2007年11月01日

一球無双

10月29日、SKワイバンズがトゥサンベアーズを4勝2敗で破り韓国シリーズを制覇、2000年にSKとなってから初めての優勝をもって今季の韓国プロ野球リーグの日程の全てが終了しました。準プレーオフ、プレーオフ、韓国シリーズと勝つべきものが勝ちあがってきた今年の韓国プロ野球の総決算ですが、決して順当に穏便なものではありませんでした。退場者あり、負傷者あり、乱闘あり、完封あり、馬鹿試合あり、もうおなか一杯、まさに死闘。昨年Bクラスだという事もそうですし、脚を使うプレーの多さや外国人投手に頼る比重が大きい事でも似通っている両チーム、結局最後の最後に勝負を分けたのはやはり「一球の重み」の差だったと気付かされた、そんなシリーズでした。

1SK   73 48 5
2トゥサン 70 54 2
3ハンファ 67 57 2
4サムソン 62 60 4
5LG   58 62 6
6ヒョンデ 56 69 1
7ロッテ  55 68 3
8キア   51 74 1



SKとトゥサンの今シリーズ、これを語る上で一番重要なのは、両チームどちらも先発投手の駒をかなり外国人選手に依存しているという部分でしょう。補強するなら大砲と先発という事もあってか、韓国台湾リーグでは日本以上にそうした部分の人材が枯渇してしまう傾向にあり、このシリーズを戦う二球団も彼らへの依存度はかなり高いものとなっています。その上最近よく見られる日韓台リーグ間での外国人選手の行き交いによって、NPBでそうであるように韓国台湾でも他国リーグ経験者は増加中。依存度が高まればチームの出来を大きく左右する要素となるのは当然の話で、実力の値踏みがしやすい他国リーグ経験者は重宝され、そしてなかなかどうして彼らの多くが新天地で成功を収めています。SKでいうとレイボーンとロマノ、トゥサンでいうとランデルなんかが日本球界経験者で先発の柱。トゥサンはランデルに加え韓国球界史上最高の助っ人リオスという20勝エースがいるのですが、彼もまた今季横浜が獲得することが濃厚、チームの中核を成すはずの選手達は非常に流動的で、それも一つ最近の韓国リーグの順位変動の激しさの要因となっているのでしょう。それはこのシリーズでも同じ、このシリーズはほぼ彼らの出来如何と言う状況でした。



SKはシーズン通して負け越しはトゥサン相手のみ、そしてその主だった原因は多分リオスの独走を許し打ち崩せなかったこと、ただただ先発の力と言うだけならトゥサンがSKを上回るでしょう。プレーオフを戦っていた分トゥサンはシリーズが長引くと不利になるはずですので、それにプレーオフを3タテにした勢いと試合感覚をあわせて考えれば最初の二試合はトゥサンが優勢、リリーフ陣ではトゥサンを上回るSKという事を考えれば試合が長引いてくる5・6戦はSKが優勢、かといって7戦目までもつれこむと最後の砦リオスの登板予定日ですのでトゥサンが圧倒的優勢。つまりこのシリーズのターニングポイントは第3・4戦、3戦トゥサンの先発予定キムミョンジェと4戦SKの先発予定キムグァンヒョンが流れを守れるかどうかにある。特攻隊長コヨンミンからWBCの四番キムドンジュとチェジュンソク、代表捕手ホンソンフンに続くトゥサン打線とチョングンウ・チョドンファからキムジェヒョン・イホジュン・パクチェホンに続くSK打線はどちらも甲乙つけがたいバランスのとれた打線、力が拮抗しているとしか言いようが無い以上、どうせ予想なんてあてられっこ無いからとりあえず最終的には精神論話しときゃいいんだよ!というのがシリーズ前の僕の予想でした。



さて実際のシリーズはと言いますと、運が良かったのか悪かったのか一試合目から予想が当たります。リオスとレイボーンの投げあいで始まった第一試合は勢いにのるリオスが試合間隔があいたSKを完封。続く二試合目は投手戦とは行かなかずSKが初回先制と流れを持っていかれるような展開に見えたのですが、プレーオフで足を痛めたといわれていたトゥサンのショートイ・デスの怪我を押しての強行出場及び闘志溢れる怪我無視のプレーにトゥサンは奮起、そこに主軸アンギョンヒョンを骨折退場させる死球に4番キム・ドンジュへもデッドボールを与え、SKは死球と共に流れと勝利をトゥサンに与えてしまいました。しかしトゥサンは流れを守った代わりに土壇場に来て故障者だらけという状況、星では先行していながら追い詰められているといった様、俄然5戦6戦と試合を長引かせていく訳には行かなくなります。そんなこんなで僕予想ターニングポイントだった3戦目、先発はトゥサンキムミョンジェとSKロマノ。ここを乗り切ればもう次のリオスで決着がついたのかもしれませんでしたが、昨日の流れの代償は早くも訪れます。



