2009年03月25日
スタンバイ セイ ユー
WBCが終わり、ついに野球の2009年シーズンが幕を開けました。北京五輪、WBC、欧州ワールドカップ、そしてついに迫ってきた2016年五輪の決定会議。思えば2003年に五輪から外れてからずっと、野球にとって2009年と言うのは一つのゴールのような年でした。なんの目処も立っていない逆境づくめの状態から出発し、この2009年における成長を目指して、長きに渡って様々な努力がなされてきたのです。もちろん今回のWBCがその一つですし、次回の五輪に向けての協力の取り付けもそう、制度の改革からロビー活動にいたるまで、ド素人の僕から見ても、この数年漏れ聞こえてきたものは逆境に立ち向かう歯の軋むような音ばかりでした。数多くの逆境を乗り越えてきたのも、この2009年のためであったのだと言うことは疑いようがありません。このブログでも幾度と無く、その展望は危うくも明るい兆しが見えつつあると書いてきました、それは嘘ではありませんでした。しかし2009年に突入し最初に見えてきたのは、それを否定せざるを得ない今までで最大の逆境でした。現実的に考えて、五輪復帰は現状不可能。ソフトボールと野球が、離反してしまったのです。 事が極まったのは2月26日、フロリダオーランドのレストランにて行われたIBAFハービー・シラー会長とISFドン・ポーター会長との会談内容がISF側から断られてしまった時のことでした。本来なら野球とソフトボールを繋ぐ最後の砦となったであろうと目されていたこの会談でしたが、ISF側がつきつけたNOは、まるで予定されていたかのような素早く簡潔なもの。とりまく人々の反応はどこか諦めに近いもののように感じられましたが、それはこの事態が皆薄々そうなってもおかしくはないと思いつつあったからでしょう。事実、ISFが野球からの離反を顕著に示したのは、これが初めてではありません。2012年の五輪削除決定以来「野球のイメージが我々を貶めてしまっている」という風潮が広まっていると言われていたISFは、野球よりも一歩も二歩も早い段階からその対策を講じてきていました。当初から野球と足並みを揃えていくことには懐疑的だったようですし、各地の野球協会からソフトボール協会を独立させるように動き、いちはやく五輪への追従的な体制改革も行っていたのです。この会議はそうした流れを受けて危機感を感じたIBAF側が急遽に近い形でもうけたものでしたが、周囲が感じられるほどに冷え切っていた関係において、それほど現状の解決に有効なものとはなりませんでした。 もちろん、まだまだこれが最後のチャンスであると言うことはありません。ポーター会長が現在推し進めているソフトボール協会の分離計画があまり評判が良くないことがその良い例でしょう。そもそもスポンサーも少なく競技人口としても大きな市場を得られていない、だからこそ野球協会や時にはクリケット協会と一緒になって経営されているのであって、それを方針如何でさっくり分けられるほど、両競技を取り巻く経済情勢は芳しくありません。一つ一つがそうなのですから、競技全体として見てみればその傾向はさらに拡大します。男女差があまりにありすぎる競技人口、ただでさえ食いぶちを潰しあっている競技形態。IBAF・ISFともにIOCからの要求によって両競技弱点である男女の大会の拡充を行ってはきましたが、それでもなお彼らが自らを一人立ちさせられる程の余力を感じているとは思えません。もとよりこの問題はYESしか選べない選択だった、はずなのです。しかしながら、この破談後にISFが出した結論は「男子チームの派遣」、それはすなわち野球の取り付くしまをばっさり切り捨てる決別宣言でした。 この話が悲しいところは、ソフトボールの方々がそう考えるにいたっても、野球側からは文句の言い出しようが無いというところにあります。度重なるドーピングに関する注意もほぼ野球選手から出されていた結果ですし、また五輪において大きなネックになっていると言われていたトッププレイヤー派遣問題も大体は野球に関するクレーム。施設に対する巨額の設備投資に関してもソフトボールは対策を打ち出していますし、悪いイメージに関してはほぼ野球と見られてしまっても、仕方がない気はしなくも無かったりなんかしちゃったりとお茶を濁すしかありません。IBAFはMLBとIOCの間で路線の中間を探ってはいますが、そもそもISFにはIOC以外に選択肢は無く、こうなるのも素直に頷けてしまいます。ただこの話がややこしいのは、そうした選択が一概にソフトボールが野球を切り捨てた事を意味しないという事にあるのかもしれません。男女比が野球よか偏っていないとはいえまだまだソフトボールも発展の途上にあり、目下IOCへの最大のアピールの場とされていたハーレム大会も暗礁に乗り上げ、内外においてそこまで強い地位を保っているわけでは無い事実。それでもなおポーター会長がこうした決断を下すのは、そこに野球と足並みを揃える以上のマイナスを見出せなかったからにほかなりません。 オリンピックという大会は、現在アマチュアリズムの最大の祭典と商業主義のつきつまるところと言う二つの性格を持った大会となっています。MLB側から言わせれば利益の為にトップ選手を呼びたい集団なのだと言えますし、IOCから言わせれば世界のスポーツのトップという対面を守るものとしてトッププレイヤーは必要だとも言えます、それらはどちらも間違ってはいません。現在IOCが野球・ソフトボールにつきつけている要求も、そのほとんどはいつも建前として「世界的な競技」あるいは「画一的で民主的な体制管理」がついてまわります。