2009年03月17日

WBC回想オランダ対アメリカ

オランダ 3-9 アメリカ

今から10年前、1998年イタリアで行われたワールドカップにて、オランダ代表はアメリカ代表から奇跡的な一勝をあげました。そのときのスコアは3-1。当時の代表と今回のWBC代表、両方参加を果たしているのはファンクルースターとロンブリーの両外野手、そしてコルデマンスのおじさまのみ。1998年当時のアメリカ代表はプロが解禁される前という事もあってお世辞にも圧倒的実力を誇っているメンバーではありませんでしたが、それを差し引いてもその一勝は歴史的と呼んでしかるべき価値のあるものでした。ヨーロッパでは半世紀近く無類の強さを誇り続けていたオランダも、アマチュアレベルでの強豪に辿り着いてからの数年は、欧州王者ともてはやされるような意識な訳でも、野球新興国の急先鋒と言われるほど結果が伸びていたわけでも無く、ただただ一歩一歩をつめる地味な時代が続いていたのです。キューバに勝ち、ワールドカップで上位争いを演じ、WBCでドミニカを破り。1998年のあの一勝が中堅への壁だったとするならば、この一戦はまさに、目に見える形であらわれた強豪への壁でした。



オランダにとってもアメリカにとっても後が無い第一戦、ここで両国がたてた先発投手はアメリカがオズワルド、オランダがハンデンバーグ。オランダは打線に北京の4番デヨングを立てるなどなど、打ちあぐねていた感なる打線に手を入れてこの試合に臨みはしましたが、アメリカの壁はそうそう簡単には揺るぎません。一回にはキングセール、デカスター、サイモンのキュラソーメンバーが三者凡退に抑え込まれると、二回にはデヨングが期待に応えて出塁を果たしますが、エンヘルハート、ルーイが力でねじ伏せられて沈黙。その裏、オランダの壁であったハンデンバーグも苦しみながらの投球を続けていましたが、1回ライトにライトへライトな犠牲フライでさっくり先制されてしまうと、2回には1番ロリンズにツーランホームランを浴びせられ、3回にして早くもコールドへのカウントダウンを始められていました。オランダ打線が打ち上げる内野フライが、アメリカ打線ならば犠牲フライとなり、オランダ打線が飛ばす外野フライは、アメリカ打線ならばホームランになる。目に見えて分かるほどの地力の差、試合開始から見せ付けられたこの差が今まで見えなかった「オランダと強豪を分ける壁」だったかのように感じらたのは、多分僕だけではなかったはずだと思います。



この10年でオランダが変わったことがあるとすれば、それはまさにすがりついていこうとする気持ちにほかなりません。競争があまりに乏しい世界の野球において、弱小と中堅を分けているものは、野球での勝ちへの執着心しかありません。あまりに実力差のかけ離れたライバルに対し野球を続けようとする気持ちを失ってしまう、ただでさえ大会数も経済面も乏しいこの競技の現状では、まず続けることが第一のハードルなのです。オランダは欧州内では逆にライバルのやる気をそぐほどの強豪ではありましたが、欧州と対外の状況を考えると王者オランダでさえその継続はなかなかに厳しいものもありました。それを乗り越え野球を続けたからこそオランダはアマチュアの強豪、そしてプロ参加大会においても中堅の座に辿り着いたのでしょう。勝てない相手だと放棄しなかったからこそ1998年を皮切りに実を結び始めた、しかし残念なことに2009年の壁はこんな長々と書いた奇麗事でさえさっぱり揺らぐ気配はありませんでした。3回の攻撃トップのバッターはファンクロースター、10年前の4割打者も、結果はあえなく三振に切ってとられます。



3回はその後もキングセール、デカスターの連続ヒットで満塁のチャンスを演出しますが、すんでのところでかわされ0点。4回にもエラーがらみや内野安打と必死に喰らいつきはしますが、アメリカは追いすがる隙を見せてはくれません。粘って粘ってしかしあえなく力尽きる。オランダの野球は時に「米国を小さくしたかのような野球」、横綱相撲的な野球だと評されることがありますが、その名の通りオランダは本来こうしたすがるような粘着質な野球をすることはあまり見られません。欧州内で飛びぬけた力を誇るオランダは、横綱相撲で力で圧倒する方が板についているのかも、といったところでしょうか。野手が体中を泥だらけにするのと同じく、投手も攻撃的な攻めを捨てすがるようなリードを続けてはいましたが、こちらも芳しい結果はあげられません。4回にはサルバランがピンチを招くと、ファンカンペンがこらえきれず得点を許してしまう展開。泥さえつかない戦いを出来るようになった欧州王者は、この舞台で再び、挑戦者として、砂をかむような試合を続けていました。



