2007年08月16日

おおきく振りかぶって

海外に出ると、日本ってすごいんだなぁと感じることがよくあると思うのですが、僕の実体験でいくと特にマンガからとてつもない影響力を感じます。カタールの人にイニシャルDの話されたりスペイン人にワンピースの話されたり、「可愛い男が戦うマンガだよー、オジュルオジュル」とか「こんにちは、新世界の神です」だとか、もう僕には世界が分かりません、これでいいのかといわれたら駄目な気もしますが、面と向かうとほんのり落ち着いてしまう僕がいます、ブックオフの臭いに落ち着いてしまう感じに似ているかもしれません。イギリスのマンガはアメリカからの輸入が多くて割高だと言うのに、中には日本人である僕よかよっぽど詳しい連中もいて、そういやこの間イギリス人に「エマ」というイギリスのメイドのマンガを読めと勧められました、何十個も手順が省けるような気がしますが勉強にもなるのでいくつも借りてよまさせてもらっています。げんしけんクソおもしれー。



そんなこんなで海外に行くと日本人と言うだけでオタクとラブラブというハートフルなお話をさせていただいたのですが、実際は当たり前に本題はそこではありません、誰が聞きたいんだ、げんしけんのストーリーに俺がどぎまぎしてる経緯を。実の本題は彼らの中の一人の香港出身の子が、好きなマンガはある野球マンガだと言っていた事にあります。よくよく考えてみると確かに日本のマンガには野球の描写が多くでてきます、それこそ中にはある程度野球を理解していなければ分からないような描写さえ登場していますし、中には彼女のように野球マンガを読む人もいるのでしょう。しかし当たり前のごとく野球は世界でそんなに知られたスポーツではありません、彼らは本当にその意味やルールを分かっているんだろうか、彼らはそれをどう思っているのか、なぞは深まる一方です。そこで、いくつかの人にその件について伺ってみたところいろいろと面白い話が聞けました。



まず彼らは「日本のスポーツといえば野球か相撲」だと思っているという事、そして詳しいルールは分からないがある程度何やってるかぐらいは分かるから大丈夫との事。特にイギリス人はアメリカからの輸入のマンガを読んでいるため、マンガの説明が大体アメリカの野球認知にあわせて作ってある物を読まなくてはならず、そんなもんかという認知でマンガを読んでいるようです。中には「大きく振りかぶって」が見たいが為に必死でアニメの解説をしろと言ってきた人もいたのですが、そういう人はまたかなり別のファクターによって行動が決められている特別な存在でしょう、どうせ見ないじゃん野球部分、告白やーとかいってるだけじゃん!ほぼほとんどのマンガファンは日本のマンガによって日本人は野球をやると言う認識が他の数倍高い、しかし積極的に知ろうとするタイプの情報ではない、そんな気がしてなりません。



野球マンガが海外市場開拓の口火になるとかならないとかの前にまず海外で野球マンガが全然売られていない、だからこそ、上記の野球マンガが好きだと言った香港の子はその中で際立っていました。その野球マンガとはまぁあの奇麗な顔の人が死んじゃって南を世界で一番愛すついでに甲子園行こか的なあの漫画、星くずロンリネス、言われてみて思い出したのですがそういえば香港ではあの作品の実写映画が上映されたりした事もありました、確かに彼女があの作品のファンであっても別に不思議な話はありません。ただしかしだからといって香港が野球が市民権を得ているような地域という訳でもありません、むしろ上記の例に漏れずマイナーで500人程度の競技人口しかおらず、香港の人たちが広く野球を知っているとは思えませんでした。日本やアメリカの一部として「野球」が知られているのはともかく、野球そのものを題材として扱う作品に興味を持つ人がいるとは夢にも思えなかったのです。



香港は1997年にイギリスから中国へ返還された元イギリス領の地域です、古くから金融や流通の要石として世界中から人が集まってきていたという事もあって中国本土の人たちと比べると比較的他の文化に寛容、そして他の旧イギリス植民地と違ってあまりクリケットやラグビーなどの英国スポーツが流行らなかった地域でもあります。地域でナンバーワンの人気を誇るのはプロリーグのあるサッカーをも凌ぐバスケットボール、対する野球は連盟が出来たのもまだ1992年と言う段階で、国内でも当たり前のごとくそこまで活発には行われていません。代表も国際大会の経験が数えるほどしかなく、あんまり分かりやすくない例えをすればアジアの7位争いをパキスタンと繰り広げている程度の実績です、ビギナーの為にホットドッグプレス並の分かりやすさで説明しますと、日本が10点差をつけて勝った中国が10点差をつけて勝てるフィリピンが5点差で勝てるぐらいの実力です。たった数行で、香港の人が野球に興味を持つ可能性の低さが分かってもらえたと思います。



