2010年03月29日
「鐘」を滑り終え、腕を振り下ろした浅田真央の動作に、長く厳しかった五輪シーズンを思った。
涙で悔やんだ五輪でのミスを、世界選手権では絶対に繰り返さない。そんな強い気持ちが感じられる、浅田の最後の「鐘」だった。採点上は二つめのトリプルアクセルは回転不足とされたものの、観る者にほぼ完璧と感じさせる「鐘」を、浅田は今季最後の試合で見せてくれた。キャリア最大のスランプを乗り越え、それまでの持ち味と全く異なるプログラムを自分のものにした浅田の初めての五輪シーズンは、苦しくも実り多いものだったと感じる。
今回の世界選手権を観戦して、フィギュアスケートには精神面が大きく影響することがとてもよく分かった。まるで抜け殻のようだったキム・ヨナと、ショート・フリーともパーフェクトに滑ろうという固い意志を持って臨んだ浅田の姿には、それぞれバンクーバー五輪で感じたことがそのまま現れていた。
個人的には、もう真剣勝負で「鐘」を観ることがないかと思うと残念だ。「鐘」を超えるインパクトを与えるプログラムに今後出会えるのだろうか、という恐れすら感じる。しかし、バンクーバー五輪は通過点に過ぎないことを、浅田はこの世界選手権で身を以て示した。トリノ五輪シーズンからの四年間で想像以上の成長を遂げたように、ソチ五輪までの四年間、浅田はきっとまた予想を超える成長と素晴らしいプログラムを見せてくれるに違いない。
五輪シーズンを通して、浅田の困難を乗り越え、進化していこうという強い思いを見せてくれた「鐘」。「鐘」に出会えたことに感謝しながら、更に前進し続ける浅田真央の姿を見続けたい。
posted by satoko |11:57 |
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2010年03月23日
二戦連続の惜敗から、クレインズは巻き返せるか。
アジアリーグアイスホッケーのプレーオフは大詰めを迎えている。レギュラーリーグ3位の日本製紙クレインズは、セミファイナルで2位の王子を退けてファイナルに進出した。レギュラーリーグ1位のハルラのホーム・韓国で幕を開けたファイナルは、第1・2戦とも延長の末ハルラが勝った。
昨季、最後のシーズンを優勝で終えるという西武の夢を、ファイナルで打ち砕いたのがクレインズだった。涙を隠すことすら出来ない西武の選手たちを呆然と見つめながら、これが盟主の交代ということか、と感じたことを思い出す。
今月7日、全日本選手権で優勝したクレインズの戦いぶりには、底力が感じられた。持ち味の得点力だけでなく、自分たちの勝利を信じられる力を、今のクレインズは持っているように思う。それは、昨季最後の全日本選手権を制した西武が持っていた本物の強さだ。西武に所属していた選手であり、全日本選手権の決勝で得点を挙げたユール・クリス、小原大輔がその精神をクレインズに注入したようにも、私には感じられた。
韓国のチームが優勝するのもアジアリーグの活性化のためには良いのかもしれない、と冷静を装いながら、やはり心穏やかでない自分がいる。五輪に出ることもかなわなかった日本のアイスホッケーのプライドを、今や新しい盟主となったクレインズが守ってくれることを、正直なところ願わずにいられない。
引き続き韓国で行われるファイナル第3戦、クレインズが本当の強さを発揮することを祈りたい。
posted by satoko |12:05 |
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2010年03月15日
日本ではマイナーなアイスホッケーというスポーツに対する情熱が、鈴木貴人を支えている。
「逆境からの挑戦~アイスホッケー 鈴木貴人~」(「スポーツ大陸」、NHK)を見る。常に日本のアイスホッケープレーヤーとして一番の高みを走ってきた鈴木が、昨季まで所属していた西武の廃部後、新たな出発の場として選んだ日光アイスバックスでの最初のシーズンを追った秀作だった。
コクドで有力新人として華やかにデビューした頃から鈴木を見てきたはずなのだが、私にとってはいつも活躍していることが当たり前のスター選手であり、逆に注目することがなかった。私が本当に鈴木の凄さに気づいたのは、うかつにも西武での最後のシーズンとなった昨季である。西武最後の試合となったプレーオフ・ファイナル最終戦で、勝ちをあきらめない気迫のゴールを決めた姿には鬼気迫るものがあった。ホッケー選手としては小柄な鈴木のハンディを補っていたものは、心の強さだったということに、やっと気づかされたのだ。そして日本のアイスホッケーへの思いが、鈴木に日光アイスバックスでプレーする道を選ばせることになる。
プロ意識の高さからか、鈴木は取材で弱音を吐くことがない。常に高いところに意識を保っていることが感じられ、取材する側としても事前に質問を吟味して臨むのだが、いつも緊張を強いられる。だが、取材する機会を逃したくないという思いから、観戦した試合後のミックスゾーンではいつも彼を探してしまう。
番組の中で、バックスの若手は鈴木を「ホッケーの神」と呼んでいた。今季目標としていたプレーオフ進出を逃したことを鈴木は悔やんでいたが、鈴木の存在がバックスに変化を起こしたことは確かな事実に思える。来季こそ、日光でプレーオフのゲームが見られることを願う。
posted by satoko |12:02 |
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2010年03月08日
スターになるべくして生まれた、と思わせるアスリートが希にいるが、シドニー・クロスビーは間違いなくその一人だろう。
ペンギンズのキャプテンとしてスタンレーカップを獲得した翌シーズン、地元のカナダでの五輪に22歳で出場するという巡り合わせからして、まず幸運だと言っていい。しかし、いやが上にも高まる期待の中、その状況を「幸運」だと前向きに受け止めるのは実は難しいことなのではないだろうか。
「もちろん、プレッシャーはある。カナダにおいて、ホッケー選手であるということは特別なことだし、しかも地元での五輪だ。だから、僕はそれを幸運だと思ってチャレンジしたい」
そう語って五輪に臨んだクロスビーは、しかし本領発揮とはいえないまま決勝まで進む。
1次リーグでアメリカに敗れた際は国中が落胆したと伝えられるカナダでは、対アメリカとの決勝の日には、会場の周りにも人が群がる熱狂ぶりだったようだ。そこまで金を含むメダルを多数獲得したカナダだが、ここで負けたら大会は成功したことにはならなかったのではないだろうか。
1点リードのまま迎えた第3ピリオド終盤、好機を作ったクロスビーの動きには非凡さが感じられたが、得点することは出来なかった。そして試合終了まで25秒というところでアメリカが同点に追いつくのだが、このアメリカの粘りさえ結果的にはクロスビーの見せ場につながる伏線となる。
延長戦に入った7分40秒、突き刺すような決勝ゴールを決めたクロスビーは、スティックと共に外したマウスピースを放り投げた。全ての筋書きが、バンクーバー五輪の最後を飾るカナダの歓喜とクロスビーの伝説のために決まっていたかのようだった。
posted by satoko |12:06 |
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