2009年11月24日
「道」は、高橋大輔の新しい魅力を見せるプログラムだ。
五輪シーズンのフリーの曲目として高橋が「道」を選んだと知ったときは、少し違和感があった。私が知る高橋はあくまでも二枚目で、道化師を演じる姿が想像できなかったからだ。しかし、高橋にとってグランプリシリーズ二戦目となるスケートカナダでの演技は、心に沁みる素晴らしいものだった。
ショートプログラムが、過去の高橋の集大成となるような「格好いい」魅力に溢れているのに対し、フリーでの高橋は私にはとても新鮮に見える。ときに三枚目を演じ、クライマックスのステップでは叙情的な曲と同化して観客の胸を打つ。
怪我をする以前の高橋は、スマートな演技をしようととても頑張っていたのではないかと思う。そしてその努力は本当に「格好いい」演技として結実していたのだが、怪我を乗り越えた今「道」で観られる人間味溢れる高橋は、自らの全てをさらけ出せる強さを持ったように私には思えるのだ。
滑ることが出来ないリハビリの日々は、想像を絶する苦しさだっただろう。だがその苦しみは、観る者の心をとらえる人としての魅力となって、高橋の新たな武器になったのではないだろうか。想像の域を出ないが、高橋は怪我を通して自分の弱さと向き合い、「格好悪い」自分も受け入れることで人として大きく成長したように思える。
高橋の四回転はまた決まらなかった。しかし、ファイナルへの出場権も手にした高橋は、一つの試合を踏むたびに五輪へ向けて大きく前進していくだろう。高橋の全ての苦しみが、バンクーバーで喜びとなることを願ってやまない。
posted by satoko |12:00 |
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2009年11月16日
立ち見も出て満員の新横浜スケートセンターで、アイスバックスは快勝した。
今季から、東京近郊でアジアリーグアイスホッケーの試合を見る機会は非常に限られる状況になってしまった。集結戦が行われた新横浜スケートセンターは、観戦機会に飢えているファンで賑わっていた。アイスホッケーファンは、確実に存在している。
アイスバックスはクレインズに先制を許すも、パワープレーゴールで口火を切った第2ピリオドの四得点で、見事な勝利をおさめた。
「みんなすごいハードワークしてたと思います」
この日は第1セットでプレー、二点目のアシストもした日光のFW・内山朋彦は勝因を語った。プレーオフ進出の目安として、60ポイント獲得を念頭において戦っているという。この試合が終わった時点でアイスバックスの獲得ポイントは23。
「まだ30もいってないんで…勝つしかないですね」
西武時代よりもキルプレー・パワープレーでの出場が増えている。
「明らかにアイスタイム増えてるんで、責任持ってやってます」
滞氷時間の長さにもかかわらず、体力の衰えを感じないことを指摘すると「まだ若いです」と笑ったが、「練習はちゃんとしてます」と良い準備をしていることもうかがわせた。
内山は、新横浜をホームにしていたコクドでデビューしている。
「やっぱコクドのホームなんで、ちょっと特別じゃないですけど、好きなリンクなんで。昨日はあんまりいい試合見せられなかったんで、今日ほんといい試合見せられて良かったです」
日光のFW・鈴木貴人は「苦しい時期が逆に、チームに成長をもたらしているんじゃないかと思います」と語った。日光は、怪我や出場停止で多くのDFを欠いている。
「開幕当初はあんまりアイスタイム多くなかった選手も、今はほんとに頑張って成長しているんで、みんな戻ってきたときにまたパワーアップしたチームになるんじゃないかと」
やはりコクドでデビューした鈴木も、新横浜には特別な思いがあるようだ。
「僕自身今シーズン初めての東京近郊の試合で、特にこのリンクは僕がプロとしてアイスホッケーをスタートした場所なんで…いつもとは違った感情がありましたし、たくさんのお客さん応援してくれて、昨日ちょっとふがいない試合しちゃったんですけど、今日いい試合をお見せできて良かったと思います」
アイスホッケーが戻ってきた週末、新横浜のリンクは活気づいていた。
posted by satoko |12:00 |
アイスホッケー |
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2009年11月09日
セルフコントロールの術を身につけた今季の安藤美姫は、強い。
NHK杯での安藤は、ショートプログラムでもフリーでも完璧ではなかった。しかし、失敗にも動じず自分の見せたいものを見せたところに、大きな意味があると思う。
安藤は、一人の女性としてもスケーターとしても感情が表に出るタイプだと思う。その性格は安藤の魅力であると同時に、ときにアスリートとしての彼女を苦しめてきた。しかし、今季の安藤は自らの感情的な部分を上手にコントロールしている。個人的なことに立ち入る報道も、自分でも驚くようなジャンプの失敗も、今の安藤は呑み込んで滑ることができているようだ。
安藤の能力の高さは今更私などが言うまでもないことだ。しかし、トリノ五輪シーズンの姿を見て、私はその後の安藤について悲観的な予想をしていた。いろいろな要因で繊細な安藤は押しつぶされてしまったように思えたからだ。しかし、その予想は嬉しくも見事に外れた。「クレオパトラ」の女王として、また一人の女性としての人生を表現できるのは、安藤が苦しい時期を乗り越えてきたからに違いない。安藤は、私などが思っていたより遙かに強く、優れたスケーターだった。
自らの女性としての魅力も、感情的な部分も、今現在のスケーターとしての能力も全て把握し、受け入れているように見える安藤は、大人のスケーターになった。バンクーバーは、安藤にとってトリノとは大きく違う舞台になるように思える。
posted by satoko |11:50 |
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2009年11月04日
「ウエストサイドストーリー」は、やはり密かに磨かれていた。
グランプリシリーズ中国杯・女子シングルで、鈴木明子が優勝した。シーズン前のアイスショーで観たときから魅力を感じていた「ウエストサイドストーリー」は、更に見応えのあるフリープログラムになっていた。
鈴木には派手な大技はないが、全ての面に優れ、安定感のあるスケーターだという印象を持っている。いわゆる玄人受けのする滑りなのだが、実は華やかさも充分に持っている鈴木の魅力は「ウエストサイドストーリー」で存分に発揮されている。激しさも美しさも、切れも滑らかさも見せられるこのフリーは、鈴木にしか滑れないプログラムなのかもしれない。
たおやかさの中にかいま見える鈴木の芯の強さは、滑ることが出来なかった苦しい日々を乗り越えたことにも関係があるだろう。滑ることの喜びを誰よりも知っている鈴木が、夢の大舞台へ確かな一歩を踏み出した。
トリノ五輪シーズンの全日本選手権・女子シングルは伝説の名勝負となったが、今季も非常に高いレベルの華麗な争いになるのではないか。それぞれの魅力を持つ日本のスケーターたちが、それぞれのやり方で自分の滑りを磨いている。
posted by satoko |11:48 |
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