短期決戦における定石ともいえる執拗な内角攻め、前二試合嫌でも内角を意識させられていたトゥサン打線は死球も多くkらっており、この日は完全に打線が沈黙していました。死球退場のアンギョンヒョンが欠けた打線は厚みに乏しく、かといって怪我を押して出場したイ・デスはプレーが安定せず、重要な場面でエラーを連発。第2戦は死球で流れを失ったのはSKの方に見えましたが、この試合は鬱憤たまったトゥサンが死球を与えてコールをもらってしまいついにブチ切れ、両軍入り乱れての大乱闘となり結果トゥサンは9-1という大惨敗を喫してしまいます。勢いを断ち切られたトゥサンは第4戦エースリオスで巻き返しを狙い、対するSKは若き左腕キムグァンヒョンを立てて試合に臨みました。しかしいくらエースリオスと言えど、長らく続く中3日登板と言うハンデ、そして今の勢いのないトゥサン打線をどうこうする事はできません。初回から失点を許したリオスはその後も毎回のように紙一重でピンチを凌ぐ投球、ファン視点で見ればチャンスに打てないだけの話でしたが、それはトゥサン投手陣に如実にあらわれた崩壊の前触れともいえました。主軸が止められ若手がシリーズ勢いを止められたトゥサン打線はキムグァンヒョンに無残に抑えられ、トゥサンはエースリオスで第4戦を落としてしまったのです。



続く第5戦はうって変わって投手戦となりますが、最初に話したとおりSKと比べトゥサンのリリーフ陣はどうしても見劣りしてしまいます。投手戦となっただけでも既に分が悪いトゥサンは若いイム・テフン、そして前日リリーフに失敗しているイ・ヘチョンを打たれずるずると敗戦。そしてついに後がなくなった第6戦、ようやくヒットを打てるようになった四番に勢いが戻った打線ですが、それはあまりに遅すぎました。気付いたときにはもう火の手は足を焼いていた、第6戦は2-5でトゥサン敗戦。全体成績4勝2敗、こうしてSKの球団創設後初の優勝は決まり、2007年の韓国プロ野球は幕を閉じました。



台湾、韓国、そして日本と今年のプレーオフを見てきて、一つ改めて実感しなおしたことがあります。それは野球はゲームとして麻雀やポーカーに近い、布石を置くゲームだという事です。ゲーム内外を問わずあらゆる要素から相手の思考を読み取り、そして読み取らせて相手の思考を操る、麻雀における捨て牌やポーカーにおけるカード選択の傾向のように、野球もまた勝つためには相手の潜在意識に潜り込み、その裏をかき、そこにつけこまなくてはいけません。例えるなら巨人対中日のクライマックスシリーズ、新聞の記事を信じた原監督に対し小笠原先発という奇襲を仕掛けた落合監督であったり、内野陣の守備を見てバスターを敢行した川上であったり、それはどれも断片的プレーの連続に見えて、実は全て根を同じくする一つの積み重ねからきた流れでした。この韓国シリーズにおいては、ほぼ全ていくつかの死球が流れを決定したといってもいいでしょう。あまりに印象的過ぎる死球なあまりいつの間にか内角を意識させられていたトゥサン打線、怪我をおして出場したイ・デスに代表される「SKがそういう攻めをするのに我々は屈しない」という意識はいつの間にか結果につけこまれるハメになり、皮肉なことには、最終的に彼らを負けへといざないました。



最初の2勝を犠牲にし、後の4連勝を勝ち得た。たった数級のボールがそれを成しえたのなら、SKは本当に数球のボールで後の結果を変えてしまった事になり、そして放った球は既に次の舞台アジアシリーズへの布石となりつつあります。一般的に外角が狭いと言われる日本の審判に苦しんできたアジアシリーズ、そうやすやすと日本球団の選手に内角を投げられるもんじゃないという日本側の意識は、こうした野球をやられては一度に破綻してしまうからです。SKは内角を攻めるのか、むしろ内角を攻めるというのはアジアシリーズへのアピールとされてしまうのか、この時点で既に僕らはSKに内角を意識させられてしまっている、野球って本当考えれば考えるほど訳が分からなくなります。

得体の知れない勢いと死闘を戦い抜いた経験を携え、韓国からはSKワイバンズがアジアシリーズへと駒を進めました。遅ればせながらSKファンの皆さん、優勝おめでとうございます、東京へいらっしゃいませ。

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posted by shoeless |01:36 | アジア野球 | コメント(0) | トラックバック(1)
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