。話が逸れてきましたが、トリコロール3部作は面白かった記憶があります。

posted by 大人びた高校生だったんですね | 2007-05-30 10:15

Re:存在の耐えられない軽さ

僕は、映画を見てから小説を読みました。
小説の方が、印象に残ってます。
ミランクンデラですね。
映画は、ダニエルデイルイスもでてましたね。

posted by 横からですが | 2007-05-30 17:47

Re:存在の耐えられない軽さ

トリコロール、ありましたねぇ。個人的にはトリコロール三部作では白の愛が一番良かった気がしました、後味が悪いところも含めてぎこちない感覚が体に残ったような覚えがあります。赤はなんというか面白くなる大前提に「青」「白」を見ていることがあるような気がして悪い意味でぎこちなく感じました。


存在の耐えられない軽さの最初でもそうですが、恋愛作品だというのに「ニーチェの永劫回帰はうんたらかんたら」か書いてみたり、ただ盛り上げるだけでないところがこの作品の面白みだったと思います。映画もまた別の印象で面白かったのですが、三時間はやっぱり、流石に長いですよね?

posted by 管理人ですよ | 2007-05-31 05:31

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