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【PIW】町田樹は王道か否か -新作レビュー

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思えば毎年「今年は去年以上の衝撃はないだろう」と思いながら町田樹というスケーターの新シーズンの初演を迎えている。 Je te veuxでは幕を活かし、トルソーを使ったプログラムであった。 このプログラムも照明で場面転換を表現し、トルソーと幕によって物語性を引き立てるプログラムだった。 引退後初のプログラム「継ぐ者」では6分弱の曲にジャンプが7本という過酷なプログラムに観る者が息を飲んだのがつい最近のような気がしてしまう。 昨年のプログラムは引退後初の「継ぐ者」のインパクトを超えることはできるのかと思われている中で、松田聖子さんの「あなたに逢いたくて」が流れた時は前年に引き続きまた違った衝撃を受けた。 このプログラムは小道具はないがピンスポットを使って回想や登場人物の気持ちを表現するシンプルだけど濃いプログラムだった。 JOで演じたアヴェマリアは登場の仕方からして斬新なものであって、ジャンプレスというのもまた衝撃だった。

毎年衝撃を受けてはいるが、選曲自体は皆がどこかで耳にしたことのある曲ばかりだというところがまた意外でもあり、演出としても舞台やライヴの場では普通に行われていることではあるのだが、それをフィギュアスケートのショーの場でやってしまおうという発想が衝撃を受ける元になっている。 私の恩師に言われたことがある。 エンターテイメントとは既存のものであっても別のジャンルのものと合わせるとまたそれが新しいものになる。 町田樹という演出家はきっとそれを素で理解している根っからのエンターテイナーなのだろう。

前置きが長くなってしまった。 現役引退から4作目の新作はどんなプログラムだろうか。

<Don Quixote Gala 2017:Basil’s Glory>

幕は閉じたまま幕にアンバーのライティング。 オケのチューニングの音が鳴り、幕から出てくると無音の中3Lz(着氷乱れ) これまた始まり方もフィギュアスケートのプログラムとしては面白い始まり方で物語に引き込むには十分すぎる始まり方だった。 全部観たあとだから3部制前提として感想を書くが、前情報のない初演を観た時はとにかく最後まで衝撃的だった。 ジャンプについては1幕では東で2A、南寄り中央で3T、南で3T 2幕では南側と西北で3Fと3S(どっちがどっちだったか記憶不明)東北寄りで2A 3幕では腰手ループ?かな? 綺麗なバレエジャンプやターン、バレエの身体表現をふんだんに使った振り付けでバレエのプログラムを観ているようだった。 フィギュアスケートでバレエのプログラムを踊るということは難しいのだろうと思うが、スケートのスピード感とジャンプが加わるとまた違う魅力も生まれるから面白い。 プログラム自体も素敵だったが、プログラムを引き立てるための演出もまた素晴らしかった。 そう、場面転換の演出だ。 1幕が終わり曲とともに一瞬の暗転が訪れ、しばらくすると場面が変わる。 それだけで2幕目が始まったというのは理解ができた。 そしてフィニッシュとともに再び暗転が訪れる。 拍手大喝采のとスタディングオベーションの中、挨拶・・・ってあれ?そのまま幕の中に消えていく町田くん。 会場中が「???」となる中、幕は再びアンバーのライティングで照らされる。 「これは・・・?」 と会場中が期待する中現れたのは衣装を黒のベストから赤のベストに変えた町田くん。 会場は再び大歓声に包まれる。 私は「町田樹またもやりおったー!!」と興奮するしかなかった。 この人のフィギュアスケートは舞台なのだ。 幕間の間も取り入れて舞台セットはなくとも場面転換を照明と幕だけでやろうとする試みは芸術としてのフィギュアを表現するには十分な演出だった。

ただ、これが彼の完成形ではないとも思った。 あくまで試みとして、きっとまだまだやってみたい演出があるのだろうと。 他ジャンルの色々な演出方法がまだまだあるわけで、これからもきっと取り入れてくれるのだろうという期待しかない。 冒頭でも触れたが、彼のやっていることや選曲はある意味王道なのだ。 今回のドン・キホーテもバレエでは有名な演目であるし、フィギュアのプログラムとしても使われている曲である。 転換も舞台では当たり前のように行われている間である。 王道なのだけど演出一つでこうも斬新なものになってしまうのが芸術の面白さなのだと改めて思い知らされる2017年の新プログラムだった。

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アイスショー
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