5回にはロリンズの犠牲フライ、6回にはダンがソロホームラン。展開がようやく変わったのは、コールドが近づいてきた7回のことです。8点を追うオランダはアメリカ4番手ジーグラーを、9番1番2番のトリオで攻略し1得点。続く8回にはエンヘルハートがソロ本塁打を叩き込むと、四球で出た代打ロンブリーをアドリアーナが三塁まで進めさせ、スクープの犠牲フライでさらに1点。合計3得点をあげるとアメリカのベンチも表情を曇らせ、ここで6枚目の投手グラボーを送り込み、彼らは事なきを得ました。アメリカにしてみれば、オランダがまだこの場面で戦う意思を見せていたことは、かなり不気味なことだったんじゃないかと思えます。点差がついてしまった試合になすがままにされ、試したい投手をつぎこんでコールドを待つ、胸を借りた気持ちで負けに甘んじる、そんな弱小国の一国であったオランダが、アメリカと言う野球超大国に負けることを悔しがっている。その点差でしかるべきはずだった相手が、いつの間にか同じ土俵にあがって試合をしていたのですから。



アメリカは8回に1点を追加した後、9回のオランダの中軸相手にはブロクストンを投入。オランダチームのメンバーは最後と言う自覚に包まれた顔をしていましたが、悔いの残った顔のまま試合を終えてくれました。3-9でアメリカの完全勝利、ドミニカをなぎ倒し突き進んできたオランダのサクセスストーリーも、ついに二次ラウンドで涙の敗退。逆にアメリカは地元での初勝利にようやく胸をなでおろしました。オランダが多分この試合を通過点であると思ってくれているであろうことは、オランダがこの舞台に立ったことで十二分に証明されているでしょうから、これ以上は何も言うこと張りません。自国開催のワールドカップ、目下調整が続けられているヨーロッパでのウインターリーグ、「すでに強豪となっていた」オランダには負けが生かされるチャンスが残されています。またこの好試合の演じ手となってくれたアメリカも、重みのある負けを受け取ってくれたことで、一つ弾みにも基盤にもしてくれるであろうと期待は膨らみます。いまはただ両国に、お疲れ様とは言いたくない、ただそれだけです。



ほんのちょっと数年前まで、オランダの野球選手なんて日本のほぼ誰もが知らない事でした。放送してくれる局も無ければ、僕自身も今よりずっと面倒な思いをしながら遠く向こうの野球を眺めていた、そんな覚えがあります。正直、あまり現実味はありません。長年にわたって細々にたにたヨーロッパの野球を追いかけ続けていた、そんな奇特な人がこのブログをのぞいてくださっているかどうかは分かりませんが、もしいらっしゃるのであれば、是非このやり場の無い嬉しさと寂しさをどうしているのかを聞きたいところです。

posted by shoeless |00:50 | 国際大会 | コメント(2) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/shoeless/tb_ping/319
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
Re:WBC回想オランダ対アメリカ

コメント投稿者ID :

こんばんは〜!
オランダは残念でした。
やはり壁は高すぎたか!
しかし今回の二次リーグ進出は、これからのヨーロッパ野球にとって、大きな第一歩になったのではないでしょうか。

先日は突然失礼いたしました。
また、お邪魔してしまうかも知れません。

posted by hachsui | 2009-03-18 00:34

Re:WBC回想オランダ対アメリカ

コメント投稿者ID :

こんばんは〜。
オランダ、残念でしたね。
やはり壁は高すぎたか。
しかし今回の二次リーグ進出が、ヨーロッパ野球にとっての大きな第一歩になったのではないかと思います。
ところで、
先日は突然失礼いたしました。
またお邪魔させて頂くかもしれません。

posted by hachsui | 2009-03-18 03:07

コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」