2007年10月26日
鋼鉄の処女
台湾ワールドカップの事について全日本野球会議サイト上でなんの音沙汰も無いよ、という日記を書いたのが22日の朝なのですが、なんとその日の夕方にカウンターパンチのように台湾ワールドカップについての更新がなされました。単なる偶然だよね、じゃなきゃ怖いよ、怖すぎるよ。 http://www.japan-baseball.jp/news/news_0193a.html 日程や要綱と一緒に展望も書いてあるのですが、ワールドカップスペインやオーストラリアなどの最終予選組がベストメンバーを変遷してくる可能性が高い事等は感じていましたが、まさかアメリカがトップマイナーリーガー編成で来る気とは。流石はプロ、情報網が半端じゃありません、素人解説が真っ向から捻り潰された形です、皆さん是非御一読ください。まぁとりあえず記事によれば10月末に代表候補も発表されるようですし、これでようやくファンが自分オールスター代表候補考えたり代表候補を見てブーブー言ったりできる準備ができたという事でしょう。 こういう代表戦の楽しさは、ファンにしてみればやはり「オールスター」という部分にあります。日本中から代表候補を選んできてこれがベストとか言い張りあったり、調子に乗って野球分かってねーなとか偉そうな事言っちゃったり。まぁそんな事言ってられるのもなーんの責任もファンだからこそで、実際選択の権利なんか与えられたら嫌でたまらないはずでしょう。日本はまだ国内リーグに戦力は山のようにあるのにそんな想像が出来てしまうのですから、この時期の海外の国々なんてそりゃもう選手選考に煮詰まっているんじゃないかと想像してしまいます。WBCの時が非常に分かり易い例でしたが、地域によって実力格差の激しい野球では、強国と競り合っていくために代表を「補強」する事が通例。野球強国に住んでいる自国籍人や野球の盛んな地域の領土の選手達を呼んできたり、野球がそんなに強くない国々にとっては、代表選考は本当に世界中規模での人探しをやらされているようなものなのです。 昔のプロレスじゃありませんが、長らく見ていても「誰こいつ?」という得体の知れない選手が選出されることは少なくありません。最近の例で言うと前回スペインを訪れた時のイギリス代表なんかがいい例でした。得意げな顔して現地行ったら全然見たこともねー奴がプレーしていた時のあの衝撃、イギリスはヨーロッパチャンピオンシップに向けて、本当に世界中から選手をかき集めてきていたのです。出自だけ見てもカナダ系、アメリカ系、オーストラリア系と様々ですが、プレーしているリーグとなるとアメリカ・カナダの独立リーグから大学リーグ、オランダ・フランス・ドイツ・ポルトガルとアストロ球団並の運命の巡り合わせ。中には現役ハーバード大学の学生とかクロアチアリーグの猛者とか、なんだかどういう選考基準だったのかは分かりませんが、漫画のような集団であったという事だけは間違いありません。 こうして漫画みたいな代表が出来上がっていることは、それそのまま野球の世界でこの方法が最も簡単な強化の方法と認められていること、そしてそれはすなわちそういったコネクションを多く持っている国の優位性を物語ることとなっていると言ってもいいでしょう。こうして世界中から選手をかき集めることを余儀なくされている国がいる中、もし仮に簡単にそれを得ることが出来るのならそこに差は大きな溝ができるという事。それが全てとは流石に言いませんが、くしくも欧州野球の現実は東欧よか西欧の方が強く、中年米移民が多いスペインがフランスに競り勝ち、中南米に領土を持つオランダがイタリアを圧倒しつつあります。系列的に海外に自国ルーツの人々が多く、より野球が盛んな地域により多く、最終的には野球が盛んな地域に領土を持っている事という風に、御丁寧に順序までつけて現実が示してしまっているのです。 さて、もうこのあたりで皆さん「そんなうまくいってたまるか馬鹿、中南米に領土もってたって弱い国あるわ」と思っていただけているんじゃないかと思いますが、実際その通りでこれからこの法則の例外となる事例を出して急速にオチへ向かっていきます。しかしそうなると疑問なのは「何故反対例を出せるのか」という事。もちろん僕の考えでしかありませんが、その答えは実はそう難しいことではありません、上に書いてあることぜーんぶ嘘だからです。嘘と言うと語弊があるかブログやってる意味無いか、もっと厳密に言うと「結果と原因が逆転している」からということ。西欧諸国が中南米に入植したのは野球誕生よりも随分と前、中南米には野球が強い国が多く犇いていますが、当たり前の話で最初から強かったわけではありません。二つの事をあわせて考えられるのは、今現在野球強国として残っている中南米の地域は、その当時から野球がのびる環境があったという事。逆に言えば今現在野球が弱い地域には、それが伸びないなんらかの要因があったという事でしょう。 一面から物を見ただけで事象の起承転結を想像できるとは思えませんが、ここで一つ例を挙げてみましょう。今現在中南米にあるヨーロッパ領土で野球人気が無い地域、英国領バージン諸島なんかが分かり易い例じゃないかと思います。中南米に位置しながら今回のイギリス代表候補にも全然選手が選出されなかった英国領バージン、そうした部分でも分かるとおり、この地域は野球においてはこれといった人気もなく、代表どころか活動すら見られない地域となっています。プエルトリコやアメリカ等野球強国にも立地的に近いのですが、西側に位置する米国領バージンや蘭領キュラソーと比べると後塵をむしろ拝せないレベルまで差がついてしまっていると言っていいでしょう。