野球よか競技の体力が劣るとされている競技達はIOCに対して「誠意のある対応」を守り好感触を得ていますし、ISFはIOCが持つこうしたアマチュアリズムの溢れる一面性に賭けた、といったところでしょうか。市場の大きい野球の強豪国を頼らなくとも、競技としてしっかりとした体制を作ればIOCは好感を持って迎えてくれる、その可能性が野球と一緒にいて体力を高めるよりありえると考えた、と言えば分かりやすいでしょうか。 女子のマーケットの開拓がまだまだ始まったばかりである野球は、ソフトボールよか体力がありながらも、数々のマイナスに勝るプラスを持っていません。両競技の分離は五輪ソフトにとっては劇薬という段階にとどまっていますが、五輪野球にとっては即刻致命傷につながります。今までの逆境がマイナスを潰していくことだったとすれば、今回の逆境は今になって基礎を作らなくてはならない程のこと、その傷の深さの違いは語るまでも無いでしょう。今後野球が五輪の舞台から姿を消すことがあれば、それはシンガポールでも北京でもロンドンでもなく、2月26日のオーランドのことであったと語り継がれるようにも思えます。あと一年も無いこの段階で、今から野球という競技が歩みだせる方向性はたったの3つ。ISFの気がかわるまで口説くか、女子野球を2013年までに拡充させるか、非五輪の有名競技に追随するか、です。2013年までの拡充は容易ではありません。現在の状況では野球単独で資金を捻出してくれる人々は少なく、WBC路線は現在の加盟国の約6割ほどが死に絶える事が容易に予想されます。ISFを口説き落とすことは、半年と言う時間が十二分とはいえません。 逆境に挑む人を見るのは、嫌いではありません。しかし今回の騒動はそんな奇麗事を差し引いたとしても、正真正銘ここ数年で最大の逆境です。東京・シカゴの地の利が、ドーピングへの対策が、MLBとの話し合いが、水泡に帰してしまうかもしれない。「野球は五輪から消えてしまうのか」という質問はこのブログをやっていく中で一番多くもらった質問であり、一番ポジティブな内容で答えをごまかしていた質問でした。今、野球は五輪から消えつつあります。一日一日づつ、それも目の前で、着実に消えつつある。残念ながら今、それが最も正しい答えです。
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posted by shoeless |00:13 |
国際大会 |
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スタンバイ セイ ユー
コメント投稿者ID :
本当にこれは難しい局面ですねぇ
ところで、女子野球に力を入れるのは分かるんですが、今日本で増えてきている、男女が一緒にプレーするような例を増やせば増やすほど逆効果の気がしますね。
暗にそれは女子野球において女子のみでレベルの高いプレーが出来ないといっているようなものだと思ったり。
男子リーグに参戦している中京女子大はじめ、今話題の吉田投手や茨城GGの片岡選手、関西独立のスカウトを断った中野選手な数挙げればきりがないですが、男子と混ざってやることを考え出したら野球というスポーツはさらなる逆境を迎えることになりそう…
posted by westline | 2009-03-27 23:27
スタンバイ セイ ユー
コメント投稿者ID :
コメント、トラックバックありがとうございます。
本当改めて思いますが、難しい局面ですよね。
女子野球の発展はもちろん進めなければならないことなのですが、仰るとおり男子の世界に引っ張られる形で成長していく形は、個人的にもいかんともしがたい状況なんじゃないかと思っています。
そもそもプレーの場所や機会が女子の場合は少ないと言えばそれまでなのですが、一応五輪を目指している競技ですし。目指すステージが男子ありきのグラウンドとなると、女性が野球をすることがまるで「例外」であるかのような、野球が本来男性のものであるかのようなイメージがついてしまうのは悲しいかな、と。
イメージいかんでどうにでもとれる問題ではあるのですが、基本的に五輪に選ばれているスポーツは男女トップレベルの世界を作ってその間の差別をしないことで男女混合をしないようにしていますし。ただこの手の議論が野球で成功したい女性や女子リーグで頑張っている人たちに不快なものになったらまた申し訳が無くて…。
posted by 管理人 | 2009-03-30 02:04
スタンバイ セイ ユー
コメント投稿者ID :
これは女子もトップレベルのリーグを作ることしか解決策はないんじゃないかと思ってしまいます。(プロでなくとも社会人なりなんなり)
IBAFが女子野球の活路を模索する中で、女子野球の先進国である日本がいつまでも男子に混ざってやっているようでは野球競技自体への逆風もますます強まるような気がします…
サッカーでもスポ少レベルでは男女混ざってやっていても、しっかりなでしこリーグというとトップリーグがありますし。(女子サッカーはそういった努力の甲斐あってかどうかは分かりませんが五輪に入ったことは事実ですし)
ただ、今の状況では経済的にも人材的にもそんな体力はないというのも事実でしょうし。
確かに男子とともにプレーすることを目標にしてきた選手には申し訳がないんですが、それもそれでおかしな話だったり…
考えるときりがありませんね^^;
posted by westline | 2009-03-30 21:50
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