マイナーな事に理由つけたってさびしいばっかりなのですが、強いて香港でバスケットが一人勝ちしている背景を語るならば、そもそも香港は基本的に土地が少ない世界でも三本の指に入る人口密集地区で、市民がスポーツを行う環境にはかなりの制約を強いられているという事があげられるでしょう。学校の校庭もそこまで広くないことが多い香港中心部でもバスケットコート程度ならば作ることが可能です、しかし逆に言えばそれは広い面積をとる野球は香港でまずやりようが無いという事と同義でもあります。彼女曰く香港でも野球はリーグ戦でやっているが日本人がいることが多く、一般の人はあまり香港に野球があることなど知らないだろうとの事。多く流入する日本作品によって知ってはいるが実際はその実像が見えてこない、存在は分かりはするが自分達がやろうとは思わない、多く香港の人たちにとって野球とは、欧州の人たちにとってのアメリカンスポーツベースボールのような、日本の作品を通してよく垣間見られる「日本のスポーツ」、なのかもしれません。



香港の人々にとってファンタジーの向こう側のスポーツである野球、国家代表戦ではあまり姿を見せない香港ですが、実は今年の7月に彼らもホスト国として野球の国際大会を控えていました。開催地となる野球場はこれまたファンタジーがチュロス売って歩いているような王国香港ディズニーランドリゾートの中の野球場、ファンタジーの向こう側のスポーツに挑むのはこれまた上手いことに少年達、香港は今年の夏、リトルリーグのアジア太平洋予選のホスト国をつとめてたのです。アジアの強国であった日本が本戦への直通の枠を与えられるようになったことにより二つの地区が合併、アジアの諸国としては日本が消えてくれたことで世界への道はぐっと広がっていました。香港にとっても、韓国がまだ強化されておらず中国も棄権、タイもリトル世代が揃えられるほどまだ選手層が厚くないと、この大会こそ世界へと通じる突破口をこじ開けるまたとないチャンスでした。



しかし現実はそうそう甘くはありません、結果はやはり少年野球界の強豪台湾に破れ三位。しかし韓国を破り順位決定戦ではフィリピンも破り、決して運でもぎ取ったわけではない三位でした。少年野球の世界だけで考えれば香港はアジアでベスト4、やり方によっては世界に手が届くまであと少しの位置です。香港にとって野球と言う競技は、決して日本海の向こうにあるものでも創作物の向こう側にあるものでもなく、現実として手を伸ばせば届く位置にある競技だったのです。



今年の秋、香港は台湾で開催される北京五輪アジア予選へと向かいます。まず最初の予選リーグの相手はパキスタン、タイ、フィリピン。公の見方ではフィリピンかタイが抜けてくるという予想が多いようですが、はたして本当にそうなのでしょうか、というよか香港は本当にそれでいいのでしょうか!?いやわざわざビックリマークまでつけているんですからもちろんよくありません、よろしいはずがありません。何はともあれ可能性はまだ無限に残されています、まだまだ手を伸ばす価値はある、すぐそこに創作物の向こうの話がある。遠巻きに見ている感が漂う現状を考えれば、香港にとって野球が彼らのプレーする競技になる時とは、野球が創作物でなく直接香港の人たちの目の前に現れるようになったときでしょう。タイもフィリピンもパキスタンも全て持ち上げている僕が言うことじゃあないかもしれませんが、この大会、僕には香港がかませ犬で終わる気がしてこないのです。



創作が実話になる、夢が現実になる、今僕は数人の外国人さん達の為に必死になっておおきく振りかぶっての英訳に勤しんでいます。「これは漫画だ」って言いたくなる日もあるけれど、夢が現実になる日が来るかもしれないから、彼女達の夢が壊れないように、日々英訳に勤しんでいます。今一番の悩み事は、「おおきく振りかぶって」をどう伝えればいいのかが皆目見当がつかないという事です。これってワインドアップでいいのか?



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posted by shoeless |07:06 | アジア野球 | コメント(0) | トラックバック(1)
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