そもそも人口が二万人程度しかいない地域なのですが、それでもなお隣のアメリカ領バージンと比べれば大きく違う。違うことはただ一つ、統治している文化圏。英国領バージン諸島が今日英国の野球シーンにおいてオランダにおけるアンティル諸島のような役割をはたせていない要因は、そもそも英国領だったという背景が大きく影響していると見て間違い無いんじゃないでしょうか。 スポーツを語る上ででこうした話をするのは決して気持ちのいい話ではありませんが、人口が一定しか無い以上、各スポーツはお互いに競技人口と言う限られたパイを奪い合う立場にいます。アメリカ文化とイギリス文化のせめぎ合いのど真ん中ともいえる英領バージン諸島はクリケットやバスケットなど人気スポーツが多く、サッカーでさえその総競技人口は多く見積もって千人越えといったところと言われている状況、入ってくるニュースさえも野球は女子スポーツとして確立しているソフトに負ける程のパイしか持ててはいません。アメリカに近い影響もあってリーグなども行われているのですが、メインは春先から行われる全クラブ対抗のリトルリーグ戦と言え、成人による野球リーグの話は情報すら聞いた事がありません。単なる僕の調べ残しと言うなら杞憂なのですが、成人によるリーグが無いという事はすなわち、大成しつつあった子供は皆やめるか海外へ流出してしまっているという事。といって大人になった時目指す先が簡単にあるかと言うと、遠きメジャーや組まれることの無い現地代表とそうそう簡単でもありません。 2006年、英領バージン諸島内のリトルリーグに参加していたチームは総数22。総勢数百人のなかから、この年彼らリトルリーグはリトルリーグワールドシリーズカリブ予選への代表団派遣を果たしました。まぁリトルとは言え激戦区のカリブ地区とあって強豪ベネズエラやキュラソーにもまれて結果は4戦全敗、結果は全敗ではありましたが、これこそこの土地で子供たちが細々ながらも野球をやっている理由なのでしょう。これだけで成人となって続けられないスポーツと言うのはそれこそ原因と結果のはき違いでしょうが、この島々の野球は、大人になるとぱったり情報が聞かれない、目指すべき先も簡単には見当たらない状況が続いています。そんな中、僕たちが想像出来る範囲内でかろうじて「彼らが大人になっても野球やっていける理由」としてあげられる目標、それこそが今現在スポーツの世界、特に実力格差の激しい団体スポーツで行われている「代表補強」でした。 世界中に人々が簡単に行き交いできる時代が到来してもう数十年、スポーツの代表も人種は交錯し、ラグビーや野球などに至っては本当に軽いつながりで国家代表に選ばれることも少なくありません。しかしチャンスが増えるのと同時に、あやふやなところには批判も生まれます。WBCに対するアメリカ人とアメリカ人の代表戦と言う批判、ラグビー国際戦の代表選出のファジーさへの懸念、そして果たしてそれを代表と認めていいのかという考え、どれもアイデンティティーという事を考えると難しい問題でしょう。蘭領アンティル諸島にしても本来は属している連盟によって選手が派遣されるべきだとは言えるのですが、口ではいえても実際そこにあるのは道義上の問題だけで、現実仮に分化したとしてもデメリットの方が多い事は容易に想像できます。前回のベネズエラビザ発給拒否に引き続き、この手の問題に意見を提起できるほど僕は賢くありません。しかし1スポーツファンとして言える事はあります。選手がどこに誇りやアイデンティティーを感じ目標を持ったのか、それを尊重したいということです。 そういえば今回の五輪最終候補において、二大会連続で国家代表に選ばれながら選出から漏れた選手がいました。その名はマイケル中村、日本ハムの守護神、オーストラリアとのハーフである彼はオーストラリアにて二度の代表を経験、故郷オーストラリアをさしおいて今回の日本代表選出を心待ちにしていたそうですが、結果は涙を見るものでした。何故彼が日本代表の為に悔しい思いをしてくれているのか、それはすなわち野球日本代表と言う集団が、人によってそれだけ目標としての価値を見出されているという事にほかなりません。それを理由に野球が続けてもらえ無いならば、そうなれる可能性を知らないか、そこに価値が見出せていないか、どちらかということでしょう。バージン諸島によって英国が強くなるのも違う、英国の代表を目指してバージン諸島が強くなるのも違う。遥か彼方の理想形は、今よりもっと目標とされる英国代表がバージン諸島の選手達によって補強され、互いに切磋琢磨して強くなるという姿しています。アンティル諸島とオランダ、オリウンド(他国育ちのイタリア人)とイタリア、どこにしてもその理想形はかわりません。 涙を流す選手がいるからこそ代表選手の選考は難航する、人を蹴落として選ばれた代表達なのだからこそ、彼らは可能性のある全ての人から目標にされ、多くの選手から涙を流されるような存在にならなければならないし、その事実を忘れたり裏切るようなことをしてはならない。そうして考えれば英国代表も日本代表も、抱えている問題に大きな違いはありません、人から泣かれる存在になれ、人の涙を無駄にしない存在になれっていう事。 英国代表は、長い時を経て徐々に選手に泣かれる存在に近づいてきました。 日本代表は、人が涙までした場所を大切に出来る存在になれていますか? 4
posted by shoeless |05:28 |
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